真選組屯所。
この日も、会議が行われていた。
「えー、みんなもう知ってると思うが、先日宇宙海賊"春雨"の一派と思われる船が沈没した。しかも聞いて驚けコノヤロー。なんと、奴らを壊滅させたのはたった4人の侍らしい………………驚くどころか誰も聞いてねーな」
会議中だというのに、誰一人近藤の話を聞かず、ぺちゃくちゃと喋っている。
「トシ」
近藤に指示された土方は、黙って隊士達にバズーカをぶっ放した。
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「えー、みんなもう知ってると思うが、先日宇宙海賊"春雨"の一派と思われる船が沈没した。しかも聞いて驚けコノヤロー。なんと、奴らを壊滅させたのは、たった4人の侍らしい…………」
「「え"え"え"え"え"!!マジすか!?」」
「白々しい。もっとナチュラルに出来ねーのか」
「トシ、もういい。話が進まん」
バズーカを撃たれたため、ボロボロになった隊士達がまったく同じ内容を聞いて驚く。
土方はイラついてまたバズーカを撃ち込もうとしたが、近藤に止められた。
そして、近藤が話を続ける。
「この4人の内一人は、攘夷党の桂、そしてその他2名は『獣衆』の"金獅子"と"黒虎"だという情報が入っている。まァ、こんな芸当が出来るのは奴らぐらいしかいまい。春雨の連中は大量の麻薬を江戸に持ち込み、売りさばいていた。攘夷党じゃなくても連中を許せんのは分かる。だが、問題はここからだ。その麻薬の密売に、幕府の官僚が一枚かんでいたとの噂がある。麻薬の売買を円滑に行えるよう協力する代わりに、利益の一部を海賊から受けとっていたというものだ。真偽のほどは定かじゃないが、江戸に散らばる攘夷派浪士は噂を聞きつけ、『奸賊討つべし』と暗殺を画策している。
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真選組は、その狙われている幕府の官僚を守るため、家に張り込んでいた。
しかし、沖田は眠りこけ、杉浦はレタスを貪っている。
「こんの野郎は……寝てる時まで人をおちょくった顔しやがって。オイ起きろコラ。警備中に惰眠を貪るたァどーゆー了見だ」
「何だよ母ちゃん。今日は日曜だぜィ」
「違うッスよ、沖田さん。今日は土曜日ですよ。ったく、おっちょこちょいなんですから〜」
「今日は火曜だ!!てめーらこうしてる間にテロリストが乗り込んできたらどーすんだ?仕事なめんなよコラ」
「俺がいつ仕事なめたってんです?」
「俺らがなめてんのは土方さんだけッスよ!」
「そういうことでさァ!」
「よーし!!勝負だ剣を抜けェェェェ!!」
杉浦と沖田にキレた土方は叫ぶが、3人の脳天に拳が打ち据えられた。
「仕事中に何遊んでんだァァァ!!お前らは何か!?修学旅行気分か!?枕投げかコノヤロー!!」
3人に怒る近藤の脳天にも、拳が打ち据えられる。
「お前が一番うるさいわァァァ!!ただでさえ気が立っているというのに」
「あ、スンマセン」
「まったく、役立たずの猿めが!」
「うるせーよ、クソガマ」
去りゆく官僚の背中に毒を吐く杉浦。沖田も、彼に続く。
「なんだィありゃ。こっちは命がけで身辺警護してやってるってのに」
「お前は寝てただろ」
「幕府の高官だか何だか知りやせんが、何であんなガマ護らにゃイカンのですか?」
文句を言う沖田に、近藤が諭すように口を開いた。
「総悟、俺達は幕府に拾われた身だぞ。幕府が無ければ今の俺達は無い。恩に報い、忠義を尽くすは武士の本懐。真選組の剣は幕府を護るためにある」
「でも、海賊とつるんでたかもしれない奴ッスよ」
「どうものれねーや。ねェ土方さん?」
「俺はいつもノリノリだよ」
「いや……アンタがノリノリでも、他の奴らが……」
杉浦がそう言いながらチラリと見ると、真選組隊士達は和みムード全開。テロリストの襲撃などあるはずがないというようだ。
山崎に至ってはミントンをしている。見つかって土方に追われたが。
「総悟よォ、あんまりゴチャゴチャ考えるのは止めとけ。目の前で命狙われてる奴が居たら、いい奴だろーが悪い奴だろーが手ェ差し伸べる。それが人間のあるべき姿ってもんだよ」
「近藤さん……」
杉浦がポツリと言った瞬間、近藤は官僚が出歩いているのを見て、彼を止めに行った。
「命狙われてんですよ、分かってんですか?」
「貴様らのような猿に護ってもらっても何も変わらんわ!!」
「猿は猿でも俺達ゃ武士道っつー鋼の魂もった猿だ!!なめてもらっちゃ困る!!」
「なにを!!成り上がりの芋侍の分際で!!おのれ陀絡、奴さえしくじらなければこんな事には……」
