銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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名前は心を込めてつけろ

「そうか……将軍家(おかみ)から猿を返せとの命が……」

 

どうやら九兵衛は、先程までの話を全て聞いていたらしい。東城の顔が青ざめる。しかし、九兵衛はフッと軽く息を吐いた。

 

「安心したよ。無事務めが果たせたようで」

 

「………………え?」

 

反応が思ってたのと違う。東城は固まったままだった。

 

「今の寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一の純情な感情の残った三分の二はさかむけが気になる感情裏切りは僕の名前を知っているようで知らないのを僕は知っている留守スルメめだかかずのここえだめめだか……このめだかはさっきとは違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこうぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺビチグソ丸なら、お返ししても以前のように悪さをする事もあるまい」

 

「……いや、その長い名前の時点でハタ迷惑だと思うんですけど」

 

「糞を人に投げつける癖も便器に投げる癖をつけさせることによって矯正させたしな」

 

「九兵衛くん、ついでに俺が便器じゃない事も躾けてもらえるかな」

 

結局銀時は猿に嫌われ糞を投げつけられる運命に変わりはないらしい。肩を震わせて笑いを堪えていると、銀時に睨まれた。

 

「でも九ちゃん……これでお別れでいいアルか」

 

「いいも何も、最初からそういう命であったはず。僕は彼の教育係であって、主人ではない。躾が終われば彼を将軍家にお返しするのが役目だ」

 

「でもアイツら、最初は厄介払いするつもりだったくせに、今になって……。それに、九ちゃんだって立派な名前をつけてあんなに可愛がってたのに。コイツだってきっと……寂しがるアルヨ」

 

「……………………僕は幕府からの命を全うしただけだ。他にこの猿に、何の感情も持ち合わせちゃいないよ」

 

「九さん……」

 

そう言って上げた顔は笑顔だったもののひどく悲しそうに見えた。

 

********

 

それから約一週間後。またまた万事屋銀ちゃんに、東城が現れた。

 

「チキショオォォォオ‼︎」

 

今度は何の泣き言だ。溜息を吐いて話を聞く。

全体的に長かったのでまとめるとこうだ。あの後、猿は無事将軍家の縁者に貰われたのだが、わずか三日で新しい主人の元を脱走。今現在においても追手を躱し続け、市中を逃げ回っているという。

おかげで柳生家は監督不行き届きの責任を押し付けられ、連日一族総出で猿捜索に駆り出されているのだそうだ。

 

「だろうと思った。どーせアイツ、九さん以外の言うことなんざ聞きゃしねーんだろ」

 

「ザマーないアル。人のペット勝手に取り上げるからそんな事になるネ。ねー、志乃ちゃん」

 

「「ねーっ」」

 

「そんな事を言ってる場合ですか‼︎」

 

志乃と神楽は、向こう側の自業自得だと笑うが、事態はかなり大変な事になっているらしい。

九兵衛は猿が消えて以来、三日三晩寝ずに捜索を続けているのだという。本人はあの猿を心配してのことだろうが、このまま猿が見つからなければ、彼女は責任を取らされ切腹を命じられるかもしれないのだ。

 

「そんな猿ごときで大袈裟なんだよ。どいつもこいつもバッカみたい」

 

呆れたとばかりに志乃が肩を竦めた時、東城の携帯に連絡が入った。

向こう方も相当イラついているのか、電話から怒鳴り声が聞こえてくる。

 

「ハイ東城です」

 

『何をしておる‼︎猿はまだ見つからぬのかァ‼︎』

 

「も、申し訳ありません今しばらく‼︎今しばらくお待ちを」

 

『いつまで待たせれば気が済むのだ‼︎わかっておるのか‼︎将軍様から譲り受けた猿だぞ‼︎これに何かあれば、全ては貴様ら柳生家の責任だぞ‼︎』

 

……そちらさんも、意外とお怒りらしい。VIPの連中はどいつもこいつもめんどくさいな。

志乃は東城の背中を横目に、ソファに凭れて頭の後ろで手を組む。「銀ちゃんと同じポーズネ!やっぱり兄妹アルナ」と神楽に指摘された。すぐに「え、最悪」と返すと、「おい」と睨まれた。

 

