銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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刀は何でも斬れるわけじゃない

「チッ、この化け物が!!」

 

小春は両手に得物の2丁拳銃を持って舌打ちをする。

今日も彼ら「獣衆」は、ここ煉獄関で狂ったショーを演じていた。

 

しかし、今回の相手はいつもと違った。

目の前に立つ鬼のような顔をした天人ーー「荼吉尼(だきに)」の鬼獅子。「荼吉尼」は、「夜兎」「辰羅」に並ぶ武を誇る傭兵部族。力も並みでないし、戦い方も残忍だ。

 

小春は、チラリと他の仲間を見やる。皆自分と同じように鬼獅子に挑み倒され、ボロボロだった。

鬼獅子が一点に集中しないよう、バラバラに分かれて彼を囲む。こちとら地球最恐と呼ばれた戦闘集団だが、今まで戦ってきたどんな相手よりも強い。

 

しかし、生きて帰らねば。自分達には、護るべき存在がいるのだ。

 

それを確認し合った四人は、アイコンタクトを送る。

まず最初に、お瀧が手裏剣を鬼獅子に投げつけた。鬼獅子がそれを金棒で打ち落とすと、小春が彼の金棒を握る右手を狙い、引き金を引いた。発砲の音が会場内に響くと、右手自体には当たらなかったものの、金棒を手から離すことに成功した。

小春が拳銃を向けたのと同時に走り出していた橘が、長刀を振り下ろす。

 

「おおおおおおおお!!」

 

しかし。

 

ーーバシィッ!

 

鬼獅子は迫り来る長刀の柄を握り締め、簡単に折ってしまう。

橘がそれに目を見開いた瞬間、彼の腹に拳が打ち込まれた。強い一撃を受けた橘は血を吐き、振り抜かれた拳に押され、壁に激突した。

 

「貴様ァ!!」

 

小太刀を両手に構え、お瀧が姿勢を低くして走り出す。鬼獅子は落とした金棒を手に取り、お瀧に振り下ろした。

お瀧は跳躍してそれをかわし、小太刀を突きつけた。鬼獅子は小太刀を左腕につけた防具であっさり防いだ。

 

「軽いわァァァ!!」

 

「うぐぁっ!!」

 

下から打ち上げられたお瀧は、顎を強打し、宙へ吹っ飛ばされる。鬼獅子がドサリとお瀧が落ちた音を背中で聞いた瞬間、今度はメリケンサックをはめた八雲が躍り出た。

八雲を潰そうと金棒を振り上げ、下ろす。

八雲は両腕を十字にして防いだが、衝撃が強過ぎたらしい。骨が折れる音が彼の耳に入ってきた。

 

見かねた小春も駆け込んできて、鬼獅子の右目に向けて銃弾を撃ち込む。鬼獅子は金棒で顔を防ぎながら、前に立つ八雲の体を蹴り飛ばした。

小春の銃弾をかわしつつ、鬼獅子は彼女を殺そうと金棒を振り回す。それをジャンプで避け、心臓を撃った瞬間、小春の体が宙に浮いた。

頭を、鬼獅子にがっちり掴まれている。このまま握り潰すつもりか。そう思うだけで、ゾッとした。鬼獅子はニヤリと笑い、小春の頭を握る手に力を込めた。

 

「ひっ……!!ぎゃあああっ!!」

 

「がはははははは!!あの伝説の『獣衆』がまさかこの程度とは。つまらんな!!」

 

小春は、死を覚悟した。その時、彼女の脳裏に一人の少女の笑顔が浮かんだ。

 

 

 

 

「この程度だァ?『獣衆(あたしら)』バカにすんなよ」

 

 

 

どこかから聞こえてきた、余裕そうな声。

それと同時に、小春を掴んでいる鬼獅子の腕に、刀が刺さっていた。

 

「!!」

 

「!?何……?」

 

鬼獅子はすぐに、腕に刺さった刀を抜く。

闘技場の入り口に、何者かが立っていた。その人物は鬼の面を被って顔を隠し、こちらへ歩いてきた。

 

