ハイスクール・フリート ―霧の行く先―   作:銀河野郎のBOB

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Happy Birthday! ココちゃん!

昨日のシロちゃんに続いて二日連続の投稿です。

今日、5月28日はココちゃんこと納沙幸子ちゃんのお誕生日!

艦長のミケちゃんを始め、濃いメンツ揃いの晴風クラスの中でその筆頭と言っても過言ではないココちゃん。事あるごとに一人芝居をする姿は多くの視聴者の記憶にあることでしょう。

そして先日発売されたOVAではついに主役に躍り出ました!
おめでとうココちゃん!!
皆さんもうご覧になりましたか? 私はもう5周くらいしました。
皆さんぜひ見てください(ステマ)

今回はそんなココちゃんと心の友たちのお話です。

それでは、どうぞ!


特別編㉕ 友情でハッピー!

 2017年5月28日午後8時

 

 -幸子side.-

 

 納沙

「うぇへへ、それじゃあ始めようかのぅ」

 

 ミーナ

「あぁ、そうじゃな」

 

 時間は夜9時、すっかり夜の帳が降りている。私は航海実習で再び横須賀に寄港していたミーちゃんを自分の部屋に招き入れていた。

 

 納沙

「えーそれでは、本日はこの不肖納沙幸子の誕生日を記念いたしまして、私の心の友たちと熱いあつーい夜を過ごしましょう! 仁義のないパジャマパーティを開催いたしまーす!!」

 

 ミーナ

「いよっ! 待ってましたぁ!」

 

 私の言葉にミーちゃんから大きな拍手があがる。

 

 今日5月28日は私の誕生日。先ほどまで恒例のクラスの誕生日会が行われ、今回も大盛り上がりだった。今回私は主賓の一人ということでいつも以上に大いに楽しんだ。

 しかし、本当のお楽しみをこれから。それが私の部屋でこれから行われるパジャマパーティだ。明日は月曜だが中間試験直前の勉強休みだということで、仁義のないシリーズ全作品を見ながら夜遅くまで起きてワイワイ盛り上がろうと私自ら企画してしまったのだ。

 

 納沙

「それじゃあ早速、記念すべき第一作から――」

 

 ???

「ちょっと待った!」

 

 私がBDプレイヤーの再生ボタンを押そうとした時だった。それを遮るように大きな声をあげた者が現れた。

 我らが晴風クラスの副長にして私の心の友、シロちゃんだ。

 

 納沙

「どうしました? シロちゃん」

 

 宗谷

「どうしたも何も、中間試験に向けて一緒に勉強するから部屋に来てほしいって言われてきてみたら、これは一体なんだ? パジャマパーティなんて聞いてないぞ」

 

 ミーナ

「なんじゃ。ココ、マシロには説明しとらんかったのか?」

 

 私は誕生日会でシロちゃんを誘った時のことを思い返してみる。予定では仁義のないシリーズを全部見てひと眠りしたら、明日は一日勉強する予定ではあったので、誘い文句に噓はない。しかし……。

 

 納沙

「……、えーと、シロちゃん! パジャマパーティやるから部屋に来てください!」

 

 宗谷

「今更なのか!?」

 

 開き直ってボケてみると、シロちゃんは予想通りのいい反応を返してくれた。やっぱり私たちは心の底から友人同士なのだと再確認できたことがすごく嬉しい。

(※ココちゃん個人の感想です)

 

 宗谷

「まぁ、誘ってくれたことは、嬉しく思う……ぞ」

 

 納沙

「! シロちゃん!」

 

 シロちゃんの珍しいデレっぷりに私は思わず彼女に抱き着く。

 

 宗谷

「ちょ、抱き着くな、離れろー!」

 

 ミーナ

「ええのぅマシロ。ココにそんなに好かれとるとは。正直嫉妬してしまうぞ」

 

 ミーちゃんから嫉妬されてしまうとは、私はなんという幸せ者だろう。

 するといつの間にか抵抗を諦めたシロちゃんが呆れた声をあげていた。

 

 宗谷

「ま、まぁ私は別に構わない。それよりも……」

 

 シロちゃんの視線が部屋のとあるところへ向いた。そこには先ほどから静かに私の用意したスナック菓子をポリポリと食べている人物がいた。

 

 テア

「……ん?」

 

 それはドイツの直教艦アドミラル・グラーフ・シュペーの艦長であり、ミーちゃんの幼馴染であるテア・クロイツェルさんだった。

 

 宗谷

「なんでテア艦長もここにきているんだ?」

 

 ミーナ

「あぁ、それはワシが誘ったからじゃ。さっきの誕生日会の時にな」

 

 テア

「ミーナから明日勉強を教えてやったらお菓子食べ放題だと聞いてな」

 

