この事実をここに載せるために、小説情報に2回くらい戻って確認したぜベイベー。
しょうもねェッッッ!!!(※深夜のテンションにつきおかしくなってます、何卒ご了承下さい)
翌朝。大江戸病院。そこの一角の病室に、志乃は向かっていた。
手にはポインセチアの花束を持って、病室の扉を叩く。
「失礼しまー……あ、銀。みんなも」
病室にいたのは、銀時と新八、神楽、そして全蔵とミサトだった。志乃の意識は、すぐにその二人へ向く。
「あれ?アンタら知り合いだったの?」
「知り合いも何も、一緒に暮らしてるからな」
「え?マジで?一緒に暮らしてる?」
確認のように繰り返す志乃に、「ああ」と全蔵が頷いて答える。
志乃の赤い目が輝き出す横で、銀時達は遠い目をしていた。
「一つ屋根の下男二人暮らしの様子を詳しくお聞かせくださいお願いします」
「オイ何を想像してんだ」
「質問です!お風呂とお布団には一緒に入ってますか!」
「入ってねーわ!!」
「俺は入るなら志乃と入りたい。その綺麗な肌も手も足も体も目も鼻も口も耳も髪も心も魂も血も骨も全部俺以外の誰にも見せたくない」
「怖っっ!!何、ミサトさんってこんなに恐ろしい人だったんですか!!」
「純粋に気持ち悪いアル。銀ちゃん、私今日志乃ちゃんの家に泊まるネ」
「ああ。頼んだぞ
何度も言うが衆道好きである志乃は、全蔵とミサトのあれやこれを想像してウハウハしていた。その隣でミサトが
と、ここで新八が志乃の持ってきたポインセチアに触れる。
「ていうか志乃ちゃん、何でポインセチアなんて持ってきたの?それってクリスマスの時によく出てるやつだよね?」
「
「志乃ちゃん何で屁怒絽さんと知り合いなの!?」
「え?私のマブダチだよ?もしくはソウルメイトとも呼ぶ」
「やめとけアイツだけはやめとけ!!いいな!」
志乃の意外な交友関係が発覚したところで、ようやく志乃の視線はベッドで眠っているあやめに向く。
昨晩、彼女は始末屋を始末する組織「滅殺お仕置き人」に襲われた。重傷を負いながらも、銀時から貰った眼鏡を大事そうに抱えていたという。
「…………あやめさん……」
大怪我を負っても
そんなに一途に想われている(愛の伝え方がかなり歪んでいるが)なんて、ウチの兄はなんて幸せ者だろう。本当に、彼にはもったいないとつくづく思う。
「どれだけ嬉しかったのか知らねーが、まったくバカな女だ。
全蔵はそう言うと、テレビの前に彼女の忍眼鏡を置く。
「それでも
踵を返して病室から出ようとする彼の背に、神楽が咎めるように叫んだ。
「オイイボ痔忍者!!お前さっちゃんをこんな状態で一人残していくつもりアルか!!」
「悪いが忍者は
ミサトはあやめを一瞥してから、全蔵を追い歩き出す。志乃が花瓶に花を生けたところで、ベッドからか細い声が聞こえてきた。
「め……んなさい」
「!」
「ごめ…………さい」
眠っているあやめが、譫言を呟いていた。ポツポツと、閉じた睫毛の下から、涙を流して。
「ぎ…………さんが……くれたのに……大切に……するって言ったのに……約束……や……ぶって………………んなさい。ご……めん……」
その謝罪は、銀時に対してのものか。それとも、眼鏡に対してのものか。
どちらにせよ、彼女がどれだけ銀時を想っているか、どれだけ銀時から貰った眼鏡を大切にしていたか。それだけは強く伝わってきた。
ふと銀時が、手にしていた瓶底眼鏡を着流しで拭き、あやめにそっとかける。
「何も見えなくていい。何も見なくていい。次目ぇ覚ました時は、視界のヒビもきっと消えてらァ」
「銀……」
「………………しゃーねぇだろ。元はといえば、眼鏡壊したの俺だしな」
銀時の言葉に、志乃と神楽、新八も笑みを見せる。
彼女を護る。そのためにやるべき事は、一つ。
「対殺し屋用殺し屋部隊用殺し屋部隊、必殺万事屋…………出陣だ」
********
その夜。人の気配と必殺仕事人のテーマソングを耳にしたミサトは、むくりと布団から起き上がった。
人の気配は三人。気配の元に近付くにつれて音楽が大きくなっていることから、必殺仕事人は彼らが流しているのだろうと察した。
「……あ、全蔵」
「ミサト、気付いたか……」
同じく気配に気付いて起きてきた全蔵と鉢合わせる。
「……誰かこの家に忍び込んでいるな」
