ハイスクール・フリート ―霧の行く先― 作:銀河野郎のBOB
はいふりキャラ誕生日記念第16弾です
気が付けばキャラの半分くらい書いてきたんですね。
もはや一体どっちが本編なのか怪しくなってきてる……
本日、12月6日はまゆちゃんこと内田まゆみちゃんの誕生日です!
まゆちゃんと言えば、ついついしちゃった日焼け肌が印象的ですよね。
一人だけあれだけ黒い肌だと、すぐに目がいっちゃいます。
そして、個人的に印象が強いのはしゅうちゃんとのコンビです。
なんとなく、まゆちゃんしゅうちゃんってセットですごくいい感じがします。
今回のお話はしゅうちゃんとの仲良しっぷりを書いてみましたよ。
それでは、どうぞ!
2016年12月6日午後6時
-まゆみside.-
内田
「っはぁ!」
ダーン!!
柔道部顧問
「一本! そこまで!」
柔道部顧問の先生の一声で試合が終わった。私は自分が倒した相手の子に手を差し出し、立ち上がるのを手伝う。そして開始位置に戻り、互いに一礼する。
柔道部顧問
「よし、今日の練習はここまで。みんなお疲れ様。冬の大会まであともう少し、最後まで頑張ろうね。では、解散」
先生がそう言うと、みんなは更衣室の方へ向かう。私も向かおうとすると、先生が私を呼び止めた。
柔道部顧問
「内田さん、今日の投げは綺麗だったよ。冬の大会、期待しているわよ」
内田
「はい、ありがとうございます」
柔道部顧問
「いい返事ね。それじゃ、また明日」
そういうと先生は道場から出て行った。私は思わずガッツポーズをする。小さい頃からずっとやってきた柔道、それは横須賀女子海洋学校に入ってからも変わらず継続していた。私は柔道部に入り、稽古には欠かさず参加している。今年はこれまで伸び悩んでいた立ち技の練度を上げることを目標に頑張ってきた。先生の厳しい指導に耐え、この7か月必死に食らいついてきた。その甲斐あって立ち技の随分上達し、元より得意だった寝技や関節技もさらに練度を増したことで、いつのまにか柔道部の中でも一目置かれる存在となっていた。私は今とても満たされている、そう感じていた。
内田
≪っていけない。早く着替えないと。待たせちゃってるんだった≫
私は我に返り、この後の予定を思い出して急いで更衣室へ向かった。
着替えを終え、柔道部の道場のある建物の外へ出る。すると、入り口近くに私を待ってくれている人の姿をとらえることができた。前髪を可愛いピンクのリボンで纏め、おでこを露わにしている薄茶色の髪の女の子だ。その子も私に気づいたようで、小走りでこちらに向かってきた。
山下
「あ、まゆちゃん。練習お疲れ様」
内田
「しゅうちゃん、おまたせー」
彼女は山下秀子ちゃん、私や晴風クラスのみんなは「しゅうちゃん」の愛称で呼んでいる。私と同じ航海科で、役職も同じ航海管制員、つまり艦橋の近くで周囲を監視し報告することお仕事をしている。しゅうちゃんは左舷担当、私は右舷担当となっている。同じ艦の同じ役職ということもあって、私たちは入学当初から一緒に過ごす機会が多く、すぐに仲良くなった。今では一番の親友と言っても過言ではないだろう。
そんなしゅうちゃんと一緒に私は寮への帰路へつく。
山下
「外から声聞こえてたよ。最後のやつ、まゆちゃんのだよね?」
内田
「あちゃー、聞こえちゃってた? なんか恥ずかしいな。っていうか、しゅうちゃんいつから外で待ってたの?」
山下
「んー、大体20分くらい前かなー?」
内田
「そんなに!? ごめんね、寒かったんじゃない?」
山下
「平気だよ。ちゃんとカイロを服の中に忍ばせているからね」
しゅうちゃんの優しさに私は手を合わせて謝罪する。すでに12月に入り、日に日に寒さが増している。先週には関東では珍しく一面真っ白になるほど雪が降ったばかりだ。いくらしゅうちゃんの寒さ対策が万全であっても、油断できない。
山下
「それより、柔道の調子はどう? もうすぐ大会だよね?」
内田
「うん。調子はすごくいいよ。さっき顧問の先生に褒められちゃった」
山下
「よかった。まゆちゃんずっと頑張ってきてたもんね。大会の日、航海科のみんなで応援に行くよ」
内田
「ホント!? ありがとーしゅうちゃん。大好き!」
私は思わずしゅうちゃんに抱き着いた。