「あ?ラクダ?」
官僚がブツブツ言うのを聞きながら、近藤は遠くからの気配に気付く。
少し遠くにある建物に、銃を持った男が、こちらに銃を向けているのが見えた。
そして、銃声が響く。
近藤は咄嗟に、官僚を庇い、左肩を撃ち抜かれた。
「「「局長ォォォ!!」」」
真選組隊士達は一斉に倒れた近藤の元へ集まり、彼を案じる。
倒れる近藤を見下ろして、官僚が冷たく言い放った。
「フン。猿でも盾代わりにはなったようだな」
それを聞いた沖田が、怒りのあまり、抜刀しようとする。それを、杉浦が制した。
「ストップ、沖田さん。瞳孔開いてますよ」
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その夜、一室に集まった真選組は、山崎からの報告を聞いていた。
「ホシは廻天党と呼ばれる攘夷派浪士集団。桂達とは別の組織ですが、負けず劣らず過激な連中です」
「そーか」
報告を受けた土方は一息つき、煙草を吸う。
「今回のことは俺の責任だ。指揮系統から配置まで全ての面で甘かった。もっかい仕切り直しだ」
「副長、あのガマが言ったこと聞いたかよ!あんな事言われてまだ奴を護るってのか!?野郎は
「副長、勝手ですがこの屋敷色々調べてみました。倉庫からどっさり
口々に文句を言う真選組隊士達に、土方は背を向けながら言った。
「フン、何を今さら。今の幕府は
「……ははっ、そうですね」
土方に同調して、杉浦も立ち上がる。
「まっ、大将が護るっつーならそれにどこまでもついていくのが筋ってもんだろ。嫌なら帰ればいいさ」
土方と杉浦は、そのまま外に出た。
ふと、土方は志乃から聞いていたことを思い出す。
「そういやァオメー、あの銀髪のガキの店に出入りしてるらしーな」
「え?」
「え?じゃねーよ!!とぼけんなよ!!今月であいつから5回位ウチに苦情が来てんだよ!!」
「5回?なら少ない方ッスよ。カワイイ女の子が居たらすぐに会いたくなっちまうもんでしょ。ね!」
「だからってピッキングしてまで侵入してんじゃねーよ!!てめー警察の自覚あんのか!?」
訳のわからない会話をしている2人の目に、前方に沖田があのカエルを張り付けにしてその下で焚き火をしている光景が飛び込んできた。
「何してんのォォォォォ!!お前!!」
「大丈夫大丈夫、死んでませんぜ。要は護ればいいんでしょ?これで敵おびき出してパパッと一掃。攻めの護りでさァ」
「貴様ァこんなことしてタダで済むと……もぺ!!」
喚くカエルの口に、沖田は躊躇なく薪を突っ込む。
それを涼しい顔でさらりとやってのけてしまうのだから、こいつは恐ろしい。
そしてそのまま、話を続ける。
「土方さん。俺もアンタと同じでさァ。早い話、
「……そっすね」
沖田の言葉に、杉浦は再び同調する。
すると、突然土方が口を開いた。
「あー、何だか今夜は冷え込むな……」
「お天気お姉さんの話によりゃ、今夜は10℃って言ってましたよ土方さん」
「よし、薪をもっと焚け総悟」
「はいよっ!!」
土方の命令を受けた沖田は、どんどん薪を焼べる。カエルが叫んでもお構いなしだ。
……やっぱこいつら警察じゃねェ。
すると突然、銃弾がカエルを掠った。
「天誅ぅぅぅ!!奸賊めェェ!!成敗に参った!!」
やってきたのは、待ちに待ったテロリストだった。
「どけェ幕府の犬共。貴様らが如きにわか侍が真の侍に勝てると思うてか」
「おいでなすった」
「派手にいくとしよーや」
「上等ッス」
同じく抜刀した沖田と土方が、杉浦と並ぶ。
その背中を押すように、彼らの背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「まったく喧嘩っ早い奴等よ。トシと総悟と大輔に遅れをとるな!!バカガエルを護れェェェェ!!」
そこには、刀を手にした真選組隊士達と、近藤が居た。
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翌日。大江戸新聞には、真選組の活躍が載っていた。
新聞を読んでいた志乃が、ポツリと呟く。
「へー、あいつも頑張ってんだね」
「へへっ、そうだろ」
背後から聞こえてきた声に、志乃は金属バットを手にして、力任せに振り切った。
しかし、その一閃は背後に居た杉浦に避けられてしまった。
「またてめーかァァ!!いーかげんにしろよ!!てめー毎回毎回私の背後とってんじゃねーよ変態!!」
「あはは。あ、レタス要る?」
「要らんわァァァ!!」
今日も平和なかぶき町に、バキッという音が大きく響き渡ったーー。
次回、みんなでお花見します。