「忍者の家に忍び込もうなんざ、バカな連中だよ。おいミサト、お前見に行け」
「何で俺が。ここは家主のお前が行くべきだろ」
「三人くらいお前一人で片付けれるだろ」
「めんどくさいから3分の3は全蔵がやって」
「それ全部だろーが!俺に全部押し付けてるだけだからな!勘弁してくれよ、俺最近やっと座薬が効いてきたところだってのに」
「知るか。働け若者が」
「お前の方が若者だろ!!」
というなんとも意味のない会話をしながら、二人は気配を察知した台所へ向かった。
台所からチラリと覗くと、見覚えのある、というか今日の昼に会った万事屋が何故か冷蔵庫を開けていた。
新八が簪で卵を超高速でとき、神楽がネギを超高速で切る。最後に銀時がおたまを持ち、調味料云々を取り出して中華鍋でチャーハンを炒めていた。超カッコつけて。
「人ん家で何やってんだァァァァァァァ!!!!」
「ごふっ」
全蔵が銀時の頭を笠ごと押して、中華鍋の中に突っ込ませる。
「何夜中に人ん家忍び込んでスタイリッシュにチャーハン作ってんだテメーらァ!!何なの!?何してくれてんのおめーら!!オイ消せ!!うるせーから仕事人の曲消せ!!近所迷惑だろが!!」
今まで鳴らしていた
「ちょっと何!?ホント何なの!?何しに来たのお前ら!!」
「いや、丁度これくらいの時間って小腹が空くじゃん。ちょっと夜食でもって思って」
「いやいやいやいやここ俺ん家!!それ俺の卵!!それ俺のハム!!それ俺のチャーハンんん!!」
「心配すんなよ、お前の分もちゃんと作ってあるアル」
「そーいう問題じゃねーんだよ!!何しに来たって言ってんだ、まさかホントにチャーハン作りに来たわけじゃ……」
「全蔵、盛り付け終わった。こんなカンジでどうだろうか」
ミサトが見せたのは、ドーム型に綺麗に盛り付けられたチャーハン。銀時がイイ感じにパラパラに炒めてくれたおかげで盛り付けるのは大変だったが、達成感はあった。
「おおっ!!スゴイアルなお前!!めっちゃキレーなお椀型アル!!」
「美味しそうですね!やっぱり盛り付けはイイ感じにできてるとより食欲をそそりますよね」
「何でお前が
全蔵の一喝、いやツッコミが入ったところで、定春が布団をぐるぐる巻きにしたものを背負った志乃を乗せて、襖を倒して部屋に入ってきた。
ちなみに志乃も、いつもの着流し姿ではない。黒の着物を尻端折りにして、下にズボンのようなものを履いている。
「お待たせ!持ってきたよ。どこに寝かせればいい?」
「おっ、来たか!そこそこ!そこに寝かせておけばいいから」
志乃が了解、と返すと、背中に背負っていた布団を置く。それを広げると、中には包帯だらけのあやめが眠っていた。
「!!…………え、ちょっ……え……何猿飛連れてきてんのォォ!?」
「あやめさんを狙う仕置人をやっつけるためだよ。でも病院で色々騒ぎ起こしちゃマズイでしょ、それでどこかいい場所はないかって」
「なるほど。全蔵はボンボンで屋敷広いし、住んでるの俺達だけだし、ここだったら誰にも迷惑かからないと……ふむ、そーいうアレか……………………」
志乃の説明によりミサトが納得した。
というか、彼は志乃の言うことなら何でもきくし、志乃が黙れと命令すればずっと黙っててくれる、彼女にとって都合のいい男なのだ。
もちろん彼はそれが志乃の愛故の言動だと思い込んでおり、そして志乃は超扱い易い下僕として見ている。思いの一方通行どころの話ではない。
しかし、その説明で唯一、納得できない者がいた。全蔵だ。
「いやどーいうアレェェェ!?俺には迷惑かかっていいのか!?」
「固い事言うなよ。ちょっと借りるだけだろ。スグ終わるってば。殺し屋四、五人くらい殺すだけだし」
「人ん家殺害現場にするつもりかァ!!」
しかし、全蔵がどれだけ喚いても銀時達は聞く耳を持たない。ミサトが綺麗に盛り付けたチャーハンをもぐもぐ食べ始める。
「ちょっ、マジ帰れよォォォ俺関係ねーしィィ!!なんか血とかで部屋汚されんの嫌だしィ!!こう見えてスゲェ綺麗好きなんだから」
「そんなんだからいい年こいて一人モンなんだヨ。隙のない男は女に嫌われるネ」
「そーそー。男も女も、付け入る隙を作ってやらなきゃそこには誰も飛び込んでこねーんだよ。多少部屋が汚れてるくらいが丁度いいの。ねっ、定春」
