ハイスクール・フリート ―霧の行く先―   作:銀河野郎のBOB

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第一話です。

第一章では、はいふりアニメに沿った形でストーリーを進めていこうと思っています。

霧の超兵器たちの出番は当分先になりそうです……^^;

それでは、どうぞ。


第一章 -霧との遭遇(アニメ本編)-
第一話 知らない世界でピンチ!


 -ムサシside.-

 

 暖かい温もりに包まれていたはずだった私に突如冷たい感覚が走った。

 突然の出来事に戸惑いつつも、自分の状態を確認する。

 すると、ありえない事態が起こっていることに気づく。

 

 ムサシ

≪……コアが消失していない?≫

 

 私のユニオンコアは間違いなくさっき消失したはずだったのに。

 体を起こそうとしたが、体のある感覚が全くないことに気が付いた。

 どうやら自分はコアだけの状態になっているようだ。

 

 ムサシ

≪周囲は海水、どうやら海底にいるようね≫

 

 しかし船体もメンタルモデルもないこの状態では何もできない。

 すぐに周囲のナノマテリアル反応を探ってみた。

 

 ムサシ

≪なに、ここ? なんて量のナノマテリアルなの……≫

 

 自分の周囲の海底一帯にはこれまで見たことのない量のナノマテリアル鉱床があったのだ。

 これだけあればメンタルモデルどころか船体を構築してもまだ余裕がある。

 私はまずメンタルモデルを形成することにした。

 コアから光が放たれ、その周囲に銀色に輝くナノマテリアルが流動し、徐々に人の形を作っていく。

 小柄な体、銀色の長い髪、そして自分のトレードカラーである黒色の衣装が構築され、自分はメンタルモデルの姿となった。

 フィールドを張り、自分が置かれた状況を確認するため、他の霧の艦隊の反応がないか探ってみる。

 すると、

 

 ムサシ

≪うそ……まさか!?≫

 

 自分のすぐ近くに一つだけ反応があった。 

 総旗艦ヤマトのコアが。

 私は駆け足で海底を移動しヤマトのコアの反応があった付近まで移動し、周囲を探した。

 

 ムサシ

「ヤマト! どこなの? 返事をして!」

 

 ヤマト

【……ムサシ?】

 

 微かだが間違いない。ヤマトが応えた。

 反応があった場所をくまなく探すと、ようやくヤマトのコアを見つけることができた。

 私はコアを拾い上げ、話しかける。

 

 ムサシ

「ヤマト、大丈夫? コアに異常はない?」

 

 ヤマト

【……機能確認完了、異常は見当たらないわ】

 

 ムサシ

「よかった。その状態じゃ不便でしょ?この海底一帯が広大なナノマテリアル鉱床になっているから、まずメンタルモデルを構築するといいわ」

 

 ヤマト

【わかったわ。体を構築するから少し離れて】

 

 コアから手を放すと、コアが光りだしてナノマテリアルに包まれていく。

 自分よりも大きな体、長くて綺麗な黒髪、そして私とは対照的な純白の荘厳なドレスを身にまとった美しい女性の姿が現れる。

 かつて霧の艦隊の頂点に立ち、アドミラリティコードの管理者であった霧の総旗艦、ヤマトが再び私の前に降臨した。

 

 ヤマト

「ふぅ、とりあえずメンタルモデルの構築は完了ね」

 

 私はヤマトの元に駆け寄り、そのまま抱きついた。

 

 ムサシ

「また会えた。もう会えないと思ってた」

 

 ヤマトは優しく私を抱き返してくれた。

 

 ヤマト

「私も。またムサシに会えて嬉しいわ」

 

 私たちはしばし再会の余韻に浸っていた。

 

 

 

 しばらく抱き合った後、なんだかすごく笑顔なヤマトから現状把握の提案がなされた。

 

 ヤマト

「さて、可愛い妹を十分愛でたところで、まずは私たちが現在置かれている状況を確認しましょう」

 

 ムサシ

「かわっ……!? う、うん……そうね……(照」

 

 思わず顔がにやけてしまいそうだったが、なんとか維持した。

 

 ムサシ

「私は北極海での戦闘でコアが消失したはず。でも、なぜかここに存在しているわ」

 

 ヤマト

「私はイオナの中に意識があったけど、あの時ムサシと一緒に消失したはずよ」

 

 さらにヤマトは周囲を見渡しながら続けた。

 

 ヤマト

「それにこれだけのナノマテリアル鉱床、総旗艦であった私やムサシが存在に気づかないはずがない。水圧からみて深度2000mといったところかしら。他の霧の艦が探知できない深さではないわ」

 

 ムサシ

「それに気になるのは、私たち以外の霧の艦の反応が一切ないことね。概念伝達で呼びかけてみたけど、ヤマト以外の反応を感じないわ」

 

 私たちが消失した時点で霧の艦は世界中に存在していたはずである。その反応が一切ないのだ。

 不可解以外のなんというのであろう。

 すると演算リングを展開して考えていたヤマトからこんな一言が。

 

 ヤマト

「もしかして……ミラーリングシステムの影響による別次元、もしくは並行世界への転移?」

 

 ムサシ

「ミラーリングシステム? 確かにあれは別次元への穴を開けるけど、こんな現象は見たことがないわ。他に何か原因が……あ!」

 

 言葉を続けているうちに私は一つの可能性にいきついた。

 

