暗殺聖闘士   作:挫梛道

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先に言っておきますが、本編に"あの"占い師は登場しません。

加筆修正しました。


金髪の時間

5月。

国から、月を破壊したタコ…通称殺せんせー暗殺を依頼された、椚ヶ丘中学校3-Eの生徒達。

あれから1ヶ月が経つが、未だに標的(ターゲット)の暗殺に、手応えもヒントも得られないでいた。

先日も奥田愛美が毒殺を試みるも失敗。

挙げ句には、言葉巧みに騙され、逆にタコの細胞を活性化させる薬物を盛ってしまっていた。

ただ この件が、奥田が苦手としていた国語の成績が上がるきっかけとなったのは、また別の話。

 

 

 

 

「明日からの連休、何か予定ある?」

今年の5月の連休、遊び目的な意味では、土日が丁度 好い感じに配置され、カレンダー通りなら4連休となっている。

 

「予定…特に無いな~」

「俺もだ…吉良は…あー、お前は どーせ、某県(あっち)に戻って、例のパツキン彼女とイチャつくんだろ?くそ!リア充爆裂しやがれ!」

「おい、イチャつくて…てか、日曜日に こっちに来る事になってる。」

「何ーっ!」

「吉良、会わせろ!」

「前にも言ったが、チャラ男とエロ坊主だけは、絶対に断る!」

「「何でだよ!?」」

「自分の胸に、手を当てて聞いて見ろ?

まぁ、どうしてもって言うなら、椚パークに行くつもりだから、お前等も誰か誘って同行するか?

あっちから もう1組、友達のカップルが来る予定だし?」

響の発言に

「岡野ー、この連休、空いてる?」

前原は即座に、一緒に机を囲んでいた1人、岡野ひなたに声を掛ける。

「な、何で此処で あたしに声を掛ける訳?

まあ、どーせ暇だし、別に良ーけど?

あたしも吉良君の彼女さん、興味あるし?」

「そんな訳で、よろしくな、吉良♪」

「お、おう…(岡野さん、其処は2人っきりが良いとかゴネる処だろ?)」

そして岡島はクラスの女子に無差別に声を掛けるが全て撃沈する。

 

「何でだよ!?」

「「「「「(自分の胸に聴け!)」」」」」

 

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キーンコーンカーンコーン…

ガラガラガラ…

「起立!」

カチャ…

チャイムが鳴り、教室の扉が開くと同時に日直が号令を掛け、狙撃体制に入るE組の面々。

しかし、教室に入ってきたのは殺せんせーでなく烏間だった。

 

「皆、すまない。今日は出席確認時の狙撃は中止だ。」

何か気まずい顔をしている烏間。

「皆さん、おはようございます。」

其処に若気た顔をした、ピンク色のタコが教室に入ってきた。

 

 

 

 

 

 

若い金髪美女に腕組みをされて。

 

 

「…今日から来た、外国語の臨時講師を紹介する。

おい、自己紹介しろ。」

物凄く突っ込みたい衝動を無理矢理に我慢しているかの様な顔の烏間が、殺せんせーに引っ付いた女性に挨拶を促した。

「イリーナ・イェラビッチと申しますぅ。

皆さん、よろしく!!」

殺せんせーの腕に組み付いた儘、にこやかな顔で挨拶をしたイリーナという女性。

 

「彼女は、本格的な外国語に触れさせたいとの学校の意向で赴任してもらった。

今後、英語の授業の半分は、彼女の受け持ちとなる。」

「「「「おおぉ~っ!!」」」」

烏間の言葉に、男子生徒から歓声が沸く。

                 

…と、同時に、生徒達は思った。

(あのタコ、普通にデレデレじゃねーか!)

…でなく、

(あの女(ひと)、絶対に只者じゃない!)

…と。

 

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「しかし殺せんせー、普通に人間の女性もアリなんだな?」

「そうだね…(まあ、『元』は人だしね)」

「俺、雌のタコに発情しないけど?」

「そんなの岡島くらいっしょ?」

「何でだよ!?いくら俺d「おいカルマ、今は岡島の性癖が間違ってるかとかは、どーでもいーだろ?」

「いや、吉良、否定させてくれよ!」

「この時期、このクラスに赴任だ。

あの先生、間違いなく殺せんせーを殺る為に寄越された、ヒットマンか何かだろ?

