ハイスクール・フリート ―霧の行く先― 作:銀河野郎のBOB
第四話でございます。
今回はアニメ第四話、晴風艦内でのお話です。
ムサシが人類に歩み寄るため、晴風メンバーとお話しします。
霧の超戦艦二人の晴風メンバーの呼び方ですが、
ヤマト:○○さん (名前のみ、漢字またはひらがな表記)
ムサシ:○○ (名前のみ、カタカナ表記)
という感じです。
今後、呼び方が変わるキャラがでる、かも?
というか、そろそろタイトルで「○○でピンチ!」が厳しくなってきそうです^^;
それでは、どうぞ!
2016年4月13日午後2時
-ムサシside.-
私とヤマトが晴風と共に行動を開始して3日が経過した。
私たちは、自分たちの正体を晴風クラスの子たちに明かしたあの日から、晴風の客員として居候させてもらっている。
あの対話の後、ヤマトと協議した結果、私たちは晴風と共に行動することを決めた。
その際、当初予定していた呉へ行くことは晴風の現状を考えて断念、共に横須賀を目指すことになった。
なお、私の船体は深度500mの海中に潜航させている。
晴風と共に行動するため、霧と広域ジャミングを出して姿をくらませるわけにもいかず、大和型の船体は目立ちすぎることから、現状可能な手法として潜航して姿を隠すことになった。
船体を潜航させる時は晴風の子たちも見ていたのだが、まるでこの世ならざるモノを見ているかのように驚いていた。
まぁ、人類の水上艦は潜航なんてしないし、当然だったのかもしれない。
そして現在、晴風は四国沖近海で錨を降ろして停船している。
今朝、船内の備品を確認していたヒメ(和住媛萌)とモモ(青木百々)から、トイレットペーパーの備蓄が切れたという報告があり、クラス内で話し合った結果、近くにあるオーシャンモール四国沖店に他の不足品を含めて買い足しに行こう、という話になった。
そして、まだ撃沈許可が出ている晴風で直接行くわけにもいかないので、数名を選出してスキッパーと呼ばれる推進艇で行くこととなった。
そのメンバーが、アケノ、ヒメ、ミカン(伊良子美甘)、ミナミ(鏑木美波)、そしてヤマトの5名だ。
本当は私も一緒に行かないかとアケノから誘われたのだが、ヤマトが私の事を考慮して断っている。
そして、現在私は待機組として晴風艦内で過ごしている。
小笠原
「ムサシちゃーん、今度ムサシちゃんの主砲撃たせてよ!」
日置
「そうそう、バキュンと撃ってみたいよね!」
武田
「やっぱり46cm砲って憧れるよね」
後部甲板を歩いていると、普段は晴風の射撃指揮所にいるヒカリ(小笠原光)、ジュンコ(日置順子)、ミチル(武田美千留)の3人が修理作業の手を休めて、主砲の上から話しかけてきた。
初めて会ったあの日、アケノからムサシちゃんと呼ばれてから、私は晴風の子たちの多くから「ちゃん」付けで呼ばれている。
3日経った今でも恥ずかしさはあるのだが、最近ようやく諦めがついてきた。
ムサシ
「あの主砲を撃つのって、そんなに楽しいものなの? 私にはごく普通のことなんだけど」
小笠原
「そりゃ、砲手をやっている人間にとって46cm砲は憧れだよ! 武蔵に乗れればできたかもしれないけど、武蔵は成績優秀じゃないと乗れないし」
横須賀女子海洋学校には、私と同じ名前の武蔵がいることは知っている。
今は行方不明になっているらしいが、全艦帰港命令が出ているなら晴風と同じように横須賀に向かっているのだろう。
ムサシ
「そもそも霧の兵器は人類のものとは火力も射程も段違いなんだから、下手に撃ったらどうなるかわからないわよ? 本当にやるならヤマトにもちゃんと確認もらうのよ」
小笠原、日置、武田
「「「はーい!」」」
射撃三人娘との話もそこそこに、私は甲板を再び歩き出す。
このような感じで、晴風の子たちは私に気軽に話しかけてくれる。
一方で、私にはまだ人間に対する不信感は根深く残っている。
彼女たちがそうでないとわかっていても、どうしてもお父様を殺した人間の顔が頭に浮かんでしまう。
でも、霧の艦隊であることを明かした後でも私に優しく接してきてくれる晴風の子たちに、私は少しずつ心を許すようになってきている。
きっかけはアケノが言ったあの言葉だろう。
「海の仲間は、家族だから」
どうやらあの言葉は彼女の口癖らしい。
どうしてアケノはあの言葉を口癖にするほど大切にしているのか。
いつか、彼女に聞いてみようかしら。
そんな考え事をしていると、前方から慌てたように走ってくる集団が現れる。