 宗谷

「……ミーナさんも納沙さんと大して変わらないじゃないか」

 

 シロちゃんはもう何もかも諦めたような顔をしてそう言った。

 このテア艦長、普段は冷静沈着でとてもカリスマのある方ですけど、ミーちゃん曰くオフだととても可愛らしい一面があるとか。すでにその一端を見ている気がするが、今日のパジャマパーティでもっと知りたいと個人的に考えている。

 

 納沙

「それではいい感じに盛り上がってきたところで、改めて第一作からはじめましょう!」

 

 ミーナ

「おー!」

 

 テア

「ムグムグ」

 

 宗谷

「……はぁ、ついてない」

 

 

 

 そんなこんなで始まったパジャマパーティ。いざ始まってみると、意外な展開が待っていた。最初はあまり乗り気じゃなかったシロちゃんだったが、時間が経つにつれてドンドン仁義のないシリーズに興味を持ちだしたのだ。今は丁度3作目を見ているところだ。

 

 納沙

「『わしゃ、呉でおさまってりゃいいんじゃ!』」

 

 ミーナ

「『そんな極楽は、こっちの世界じゃないんで。人を喰わなきゃ、己が喰われる……』」

 

 映像に合わせて私とミーちゃんが作品屈指の名台詞を声マネして話す。すると、シロちゃんは少し考えるようなポーズを取っていた。

 

 宗谷

「なんだか、主人公は結構臆病なところがあるんだな。今いる場所から離れたくないというか」

 

 納沙

「そうなんです。でもそこが主人公の魅力でもあるんです!」

 

 ミーナ

「うむ。主人公は喧嘩になれば無類の強さを発揮する。でも意外なところで弱腰になったりする。強さと弱さ、その両方あるからこそなんじゃよ」

 

 宗谷

「な、なるほどな。なかなか奥深い」

 

 シロちゃんは登場人物の人柄や心情に興味があるようで、事あるごとに私とミーちゃんに質問をしてくる。シロちゃんは理詰めでバカ真面目っぽく見えるが、実は結構情に熱い人なのだ。だから、こういう作品に感化されやすいのだと思う。

 私としては、シロちゃんが興味を持ってくれたことがとても嬉しかった。これからはミーちゃんとシロちゃんの3人で仁義のないシリーズで盛り上がることができそうだ。

 

 一方、その頃テア艦長はというと――

 

 テア

「パリパリパリ」

 

 幸せそうな顔でポテトチップスを食べていた。

 あ、今の顔結構可愛いかも……。

 

 

 

 そしていよいよ完結編のクライマックスに差し掛かった。私もミーちゃんも、そしてシロちゃんまでもがTV画面を食い入るように見ていた。

 ただ一人を除いて。

 

 テア

「……うにゅ」

 

 ミーナ

「テア?」

 

 つい先ほどまでお菓子をつまんでいたテア艦長がウトウトしていた。そしてついに隣に座っていたミーちゃんの肩に頭を預けるように倒れてきた。

 すでに時刻は日付を跨いだ午前1時半。かなり遅くまで起きてしまっていた。

 

 ミーナ

「テア、こんな状態で寝ると風邪をひいてしまうぞ。ベッドに入るか?」

 

 テア

「ん……そう、する」

 

 テア艦長は今にも閉じてしまいそうな眼をなんとか開かせて、ミーちゃんに支えられながら私のベッドへと潜り込んでいった。そして数分もしないうちに眠りについた。

 

 テア艦長が眠ったのを確認したミーちゃんは再び私の隣に座り直した。私はリモコンを操作して一時停止を解除した。同時にテア艦長を起こさないよう音量を小さくした。

 

 ミーナ

「すまんのココ。お主のベッドを勝手に使わせてしまって」

 

 納沙

「気にしないでください。それより……」

 

 私はもう一度ベッドで眠るテア艦長に視線を移した。

 

 テア

「すぅ……すぅ……」

 

 納沙

「テア艦長の寝顔、すっごく可愛いですね。あ、写真一枚撮っちゃいます!」

 

 ミーナ

「そうじゃろう。テアの寝顔はまさに天使のようじゃろ?」

 

 いつの間にか映像そっちのけでテア艦長の寝顔鑑賞会が始まっていた。

 

 宗谷

「おい、完結編もうすぐ終わりなのに……」

 

 そんな私たちに一人映像に集中していたシロちゃんが呟いた。しかしシロちゃんも少しはテア艦長の寝顔に興味があるようで、チラチラとベッドの方を見ているのを私は見逃さなかった。

 

 納沙

「あ、シロちゃんいいんですか? そんなにテア艦長にあつーい視線を送っちゃって」

 

