銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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滅殺と必殺の違いがあまりよくわからないけど基本必殺の方がよく使われる

志乃の持つトランシーバー越しに、全蔵の焦った声が聞こえる。

 

『応答願う、応答願う!邸内に五人の不審な気配あり。間違いなく仕置人(やつら)だ!!至急戻れ!!このままでは猿飛がガラ空きだ!!俺一人じゃそう長くは保たんぞ!!繰り返す、至急屋敷に戻れ!!このままでは猿飛が……始末(やら)れるぞ、どーぞ!!』

 

「ねェ、仕置人来たって」

 

ドンキホーテでの買い物中、連絡を受けた志乃は新八と銀時、荷物持ち(ミサト)を振り返る。

 

「ちょっと待て。ボラギノールが注入タイプはあるけど座薬タイプがなくて、どーぞ」

 

『もうボラギノールはいいっつってんだろ!!どーぞ』

 

「うるせーな、テメーが買ってこいっつーからこっちは探したくもねーのにわざわざ探してやってんだろーが。地面にでこ擦り付けて感謝しろや、どーぞ」

 

『時と場合を考えろ!!つーかどこでドS発動してんだ!!どーぞ』

 

「ふざけんな、ここまで来たら意地でも買うぞ!!イボ伸ばして待ってろ!!どーぞ」

 

『首な!!もういいって言ってんだろ!!どーぞ』

 

何なんだよ。買ってこいっつったりもういいっつったり。

溜息を吐いて、ミサトからカゴを奪う。

 

「オイお前も一旦帰れ」

 

「帰らない。俺には志乃を護るという一大使命がある。正直あのイボ痔忍者とかどうでもいいし死ねばいい」

 

「当たり強くね?あの人お前の家族みたいなモンじゃなかったっけ」

 

志乃はポツリとツッコんでから、トランシーバーを新八に託す。彼に先に神楽と定春が向かっていることを伝えさせ、自分はミサトを向かわせるために説得する。

 

「今行けばちゅーしてやるから行け」

 

了解(イエッサー)!!」

 

志乃の嘘に一瞬で心変わりしたミサトは、店舗内の陳列棚を破壊して先に向かった。その背中を見届け、銀時を振り返る。

 

「よし、さっさと座薬タイプ探すか」

 

「……志乃、お前将来絶対小悪魔になるなよ」

 

「小悪魔どころか既に魔王なんですけど。男女問わず心を刈り取る死神になりそうなんですけど」

 

銀時と新八は、可愛い妹兼弟子の将来を案じた。

残念ながらもう手遅れだ。

 

********

 

一方その頃。屋敷では全蔵が相変わらず天井裏に潜んでいた。先に戻っているという神楽に連絡を入れようとする。

 

「応答願う、こちら全蔵。チャイナ娘今どこにいる、どーぞ」

 

しかし、返ってきたのはノイズ音と彼女の怯えたような声。

 

『ひっ……ひィ。誰アルか、お前誰……』

 

「オイどうした、何があっ……まさかっ」

 

ガガガ……ザザ……

 

『ギャアアアアア』

 

ザザザー

 

「チャイナ娘ェェェェェェェ!!」

 

まさか、既に仕置人の魔手に……!?ゴクッと唾を飲み込んだ全蔵の耳に、またトランシーバー越しの声が聞こえてくる。

 

『……セ…………セ…………セコムしてますかz〜〜〜〜』

 

「何ややこしい夢見てんだァァァァ!!」

 

どうやら先程のものは、神楽の寝言だったらしい。神楽は屋敷の、あやめを寝かせている部屋の正面の縁側で寝ている。定春と共に。トランシーバーから聞こえてくる全蔵の叫び声(ツッコミ)に目を覚まし、寝ぼけ眼を擦る。

 

「うーん、何アルか。うるさいアルな」

 

『起きろっつってんだよ!!今どーいう状況かわかってんのか!!』

 

神楽は障子を開け、あやめの眠る部屋に入る。

 

「お子様と(ワン)公にはこの時間はキツ……z〜」

 

『寝るなァァァ!!目ェ覚ませ、猿飛ごとてめーも消されてーのか!!』

 

「わかったわかった、わかってるから。目ェ開けてちゃんと見張っとけば……い…………い…………z〜〜」

 

そして、自分の瞼の上に目を描いて、あやめと一緒に布団で眠り始めた。もちろん定春にも、瞼の上に目が描いてある。あやめには眼鏡に目を描いた。

 

「それで誤魔化せると思ってるのかァァァ!!オイぃぃぃぃなんで猿飛と仲良く寝てんだァァァァ!!」

 

