ハイスクール・フリート ―霧の行く先―   作:銀河野郎のBOB

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Happy Birthday! タマちゃん

本日、8月5日はタマちゃんこと立石志摩ちゃんのお誕生日!
今回も特別編でお祝いしちゃいます。

ミケちゃんから恒例となった誕生日記念も、はや4作目。
本編九話後書きで、8月の誕生日ラッシュやばい、なんて書きましたが、やっぱり書きたい気持ちは抑えられず、かよちゃんもタマちゃんも書きました。
今回も楽しんで頂ければ幸いです。

それでは、どうぞ!


特別編④ カレーでハッピー!

 2016年8月5日午後6時

 

 -志摩side.-

 

 私、立石志摩は自室のベッドの上で今日地元の友達から貰ったネコのぬいぐるみを抱えている。

 白と茶色の縞模様、そしてジト目、どことなくあの子に似ているような気がする。

 

 立石

「よし、お前は、五十六!」

 

 晴れて、我が家の五十六となったぬいぐるみを眺めながら今日のことを思いだす。

 私は普段から口数が少ないから、自分から積極的に友達を作れるタイプじゃない。

 でも小中学校時代は、ずっとやっていたソフトボールのおかげでそこそこ友達には恵まれていた。

 今日もそんなスポーツ友達からお誘いを受けて、久しぶりにソフトボールをしてきた。

 4番バッターとし出場して、私は4打数2安打2打点の活躍、私のチームが勝利した。

 試合の後、みんなから誕生日プレゼントとして、この五十六ぬいぐるみを貰った。

 その後は、館山から今年ただ一人出た横須賀女子海洋学校進学者としてみんなから色々学校について質問攻めにあった。

 その時一番聞かれたのが、入学直後のRATt騒動のことだった。

 

 私が晴風の乗員だと知ると、友達は一斉に私のことを心配してくれた。

 RATt騒動は本土の方でも大きく取り上げられ、連日話題になっていたそうだ。

 晴風の反乱疑惑、武蔵の本土近海の出現、そして元凶となったRATtウイルスを巡る研究機関への追及、騒動から3か月近くたった今でも世間を騒がせている。

 私もウイルスに感染して暴れちゃったから、学校や医療機関から色々話を聞かれたりすることが多い。

 正直、嫌な気持ちになることも少なくなかった。

 でもそんな時、いつも私の傍にいて助けてくれる一人の女の子がいた。

 

 西崎芽衣

 

 晴風の水雷長で砲術長である私と一緒に行動することの多い女の子、そして私の一番の親友だ。

 

 メイは私がウイルスに感染した時、いつも気にかけてくれていた。

 事情聴取の時は口下手な私に代わって話してくれて、いつも助けてくれた。

 私にとってメイは、友達以上の大切な存在となっている。

 

 立石

「メイ、今ごろ何してるのかな……」

 

 夏休みに入って地元に帰ってきたが、終業式の日からメイとは一度も会っていない。

 できるなら今すぐにでも会いたい……

 どうせなら、誕生日のサプライズで家にこないかなー、なんてね。

 

 ぴんぽーん

 

 そんな考え事をしていると、家のチャイムが鳴る音がした。

 お仕事に出ているお父さんが帰ってくるにはまだ早い時間のはず。

 

 立石母

「しまちゃん、悪いんだけど出てくれないかな? 今ちょっと手が離せないの」

 

 立石

「んー」

 

 お母さんからお願いされたので、私はベッドから起き上がり玄関へ向かった。

 そして、玄関の鍵を開錠して扉を開けた。

 そこにいたのは、

 

 西崎

「や! タマ、ひさしぶり!」

 

 会いたいと思っていた人、メイだった。

 

 西崎

「そして、お誕生日おめでと!」

 

 立石

「え? え、メイ??」

 

 私は何が何だかわからず、玄関で立ち尽くしてしまった。

 

 西崎

「それじゃ、おじゃましまーす」

 

 そんな私を横目に、メイは家の中に入ってきた。

 靴を脱ぎ、そのまま廊下を進んでいくメイ。

 私は慌ててメイの後を追っていった。

 

 西崎

「おばさん、またきましたー!」

 

 立石母

「メイちゃん、いらっしゃい。ほらほら、しまちゃんが主役なんだから早く来なさいな」

 

 え? なんでお母さんがメイのこと知ってるの?