「心配はいりません。今件のウンコ投げられ機を確保いたしましたので。ハイ……このウンコ投げられ機を使えば、必ずや悟空様もウンコをぶつけるために姿を現すかと…………ハイ」

 

なるほど、ここに来たのは愚痴るだけじゃなく、銀時に協力(犠牲)の依頼か。一人納得していると。

 

「オイウンコ投げられ機って(コレ)のことだよな?俺じゃないよな」

 

「お願いしますぶろろ‼︎ごごば若のだめ"に"…………一肌ぬいじょぼろろ‼︎」

 

銀時は東城の頭を踏みつけ、トイレの中に顔を突っ込ませていた。流石、志乃や沖田と共にドSトリオと称されるほどのドSっぷり。やることがえげつない。

 

「てめェェ他人(ひと)をウンコの的として利用するつもりか‼︎」

 

「あの猿の貴殿へウンコをぶつけようとする執念、並々ならぬものでした!これを利用すれば必ず猿をおびき出せます‼︎お願いします、若が……若が……死んでもいいんですか‼︎」

 

「俺がウンコまみれになってもいいんですか」

 

「別にいいだろ、減るもんじゃあるまいし。それで九さんを救えるなら安いもんだって」

 

二人の会話に入ってきた志乃は、どうでもよさそうに欠伸をしながら銀時を犠牲に導こうとする。それには当然、銀時が突っかかる。

 

「減るんだよ。俺の大切な何かが。ていうかお前いいの?お前の兄ちゃんウンコまみれになっちまってもいいの?ねぇ」

 

「生活費パチンコで削って、自分の体調管理すらまともにできない。こんなダメ兄貴でも他人(ひと)様のお役に立てる時がやっときたんだと思うと感激して泣きそう」

 

「お前どんだけ自分のお兄ちゃん罵倒したら気が済むの?お前より俺が先に泣くよ?」

 

可愛がって育てた妹からのとんでもなくひどい扱いに、心が折れかける銀時。

その時、放送していたドラマが臨時ニュースへと切り替わった。テレビに映るのは、江戸の街の屋根を飛び回る、複数匹の猿。しかも数が多い。

 

「えらい事になってますよ‼︎なんか動物園の猿山から猿が大量に逃げ出したって!」

 

再び映像が切り替わり、監視カメラのそれが映される。

 

『監視カメラの映像をご覧ください。謎の小動物が猿山の檻の鍵を開けています』

 

「オイオイ……コレってもしかして、あの猿じゃ……」

 

「奴め……我々の捜索を撹乱するために……市中に大量の猿を放ったんだ……!」

 

「んなアホな」

 

「これじゃあ、どれが本物か見分けがつかない。よし銀、出陣だ」

 

「ちょっと待てェェェエエエエ‼︎」

 

どうやら事態はさらに大きくなってしまった。こうなったら最後の手段。銀時の隣に立った志乃は、彼の肩に手を置き、サムズアップして見せる。爽やかな笑顔が「死んでこい」と言っている。

東城も志乃に続いて、銀時を生贄に捧げようと羽交い締めにして外に連れ出した。

 

「貴方にめがけて糞を投げつけてきた猿‼︎それが奴だ‼︎」

 

「ちょっ待て待て‼︎」

 

(えて)公ォォォオ出てきやがれェェ‼︎貴様の大好きなウンコ投げられ機を用意してやったぞ‼︎さあこい‼︎思いっきりウンコを投げてきてみろォォ‼︎」

 

東城がかぶき町に全体に響き渡る大声で猿に呼びかける。やまびこのようにこだました声が聞こえてきた瞬間ーー黒くて少し柔らかめの臭い匂いのする物体、つまりウンコが大量に投げつけられてきた。

 

「「ぎぃやぁぁぁ‼︎」」

 

こんなの、あの猿1匹の所業だとは思えない。つまり、全ての猿が、銀時に向けて糞を一斉射撃してきたのだ。志乃と銀時達は裏口から逃げるが、そこに猿の糞の雨が降ってくる。

 

「何なの⁉︎猿達(アイツら)にとって俺って何なの⁉︎どんな風に映ってるの⁉︎」

 

「先祖がカニ、もしくはフリーザ様だったのではござらぬか」

 

