期末試験、終了。
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キーンコーンカーンコーン…
期末試験2日目。
5時限目の始まりを、つまり、最後の試験の開始を告げる予鈴が鳴った。
「次がラスト…ね…
ねぇタコ?
あのコ達、本当に大丈夫なの?」
「ヌルフフフフ…
心配ですか、イリーナ先生?
本当の教師みたいですよ?」
「な…!?
べべ、別に私は唯単に、一応は この私だって、随分と世話焼いてやったのだから…
だから、きっちりと結果を出してくれないと、色々と面倒見てやった甲斐が無いって…唯、それだけよ!!」
「ヌルフフフフフフフ…そーですか~?
それじゃ、そういう事に、しておいてあげますよ~♪」
「…殺す!」
それは、旧校舎の校庭から本校舎を見下ろす、とある2人の遣り取り。
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【数学】
「な、なんじゃぁ ありゃあ~!?」
「漸化式…だと…!?」
「中学校のテストなんかで、出す問題じゃあ無ぁ~いぃ!!」
「集中しろ!
少しでも気を緩めると、意識を全部、持って逝かれるぞ!!」
2学期期末試験、その最後の科目である数学。
地中より沸き出てきた、黒い甲冑を纏った髑髏(きそもんだい)の大軍を退け、続けざまに襲い掛かってきた、三首の巨大犬を全員で取り囲んでの全方位集中攻撃で攻略したE組の面々。
『『………………………。』』
そんな彼等の前に、次に現れたのは黒のローブを纏い、片や金の髪に金の瞳、片や銀の髪に銀の瞳を持った双子の男。
漸化式。
生徒達の間で その存在を噂されていた難問が、ラスト問題前の刺客として、終焉を司る双子神を象って、その姿を見せた。
ダッダダダダダダダダダ…
「い、いゃあああああぁっ!!」
「ぎょえーーーーーーーーっ!!」
「ひぇえええぇっ!?」
「ちょ…弾の用意が…」
高速浮遊しながら、無慈悲に、そして無表情で多量の光弾の浴びせてくる双子神。
そんな難問(てき)の出題(こうげき)に対して、反撃体勢を取れない儘、E組の面々は逃げ惑っていた。
…シュン!x2
『『……!??』』
その時、双子神に向けて左右から、投げ放たれたのは鋼縄製の大型捕縛網(ネット)。
不意の攻撃に2柱は捕らわれ地に墜ち、身動きが取れなくなる。
ズドドドッ!
『『!!?』』
「「「「「「「へ!??」」」」」」」
更に次の瞬間、その場の地面が皹割れたかと思えば巨大な穴が空き、2柱は其の儘、その穴に落ちてしまう。
『『???!』』
網で動きを封じられ、追い討ちの落とし穴のトラップ。
何が起きたのか判らず、先程迄の達観していたかの表情が嘘の様に、2柱は動揺、慌てふためいた顔を覗かせる。
スタ…
「先週、殺り方教えたろ♪?」
「それ、特殊解に持ってくんだよ。」
「「「「「カルマぁ?」」」」」
「「「「「吉良君!」」」」」
投網に捕らわれ穴に落ち、身動き適わず雁字搦めになり もがいている双子神の頭上を踏みつける様に立ち現れたのは、鶴嘴とスコップを片手に担いだカルマと響。
「基礎問題は兎も角…」
「さっきのワンコや双子神(コイツラ)、そしてラストなんかは、例え問題其の物が正解にならずとも、其処迄の行程式が正しければ、その分の評価点は貰える筈だ。」
「だから、皆は焦らずに解いてなって♪
△(サンカク)位、取れる筈だからさ。」
「そして、皆の〇(マル)は…」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
ジャキ!!x2!