敵が侵入しているというのに、なんと呑気な事か。業を煮やした全蔵は降りて直接叩き起こそうとした。

しかしその時、襖が開く。そして、必殺仕事人のテーマが流れてきた。

ついに、あやめを消すために差し向けられた仕置人がやってきた。

 

 

仕置人No. 1 マクラの政

 

寝込み専門の殺し屋。目にも留まらぬ早業で枕を爆弾入り枕と入れ替え、獲物を永遠の眠りへと誘う。自分の殺しの流儀に絶対のプライドを持つ職人気質の仕置人。

 

 

なんという最悪のタイミング。政は早速持っていた爆弾入り枕の導火線に火をつける。

慌てて全蔵はトランシーバーで寝ている神楽に通信する。

 

『オイいいい起きろォォォ!!早く逃げろォォ爆弾……』

 

「う〜ん、うるさい」

 

しかし、神楽はトランシーバーを手刀で真っ二つに破壊した。

 

「え”え”え”え”え”え”!!アホかァァァァ!!寝てる場合じゃねーんだよ!!起きろォォォ目ェ覚ましたら雲の上だぞォ!!」

 

天井裏で全蔵がドタバタする中、政が早速枕を入れ替えようとそれを掴む。枕を引っ張るが……重過ぎて、全く動かない。

枕を取られまい、いや自らの安眠を護るため、神楽が枕取りを制しているのだ。政は彼女に対抗し、なんとか枕を引き抜こうと両手で挑むが、微動だにしない。

 

「アイツ……是が非でも枕を入れ替えることに殺しのこだわりがあるのか!!踏ん張れェェェ!!枕を絶対に奴に渡すなァァ!!」

 

天井裏から全蔵がエールを送る。導火線が枕に近付いていることで、火事場の馬鹿力を発揮した政が、ついに枕を引き抜いた。

……と思われたが、枕には神楽が噛み付いていて、離そうとしない。ブンブン振り回しても全く離れない。本当に眠っているのか?と問いたくなるほどだ。

 

「離れろォォォお前が眠る枕は、こっちだァァァァ!!」

 

政は、神楽の顔面に爆弾入り枕を押し付け、ようやく枕を取り替えることに成功した。

流石にマズイ、と全蔵が降りようと天井板を外した。

 

「それじゃあな、お嬢さん達。グッナイ」

 

これで任務完了、去ろうとしたその時……。

 

「うーん」

 

神楽が枕を抱いて、寝返りをうつ。

 

「セコムしてまz〜〜〜」

 

「え”え”え”え”え”!?」

 

枕を持ったままゴロゴロ寝返りをうちまくり、政の元へ一直線。縁側に出て庭に降りても、爆弾を離さずにゴロゴロついてくる。逃げてもずっとついてくる。まさに悪夢だ。

全蔵が降りてきた時、ちょうど爆弾入り枕が爆発した。夜兎本来の頑丈さを持ち併せる神楽は無事だったらしいが、政は撃沈。敵は沈黙した。

黙ってそれを眺めていると、トランシーバーに連絡が入る。

 

『応答願います、こちら志村と風魔』

 

『今庭の方で爆音が聞こえたが、そっちは無事か?どーぞ』

 

新八と一緒に、ミサトもいるらしい。全蔵は取り敢えず、現状を報告した。

 

「……………………いや、よくわからんが一人は片付いた……残るは四人だ。恐らく今ので敵に位置を気付かれた。猿飛を連れて場所を移る。落ち合うぞ、今どこにいる」

 

『もう邸内ですけど銀さんと志乃ちゃんと逸れちゃって』

 

『そこで俺と会った。志村はみんなを捜すと言って高い所にいる。俺も一緒だ』

 

「高い所?バカヤロォ、そんな所にいたら敵に見つかるだろーが!!ミサトてめェ、元御庭番のクセに何してんだ!!」

 

『そんなこと言ったって……』

 

『あっ!!いたいた、全蔵さんが見えた!!』

 

あやめを布団で簀巻き状にして抱え、縁側を歩いて二人を捜す。トランシーバーの声を頼りに全蔵が庭を見ると、木の枝に新八とミサトがいた。全蔵と目が合うと、ミサトはすぐに下に降りた。

 

「いや〜暑いですね。Tシャツ買ってきたんですけど、全蔵さんも着ます?」

 

呑気に話す新八だが、BGM(仕事人テーマソング)が聞こえてきた瞬間、ハッと固まった。新八の背後に、Tシャツを着た殺し屋がいたのだ。

 

「後ろォォォォォ!!志村後ろォォォォ!!!」

 

