銀狼 銀魂版   作:支倉貢

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地雷亜篇来ました。やっと。
出てきますからね〜、松陽のことがチラッと。
それと、獣衆にも変化が訪れます!


地雷亜篇 師弟の絆は断ちがたしもの
夜の蜘蛛は縁起が悪いっていうけど蜘蛛見ただけでもかなり気分が悪い


草木も眠る深い夜。この日、小春はかつての故郷に帰っていた。

彼女の故郷、吉原桃源郷は鳳仙の後任となった神威が実権を握ってからは、一切の野放し状態。おかげでそこに住む人々の自治により成り立っているのが現状だが、実際はそこまで良いものではなかった。

 

そんな夜の街を、小春は自分の部屋の窓から見下ろしていた。小春が住む部屋は、吉原に数ある楼閣の最上階。かつて日輪と共に名を馳せた遊女であったからか、それとも獣衆の一人だからか。吉原での彼女の地位は高かった。

空を見上げると、綺麗な月が浮かんでいる。小春は、凛として佇む月に、二人の女を思い浮かべた。

 

一人は、吉原の自警団・百華の頭である月詠。もう一人は、自身の棟梁であり、仕えるべき幼き主君……霧島志乃。

月詠は名前にもあるように、吉原の平和を人知れず護る、まさしく月のような女だ。

対して志乃は、月というよりかは太陽が似合う明るい少女。なのに、小春は月を見ると必ずその横顔が思い浮かぶのだ。

 

小春は小さく溜息を吐き、机の引き出しを開ける。昔自分が遊女だった頃の、髪飾りや装飾品が転がっていた。机の上に煙草盆が置いてあり、そこに母が愛用していたキセルが置かれている。小春は懐かしく感じ、それを手に取った。

キセルに煙草を入れ、火をつける。フゥッと紫煙をくゆらせると、もう一度月を見上げた。

 

********

 

翌朝。小春は久々に、日輪の経営する茶屋に足を運んだ。仕事服である花魁の衣装に身を包み、煙草の煙をくゆらせながら歩く。

店の前で、日輪と晴太が待っていた。

 

「あっ、小春姉!久しぶり!」

 

「来てくれたのかい、小春。わざわざありがとうね」

 

二人は小春の姿を見て、甲斐甲斐しく声をかける。小春もフッと頬を緩ませ、日輪の隣に座った。ふと、小春はもう一人いないことに気づく。

 

「日輪、月詠は?」

 

「まだ寝てるよ。最近忙しいみたいでね」

 

「……やっぱりね」

 

小春は日輪の言葉を受けて、納得したように言った。

 

最近吉原の治安は、悪化の一途を辿っている。鳳仙がいなくなってから、確かに吉原は自由になった。しかし、今まで鳳仙の力を恐れて吉原に近づいてこなかった者達が、吉原に集まりつつあるのだ。

攘夷志士による蛮行、強盗、押し込み、麻薬売買……起こる事件はキリがない。おかげで、百華も首が回らなくなっている。

 

未だ現役遊女として時々吉原に帰る小春も、その話は以前より聞いていた。自分も百華の一員になって、取り締まりを手伝おうと思ったが、月詠に断られているのだ。

相変わらず責任感の強い女だ。小春は煙と共に溜息を吐いた。

 

すると、茶屋に向かって歩いてくる三人の姿が目に入ってきた。志乃の兄貴分である銀時が経営する、万事屋の三人だ。小春は銀時を見た途端、眉をひそめた。

 

「あれ?小春さん?」

 

「志乃ちゃんのところにいる姉ちゃんアルか」

 

「んだよ、お前こんなとこで何してんだ?ていうか何その化粧。めっちゃケバ……」

 

パァン!

 

銀時の失言にキレた小春が、彼の足元に銃を発砲する。

もちろん威嚇射撃だ。当てるつもりはない。当てたら志乃に嫌われるからだ。

小春の元に、新八と神楽が歩み寄る。銀時も続こうとしたが、またまた発砲されたためそれ以上近づけなかった。

 

「小春さん、まだ花魁やってたんですか?」

 

「団子屋の看板娘に万事屋に花魁アルか。人間は三足の草鞋なんか履けないアル」

 

「まぁね。これが私の仕事だったから」

 

「なんだよ、仕事っつったってお前こんなんただのビッ……」

 

パァンパァン!