「「…俺達が取る!」」
E組2トップが手にした光子ライフルの銃口を向けた先…
その先、この闘技場に、ついに神々しい光と禍々しい威圧感と共に、数学ラスト問題が降臨した。
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数学テスト最終問題。
A~E組の生徒の1/3は、此処迄すら辿り着けていなかった。
そして残る2/3の内の半数以上も、最後迄解ける余力は無いに等しく。
既に時間もギリギリな そんな中、残る時間内で完璧に解答を導き出せる可能性を持つのは…
「さあて…♪」
「どーやって、」
「…仕留めて殺るかな?」
3人に絞られていた。
『………………………………………。』
病的な迄に白い肌、艶のある長い黒髪、闇よりも暗く深く、だが澄みきっていると云う、相反する形容が似合う黒い瞳。
禍々しく、且つ神々しく煌めく漆黒の甲冑を纏った美丈夫…
それは正しく、冥府の神を連想させる。
この数学最終問題が、腰に携えていた…鞘や柄は勿論の事、刀身すら鋭く光る黒で統一された剣を抜き、己に立ち向かう者達全員に向けて、その漆黒の刃を振り翳した。
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1辺aの立方体が規則正しく周期的に重なり並び、其の各頂点と中心に原子が位置する結晶構造を"体心立方格子構造"という。
Fr(フランシウム)やCs(セシウム)等、アルカリ金属の多くは"体心立方格子構造"をとる。
この"体心立方格子構造"において、ある原子Aoに刮目した時、a空間内の全ての点の内、他のどの原子よりもAoに近い点の集合が創る領域をXoとする。
この時のXoの体積を求めよ。
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「「「「「「「「!!?」」」」」」」」
「な…!?」/「ぬ?」/「これはっ?!」
剣が振り抜かれた…即ち出題された瞬間、最終問題に立ち向かっていた者達全てが各自、推定5㍍四方の立方体(はこ)の中に閉じ込められた。
ボゥッ
そして箱の内部、床と天井の四角に火が灯ったかと思えば、其れ等は青い血管が血走る邪眼へと変貌する。
ビッ!!
「ひえっ!?」
その8つの邪眼が、箱の内部中央に立つ生徒を凝視、光弾の一生射撃。
「ぇえい、冗談でわ無い!!」
「何なのよ、一体?!」
「も~、訳解んないんですけど!!」
それに対して大半の生徒達は、自身が手に持っていた光子銃の弾丸で相殺するか、光盾(シールド)を展開し、防ぐしか術が無く…反撃出来る隙間を見いだせなかった。
…そう、『大半の生徒達』は。
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「…………………………。
『原子』とか『体心立法格子構造』とか、そんな余計な言葉に惑わされては、騙されては いけない。」
「問題の要点その物は、至って簡単(シンプル)なんだよね~♪。」
「八方を邪眼(てき)に囲まれた この箱(なか)での…」
「「「現状での、敵の攻撃と己の防御との境界線内側…
つまり、『自分自身の"領域"の体積を求めよ』…だ!!」」」
…この出題の意味を理解出来ているのは、現状3名のみ。
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「見えた!」/「引っ込んでろ、固羅!!」
バシュッ!
ほぼ同じタイミングで、浅野と響が、天井の一角、邪眼の1体を撃破。
その部分に、多角形で形成される、光の結界(かべ)が張られる。
≫≫≫
「よし!とりあえず、1つだ!」
≫≫≫
「これで あの邪眼(めんたま)は、攻撃は不能だぜ!!」
そして、ほぼ同時に、同じ結論に至る浅野と響。
…この立方体(へや)の中は、8体の敵に囲まれている。
つまり、敵(コイツラ)全てを封じた結界の体積を求め、それをこの立方体(へや)全体の体積…即ち、【α乃3乗】から引いた数値こそが、この問題に求められる、我領域(こたえ)だ!!
…この2人の出した結論は、オンリーワンの『答え』を求める、『数学』の試験と云う観点から見れば、決して間違ってはいない。
「「そうか、この結界は、六角錐が1つ、そして三角錐が3つの集合体!
これさえ分かれば、後は その体積を計算して、8掛けすれば…!!」」
それは、残り時間からして、その数式を完璧に仕上げ、答えを出せるかは、微妙なライン。
だが難問故、そして基本的、頭脳明晰な2人だからこそ気付いてしまった、その たった1つの導きに、頑なに拘ってしまう。
残り時間の少なさから、他の解答方法を探そうとする余裕が無い程に。
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一方…
「…って、もしかしてさぁ?」
床の四角と天井の四角、八方向からの同時攻撃を巧みに防いでいるカルマ。
今、攻防のバランス、凄く取れてるよね?
少しでも気を抜くと、一気に殺られちゃうだろうけど、こっちがアッチに侵攻出来ない代わりに、それは向こうも同じ。
つまり、現状は50:50(ヒィフティ・ヒィフティ)!!
はは…はははははははははは!
何だ、凄く簡単じゃん!
難しい数式なんて、要らないじゃん!!
「答え。【2分のα乃3乗】…と。」
パリィン…
その瞬間、カルマを閉じ込めていた立方体(へや)が、音を立てて崩れて消える。
タタッ…
そして間髪入れず、場内に立つ、最終問題本体に、解放されたカルマが飛び込む。
ヴォオン…
「そぉ~れっとぉ!♪」
ドスッ!