「きっ……鬼道丸!?バ……バカな、奴は確かに……。誰だ!?どっから忍び込んで……」

 

「……貴様、何故ここにいる?貴様は確かにわしが殺したはず……」

 

そう。鬼の面は鬼道丸ではあるが、その下の体は細かった。藤色の浴衣を纏い、金属バットを携えていた。

女だ。鬼獅子はそう思った。

 

小春を手から離し、鬼道丸に向き直る。小春はドサッと倒れ込み、突如現れた少女に目を見張っていた。

会場内が騒然とする中、鬼道丸(仮)が鬼獅子に向かって喧嘩腰に高い声で言う。

 

「よォ!アンタか?私を殺したのは。イライラして未練タラタラで成仏出来なかったじゃねーか。どーしてくれんだよコノヤロー」

 

「ここはもう貴様の居場所じゃない。わしの舞台じゃ。消え去れ」

 

仮面の下で、フッと笑う声が聞こえた。

 

「消えねーよ。真っ直ぐに生きたバカの魂は、自分(てめー)の体が滅ぼうが消えやしねー」

 

「ほう。ならば、その魂……今ここで掻き消してくれる!!」

 

鬼獅子と鬼道丸(仮)が、同時にそれぞれの得物を構えて、斬り合う。鬼道丸(仮)の右の角が壊れ、鬼獅子の額が切れた。

お互い背中合わせとなり、鬼獅子は左手で腰に差してある短刀を抜いて、振り向きざまに鬼道丸の仮面に突き刺した。

しかし、中まで突き刺した手応えが無い。中身の人間がいなかった。鬼獅子はキョロキョロと辺りを見回すが、気配を感じない。

 

不意に、強烈な殺気を背後から感じた。

 

少女は銀髪を靡かせ、金棒を持つ鬼獅子の右腕を狙い、金属バットを振るった。

打ち据えられる前に、鬼獅子は金棒で金属バットを迎え撃つ。金属同士が強くぶつかり合う音がした。

しかし鬼獅子は、あまりに強く重い少女の一撃に、体がよろめいた。それと同時に、動揺していた。

 

何故、こんな細い腕から、あそこまでの威力を乗せられるのか。

 

少女は距離を詰めようと鬼獅子に駆け出す。

鬼獅子は、少女が自分の攻撃圏内に入った所を狙って、横薙ぎに殴った。

 

「がはっ……!!」

 

横腹に見事炸裂した一撃に、少女は血を吐く。鬼獅子は彼女を壁に叩きつけようと、一気に振り抜こうとした。

しかし。

 

「!!」

 

「ククッ……」

 

少女はがっちりと鬼獅子の金棒を脇で挟むように捕まえていた。いくら彼が動かそうとしても、動かない。

この少女の尋常じゃない力は、まさかーー。

 

「オイデカブツコラァ。この程度じゃあ、私の魂は折れねーぞ?」

 

少女は焦る鬼獅子に、ニヤリと笑ってみせる。

上唇を舐め、獲物を狩ろうとするその目は。

 

銀狼(あたし)を殺したければ、妖術でも習って出直してくるんだね」

 

少女は金棒を引っ張ってこちらに引き寄せ、耳元でそう言う。

それが聞こえた時にはもう、彼女の金属バットは鬼獅子の腹回りを守る防具を貫通していた。ミシミシと痛々しい音を立てながら彼の鳩尾にこれでもかというほどめり込んでいた。

 

「ま……まさ、か……貴様……は………………ぎ、ぎん…………ろ」

 

そこまで言うと、鬼獅子は気を失い、腹の底に響く重低音と共に倒れた。

この一部始終を見ていた小春は、驚きを隠せず、呆然と立ち上がっていた。

 

「何で…………何で貴女が……ここに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

志乃ちゃん……!!」

 

鬼道丸の仮面を拾った志乃は、口元に流れる血を拭い、小春を振り返った。

 

「大丈夫?助けに来たよ」

 

「何でこんな所に……!来ちゃダメよ!!」

 

「オイ」

 

志乃に駆け寄る小春。彼女らの元に、煉獄関を仕切る連中が現れた。

そのリーダー格の男が、志乃に詰め寄る。

 