 

「うおおおおお‼︎」

 

小春は銀時を見ずに、的確に彼を狙って引き金を引く。銀時は絶叫しながらなんとかかわした。

 

「何しやがんだァこの尻軽女ァァ‼︎」

 

「うるさいわねこの天パ」

 

「あぁん⁉︎テメー天パバカにしやがったな?今この瞬間から、世界中の天パを敵に回したぞ‼︎」

 

「天パが束になってかかってきたって何も怖くないわ。所詮貴方達は弱いんだから。それとも、私が今すぐ貴方の白い頭を真っ赤に染めてあげましょうか?」

 

「ちょっと、やめてくださいよ二人共」

 

二人の喧嘩に、新八が割って入る。その時、茶屋の前に一人の少女が現れた。

 

「日輪さーん、団子ちょーだい」

 

「ハイハイ」

 

ふと現れた第三者に、銀時、新八、小春は固まる。神楽はどうでも良さそうに鼻をほじっていた。

少女は晴太から団子を受け取ると、近くにある椅子に座って食べ始める。

 

「ん、やっぱ美味いな〜」

 

「……何やってるの志乃ちゃんんんんんんん⁉︎」

 

新八の絶叫が、辺りに響き渡る。

そう、この少女とは何を隠そう、霧島志乃である。

吉原炎上篇のラスト回でわかる通り、志乃は全員から吉原行きを拒否されていた。理由はまだ子供の志乃には早いものがたくさんあるからだが、そんな彼女が、堂々と吉原にいる。ということで、銀時達は一時パニックに陥った。

 

「オイぃぃぃぃ‼︎何でお前がこんな所にいるんだァ‼︎帰れ‼︎あるべき所へ帰れ‼︎」

 

「そうよ!貴女がこんな所に来ちゃいけないのよ⁉︎ていうか日輪も晴太くんも何普通に受け入れてんのよ‼︎」

 

「日輪さーん、団子おかわりちょーだーい」

 

「「話聞けェェェ‼︎」」

 

銀時と小春の平手打ちが、同時に志乃の頭に炸裂する。普段仲の悪い二人だが、志乃が関係すると、シスコンと過保護を爆発させて息ピッタリな攻撃を繰り出すのだ。

 

「いったい‼︎何すんの二人共‼︎ていうか何でいるの⁉︎」

 

「こっちのセリフだバカヤロー!」

 

「何でここに来たのよ、志乃ちゃん!」

 

「何でも何も、依頼受けたからだよ」

 

「依頼?」

 

志乃は頭を摩って、小春の問いに答える。その答えを、新八が復唱した。そこに、ようやく月詠が現れる。

 

「よぉ、久しぶりじゃな」

 

「……なんだ、相変わらず変わり映えのしねぇ殺風景な奴だな」

 

「相変わらず変わり映えのしない焼け野原みたいな奴じゃな」

 

「オイどーいう意味だソレ。まさか俺の頭のこと言ってんじゃねーだろーな」

 

「当たり前でしょ」

 

志乃が冷たくあしらうと、銀時が突っかかってきた。

 

「お前もちょっとはフォローしろや‼︎何なんだよ今日はみんな寄ってたかって俺のこといじめやがってよォ!かわいそう‼︎俺かわいそう!」

 

「俺かわいそうアピールって寒いよね」

 

「志乃ォォォ⁉︎」

 

いつになく、志乃の銀時への扱いが雑だ。いつもはシベリアくらいなのだが、今日は南極大陸並みの冷たさである。

久々に銀時や志乃達に会えて、晴太のテンションも上がる。

 

「じゃあ、みんな揃ったところで楽しく……」

 

「ちょっと悪いけど晴太、席を外してもらえないか」

 

「い"い"い"い"い"⁉︎」

 

しかし、母に席を外してくれと頼まれた。晴太はわかりやすくがっかりする。

 

「ちょっと待って、オイラまだまともに喋ってないよ?姉ちゃんに団子運んだだけだよ?コレで退場⁉︎」

 

「元気な姿見せれただけでも良かったアル」

 

「そんなァ〜」

 

「まぁまぁ。またあとで遊ぼう、晴太」

 

苦笑いを浮かべつつ晴太を慰める志乃。銀時は溜息を吐いた。

 