「わぅぅ〜……」
「あっ、ゴメン。お取り込み中だったか」
「隙デカ過ぎだろォ!!銀蠅しか付け入ってこねーだろアレェ!!」
畳の上に転がる汚物を片付ける全蔵の横で、新八が畳を抜いて持ち上げる。さらに銀時が天井に穴を開けて侵入しようとし、神楽は高級な壺を破壊しながら入っていた。
「俺も手伝う!!俺も手ェ貸すから!!頼むからこれ以上屋敷を荒らすのをやめろ!!」
これを放っておけば、屋敷がとんでもない事になる。全蔵は渋々だが屋敷の平和を守るため、銀時達に協力することとなった。
********
作戦はこうだ。
天井裏に全蔵、床下に新八。右に銀時とミサト、奥に定春、左に神楽と志乃。あやめを寝かせている部屋の三方と上下、これを固めて一方だけをガラ空きにする。
こうすると、敵はガラ空きのそこを罠だと考え、別ルートに絞らせることができる。その別ルート全てには銀時達がおり、まず通れない。
逆にガラ空きの場所から入って来ても、すぐに袋叩きにできる。
各自トランシーバーを持って連絡を取り合い、何かあってもすぐに対処できるようにしてある。
「いいか、油断するなよ。それからくれぐれも屋敷を荒らすな。わかったな」
『ラジャー』
『わん!!』
『うーす』
『あぁ』
『はーい』
『Z〜〜』
「ったく、何で俺がこんな事…………!………………アレ?ちょっと待って」
全員から返事が返ってきた、とここで全蔵がおかしな点に気付く。皆さんもお分かりだろうか。
「今…………誰か『Z〜』って言わなかった?一人『Z〜』って言ったよね今。オイまさか早くも気ィ抜いて寝てんじゃねーだろうな」
人数はそれなりにいるものの、一人でも寝てしまえばそこを突かれて殺されるかもしれない。何せ相手は殺し屋を始末するための殺し屋。当然強いことは言わなくてもわかるだろう。
全蔵は念のため、もう一回点呼を取った。
『ラジャー』
『わん!!』
『ああ』
『Z〜Z〜』
『ドンドンドンドンキ〜ドンキホ〜〜』
『あっヤベ!!』
『ちょ、何やってんの!』
人の声に紛れてトランシーバーに入ってきたのは、明らかに某大型店舗のBGM。
「オイぃぃぃぃぃぃぃ二人完全にドンキホーテ行ってたよォォォ!!何やってんのじゃねーよ、オメーらが何やってんだァァ!!ふざけんじゃねーぞ!!『Z〜』はより深い眠りに入ってるし
こいつら猿飛助けたかったんじゃねーの!?マジで何やってんの!?
その他諸々のツッコミも出てきそうになるが、状況が状況であるため、ひとまず堪える。
「今攻め込まれたらどーするつもりだ!!スグ戻ってこいドンキホーテの奴ら!!」
『ラジャー!』
『わん』
『Z〜Z〜Z』
『オイ新八、ちょっと神楽担ぐの手伝え』
『ミサトさん、カゴお願い』
『ああ』
「全員ドンキ行ってんじゃねーかァァ!!」
全蔵を一人残し、まさかの全員ドンキショッピング。何で全蔵サイドであるはずのミサトまで行っているのか。これは仕方がない。何故なら全蔵がツッコミだからだ。
今回ツッコミに抜擢されてしまった全蔵は、たとえボケ連中が彼を取り残してどこかへ行っても、一人ツッコまなければならない。
如何なる状況でも如何なるボケでも、的確なツッコミを入れなければならないのだ。ツッコミとは、そんな哀しき運命を背負った孤高の戦士なのである。
「何なんだよコイツら俺だけ置いて!!行くなら行くで誘ってくれればいいじゃん!!別に行きたくねーけど!!あっ、そうだオイ!!どうせならついでにボラギノール買ってきてくれるか、切らしてたんだ!オイ聞いてるか、座薬タイプの奴なんだけど……」
と、ここでトランシーバーの通信にノイズが入る。
「もしもーし、応答願いまーす!」
『『『『『『Z〜〜』』』』』』
「ウソをつけェェェェ!!何狸寝入りこいてんだァァァ!!犬まで狸寝入りしてたぞォォォ犬なのにィィ!!」
孤立無援の
忍の勘が、警鐘を鳴らしていた。屋敷に、人の気配を複数察知したのだ。
屋根に二人、邸内に二人、そして庭にも……。
ーーき……来やがった!!何してやがんだアイツらぁぁぁ!!早く帰ってきやがれェェェェ!!
全蔵が握るトランシーバーからは、『あの、ボラギノールありますか』という緊張感の欠片もない呑気な声が聞こえてきた。