「てめー、なんてことしてくれやがる。俺達のショウを台無しにしやがって。ここがどこだかわかってるのか?」

 

「わかってるよ。ここが政府の関わってる面倒な違法賭博場ってことくらいは」

 

「だったら何だ。ガキが来る所じゃねーんだよ。一体どーいうつもりだ。てめーは何者だ?」

 

警戒しながら志乃に問う男。志乃は笑みを浮かべたまま、金属バットを肩に担いだ。

咎めようとする小春を下がらせ、志乃は数歩前に出た。そして、名刺を差し出す。

 

「私は万事屋志乃ちゃんオーナー、霧島志乃でーす。今回の依頼により、ここをぶっ潰しに来ましたー」

 

「なっ……!?ふざけんな、このクソガキが……!!」

 

志乃に襲いかかろうと走り出した瞬間、彼らの足元に銃弾の雨が降り注ぐ。煉獄関の連中は、銃弾の元を振り返った。

そこには、鬼のお面を被った三人組が立っていた。彼らは観客席から、こちらへ降り立つ。

 

「なっ、何者だアイツら!!」

 

まず一人が、お面を脱ぐ。新八だ。

 

「ひとーつ!人の世の生き血を啜り」

 

続いてもう一人が、お面を脱いだ。神楽だ。

 

「ふたーつ!!不埒な悪行三昧」

 

最後に真ん中に立った一人が、やる気なさそうにお面を脱ぐ。銀時だ。

 

「えー、みーっつ……み……みみ、魅惑的な人妻を……」

 

「違うわァァァァ!!」

 

何やらアヤシイ発言をしようとした銀時の顔に、新八のハイキックが炸裂する。

その隣で、神楽と志乃が、間違いを訂正した。

 

「銀ちゃん、みーっつミルキーはパパの味アルヨ」

 

「違うよ神楽。そもそもアレは"み"から始まらないよ。切る身はパパの味だから」

 

「ママの味だァァ!!あと、切る身の方は都市伝説じゃねーか!!違う違う!!みーっつ醜い浮世の鬼を!!」

 

敵からツッコミを受け、締まりが悪くなった。志乃は、リーダー格の男に頼む。

 

「仕方ない、やり直そう。スンマセーン、『なっ、何者だアイツら!!』からお願いしまーす。じゃ、行きますよ〜。Take(テイク)2(ツー)!!よ〜〜い……アクション!!」

 

「なっ、何者……ってオイぃぃぃ!!何もう一回やらせてんだよ!!結構恥ずかしいじゃねーか!!」

 

現場監督風に仕切る志乃。彼女の隣で、小春が何故かカチンコを持っていた。

再びツッコミを入れられた後、何とか仕切り直して、銀時達は決めポーズに移った。

 

「「「退治てくれよう!万事屋銀ちゃん見参!!」」」

 

「………………ふ、ふざけやがってェ!!やっちまえェ!!」

 

ようやく襲いかかってきた敵の一人に向けて、銀時は蹴りをお見舞いする。

 

「死んでも知らねーぜ!こんな所までついてきやがって」

「僕らよりも年下の女の子が一人で行ったら、僕らも行くしかないじゃないですか!っていうかまだ今月の給料も貰ってないのに死なせませんよ‼︎」

 

「今月だけじゃないネ、先月もアル」

 

「先月はお前仕事無かっただろーが!」

 

「じゃあ今回は貰えるネ」

 

「あはは!諦めて給料払ってやんな、銀!」

 

志乃も金属バットを振るい、敵をなぎ倒していく。

 

「なっ……何なんだ、こいつら」

 

四人の圧倒的な強さに、リーダー格の男は後退りした。

しかし、何故だ。何故彼らは、鬼道丸という人殺しのために、ここまで戦うのか。彼にはわからなかった。

その背中に、刀が突きつけられる。刀の持ち主は、沖田だ。

 

「理解出来ねーか?今時弔い合戦なんざ、しかも人斬りのためにだぜィ?得るもんなんざ何もねェ。わかってんだ、わかってんだよんなこたァ。だけど、ここで動かねーと、自分が自分じゃなくなるんでィ」