思い返せば、私がここまで柔道の練習を頑張ってこれたのはしゅうちゃんのおかげかもしれない。柔道部に入部してすぐの頃、厳しい練習で思わず吐いてしまった弱音をしゅうちゃんは優しく受け止めてくれた。そして、私を元気づけるために色々と話を聞いてくれた。しゅうちゃんはみんなから聞き上手だと評判なだけあって、話しているうちに私は元気を取り戻すことができた。しゅうちゃん曰く、そんなに大層なことはしていないらしいが、そのおかげで私が頑張れたことは紛れもない事実だ。
内田
「本当に、しゅうちゃんには感謝しっぱなしだよ」
山下
「えー? 急にどうしたの?」
私の口から思わず言葉が漏れる。それを聞いたしゅうちゃんは、なぜ自分が感謝されるのかわからない様子だ。
内田
「いや、なんでもないよ。それより早く寮に戻ろうよ。皆待ってるんだよね?」
山下
「あ、うん。そうだね、行こう」
私は照れ隠しのためにしゅうちゃんの手を引いて急いで寮に戻ろうと促した。しゅうちゃんは少し疑問に思った様子だったが、私の手に引かれて一緒に寮に向かった。
寮に戻ってくると、自室の入り口の前に数人の人影が見えた。
知床
「あ、帰ってきたみたいだよ」
岬
「ほんとだ。まゆちゃん、しゅうちゃん、おかえりなさい!」
その中から二人、リンちゃんと艦長が一歩前に出て私を迎えてくれた。
内田
「リンちゃん、艦長、お待たせ。ごめんね、遅くなっちゃったかな?」
岬
「ううん。まゆちゃん大会目前だもんね。練習、頑張ってきたんでしょ」
内田
「まぁね。そう言ってもらえると助かるかな」
誰よりもクラスメイトのことを案じてくれる艦長のことだ。どれだけ待たせしまっても、彼女は決して不満を漏らすことはないだろう。
そんな彼女とは対照的に、艦長の後方から不満いっぱいな様子の声が聞こえてきた。
勝田
「まゆちゃーん、おっそいぞな。もうまちくたびれてしまったぞな」
宇田
「まぁまぁサトちゃん。まゆちゃん今は頑張り時だからね、許してあげようよ。ね?」
勝田
「別に怒ってるわけじゃないぞな。ちょっと言いたかっただけぞな」
野間
「まぁ、結構待ってたもんね」
八木
「あはは……」
そこにいたのは、サトちゃん、メグちゃん、つぐちゃん、野間さんの航海科メンバーだ。そう、ここには晴風クラスの航海科メンバー八人が勢ぞろいしていた。
内田
「とりあえず立ち話もなんだから、部屋に入ってよ」
私は部屋の鍵を開けて、扉を開ける。私が一番先に部屋に入って、それに続いて皆も部屋に入ってきた。部屋に入ると、みんなは手に持ってきたものを部屋の真ん中にあるテーブルに置き、それを囲むように座る。あまり広くない部屋に八人も入っていたが、みんなで肩を合わせることでなんとか全員座ることができた。そして、みんなで一斉にテーブルの上に置いたものを開いた。その中には、おにぎりやサラダ、肉じゃが、さらにはケーキと色とりどりの料理が入っていた。それら全ての料理をテーブルの上に万遍なく広げ終えると、艦長がジュースの入ったコップを手に持った。
岬
「じゃあ皆、飲み物を手に取ったかな?」
私や皆はコップを掲げて、肯定の意を示した。
岬
「それじゃ、まゆちゃんのお誕生日会兼冬の柔道大会の壮行会を始めたいと思います。まずは、まゆちゃんお誕生日おめでとう! かんぱーい」
山下、知床、宇田、八木、勝田、野間
「お誕生日おめでとう! 乾杯!」
艦長の号令とともに、皆のコップがテーブルの上で一斉に交わる。そしてそれぞれのコップを合わせ終えると、中のジュースを一気に飲み干した。
内田
「みんな、ありがとう」
私は皆に感謝する。みんなはそれぞれ並べられた料理を手に取り、早速食べ始めた。皆が私のために用意してくれたこのパーティ。私は嬉しさに満たされていた。
私も適当に料理を取って食べていると、隣に座っていたしゅうちゃんが私に声をかけてきた。
山下
「まゆちゃん、皆のお料理おいしいね」
内田
「うん! もういくらでも食べられそうだよ」
山下
「あはは。あんまり食べ過ぎて試合前に太ったりしたらダメだよ?」
内田
「もーしゅうちゃんったら。そんなことはしませんよー」
しゅうちゃんと私は互いに笑い合った。しゅうちゃんはいつもの優しい笑顔を私に向けていた。
その笑顔を見た時、私はまたしゅうちゃんに対する感謝の気持ちでいっぱいになっていた。この一年、辛いことや悲しいことはいっぱいあったが、そんな時にはいつも隣にしゅうちゃんがいてくれた。そして、それを乗り越えて喜びを分かち合いたい時にも、しゅうちゃんはそこにいた。どんな時でも、しゅうちゃんは私の傍にいてくれていた。