 確かに話は何度かしたけど、顔までは知らないはずなのに。

 

 立石

「えと、メイ? なんで?」

 

 西崎

「へへ、実は夏休み入ってすぐにおばさんから私に連絡があったの。私がタマのために色々してあげたことに感謝したいって。そこからたまに連絡してたんだ」

 

 立石

「お、お母さん?」

 

 立石母

「ごめんね、しまちゃん。内緒で仲良くなっちゃってました」

 

 西崎

「で、今日はタマの誕生日だから、内緒で館山まで来たってわけ。ほら、川崎から館山って船だとそんなに遠くないっしょ?」

 

 私が知らないところで、メイとお母さんが仲良くなっていたなんて。

 ちょっと文句の一つも言いたくなったけど、ずっと会いたかったメイと会えて、私の心は嬉しさでいっぱいになっていた。

 

 西崎

「タマ、もしかして怒ってる?」

 

 立石

「んーん、むしろ、来てくれて、すごくうれしい」

 

 西崎

「そっか、よかった!」

 

 メイが溢れんばかりの笑みを私に向けてくれた。

 この笑顔にどれだけ助けられてきたことか。

 メイは知らないだろうけど、あなたと一緒にいるだけで私はすっごく幸せなんだよ。

 

 西崎

「ほらほら、主役のタマはここに座って」

 

 メイは私をテーブルの上座に座るよう促してきた。

 私は言われるがまま、その上座に座った。

 するとメイは台所にいるお母さんの所へ向かっていった。

 

 立石母

「さぁ、今からメイちゃんと一緒にお夕飯にしましょうね」

 

 メイとお母さんが台所から今日の夕飯を持ってきてくれた。

 

 西崎

「今日の夕飯は、これだよ!」

 

 メイが私の前に出してくれたもの、それは馴染みのあるものだった。

 

 立石

「え? これって、晴風カレー?」

 

 ご飯の上に乗った艦橋に見立てたゆで卵、その上には小さな旗、ルーの中にはジャガイモとお肉、そしてネコの足跡の形に切ったニンジン。

 まぎれもなく、晴風カレーだった。

 

 西崎

「今日は金曜日。金曜日と言えばカレーの日! そしてカレーと言えば、我らが晴風カレー!!」

 

 そうだ、今日8月5日は金曜日。

 晴風に乗っている時は、毎週金曜の夕飯に晴風カレーが出されている。

 私の毎週の楽しみの一つだ。

 ちなみに、私の大好物は当然カレーだ。

 毎日食べ続けても全然飽きないほど、大好きだ。

 昔ソフトボールの合宿で2週間毎日三食カレーを食べ続けて、後でお母さんにバレて怒られたこともあったっけ。

 

 西崎

「へへっ、すごいでしょ? 私が作ったんだよ」

 

 立石

「え? これ、メイが作ったの?」

 

 西崎

「夏休み前にほっちゃんとあっちゃんに教えてもらって、それからずっと家で練習してたんだ。そして今日、タマが外に遊びに行っている間におばさんにキッチン借りて準備したんだ」

 

 立石

「そう、だったんだ」

 

 私のために、わざわざ練習までして準備してくれたなんて。

 本当に、メイには感謝の言葉しか出ない。

 こんなに仲良くなって、こんなに大好きだと思える友達はメイが初めてだ。

 メイに精いっぱいの気持ちでお礼がしたい!

 

 立石

「メイ、ありがとう! 最高の、誕生日プレゼントだよ!」

 

 西崎

「うん、タマにそう言ってもらえると嬉しいよ!」

 

 私は出せるだけの声でメイにお礼をした。

 メイもすごく喜んでくれたようだ。

 私とメイはしばらく笑顔で見つめ合っていた。

 こんなにも嬉しい誕生日は、初めてだ。

 

 立石母

「ふふ、二人とも仲が良いのはいいけど、そろそろ食べないとカレーが冷めちゃうわよ?」

 

 立石、西崎

「「あ……」」

 

 お母さんがニヤニヤした顔で私とメイを見ていた。

 お母さんにずっと見られていたことに気づいて、私とメイは咄嗟に顔を離した。

 私とメイの顔は真っ赤になっていた。

 

 立石母

「それじゃあ、食べましょうか」

 

 西崎

「そ、そうだね。食べよう食べよう」

 

 立石

「うぃ」

 

 私とお母さん、そしてメイは手を合わせた。

 

 立石、西崎、立石母

「「「いただきます!」」」

 

 

 

 それから、私とメイは晴風カレーを食べながら楽しくおしゃべりをして、その後誕生日をお祝いしてもらい、メイから晴風クラス全員からの誕生日プレゼントをもらった。

 途中からお父さんも帰ってきて、そこからは家族三人とメイで晴風での思い出話で盛り上がった。

 二人でお風呂に入った後は、自室でメイと一緒にお泊り会。

 夜遅くまでお話した後、私のベッドで仲良く眠った。

 

 ありがとう、メイ。

 私の大好きな、世界で一番の友達。

 これからもずっと、私と一緒にいてね。

 


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