「オイオイ勘弁してくれよ。俺今日は完全にオフモードで来てるんだけど」

 

「お願い、吉原の救世主様」

 

日輪は、両手を合わせて銀時と志乃に懇願した。

 

********

 

先述したように、吉原では治安の乱れが問題となっている。たくさんの事件が起こる中、特に問題視されているのは、魔薬売買。身も心も擦り切れた遊女達が、一時の快楽を求めて非合法薬物に手を出す。吉原は今や、魔薬中毒患者が街を徘徊している深刻な状況に陥っていたのだ。

そして、この吉原の魔薬の取引の一切を執り仕切っているのが、吉原の上客と言われている羽柴藤之介という男。しかし、彼はいくつもの名前、いくつもの肩書きを持っており、月詠達が掴んだ情報も、全てあてにならないのだという。

 

「そんな野郎、どうやって捕まえればいいの?」

 

志乃は銀時についていって、地上で月詠と共にその男を探していた。銀時も志乃の言葉に乗る。

 

「そーそー、吉原の救世主ってもな、こっちは騙し騙しなんだよ。知ってんだろお前も。悪徳商法だよほとんど俺は」

 

「それでも地上(こっち)の世情に通じているぬしらの力がいるんじゃ。心配いらん、掴むものは掴んでおる」

 

「何を?」

 

「蜘蛛を見た。奴を張っている折、しかとこの目で見た。あの男の首に、蜘蛛の入墨があるのを」

 

「…………」

 

「蜘蛛か……」

 

蜘蛛の入墨、と聞いて、銀時と志乃には心当たりがあった。二人は互いを見て、頷き確認し合う。

 

「…………自信はねーが、仕方ねぇ。引っかかってみるか、蜘蛛の巣に。……志乃。奴らの居場所、わかるか」

 

「うん」

 

志乃はこくんと頷いてから、月詠の前を小走りで抜かした。

 

「案内するよ。私についてきて、二人共」

 

********

 

志乃が二人を連れてきたのは、古ぼけた廃寺の御堂。その扉を小さく開いて、中を覗くと、蜘蛛の入墨を入れた男達が、酒を呷りながら博打を楽しんでいた。それを眺めながら、志乃が彼らを説明した。

 

「紅蜘蛛党、ここが奴らの縄張りの博徒の集まりだよ。ただサイコロ転がしてるだけならまだカワイイもんだけど……攘夷と称して押し込み・恐喝・殺人、何でもやる盗賊みてーな連中さ」

 

「まぁ吉原の巨悪にしちゃちょっと役不足の感もあるが、何か繋がりがあるかもしれねぇ」

 

志乃は真選組でバイトをする傍ら、攘夷とは名ばかりの連中を洗いざらい調べ、逮捕していた。桂のように志のある者は放っているが、紅蜘蛛党のような連中は見るだけでも壊滅させたくなるほど大嫌いだった。紅蜘蛛党も例に漏れず彼女の知るところとなり、近々大量検挙しようとしていたのだが、好都合だ。

ところが、銀時に月詠共々帰るよう促される。

 

「お前らは帰れ。女連れじゃここは目立つ。それに、女は足の多い生き物は嫌いだろ」

 

「たわけが、百華の頭がこんな所で帰れるか。それに、女などとうに捨てたと言っている」

 

「そういう奴に限って、満員電車でちょっと肘オッパイに当たっただけで訴えるとか言い出すんだよ、帰れバカ」

 

「だったら触ってみるがいい。わっちは平気じゃ」

 

「あ?」

 

二人は仲が悪いのだろうか。志乃は銀時と月詠を交互に見て、首を傾げた。

 

「わっちもナメられたままじゃ収まりがつかん、触れ」

 

「触るワケねーだろ。余計なトラブルごめんなんだよこっちは」

 

「ぬしとTo LOVEるになどなりはせん、たわけ。さっさと触れ」

 

「いい加減にしなさいよ、女の子がそういう事言うもんじゃありません。そういうものは大事な時にためにとっておきなさい」

 

何言ってんだコイツ?志乃は眉をひそめた瞬間、左手に何かが這い上がってくるのを感じた。思わずゾッとして、左手を見る。小さな蜘蛛が、手に乗っていた。

 