どうやら機関科と主計科を中心としたメンバーのようだ。
その中の一人、ルナ(駿河留奈)と肩がぶつかった。
駿河
「あ! ムサシちゃん、ごめーん」
一言だけ詫びると、ルナたちはそのまま走り去っていった。
あんなに慌てて何かあったのだろうか。
彼女たちが走ってきた方向を見ると、マシロとミーナ、そして機関助手のヒロミ(黒木洋美)が立っていた。
私は彼女たちの元へ向かった。
ミーナ
「お、ムサシじゃないか。何をしておったのじゃ?」
ムサシ
「ちょっとその辺りを歩いていただけよ。それよりさっきのルナたちは? 何かあったの?」
ミーナ
「あぁ、ちょっと噂話が過ぎたから喝を入れてやっただけだ」
黒木
「全く、たまにおしゃべりが過ぎるのよ、あの子たちは」
ヒロミの隣にいるマシロを見ると、少し元気がないように見える。
すると、私に気づいたマシロが話しかけてきた。
宗谷
「大丈夫です、ムサシさん。彼女たちも悪気があったわけじゃないと思うから」
ミーナが噂話と言っていたから、きっとマシロに関わることだったのだろう。
前に調べた時に知ったが、マシロは世界的にも有名な家系の娘だ。
そのせいで、いらぬ噂が立っていることも多いのだろう。
しかし人間というのは、そういう噂話が好きでよくするらしい。
私にはよくわからない概念だ。
マシロのことを考えて、私はそれ以上追求することはやめた。
ムサシ
「ところで、三人は何をしていたの?」
ミーナ
「おお、そうだった。今、副長と黒木さんに晴風の艦内を案内してもらっていたんだ。ほれ、ワシはまだ晴風のことをよく知らんからな」
なるほど、ミーナは私たちより少し前に晴風の客員になったとは聞いていた。
そんな新参者の彼女にこれから過ごす晴風のことを紹介していたということだった。
黒木
「せっかくだから、ムサシさんも一緒にどう? 私、ムサシさんともお話ししてみたかったの。いいよね、宗谷さん?」
宗谷
「そうだな」
晴風の艦内については、ヤマトがスキャンしたデータを戦術ネットワークにあげているため、特に紹介してもらう必要はない。
しかし、私の返事は逆だった。
ムサシ
「では、ご一緒させてもらうかしら」
かつての私ならこんなことは無駄なことだと言って、一緒に行動しなかっただろう。
でも今は、どんなことでもいいので少しずつ晴風の子たちに近づくことができればと思っている。
彼女たちとの交流を通して、私は少しずつ変わっていきたいのだ。
艦内を回りながら、私たちは思い思いにおしゃべりをした。
話しているうちに、私は少し不思議に感じていることがあった。
彼女たちはまだ学校に入学して1週間ほどしか経っていないのに、すごく仲が良いように見える。
時間もたっていないのにこんなに仲良くなれるのだろうか?
これも、アケノが艦長をしているからなのだろうか?
私は、三人に聞いてみようと思い立った。
ムサシ
「ねぇ、みんなはアケノのこと、どう思っているの?」
すると、三人はそれぞれ顔を見合っている。
私はアケノと会った3日前からずっと、彼女を見ているとどうしてもお父様の事が思い浮かんでしまうのだ。
そんな彼女のことが、私は気になっている。
お父様と部下の人間との関係があぁだったから、晴風でも同じではないのかと心配してしまっているのかもしれない。
そんな私の疑問に最初に応えてくれたのは、マシロだった。
宗谷
「艦長は、いつも無茶したり、一人で飛び出したりするから、正直私は苦労が絶えない。もう少し落ち着いてほしいと思っている」
副長としてアケノの一番近くにいるマシロには、彼女の悪いところがよく見えてしまっているようだ。
マシロはさらに続けた。
宗谷
「でも、さるしまの時の決断や、ミーナさんを助けに行くと決めた時、あの時の姿はかっこいいな、と少し思っている、かな」
今度は彼女のいいところを話してくれた。
マシロはアケノのいいところも悪いところもちゃんと理解しているようね。
よく衝突しているらしいけど、そういうことを含めて相性がいいのかもしれない。
ムサシ
「それで、マシロはアケノ個人のことをどう評価しているのかしら?」
宗谷
「そ、それは……、ちょっと難しいですね。でも、これからもできる限り艦長を支えていきたいと思っている」
なんだかどちらともいえない答えだったけど、これ以上追及すると困ってしまいそうな顔をしている。
すると、ヒロミが割ってくるように話してきた。
黒木
「私は、もうちょっと艦長らしく行動してほしいかな。いつも機関室に無茶な注文してくるから、私もマロンも本当に大変なんだから。それに、宗谷さんにも無茶を言っているみたいだし」