 

「てっ……てめェらこんなマネしてタダで済むと思ってるのか?」

 

「それはこっちの台詞だよ」

 

不意に入ってきた声に、リーダー格の男は、バッと顔を上げる。そこには、金属バットをこちらに向け、自分に飛びかかってきた志乃がいた。

思わぬ光景に、男は思わず腰が抜けてしまう。

志乃は彼の体を足で跨ぎ、逃げられないように顔の横に金属バットを突き立てた。仰向けに倒れた男の上に馬乗りになった志乃は、殺気を孕んだ赤い目で彼を見下ろす。

 

「てめェこそ、私ら(・・)にこんなマネして、タダで済むと思ってんのか?よくも、私の大切な家族をここで戦わせてくれたね」

 

「は……はぁ?」

 

「とぼけんな。『獣衆』の奴らのことだよ」

 

志乃は金属バットでさらに強く地面を突く。

まるで刀を突き刺しているかのような威力と言い知れぬ恐怖に、男はガタガタ震えた。

 

「今度私の仲間に……家族に手ェ出したらこれじゃ済まねー。次は、アンタの顔を跡形もなくぐちゃぐちゃにしてやる。肝に命じとけ」

 

「なっ……てめーこそ何なんだ。何故あんな人殺ししか出来ない連中に肩入れする?てめーは一体、何者だ!!」

 

震える声で、志乃に叫ぶ。志乃は、相変わらず冷たい視線を向けて返した。

 

「言わなかったか?私は万事屋志乃ちゃんオーナー、霧島志乃だ。そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この国最恐の人斬りであり、現『獣衆』棟梁・銀狼だよ」

 

志乃がそう名乗った瞬間、カチャリと彼女の首元に刀が差し出される。

振り返らなくても、志乃には誰かがわかった。土方だ。

 

「そこまでにしてもらおーか、銀狼。後は俺達、真選組の仕事だ」

 

真選組。その名を聞いた客や関係者は、一目散に逃げていった。悲鳴と叫び声が入り混じる会場の全てを無視して、志乃は静かに男から降りた。

真選組に取り押さえられる中、煉獄関を仕切っていた男は、志乃に吠えるように叫ぶ。

 

「なるほど、てめーが銀狼か。何故生きてるのかは知らんが……この世に、てめーの居場所はねェぜ」

 

その言葉を聞いた志乃は、肩越しに男を見る。男は勝ち誇ったように笑いながら続けた。

 

「てめーらは所詮人殺しの集まりだ!!血を見ないと生きられない、戦いの中でしか生きられない連中なんだよ!!それが平和になって、居場所がなくなったお前らを、俺達は拾ってやったんだぜ!?覚えとけ銀狼ォォ!!てめーがいくら自分(てめー)で否定しても、その血の運命からは逃れられない。人殺しとしての本能には、抗えないんだよォ!!」

 

嘲笑うように言った男は、真選組に連れられ、外に出て行った。

志乃はその姿を横目で見送ってから、小春を振り返る。

 

「ハル、大丈夫?ケガは……」

 

ーーパァンッ!!

 

乾いた音が、数人しかいなくなった闘技場に響く。その音が、やけに大きく聞こえた。

志乃は叩かれた左頬に手を添えた。ヒリヒリとした痛みが頬に走る。

 

「貴女は本当に、なんてことを……自分がしたことがわかってるの!?貴女はこれで完全に、天導衆に目をつけられたのよ!!しかも、あんな堂々と名乗って……殺されるわよ!?」

 

「ハル……私は……」

 

「今まで、どれだけ犠牲を払って私達が貴女を護り続けたか!何で……何で貴女は……」

 

小春は涙をボロボロと零し、膝をついて志乃に縋った。

 

「とても強くて、優しくて、気高くて…………ホントに、どうして刹乃みたいになっちゃったのよ……………………」

 

涙をゴシゴシと拭う彼女に、志乃までも泣きそうだった。

 

小春達は、「獣衆」の中で最高の力を誇る"銀狼"の血を引く志乃が、戦いの道具になることをずっと恐れていた。

 