「うわわわっ!!なっ……何ですかアンタァァァ!!」

 

 

仕置人No.2 Tシャツの辰

 

Tシャツ専門の殺し屋。目にも留まらぬ早業でMサイズのTシャツを自分のSサイズのTシャツと入れ替え、獲物を永遠のパッツンパッツンに誘う。自分のTシャツに絶対のプライドを持つ職人気質のTシャツ好き。

 

 

「Tシャツ専門の殺し屋て何だァァァァ!!最早殺し屋でも何でもねーよ!!ただのTシャツ着たオッさんだよ!!」

 

「世の中には様々な殺し屋がいるな」

 

「コイツの場合はただの役立たずだからな!!」

 

仲間が襲われかかっているというのに、ミサトは感嘆したように呟く。感情の行く先がなんか違うが。

辰は新八を永遠のパッツンパッツンへ誘うべく、早速彼のTシャツに手をかけた。

 

「ちょっ、放してください!」

 

「うぐっ……!」

 

「オイ何だこの絵面!!つーかミサトお前何つー光景をカメラで撮ろうとしてんだ!」

 

新八のTシャツを脱がそうとする辰を、ミサトは真顔でカメラに収めていた。全蔵が即座にカメラを叩き割って、撮影を阻止する。

 

「何をするんだ全蔵!この映像を見せれば志乃が喜ぶと思って……」

 

「アホか!!あのガキが見てんのはせいぜい純愛モノなんだよ、子供向け少女漫画みたいなヤツ!!脱衣のシーンなんか一切ねェ純粋モノなんだよ!!この光景を見せてみろ、仕置人に殺られる前にアイツの兄貴に殺られるぞ!!」

 

ミサト本人は良かれと思っただけだろうが、実際に見せようものなら銀時に確実に息の根を止められる。

事実、志乃が衆道本を購入する際、必ず銀時が内容をチェックし、彼の承諾を得てから志乃は初めてレジに通してもらえるのだ。

まぁそんなことはどうでもよくて。

辰は新八のTシャツを引っ張るが、何故かなかなか脱がせられない。

 

ーー何だこのTシャツ。まさかこれはMじゃなく……L!?

 

「そんなに違いなくねっ!?」

 

全蔵のツッコミが、辰のモノローグにも入る。

職人気質の性格が難を呼んだのか、何があってもLサイズらしきTシャツに負けじと引っ張る。そしてついに、Tシャツが破れた。

しかし、Tシャツの襟のタグには……しっかりと、Sの文字が刻まれていたのだ。

 

「さ……最初からS!?」

 

「どーでもいいわァァァァ!!

 

「いやあの……Mは銀さんに取られちゃったんで。なんか……すいません」

 

「…………いや、こっちこそ……ゴメン……SならSって……言ってくれればいいのに」

 

「何コレェェェ!?何でSだったらいいんだよ、何でMをそんなに敵視してんだよ」

 

同士(着ているTシャツがSサイズ)だと知った辰は、さっきの勢いから一転、しおらしげに謝る。それが可哀想に思えた新八は、持っていたTシャツを辰に渡した。

 

「あの、良かったらコレ。SサイズのTシャツ沢山あるんで、どうぞ」

 

「え?……いいの?」

 

「S好きみたいだし……どうぞ」

 

「着てみていい!?」

 

「どうぞ、何枚でもあるんで」

 

「オイ何してんだよ、仕事しろよオメェェェ!!仕置人だろ!!Tシャツ試着しに来ただけじゃねーか!!」

 

役立たずな仕置人に、全蔵がついに「仕事しろ」ツッコミを炸裂させた。

そんな彼の苛立ちをよそに、辰は意気揚々とTシャツを着る。しかし、パッツンパッツンなはずのTシャツの袖が、少しブカブカしている。アレ?と思った辰は、襟のタグを見た。

 

「あっ、『M』は無いけど『L』は入ってますから。最後の1着は志乃ちゃんが着てるんですけど……別に大丈夫ですよね、Mじゃなかったら」

 

「は……はめやがったな……」

 

LサイズのTシャツを着てしまった辰は、その一言を最期に、吐血しながら倒れていった。

 

「何でだァァァァァ!!何でLサイズのTシャツ着たら死ぬんだよ!!一体どんな設定背負ってんだコイツ!!」

 

「なかなかやるじゃないか。凄いぞ志村」

 

「なんか悪いことしちゃったな。でもこれで残るは三人ですね」

 

「残るは三人って、こんなもん最初から数に入れちゃダメ……」

 

呆れた全蔵がそう零すと、トランシーバーから志乃の声が入る。

 

『応答願いまーす。こちら霧島と坂田です』

 