ヒロミは普段機関室にいるから、アケノと顔を合わせる機会も少ない。
無茶な要求が多いと不満も募ってしまうのだろうか。
ムサシ
「ヒロミは、アケノのことが嫌いなの?」
黒木
「え!? いや、そういうわけじゃないけど……。でも不満があるのは確かよ」
不満があることと、嫌いかどうかは一致しないようだ。
やっぱり人間の感情は難しいわね。
さて、最後のミーナはどうなのかしら。
ミーナ
「ワシにとって、明乃は命の恩人じゃ。シュペーからなんとか脱出したところで砲撃に巻き込まれて海に投げ出されたワシを、明乃は真っ先に助けに来てくれた。本当に、ド感謝している」
ミーナのアケノに対する評価は非常に高いようだ。
彼女に命を助けてもらい、心の底から感謝しているのね。
ムサシ
「ミーナは、艦長としてのアケノはどう思っているの?」
ミーナ
「明乃は艦長としては、まだまだ未熟かもしれん。じゃが、大胆な決断ができる胆力の強さは艦長として大切な力じゃ。明乃は将来素晴らしい艦長なれると思うぞ」
私にも覚えはあることだ。
イ401の艦長、千早群像は霧との戦いの中で時に大胆に行動して勝利をつかんでいた。
それに、お父様も人類で初めて霧と対話をするという、大胆な行動をしていた。
私の知る3人の艦長が持つ大胆さ、それが上に立つものに必要なことなのかもしれない。
また一つ、良いことを学ぶことができたと思う。
ムサシ
「三人ともありがとう。とても参考になったわ」
宗谷
「いえ、あんな回答で参考になればうれしいです」
黒木
「でも、どうしてあんな質問したの?」
ムサシ
「うーん、ちょっとアケノのことが気になっていてね。みんなが彼女をどう思っているのか興味が出てきたから、かしら」
三人の話を聞き終わってわかったことは、晴風クラスにも様々な意見があり、みんなそれぞれが自分の考えを持っているのだろうということだ。
たまたま話した三人に聞いてもこれだけ意見や評価が違っているのだ。
でも、これこそが意志を持つ人間らしさということなのかもしれない。
かつての霧は全てが一つに決められていて、そこから外れることを良しとしていなかった。
だが、メンタルモデルを持ったことで霧にも様々な考えが生まれ、人間と同じように一枚岩ではなくなっていった。
そして、霧はアドミラリティ・コードから解放されて、自分の意志のまま生きるようになった。
そんな彼女たちの姿を私は見ることはもう叶わない。
でもきっと、彼女たちが真の「幸せ」を掴むことができると信じたい。
それがかつて彼女たちを縛っていた私の、少しばかりの償いだ。
そして、私も変わらなくてはいけない。
私を受け入れてくれた晴風のみんなのためにできることをしてみたい。
そして、少しだが自分の道に繋がる何かを見つけられそうな気がしてきた。
きっと苦しいこともあるだろうが、頑張ってみよう。
そのためにも、まずは今いる三人との時間を楽しんでみよう。
ムサシ
「さて、まだ晴風の案内って終わっていないのでしょう? もっと楽しみましょうよ」
ミーナ
「おぉ、そうじゃな。二人ともまだまだ頼むぞ!」
そして、そんな楽しい時間もあっという間に過ぎ去ってしまい、今は夕方5時。
もうすぐ買い物に出ているアケノやヤマトたちが戻ってくる時間だ。
私は、甲板でみんなの帰りを待っていた。
そんな時、ヤマトから概念伝達で通信が入ってきた。
祝! Trident THE LAST LIVE "Thank you for your BLUE" ブルーレイ発売!!
第四話、いかがだったでしょうか?
今回はムサシの心の成長を意識して、書いてみました。
正直上手く表現できてる自信が全然ないです。 ;A;
人の心情を描くって難しいですね…
これからもこういう感じの書くこともあると思うので、少しでも上手く表現できるように頑張っていこうと思います。
そして、今日はアルペジオ発のユニット「Trident」のラストライブのブルーレイ発売日!
これ書いてる今、横のテレビでライブの映像流しています。
人生初のライブ参加をTridentに捧げ、ラストライブにも参加しました。
私は「Trident」の永遠のファンでありたい!
(もちろん「Blue Steels」も!
次回の五話は、ムサシの受け取ったヤマトからの通信とは一体!?
そしてあの子が暴走します(アニメ四話の時点でバレバレな気がw
また次も読んでいただけると嬉しいです。