「ぎゃああああああ‼︎蜘蛛ォォォォォ‼︎」

 

「どおっ⁉︎」

 

発狂した志乃が銀時にぶつかり、不可抗力を受けた彼もバランスを崩した。そして、銀時の顔がちょうど月詠の胸に挟まる。

銀時は最悪の事態に、真っ青になる。志乃も真っ青になって、蜘蛛を飛ばそうと腕をブンブン強く振りまくった。

 

「………………あれ………………これは」

 

「何さらしとんじゃァァァァ‼︎」

 

次の瞬間、真っ赤になった月詠が銀時にジャーマンスープレックスを決めた。その時ちょうど、志乃の手から蜘蛛がいなくなる。

 

「お前……言ってる事とやってる事違くね?」

 

「黙りんす、ぬしに言われたくない」

 

「銀、最低だね」

 

「うるせーよ元はといえばお前が!」

 

「あのォ」

 

銀時と志乃の口喧嘩が始まろうとした時、第三者の声が割って入る。

 

「おたくら、誰⁉︎」

 

どうやら先程のジャーマンスープレックスで御堂の扉を破壊し、紅蜘蛛党の連中にバレてしまったらしい。三人は、固まる他なかった。

 

********

 

紅蜘蛛党に囲まれる中、真ん中に三人は座っていた。頭らしき大男が、尋問する。

 

「てめーらどこの組のモンだ。人の賭場覗いて何やってた、正直に言え」

 

「ぱふぱふやってました」

 

「んな奴いるかァァもっとマシな嘘を吐けェェ‼︎」

 

バカげた回答に大男がキレる。志乃は銀時の着流しを引いて「ぱふぱふって何?」と問うていたが、「お前は取り敢えず黙ってろ」と一蹴された。

一つ舌打ちを立て、志乃は足を崩して胡座をかく。ここは黙って、銀時が事を上手く運んでくれるのを期待することにした。

 

「いやホントにやってたんです。やってたっていうかやらされてたっていうか」

 

「妙な言い方はやめろ」

 

「とにかくぱふぱふやってただけで怪しい者ではないっス」

 

「やってたらやってたでそんな怪しい奴見た事ないわ」

 

「あのォ……実は俺達、この紅蜘蛛党に入りたくてやってきたチンピラでして」

 

おっ、早速やってくれたな。志乃は口角を上げた。隣に座る月詠は驚いていたようだが、「話合わせて」と小さく彼女に言う。

 

「何ィ?チンピラ。ほぅ、いい度胸じゃねーか兄ちゃん。女子供連れでこの紅蜘蛛党党首雲海様に挨拶か」

 

「いやいやいやいやそんな失礼な事しませんって。勘弁してくださいよウンコデカイ様」

 

「誰がウンコデカイ様だよ。最近便秘気味だバカヤロー」

 

知りたくもない事情を知ってしまった。志乃は心の中で頭を抱えた。

 

「俺達チンピラの夫婦なんです。こいつは俺の妹で、夫婦と妹揃って紅蜘蛛党入るくらい気合入ってんスよ。なっ、チンピラだもんな俺達。子供の襟足メッチャ伸ばしてるもんな。スカジャンとか無理矢理着せてるもんな」

 

志乃は月詠の袖を小さく引き、「話合わせて!」と視線を送る。

 

「そ……そうじゃな、私がレディースの頭で銀時が西校の番で一匹狼の寂しそうな背中に惹かれて17でデキ婚。胎教で湘南乃風聞かせて双子生まれて、大亜(だいあ)武路軀(ぶろっく)も今じゃ襟足が腰まで伸びたな」

 

「大亜武路軀って子供にどんだけ気合い入れた名前つけてんだ」

 

「頭ァ間違いありやせん、コイツら生粋のチンピラですぜ」

 

流石吉原一空気の読める女!嘘なのにここまで他人を騙せるなんて!志乃は小さくガッツポーズをした。

 

「仲間に入れてやってもいいんじゃないですか?こんなイイ女が二人も来てくれるなら大歓迎だ。一人は多少傷モノみてーだが、ゲハハハ!」

 

「オイオイ人妻と子供だぜ」

 

「そこがいいんだよ、他人のモン奪って犯る時が一番興奮すんだヨ‼︎」

 

「バカ言え、何も知らねー発達途中の子供を犯るからイイんだろ⁉︎」

 