「どーすんですか東城さん、こんなんじゃ見分けるもクソも何もかもクソまみれです‼︎」

 

「チッ…………。あっ、そうだ‼︎銀、みんな、こっち‼︎」

 

猿達から逃げるため街を走っていると、不意に志乃が叫ぶ。彼女が指さした先には電話ボックスが。

ここに取り敢えず避難したものの、すぐに猿達が取り囲む。そして何より、狭い。

 

「ここは万事屋のネットワークの広さを使って、網を張りましょう‼︎バナナをエサにして奴の名を呼びかけるよう江戸中に指示するのです」

 

「んな古典的な方法、効果あんのか?」

 

「そこは数でカバーです」

 

「金は東城さんからくすねた。コレでいけ銀」

 

公衆電話の受話器を取った銀時の脇の下から、志乃が10円玉を入れる。彼女の手には、東城の懐からスった財布が。

 

「ああっ⁉︎ちょ、何てことするんですか貴女‼︎」

 

「うるさい。これで九さんの命が助かるんだから安いと思えバーカ」

 

「よくやった志乃。流石は俺の妹だ」

 

よしよしと志乃の頭を撫で、取り敢えず片っ端から知ってる番号にセールスコールのごとく、電話をかけまくる。

まずは長髪の攘夷志士に。

 

『何?首に鈴をつけた猿?して、名前の方は』

 

「えーと……『寿限無寿限無ウンチ投げ機……』」

 

「いや違うアル。『ウンコ投げ機』アル」

 

「あっ『コ』らしいわ」

 

次に、無職のマダオに。

 

『えーと、「寿限無寿限無ウンコ投げ機昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生……」え?何?昨日じゃない?一昨日?一昨々日?え?どっちどっち?』

 

「どっちだったっけウンコついてたの」

 

「今日でいいアル」

 

「今日ついてねーよ‼︎」

 

次に、ドSの警察に。

 

『「寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=スライサー」え?シュナイダー?「バルムンク=シュナイダー」ですか……違う?あっ「アイザック」の方が。アレ……それはそうと、さっきの新ちゃんのパンツ、ウンコついてたのいつでしたっけ?』

 

「えーと、いつだったっけ?」

 

「明日でいいアル」

 

「何未来にまでウンコつけてんだァァ‼︎」

 

さらには、「百華」の頭に。

 

『「寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の二の純情な感情の残った三分の一はさかむけが気になる感情」……何?純情なのは三分の一の方?じゃあ三分の二は。待ちなんし、えーとさっきのパンツ、例のアレがついてたのはいつだった』

 

「基本ずっとついてるよ」

 

「いい加減にしろォォオ‼︎電話代われ‼︎電話‼︎」

 

散々いじられる師に、志乃は憐れみの視線しか向けられない。取り敢えず屈んだ姿勢のまま、10円玉を公衆電話に入れまくる。

新八が代わって様々な人に呼びかけるも、名前が長すぎて正確に伝わらない。しまいには新八もキレて公衆電話をぶっ壊してしまった。

 

「だから短くしろって言ったんですよ‼︎どーすんですか、これじゃあ誘き出すことも呼びかけることもでき……」

 

「ハイ……え?本当ですか‼︎ありがとうございます‼︎何とお礼を申してよいのやら、ご協力感謝致します‼︎」

 

その時東城の電話に連絡が入り、こちらを振り返った。

 

「喜んでくだされ‼︎今桂殿から猿を捕まえたとの報告が‼︎」

 

「ええっ⁉︎」

 

「流石は皆さんのご友人‼︎今こちらに使いの者を遣わせて連れていくと‼︎」

 

「ホントですか‼︎よく伝わったなアレで‼︎」

 

狭い電話ボックスの中で歓喜の声をあげていると、神楽が白いペンギンオ◯Qことエリザベスの姿を見つける。

 

「あっ、エリザベス‼︎ひょっとしてアレじゃないアルか、首に鈴もついてるし」

 

エリザベスが引き連れてきたのは、首に鈴をつけバナナを手にしたた暗黒騎士。バルムンク=フェザリオン、通称「漆黒の風」だった。

 

「ってお前コレ……バルムンク=フェザリオンじゃねーかァァァ‼︎どっからバルムンク=フェザリオン見つけてきたんだァァァァ‼︎つーか実在してたの⁉︎何でバナナに釣られてんだよあの暗黒騎士‼︎」