私はしゅうちゃんに向き合った。
内田
「しゅうちゃん、いつもありがとう。私、しゅうちゃんと友達になれてよかったよ」
山下
「なーに? 下校中も言ってたけど、どうしたの?」
しゅうちゃんに再び問い詰められて、私はまた恥ずかしくなってしまった。
でも同時に、ここでまた何も言わないでいるのは嫌だと思った。今しかない、そう決意した私はしゅうちゃんの目をしっかり捉えた。
内田
「しゅうちゃん、私が今まで頑張ってこれたのはしゅうちゃんのおかげなんだって、今日やっと気づいたんだ」
山下
「え? 私の?」
突然の告白に戸惑う様子を見せているしゅうちゃん。その様子に他の皆も何事かと私は構わず続けていく。
内田
「ネズミ騒動の時に心が折れそうになった時も、そして柔道部の練習で辛くなった時も、しゅうちゃんはいつも私の隣で話を聞いてくれたよね。それがすごく私の励みになっていたんだ。しゅうちゃんがいなかったら、きっと私こんなに強くなれなかったと思う。だから、しゅうちゃんには感謝しきれないよ」
山下
「まゆちゃん……」
私は伝えたいことを伝えた。しゅうちゃんは相変わらず、驚いた様子で呆然としている。
すると、メグちゃんとサトちゃんが顔をニヤニヤさせながら声をかけてきた。
宇田
「なんか、告白しているみたいですねぇ」
勝田
「アツアツでうらやましいぞな。お似合いぞな~」
内田
「んなっ!? 二人とも何言って――」
押さえていた恥ずかしさが一気に溢れ出し、冷静さを失ってしまった。きっと顔は耳元まで真っ赤になっているのだろう。他の皆はそんな私を笑顔で見ていた。
一方、しゅうちゃんは相変わらず黙ったままだった。さっきのことでしゅうちゃんを困らせてしまったのではないか、そう思って彼女に謝ろうとした時、突然彼女の肩がプルプルと震えだした。
山下
「……ぷ」
内田
「し、しゅうちゃん?」
山下
「ぷふっ、あはははは! 告白って、メグちゃんそれ、っぷふふ、たしかに、そうだよね」
内田
「な!?」
突然笑い出したしゅうちゃん。その様子に今度は私が呆然としてしまった。しかし、すぐに我に返り、慌ててしゅうちゃんに反論する。
内田
「ち、ちちち違うの! べ、別に告白とかじゃなくて、しゅうちゃんにただただ感謝したかっただけで――って、うぅ、恥ずかしいよぉ」
苦しい言い訳をしてなんとか誤魔化そうとするも、再び恥ずかしさでうずくまってしまった。すると、しゅうちゃんが私の肩に手を乗せてきた。私はしゅうちゃんの顔を覗き込んだ。そこには、いつもと変わらない優しい笑顔があった。
山下
「ちょっと驚いちゃったけど、まゆちゃんの気持ち、とても嬉しかったよ。こんな私でよければ、いつでもまゆちゃんの隣にいるよ。そして、私もまゆちゃんのお友達になれて本当によかった」
内田
「しゅうちゃん……。うん! ありがとう!」
私は肩に置かれていたしゅうちゃんの手を自分の両手でしっかり握った。そしてしゅうちゃんも私の手を握り返してくれた。
お互いに手を握り合う、たったそれだけのことなのに私には言葉では言い尽くせないほどの満足感に包まれていた。ずっとずっとこうしていたい、そう思えるほどだった。
宇田
「おーおー、二人とも見せつけてくれちゃってぇ。妬けちゃうねぇ」
勝田
「全く、これじゃウチらがお邪魔虫みたいになっとるぞな」
八木
「もー、メグちゃんもサトちゃんもからかわないの」
野間
「二人ともすごく嬉しそう。見てるこっちも嬉しくなりそうだ」
知床
「そうだねー。なんだかすごく幸せになりそうだよ」
みんなからの羨望の眼差しに私は三度恥ずかしさで顔を赤くしてしまう。それはしゅうちゃんも同じようで、耳たぶまで真っ赤になっていた。
岬
「それじゃ、まゆちゃんとしゅうちゃんがさらに仲良くなったところで、もっと盛り上がっていこう! 誕生日パーティも壮行会もまだまだこれからだよ! みんな、いいかな?」
「おー!」
この学校に来て、色々辛いことがあった。悲しいこともいっぱいあった。きっとこれからもたくさんの困難や辛抱が待っていることだろう。
でも、きっと大丈夫。私の隣にはいつも笑顔を向けてくれる大切な親友がいるんだから。
これからもずっと一緒だよ、しゅうちゃん。