『今庭の方でSサイズのTシャツの裂ける音が聞こえたんだが大丈夫か、どーぞ』

 

『ついでにLサイズのTシャツを着た仕置人が絶命した気配を察知したんだけど大丈夫?どーぞ』

 

「どんなの拾ってんの!?お前らの器官が大丈夫か!!」

 

「大丈夫かなんて失敬だな、全兄ィ。私の警戒網は最大で500m圏内、10m以内に入れば誰かなんて気配だけでわかる」

 

全蔵のツッコミに直接反論したのは、トランシーバー越しに通信していた志乃だった。彼女の後ろには、銀時もいる。

 

「銀さん志乃ちゃん!どこに行ってたんですか、心配しましたよ」

 

「いや、あまりに暑いんでよ。そしたら志乃が『冷蔵庫にチューペッドがある』って言ったから漁ってみたんだよ。ホントにあった」

 

そういう銀時の手には、グレープ味とソーダ味、オレンジ味のチューペッドが。

 

銀狼(おまえ)の勘マジでどーなってんの!?どんだけ緊張感ねーんだよてめーら!!何で殺し屋が徘徊する屋敷でTシャツ着替えたりアイス見つけたりしてるワケ!?つーかそれ俺のチューペッドだし!!」

 

「ふざけんな、俺が命がけで取ってきたチューペッドだぞ。俺のだ」

 

「それは俺が楽しみに取っておいたもんだ!!グレープ味だけは絶対に渡さん!!」

 

「まァまァ、ココはグレープ味とソーダ味とオレンジ味三本あるんだから、仲良く分けるアル」

 

「何で当たり前のように復活してんの?爆発に巻き込まれても寝てた奴が何でチューペッド一つで覚醒するの?」

 

と、ここで神楽が怒る全蔵を諌める。

よくよく考えたらそうだ。チューペッドは基本、真ん中で二つに分けて食べるものである。作者の家では、これを冷凍庫に入れてカチンコチンに冷やし、棒アイスにしてよく食べたものである。勿論この時も、真ん中でパッキンと割って、兄弟で分けるのだ。

……とまぁ、作者の懐かしい思い出は置いといて。

 

ここに居るのは六人。対してチューペッドは三本。それぞれを二つに折れば、ちょうど行き渡る。

志乃がオレンジ味を選ぶとすかさずミサトが同じものを選び、銀時と全蔵がグレープ、神楽と新八がソーダ味を選んだ。

と、その時。

 

「う……うう……グ……グレープ」

 

背後で布団に簀巻きにされたままのあやめが呟いた。

六人は振り返るも、魘されているだけかと彼女を放ってチューペッドを分けようとする。

 

「グレープ!!が…………い……い……わた……し」

 

二度目の懇願で結論が出た。コイツ起きてやがる。

 

「オイてめェ、何魘されてる体で厚かましくもリクエストかましてんだ。そして図々しくもそれを通そうとしてんだ。ふざけんじゃねーぞォォ!!誰のせいでこんな事になってると思ってんだこのメス豚ァァァァ!!」

 

「ごがっ!!あばっ、ぼふっ……」

 

暑さでイライラが増している志乃が、動けないあやめ相手に布団の上からめちゃくちゃに蹴りまくる。

流石に新八が彼女を宥めようとした。

 

「志乃ちゃん怪我人に何してんの!!」

 

「止めないで師匠!!コイツ絶対起きてるよ、狸寝入り決め込んでるもん!!」

 

ウーッと怒りを露わにし、あやめに唸る志乃。彼女があやめを嫌っているのは元からだが、部分的に尊敬する師匠の手前、これ以上の攻撃を抑える。

 

「仕方ないアルな、じゃあグレープ組三人はジャンケンで、負けた人はヘタって事で」

 

「ふざけんなァ!!だったらソーダ組もオレンジ組もやれよ!!ヘタ食うくらいならソーダかオレンジの方がマシだ!!」

 

「んなの嫌に決まってんだろ全兄ィ!!私が見つけたチューペッドだぞ!これはグレープ組の問題だろ、こっちに飛び火させんな!!ねっ、師匠」

 

「僕は別にいいですよ、グレープでもソーダでも」

 

「あっ、それじゃあ師匠はヘタ決定だね。やった!コレで平和的解決」

 

「じゃねーだろォォ!!何とんでもねェ事言ってんだァ!!志乃ちゃん一体どっちの味方!?」

 

このような議論の結果、全員でジャンケンして負けた人は、三本のヘタを与えられるという事に。

そして、ジャンケンを始めよう……としたその時、ミサトがある事に気付く。

 

「……ちょっと待て。…………なんか、このチューペッド……おかしくないか。ヘタが……」

 

ミサトの言葉に、気合いを入れていた全員が落ち着き、チューペッドを見る。そこには、ちゃんと三本あるのだ。だが、ヘタのあるちょっと長い方のヤツが無い。

それに気付いた瞬間、仕事人のテーマソングが流れた。池の中から、二人の仕置人が現れたのだ!