「さっさと旦那殺って俺達も一人ずつぱふぱふしてもらおうや」

 

男達の欲の視線に、志乃は思わず身震いした。敵の殺気を前にしても、ここまで怖いと感じることはないのに。

刹那、隣から刃物の気を感じて、サッと猫のように身を丸める。建物の壁一面に、クナイが突き刺さった。投げたのは月詠だ。

 

「あまりナメた口をきくなよ。わっちがその気になればこの場にいる全員、一瞬で串刺しにできるぞ。もしもわっちや義妹(いもうと)に手を出せば、タダじゃ済まないと思え。それに忠告しておく。ウチの旦那はわっちの100倍強いぞ」

 

「旦那串刺しになってるけど」

 

クナイを全方位に投げたということは、彼女の隣にいる銀時と志乃も射程範囲内に入っているということだ。それを察した志乃は体を丸めて難を逃れたが、銀時は遅かったようである。

 

「急に投げるから……一言言ってよ」

 

「…………すまん」

 

「ゲハハハハ。旦那はともかく女の方は役に立ちそうだな。用心棒は何人いても足りねえんだ。せいぜい働いてくれ」

 

こうして、銀時達はなんとか紅蜘蛛党に潜入することができた。

 

********

 

夜。目的地に向かうトラックの荷台の中で、月詠は銀時に小声で話しかけた。

 

「銀時……。もし……もしもだ。この紅蜘蛛党があの件と全く関係なかったら……わっちらはどうなるんじゃ」

 

「まァ、アレだろうな。普通に犯罪の片棒を担いで、…………棒を担いだまま終わりだな」

 

「終わりじゃないだろう、別のモノが終わるだろう」

 

「え?じゃあどうする、棒高跳びでもする?ハワイあたりに」

 

「オイ殺されたいのかぬしは。大体この車どこに向かってるんじゃ」

 

「大丈夫だよ、麻薬倉庫か何かでしょ。その辺で繋がり出てくんじゃないの?」

 

志乃は隣に座る男に尋ねた。

 

「ねぇおじさん、この車どこに向かって走ってるの?」

 

「かまぼこ工場」

 

情報を手に入れた志乃は、早速小声で二人に報告した。

 

「やった、かまぼこ工場だって!」

 

「やったじゃないだろ何をしに来てるんだ貴様は‼︎つーかコイツらかまぼこ工場に何しに行くつもりじゃ」

 

「アレだろ、かまぼこから作る新種の麻薬なんじゃね」

 

銀時が不安を募らせる月詠を宥める。班のリーダーらしき男が立ち上がって言い渡した。

 

「じゃあ現地に着く前に作戦を確認する!取り敢えず持てるだけかまぼこ持って超逃げて」

 

「どんな作戦だ‼︎普通にかまぼこ盗みに来てるだけだぞコイツら‼︎」

 

超単純な作戦に月詠が思わずツッコミを入れた。ここは一応敵地なのだが。その時、トラックの荷台の扉が開く。

 

「ハイ着きました、じゃあかまぼこ班はここで降りてください。麻薬班はこのまま倉庫に向かうんで引き続き乗っててください」

 

「麻薬班とかまぼこ班⁉︎なんでよりによってそんなチョイスで分かれてるんだ」

 

「オイ降りろ、お前らはかまぼこ班だ。持てるだけかまぼこ持って超逃げて」

 

いつの間にやら銀時と志乃と月詠もかまぼこ班に分けられていたらしい。しかし、自分達はあくまで麻薬売買の調査のために来たのだ。月詠は指示を出してきた浪士に頼む。

 

「スイマセン、かまぼこ苦手なんで麻薬班にしてください。あのピンクのトコ見るだけで吐きそうになるんで」

 

「あー、そうなんだ。じゃあお前の分は笹かまぼことかにしとくわ」

 

「銀、私チーかまがいい!」

 

「何で貴様らもかまぼこに行くんじゃあああ!」

 

意気揚々とかまぼこ班に向かおうとするバカ兄妹を引き止め、なんとかトラックの中に残ることに成功する。

トラックを降りていったかまぼこ班が何故か完全武装集団なのにかわって麻薬班がひょろひょろのおっさんただ一人なのに不安を覚えつつ、トラックは走り出した。


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