銀狼の力を欲する者は多い。他のメンバーの実力もさることながら、銀狼は艦隊の一つや二つをあっさり殲滅させてしまう程の力を秘めているのだ。それはもう、軍隊相手でもくだらない。

敵にまわせば大いなる脅威、味方につけば最強の切り札となる。

 

故に、誰もが銀狼の力を欲しがった。

 

宇宙海賊春雨、高杉、幕府、そして新たに天導衆。

 

しかし、現棟梁の志乃は、まだ10代の子供。比較的平和な世の中になったというのに、戦いしか生きる道を選べない。そんな哀しい生き方を彼女にしてほしくなかった。

だから、小春、橘、八雲、お瀧は、彼女自身の正体を隠し続けた。

 

自分が、人斬り一族の末裔であること。

 

兄・刹乃が"銀狼"として覚醒し、その力を天人達に見せつけたこと。

 

故に、誰もが"銀狼"の力を欲しがること。

 

それら全てを隠した。志乃を護るために。

 

その気持ちを全て察した志乃は、小春を抱き締めた。

 

「ハル、たっちー、ジョウ、タッキー……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今まで私を護ってくれて、本当にありがとう」

 

********

 

その後、小春達を病院に送り、志乃は銀時達や土方と沖田と共に、橋の上に出ていた。

 

「結局、一番デカい魚は逃がしちまったよーで。悪い奴程よく眠るとはよく言ったもんで」

 

「憎まれっ子世に(はばか)るってよく言うもんね」

 

「ついでにテメェも眠ってくれや、永遠に。人のこと散々利用してくれやがってよ」

 

志乃が沖田の言葉に乗せる形で言うと銀時は頭を掻いて溜息を吐いた。

 

「だから助けに来てあげたじゃないですか。ねェ?土方さん」

 

「知らん。てめーらなんざ助けに来た覚えはねェ。だが、もし今回の件で真選組に火の粉が降りかかったらてめェらのせいだ。全員切腹だから」

 

「「「「え?」」」」

 

切腹、の言葉に一同が固まる。

 

「何言ってんの!!私は身内を助けた善良な一般市民だぞ!?それを切腹ってチンピラにも程があるぞ!」

 

「ムリムリ!!あんなもん相当ノリノリじゃないと無理だから!」

 

「心配いりやせんぜ。俺が介錯してやりまさァ。チャイナ、てめーの時は手元が狂うかもしれねーが」

 

「コイツ絶対私のこと好きアルヨ、ウゼー」

 

「総悟、言っとくけどてめーもだぞ」

 

「マジでか」

 

去り行く土方と沖田の背中を眺めていた志乃は、ふと大切なことを思い出し、二人に叫んだ。

 

「待って!!大切なこと言い忘れてた!」

 

土方と沖田が、何だと振り返る。若干面倒くさそうな顔に、志乃は微笑んで言った。

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 

「………………フン」

 

土方はそう軽くあしらうと、再び背を向けて歩き出した。沖田はニヤニヤしながら、彼の後をついていった。

志乃は満足そうに空を見上げ、それから鬼道丸の仮面を見下ろした。

 

「なんだ、まだ持ってたのか?」

 

「うん」

 

背中越しに覗き込んできた銀時に、短く答える。

不意に、銀時は志乃の手から仮面を奪い取った。何をするのか、と志乃は彼を振り仰ぐ。

 

「こいつァもう必要ねーだろ」

 

銀時はそう言って、仮面を放り投げてから、木刀で叩き割った。

パカンという乾いた音が、耳に届く。

 

「……そーだね。あんたにはもう似合わないよ。天国で、せいぜい笑って暮らしな」

 

志乃も嘆息して、茜空を見上げた。




一度間違って消してしまい、作り直しました。
消しちゃった時、ちょっとだけ心が折れかけましたが、執念で何とかここまでやりました。

お前らァ!頑張った私に拍手を送りやがれェェェ!

シーーーーーン

いや、無視かよォォォォ⁉︎

次回、志乃がアルバイトを始めます。

P. S. 題名変えました。どーだ‼︎読みやすくなったろ‼︎

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