 

「バルムンクアル。後の凶帝カイザーファキナウェイアル」

 

「オイオイ猿っつったのに人違いも甚だしいよ。どーすんのコレつーかヤバイよバルムンクめっちゃこっち見てるよ。第三の目もめっちゃこっち見てるよ」

 

いつの間にかバルムンクの額にはもう一つの目が開眼しており、三つの目がこちらを睨むように見つめていた。

 

「いけないアル!あの目が開いたらセフィロスの惨劇が再び‼︎」

 

「オイ誰か謝ってこいよ。『人違いでした』って。セフィロスの惨劇が起こる前に」

 

しかし時既に遅し。バルムンクが右手を掲げ必殺技を放とうとしていた。

 

「ヘルズファキナウェイ‼︎」

 

「ヤバイヤバイ必殺技(ヘルズファキナウェイ)撃つつもりだぞ‼︎ヤバイって‼︎ヘルズファキナウェイはヤバイって‼︎」

 

だが、ぶん投げられたのはヘルズファキナウェイーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……という名のウンコだった。

 

「ってお前もウンコかいィィィィィ‼︎バルムンクまでウンコ投げてきましたよ、バルムンクなのにめっちゃ投げてきますよ‼︎全然ヘルズファキナウェイじゃねーじゃん‼︎猿とやってる事何も変わんねーよ‼︎」

 

「どうでもいいけどこの電話ボックス、明日にはここから消えてるだろうね」

 

「そうだねそれ今めちゃくちゃどうでもいいね‼︎」

 

糞まみれになりそうな電話ボックスを哀れんで呟く。それすらも拾ってツッコんでしまう我が師匠には頭が上がらない。

ヘルズファキナウェイを連発するバルムンクの肩に、背後から手が置かれた。

 

「待て……そのへんにしておけ」

 

「あ……あれはァァァァァ‼︎アイザック=シュナイダぁぁ‼︎」

 

現れたのは、アイザック=シュナイダー。通称「光の皇子」。彼も片手にバナナを握っていた。

 

「バルムンクを光の道へ導いた光の皇子を長谷川さんが連れてきてくれましたよ‼︎よかった‼︎話つけてくれるみたいですよ」

 

「おお、ここでついにバルムンクも闇の世界から足を洗ったわけだ。これで安心だな」

 

「「からの〜」」

 

電話ボックスの中から様子を伺っていると、不意に振り返った二人がウンコを投げつけてきた。その傍らでは、何故か長谷川も参加している。

 

「「バッドコミュニケーション!」」

 

「何タチの悪いことしてるんだァァァァ‼︎結局アイザックもただの(えて)公じゃねーか‼︎つーか何で長谷川さんまでウンコ投げてんの⁉︎どんだけバッドなコミュニケーション築いてんだコイツら‼︎」

 

「あ……そうか。二人は足は洗っても手は汚したままだったな……」

 

「何上手い事言ってんだァァ‼︎このままじゃどーにもできませんよ‼︎」

 

しみじみと呟いた志乃の言葉に、またしても新八がツッコむ。いつの間にか電話ボックスの周りを猿達が囲んでいた。そしてみんな揃ってウンコを投げつけてくる。もうダメだと思ったその時、網が飛んできて猿達の上に降りかかった。

 

「東城、みんな。よくぞ囮役を担ってくれた。これで猿達を一網打尽にできた」

 

「九兵衛さん‼︎猿達っていうか三人のバカも混ざってますけど‼︎」

 

いつの間にか九兵衛達柳生一門と、猿の飼い主となった将軍家縁者の盛盛、そのじいやが現れた。銀時達もようやく電話ボックスから出ることができ、ホッとする。

捕まえた猿達の中から鈴をつけた猿を探すが、見つかる前に首輪ごと外され、外に投げ出されてしまう。一向に進まない猿探しに、ついに盛盛が涙を溜める。

 

「悟空ぅ〜、そんなに僕に飼われるのが嫌なの。そんなに僕のことが嫌いなの」

 

「……………………」

 

「別にお前のことが嫌いなワケじゃないネ。ただお前以上に別れたくない大好きな人がここにいるだけアル」

 