『!!!!??』
光子ライフルの弾丸エネルギーを全放出、刃状に安定させ、その光の剣で、漆黒の甲冑を纏った冥府の神の胸元を貫いた。
キーンコーンカーンコーン…
「其処迄!!」
「くっ…」/「ちぃっ…!!」
そして、死闘(しけん)終了を告げる鐘(チャイム)が鳴った。
「浅野君…終わりだよ…」
「くそ…」
「吉良、終了だ!鉛筆(ペン)を止めろ!!」
「ちぃ…あと、1行…!!」
「「…分かっていたのに…!!」」
数学最終問題
赤羽業 20/20点
吉良響 15/20点
浅野学秀 13/20点
???? 20/20点
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ざわざわざわざわ…
「いや、キツかった!」
「…鬼畜問題。」
「数学のラストなんかもな~」
「吉良君はアレ、どうだったの?」
「応…解き方は分かってたけど、式が長過ぎて時間切れだったぜ…」
試験終了後、試験教室で互いの出来具合を語り合うE組の皆さん。
「え~?吉良っちぃ?アレ、凄く簡単だったじゃん?
長い式なんて、全然要らなかったしぃ♪」
「「「「「「「えぇっ!!???」」」」」」」
そんな中、このカルマの発言に、教室内の殆どが、驚きの声を上げる。
「カ、カルマ、おま…アレ、暗算で解いたってのか?」
「どーゆー脳味噌なのよ!?」
「いや~、暗算以前にさ~…」
『簡単でした♪』の発言に響や片岡が問い詰めるが、
「いや、アレ…マジに簡単だったぜ?」
「「「「「「はぁああぁ!???」」」」」」
カルマに同調する意見が1つ。
その意見其の物でなく、その意見を発した人物に、その場全員が驚きの声を上げた。
「テメー等、驚き過ぎだ(怒)!!」
「いゃ、でもよぅ、寺坂ぁ…」
それは寺坂龍馬。
「参考迄に、答えは?」
「2分のα乃3乗。」
「ん。正解~♪。」
「カルマ君?」
そしてカルマが、寺坂の出した答えを、正解だと支持。
「まあ、アレは直感とか閃きとか、そーゆーのが有ったのが良かったかもね。
その点、そーゆー意味じゃ、寺坂みたいな単純なヤツのが、有利だったんだよ。」
「た…単純とわ何だ!!? テメーッ!」
「ちょ…誉めてんだけど?!」
ガタッ…
「……………………………………。」
「き、きーちゃん?」
「何故だか分かりませんが、吉良っち君が、急にorzりましたわ!?」
「寺坂ですら解けた問題が出来なかったのが、そんなにショックかよ…」
「"ですら"とは何だ!! "ですら"とは?!」
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そして、3日後のE組教室。
「ヌルフフフフ…
今回は前振りや説明は、無しです。
いきなり結果発表と行きましょう。」
朝のホームルーム、殺せんせーは国・社・理・英・家・数・技・美・音・保の10教科、正誤と点数が記された答案用紙を各々30人分、封筒に詰めてマッハで配り終えると、自らが模造紙に書き込み製作した、期末試験トップ50迄の順位表(5教科総合)を、黒板に張り付けた。
「「「「「「「「!!?」」」」」」」」
※※※※※今回のボツネタ(笑)※※※※※
スタ…
「先週、殺り方教えたろ♪?」
「それ、特殊解に持ってくんだよ。」
「「「「「カルマぁ?」」」」」
「「「「「吉良君!」」」」」
投網に捕らわれ、身動き適わず雁字搦めになった双子神の上に、踏みつける様に立ったのは、刺々しい造形の赤い籠手を左腕に装備したカルマと、白く光る翼を背中に装着した響。
「「せーのっ!!」」
ぶぅん…!
二天ry…響とカルマが網を引き剥がし、双子神を上空に放り投げると、自らも揃って跳躍する。
ガシッ!
そして空中でカルマが、逆さ向きとなった銀髪神の背後を取ると両足首を掴み、両脇に足を置き、ロックした状態で急降下。
同様に響は金髪の神の頭部を肩で担ぎ、両足をその手で掴んだ体勢で、加速しながら落下。
ドガアッ!!
そして最終的には その体勢の儘、カルマが響を肩車する形で勢い良く着地、E組2強(凶)の、ツープラトンでのMuscleな必殺技が、闘技場内に派手に炸裂し、
『……ォッ!!?』『………ァッ!??』
この合体技により、各々の技が本来単身で繰り出される場合の約10倍のダメージを受けた双子神は立ち上がる事が出来ず、斃れた儘、その場から姿を消し去るのだった。
◆◆◆
…流石にネタに走り過ぎてる上に、最終問題よりも内容が濃いと思い、ボツにしました(笑)。
≫≫≫≫ 次回予告(予定)!! ≪≪≪≪
次回:暗殺聖闘士『理事長の時間(仮)』
乞う御期待!! コメントよろしくです。