でなきゃ、あんなタコに、彼処まで摺り寄ったりしないし。」

「「「ん。確かに。」」」

「スルー!?」

「とりあえず、午後の英語の授業で、粗方分かるんじゃね?」

1時限目の授業修了後、響達生徒数人は、イリーナについて色々と話していた。

彼女の正体の推測に加えて、「金髪最高」とか「おっぱいヤベー」とか「おっぱいスゲー」とか「おっぱいパねぇー」等の下賤な話まで。

因みに この後、

「あの…櫻瀬さん…?」

「………………………………………。」

響をはじめ、あの会話に参加していた男子生徒は、昼休みまで女子に口を聞いて貰えなかった。

 

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昼休み。

校庭で狙撃とサッカーを組み合わせた様な競技?で遊ぶ、殺せんせーとE組の面々。

対せんせーナイフを手にして切りつける生徒も数人居る。

サッカーボールは殺せんせー自身がリフティングしているので、対せんせーBB弾等の仕様は無いみたいだ。

その様子を職員室から見据える男女。

 

「色々と接触の手段は用意してたけど…」

「…………………。」

「…まさか、色仕掛けが通じるとは思わなかったわ…」

「…ああ、俺も予想外だ。」

烏間とイリーナ。

2人共、変な汗をかいて会話している。

人外であるタコに対して、色仕掛けを暗殺手段の選択肢に盛り込むのも どうかと思うが、効果が有った以上は それ以上の指摘は出来ない。

寧ろ、それならば彼女の本領だろう。

 

イリーナ・イェラビッチ(20)

職業・殺し屋

その美貌に加え、実に10カ国語を操る対話能力を持ち、過去、あらゆる暗殺対象(ターゲット)でも、本人、或いは関係者を魅了して接触からの暗殺(ヒット)の実績を数多く持つ、潜入と接近を高度にこなす暗殺者。

 

「それじゃ、ちょっと失礼。」

「待てイリーナ。」

外に向かうイリーナに烏間が話し掛ける。

「分かってると思うが、只の殺し屋を学校で雇うのは流石に問題だ。

表向きの為、教師の仕事もキチンと やってもらうぞ。」

「…私はプロよ。」

それが一体、どの様な意味合いなのかは判りかねるが、烏間の言葉に そう言い放ち、イリーナは冷たい笑みを浮かべて職員室を後にした。

 

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「殺せんせー!」

ナイフとエアガンを構えた生徒達に囲まれた殺せんせーに笑顔を振りまきながら、イリーナが駆け寄って来た。

 

「烏間先生から聞きましたわぁ。

凄く足が お速いんですって?」

何だか頭の上にハートマークが2つくらい浮かんでるかの様な話し方に、変な汗をかいて見る生徒達。

そして声を掛けられた殺せんせーは

「いやぁ、それほどでもないですねぇ…

ほんのマッハ20程度ですから…」

安定のピンク顔だった。

 

「お願いがあるの。

一度本場のベトナムコーヒーを飲んでみたくて…

私が英語を教えてる間に買って来て下さらない?」

顔を赤らめ、両手を合わせて、所謂おねだりのポーズをするイリーナに

「お安い御用です。

ベトナムに良い店を知ってますから」

…と応えた若気た顔のピンク色のタコは、

ドシュッ

「「「「「「「あっ!!」」」」」」」

…と言う間に空の彼方に飛んで行った。

 

キーンコーンカーンコーン…

丁度この時、昼休み終了を報せるチャイムが鳴り、

「…で、えーっと、イリーナ…先生?

授業始まるし教室戻ります?」

クラス委員長の磯貝の語り掛けに

「…授業?…ああ、各自、適当に自習でもしてなさい?」

煙草に火を点け、

「それと…ファーストネームで気安く呼ぶの、止めてくれる?」

生徒達に振り向いた その顔は、先程までの おっとり系美女の面影がまるで無い、その本職の色を全面に出した、冷たく鋭い顔付きの美女だった。

「あのタコの前以外じゃ、教師なんて演るつもりもないし…そうね、『イェラビッチお姉様』と呼びなさい?」

 

 

「「「「「「………………」」」」」」

殆どの生徒達が沈黙する中、

「「…で、どーすんの?

ビッチ姉さ「略すな!」

女性に対して、凄く失礼な略し方をした2人の生徒に指差して突っ込みを入れるイリーナ。

その2人の生徒の1人、赤羽カルマが言葉を続ける。

「あんた、殺し屋なんでしょ?

クラス全員総掛かりで殺れないモンスターを、1人でどう殺んの?ビッチ姉さ「だから略すな!!」

どうやらイリーナは、この略し方が かなり お気に召さないらしい。

「…ガキが…いい?大人にはね、大人の殺り方ってのがあるのよ…」

カルマの挑発に気を取り直し そう言うと、1人の生徒の前に立ち、

「潮田渚…って、あんたよね?」

「?」

「「「「「「「!!!!!」」」」」」」

次の瞬間、渚の口はイリーナの唇で塞がれた。

「なっ…!!?」

赤面して絶句する茅野に

「「ほほぅ…」」

顎に手を添え、興味深く見据える「ビッチ姉さん」発言の2人組。

他の生徒達も男女問わず、あまりの光景に固まっている。

 

約5秒後…

くたぁ…

イリーナから解放された渚は腰から砕け落ちた。

「「渚!」」「渚君!」

響、カルマ、茅野が渚の元に駆け寄る。

「渚、大丈夫???」

「ん…茅野?」

「渚君、美味しいな~?」

「そーゆー問題じゃない!」

あくまでもマイペースなカルマに茅野が食いつく。

「ビッチ姉さん…渚に何をしたんだ?」

「ん?30HITくらいかな?しただけよ?」

「さ、さんじゅ…」

響がイリーナに問い詰めるが、彼女は平然と「やった事」を述べ、逆に唖然とさせ、

「あと、略すな!!」

ビッチ発言に突っ込みも忘れない。

 

そして、未だ半分程正気を失っている渚を無理矢理に抱き起こし、

「後で職員室にいらっしゃい?あんたが調べた奴の情報とやら、聞いてみたいわ?