「‼︎神楽ちゃん、ちょっ」

 

「小娘ェェェェェ盛盛様になんと無礼な口を‼︎この方をどなたと心得る、将軍茂茂様の甥御にあたられる……」

 

「じいやうるさい」

 

ぎゃあぎゃあやかましい口も、盛盛(主人)の一声で黙る。なるほど、主君以外には懐かない従順な犬なわけだ、と志乃は納得した。

そんな彼女の腹の内はどうでもいい。盛盛はさらに悲しげに肩を落とした。

 

「それじゃあ僕は、悟空とその大切な人をバラバラにしちゃったんだね。悟空に嫌われるのもムリないや。ごめんね悟空。僕いっつもお城の中にいるから一緒に遊ぶ友達がいなくて。それでそよちゃんのお猿さんを見て……羨ましくて。僕……君と友達になりたかっただけなんだよ。なのに君の友達を奪ってしまって……ごめんなさい」

 

盛盛が猿達の前で頭を垂れて謝っても、何の反応も示さない。彼の目に大粒の涙が溜まった。そんな彼に、九兵衛が優しい声音で言う。

 

「盛盛様、涙をお止めください。彼は盛盛様のことが嫌いなワケでも、まして友達になりたくないワケでもありませんよ。ただ……違うんです。名前が。彼には……大切な友人達が色んな願いを込めてつけてくれた、立派な名前があるんです。一緒に……呼んでくれませんか」

 

そう言った九兵衛は、すうっと息を吸う。あ、嫌な予感しかしない。

 

「せーの、寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一の純情な感情の残った三分の二はさかむけが気になる感情裏切りは僕の名前を知っているようで知らないのを僕は知っている留守スルメめだかかずのここえだめめだか……このめだかはさっきとは違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこうぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺビチグソ丸」

 

ーーいや言えない言えない。言えないよ盛盛様。

 

新八がそうツッコんでいるのが聞こえてくる。現に、盛盛は全くついていけなくなっていた。

名前を呼ぶと、網の中から1匹の子猿が出てくる。それは、ここまで事態を大きくさせた、あの猿だった。

 

「……そ丸。ジュゲムゲノムバルバロッサファンザボビビビビビビビゲリグソ丸ぅぅぅ‼︎」

 

「オイあいつテキトーに言いやがったぞ名前」

 

「志乃ちゃん‼︎静かに‼︎」

 

「ごめんねごめんね、ひどい事して‼︎ごめんねごめんね、名前間違えて」

 

この感動的なシーンの中で、空気を読まない志乃がボソッと呟いた。運よく新八以外誰も聞き止めなかったようで、雰囲気はそこまで崩れなかった。

ようやく見つけた猿を抱きしめた盛盛は、猿を抱えて九兵衛に差し出した。

 

「…………ハイ、お兄ちゃん」

 

「!」

 

この行動に、後ろに控えていたじいやは驚いていた。

 

「盛盛様!」

 

「いいんだ。友達の悲しい顔はもう見たくないもの。ゲリグソ丸のも、お兄ちゃんのも。それに……あんな長い名前、僕にはまだ覚えられないしね」

 

照れたように頭を掻いて笑う盛盛。志乃も神楽と顔を見合わせて、「よかったね」と笑い合った。

 

「その代わり、あの……お兄ちゃん。一つ……お願いがあるんだけど」

 

「何でしょうか」

 

「あの、僕にも一つ、名前をつけさせてくれないかな」

 

********

 

夕方、茜空の下。子供達がはしゃぐ川で、小さな猿が水と戯れていた。その猿を見守る彼女の表情は、優しい。

 

あの猿の名は、『寿限無寿限無ウンコ投げ機一昨日の新ちゃんのパンツ新八の人生バルムンク=フェザリオンアイザック=シュナイダー三分の一の純情な感情の残った三分の二はさかむけが気になる感情裏切りは僕の名前を知っているようで知らないのを僕は知っている留守スルメめだかかずのここえだめめだか……このめだかはさっきとは違う奴だから池乃めだかの方だからラー油ゆうていみやおうきむこうぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺおあとがよろしいようでこれにておしまいビチグソ丸』である。




次回、さっちゃん久々の再登場。そこで事件が……。

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