 

 

仕置人No.3、4 チューペッドの酎兄弟

 

チューペッド専門の殺し屋。目にも留まらぬ早業でチューペッドの長い方のヤツを短い方のヤツに入れ替え、獲物を永遠のブラザーコンプレックスに誘う。

ちなみに兄弟でチューペッドを分ける時は、長い方短い方に折るのではなく、縦に割く。

 

 

「フハハハハハハハハ、残念だったな!!貴様らのチューペッドの長い方のヤツは、我々が短い方のヤツに替えさせてもらった!!」

 

「貴様らには短い方のヤツがお似合いだ!!そこで永遠に兄に長い方のヤツを奪われ続ける弟の気分を味わうがいい!!弟でもないのに!!」

 

高笑いを響かせながら、酎兄弟は夜の闇へと消えていく。

それを許さないのが……チューペッドに執着する、この二人の男である。

 

********

 

長い方のヤツを三本も奪い、意気揚々と帰ろうとした酎兄弟。だが、彼らの耳に、仕事人のテーマソングが聞こえる。

 

「こっ……このBGMは」

 

「バ……バカな、我々以外にこのBGMを使いこなす奴が……」

 

驚きに足を止めた瞬間、彼らの背後ーー正確には尻の穴に、勢いよく何かが突き刺さった。

 

「ぐあああああ!!何が!!何が起こったァ!!」

 

「あ……兄者ぁぁ、ケ……ケツに……ケツにチューペッ……」

 

突如襲ってきた痛みに悶絶していると、不意にチューペッドが引っ張られ、彼らの体も引き摺られる。引き戻された二人は、ケツにチューペッドが刺さったまま宙吊りにされた。

チューペッドに括られた糸を握っていたのは……銀時と全蔵だ。

 

「きっ……きっ…………貴様らァァァァ!!」

 

「チューペッドの……」

 

「長い方のヤツを返せ」

 

二人の目が、いつになくギラリと光る。たかがチューペッドごときで、という言葉はこの場では口にしない方がいい。

既にチューペッドは兄弟で食べてしまい、残っていない。銀時と全蔵は、ゆっくりとチューペッドに手をかけた。兄弟は必死に命乞いをする。

 

「ちょっ……ちょっと待ってくれ!!買って返すから、必ず返すから!!いっいいい……命だけは……命だけは勘弁してくれ!!たっ頼む、何本だ!!何本長いヤツが欲しいんだ!!待て待ってェェ!!」

 

 

ーージャカジャン!!

 

 

チューペッドを折り、こうして仕置人二人をまとめて倒したのだった。




〜銀時と全蔵が仕置人を倒している間〜

新八「そういえば志乃ちゃんさ、あの仕置人二人の気配に気付かなかったの?」

志乃「気付いてたよ?でもこのまま放っといたらきっと面白いものが観れると思って。予想通りだったね。チューペッドの長い方のヤツを盗まれて怒り心頭のバカ二人に、命乞いをするバカ二人。あの酷いツラ、爆笑モンだね」

新八「なんか志乃ちゃん沖田さんに似てきてない!?」

神楽「嫌アル!志乃ちゃんは純粋なままでいてヨ!!」

ミサト「心配いらない。俺はたとえどんな志乃だって骨の髄まで愛せる自信がある。ていうか自信しかない」

新八「やめてください素直に怖いです!!」

志乃「心配するな、お前を愛するなんて事は永久に無い。わかったら失せろカスが」

新八「流石志乃ちゃん、これしきじゃ負けないってか!!どんなメンタルの強さしてんの!?ダイヤモンド並!?」


********

☆今回判明した事☆
・志乃はドSが加速し、既に悪魔を超えた存在になっている(性格的に)
・彼女への周りの心配が全て空回りしている
・ミサトは志乃が絡めば他はどうでもよくなる
・志乃の衆道本購入時には必ず銀時のチェックが入っている
・作者は子供時代、チューペッドを凍らせてシャーベット状にして食べていた(通称”棒アイス”)

棒アイス、どうぞお試しください。夏の時期とか最高です。
ただし直に触ると、冷たすぎて指に触覚的負担がかかるので、ハンカチかハンドタオルを巻いて食べることをオススメします。

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