…まぁ、強制的に話させる方法なんて、いくらでもあるけどね?」

正しく殺し屋の冷酷な眼で言い放つ。

更にイリーナは他の生徒にも、有力な情報を持つ者は話に来いと言う。

「ご褒美に良・い・事してあげるわよ~?

女子には…」

ザッザッザ…

「…男だって貸してあげるし。」

イリーナの台詞のタイミングに合わせるかの様に、これもまた、見ただけで素人でないと分かる、銃器を背負った3人の男が校庭に姿を現した。

「「「ひっ…」」」

一般社会では絶対に体験する事がないであろう、独特の雰囲気を感じ取り、怯える女生徒達。

 

「きゃあ!」

3人の内の1人、サングラスを掛けた男が そんな女生徒の1人の手を取り、

「ガキバカリトオモッテイタガ、コノネエチャントナラ、スコシハ タノシメソウジャナイ(ドガッ!)アウチ!?」

「吉良君…」

「矢田さん、大丈夫?」

響に殴り飛ばされた。

 

 

「ファーッ〇!コノガキ、ナニシヤガル?!」

「コッチノ セリフダ!コノ ペドヤロウ!!」

「ンダトォ!!?」

英語で言い合う響とグラサン男。

「コノガキ、ブッコロス!!」

逆上して更に殴り掛かってくるグラサン男に対して

「(小宇宙を使うまでもない…銃を使われるなら兎も角、肉弾戦なら烏間先生や俺のが普通に強い!)」

ファイティングポーズを取り、反撃の構えを取る響。

「GO to heaven!(行ってこい大霊界!)」

グラサン男が暴力の拳を振り下ろすが

「Ben!Cut it out!(ベン!お止め!)」

ぴた…

イリーナの一声で、ベンと呼ばれた男の拳は止まり…

バギィッ!

「アウチ!!」「あ…」

カウンターを狙っていた響の拳に再度ふっ飛ばされた。

更に

グボォ!「アウチ!」

イリーナが倒れた儘のベンを一睨みして、腹を蹴りつける。

「イリーナ…?」

「この犬!あたしの許可無しに勝手してんじゃないよ!」

「す、すまない…」

無論、やりとりは英語である。

 

続けて矢田と響に目を向けるイリーナ。

「ゴメンね。あのバカが悪い事したわね。

これに関しては、素直に謝るわ。」

そう言うと

「「んん?」」

先の渚と同じく、イリーナの5秒間30HITが矢田桃花に炸裂。

矢田は顔を真っ赤にして、その場で腰砕けになってしまう。

更には

「「んんん!?」」

響も この類の攻撃には耐性が無かったのか、同様にへたり込んでしまった。

 

 

 

「とにかく、あのタコは私が殺るわ。ガキは外野で大人しく拝んでなさい。

少しでも、私の仕事の邪魔をしたら…

殺・す…わ・よ?」

そう言うとイリーナは3人を引き連れ、仕事の『準備』に取り掛かった。

 

 

気絶する程 上手いキス…

従えてきた強そうな?男達…

そして『殺す』という言葉の重み…

 

生徒達は彼女が本物(プロ)の殺し屋なのだと実感する。

そして、クラスの殆どが 思った…。

『この先生(おんな)は…嫌いだ!!』

 

 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

翌日。

イリーナは朝早く、職員室に訪れ、暗殺プランを確認している。

昨日の内に、仕込みは完了。     

後は獲物を罠まで誘うのみ…。    

                  

「未知の生物を殺す仕事は初めてだけど…

準備は万端。最新の技術を駆使して殺せない暗殺対象(ターゲット)なんて、この世には存在しないわ…。」

 

ガラガラ…

職員室の扉が開いた。

「ほぅ…今日みたいな日にも此処に来るとは、流石はプロだ。

以外にも仕事に対しては真剣に取り組んでるのだな。」

「カラスマ…」

職員室に入ってきたのは烏間惟臣。

 

「聞いたぞ…事情を知らない者をスタッフとして呼び込んだそうだな…?」

「ふふ…あの3人もプロよ?口は固いわ。

彼等の協力(アシスト)で仕込みは完了よ。

今日、殺ってやるわ…!!」

自信に満ちた顔で宣言するイリーナだが…

 

「イリーナ…日本では一般的な学校や会社は今日から連休になっていてな…

今頃はヤツも世界中を遊び歩い…飛び回っていてるだろう…。

ヤツが この学校に再び顔を出すのは、4日後だ…!」

「な、何ですってーっ!?」

 

 




次回でビッチ先生の回は締めます。
尚、吉良君の女難はまだ、終わってはいません(笑)。

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