 宗谷

「な、なにを? そんなもの送ってない!」

 

 私の言葉に慌てた様子になるシロちゃん。私はここぞとばかりに渾身のネタを披露することにした。

 

 納沙

「『アケノ、大変じゃ! お主のとこの副長が我が艦長に色目を使っておったんじゃ! 証拠もあるぞ!』

 『そ、そんな……。シロちゃんが……』

 『ま、待ってくれ岬さん。これは違う、違うんだ!』

 『えーい見苦しいんでぃ! 神妙にお縄につけぃ!』

 『シロちゃん……さよなら……』

 『艦長! 待ってくれ! 岬さーん!!』」

 

 自分の中で最高のネタをやり切った充実感を私は感じていた。きっとシロちゃんにもミーちゃんも楽しんでくれただろうと私は確信していた。

 

 宗谷、ミーナ

「……」

 

 しかし二人の反応は微妙なものだった。絶対面白いと思っていたのに、なぜだ。

 

 そんなこんなしているうちに映像の方もクライマックスを迎え、エンディングのスタッフロールが流れ始めていた。時間は深夜2時前、もうすっかり夜更かししてしまった。

 

 納沙

「んー! 楽しかったですね。仁義のない上映会」

 

 ミーナ

「そうじゃな。こいつは何度見ても飽きないのぅ」

 

 宗谷

「思いのほか盛り上がったな。悔しいが面白かったよ」

 

 テア

「むにゃ……」

 

 この場にいる全員(寝ているテア艦長を除く)が思い思いに振り返りをしはじめた。何度も見ている私とミーちゃんが自分の好きなシーンをシロちゃん相手に力説すると、シロちゃんは「そういう見方もあるのか」とすごく感心したように聞き入ってくれた。一方シロちゃんは初めて全編通してみた感想を熱く語ってくれた。シロちゃんの作品の捉え方は、私やミーちゃんとは違うものだったのでとても新鮮なものだった。

 

 そんな風に盛り上がっていると、さすがに私も眠気が強くなってきていた。他の二人を見ると、どうやら私と同じようで眠そうにしていた。

 

 宗谷

「ふぁぁ……。さすがに眠くなってきたな」

 

 納沙

「そうですね……。そろそろ寝ましょうか」

 

 私はBDプレイヤーとテレビの電源を落とし、机を片付けてクローゼットから敷布団と掛け布団を出して床に引いた。

 ベッドはすでにテア艦長が寝ているので、ミーちゃん、私、シロちゃんの三人で川の字になって寝ることにした。

 

 部屋の明かりを消して布団に入る。すると私は何とも言えない幸福感に満ち溢れていた。

 

 納沙

「ふふっ」

 

 ミーナ

「どうしたココ? なんじゃか嬉しそうだのぅ」

 

 納沙

「はい。私、今とっても幸せです」

 

 私は目を閉じて、一年前に起きたことを思い出していた。

 

 納沙

「一年前、あの初めての海洋実習から戻ってきて、それからちょっと色々あって。それでもクラスの皆と一年間一緒に過ごせて、無事に二年生になれて。そうやって振り返ると晴風クラスの皆と一緒に歩んできたことがすごく幸せだなぁって思います」

 

 宗谷

「そうだな。最初は大変だったし、戻ってからもトラブルはいっぱいあったけど、艦長の下で皆が家族になって、一緒に困難を乗り越えてきた。何だかんだ言って充実していたと思う」

 

 ミーナ

「ワシらのことも忘れてもらっては困るぞ。乗る艦は違えど、晴風の皆はワシにとってもう一つの家族同然じゃ。たった一ヶ月じゃったが、皆と一緒に過ごせたことはワシの大切な思い出じゃ」

 

 シロちゃんとミーちゃんの言葉がさらに私の幸福感を増長させる。こんなに素晴らしい友達に出会えて、私は幸せ者だ。

 

 納沙

「シロちゃん、ミーちゃん。これからもずっと心の友でいてくださいね」

 

 ミーナ

「ああ。これからずっと」

 

 宗谷

「これからも、私たちは家族だ」

 

 私は二人に、そして幸せに包まれて眠りについたのだった。

 

 

 

 今までなかなか見つけられなかった私の居場所。

 友達がいなかったわけではなかった。でも、私はずっと満足できていなかった。

 

 でも今はそんなことはない。

 

 だって私は晴風クラスに出会えたから。

 ミーちゃんたちシュペーの皆とも出会えたから。

 私はもう満ち溢れています。

 

 そしてこの友情はきっと永遠に続く。

 

 私は、そう信じています……。

 

 

 

 ちなみに――

 翌日、誰よりも早く起きたテア艦長主導の下、試験勉強はとても捗ったのであった。

 


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