 ヤマト

「そう、最後の決戦は超戦艦同士の戦いだった。そこでお互いにミラーリングシステムを起動していたでしょ。戦闘によって生じた時空のゆがみが消失しかけていた私たちに影響を及ぼし、別世界へ転移させられたと考えられるわ。普通じゃありえないくらい低い確率だけど、それが起こったのかもしれない」

 

 ムサシ

「そうすると、ここは私たちがかつていた世界とは違う別の場所。この広大なナノマテリアル鉱床の存在と他の霧の反応がないことにも理屈が通るわね」

 

 まさか別の世界に飛ばされることになろうとは。

 しかしこれからどうするべきだろう。

 

 ムサシ

「・・・とりあえず船体を作って浮上しましょう。ここがどこなのかも把握しないといけないし、この世界についても調査しないと。幸いここには私たち超戦艦級の船体を2隻作っても有り余るナノマテリアルがあるんだし」

 

 するとヤマトは右手を頬に当て、何やら難しい表情をしていた。

 そして意外な答えが返ってきた。

 

 ヤマト

「いえ、船体を作るのはムサシだけにしましょう。私はあなたの艦に同乗させてもらう、っていうのはどう?」

 

 ムサシ

「な、なんで? せっかくこれだけナノマテリアルがあるのに?」

 

 ここには十分な量のナノマテリアルが存在する。

 しかも万が一敵が現れたとしても、2隻の超戦艦級ならより確実に安全が保障されるはずなのに。

 

 ヤマト

「私たちは元の世界にいた時のように海を封鎖することを目的としていない。こちらから攻める必要がない以上、過剰な戦力はかえって危険だわ。まずは1隻だけで様子を見ましょう」

 

 ヤマトはそう言ってきたが、私はまだ納得できていなかった。

 

 ヤマト

「大丈夫よ。あなたほど強くて信頼できる子はいないわ。安心してこの身を預けられる。それに……」

 

 ムサシ

「それに?」

 

 ヤマト

「な、なるべく、あなたの隣に居たいなぁ、って思っちゃったり……(照」

 

 この総旗艦はこの非常事態になぜこんなこっ恥ずかしいことを言ってくるのだろうか。

 しかし私はその言葉に嬉しさを感じていた。

 ヤマトがこんなにも可愛い姿を見せたことは一度もなかった。

 さっきも私を可愛い妹と言ってくれたし。

 

 ムサシ

「し、仕方ないわね。そういうことなら、私の艦に乗せてあげても、いいわよ?///」

 

 ヤマト

「ええ、ありがとうムサシ。大好きよ。」

 

 ヤマトが私に抱き着いてくる。すごく嬉しいけど、それ以上にとてつもなく恥ずかしい。

 

 ムサシ

「ああ! もうわかったから! これから船体を構築するから離れてなさい!!」

 

 ヤマト

「はーい♪」

 

 全く、かつてはあれだけ凛としていた総旗艦がどうしてこうなったのやら。

 401の中にいて、千早群像や他の人間と一緒に行動したことが影響しているのだろうか。

 ヤマトから解放された私は、演算リングを展開し船体の構築に取り掛かる。

 

 ムサシ

「船体構築シークエンスを開始……周囲半径3km内のナノマテリアルのコントロールをムサシ傘下に編入、各部の構築を開始する」

 

 開始宣言と同時に海底が輝きだし、巨大な銀色の粒子の奔流が深度2000mの海底を包んでいく。

 粒子は徐々に船体のパーツの形を成していき、固定されていく。

 

 ムサシ

「各部パーツ構築の進行状況50%に到達。各種武装の構築を開始、指定した順にパーツおよび武装を接合する。同時に浮上を開始」

 

 周囲に力場形成した私は、ナノマテリアルの渦に包まれながら浮上を開始する。

 当然ヤマトも一緒だ。

 船体の構築がほぼ完了した時点で、それまで銀色だった船体が黒色に変色した。

 さらに大和型の象徴ともいえる46cm三連装砲を中心に武装が構築され、船体と接合されていく。

 

 ムサシ

「最終シークエンス、船体内のナノマテリアルを超重力ユニット24基に変換……完了」

 

 ついに船体が完成し、艦はどんどん浮上していく。

 そしてついに海面が見えてきた。

 

 ムサシ

「霧の艦隊、総旗艦直属艦隊旗艦、超戦艦ムサシ、浮上する!」

 

 

 それは、月と星が輝く闇夜の海に突如として現れた。

 夜の海に紛れてしまいそうな黒い船体、その表面にはオレンジ色に発光する不可思議な模様が浮かんでいる。

 甲板上には金色の砲身を持つ3連装砲を中心とした数多くの武装が見える。

 中心に一際高くそびえたつ艦橋の頂上には、船体と同じ黒色の衣装を着た銀髪の少女と、それとは対照的な純白のドレスを纏った黒髪の女性が立っていた。

 ここは、北緯24度45分・東経141度17分。

 かつて硫黄島と呼ばれた島があった場所に、霧の超戦艦ムサシは姿を現した。

 

 

 

 -晴風side.-

 

 ムサシが浮上した時刻と同じ頃、硫黄島跡地から北に約200kmに位置する西之島新島付近の海域を進む一隻の艦がいた。

 横須賀女子海洋学校に所属する航洋直接教育艦「晴風」だ。

 

 岬

「とにかく今は第二合流地点の鳥島沖を目指そう」

 

 宗谷

「そうですね。我々の無実を晴らさないといけませんからね」

 

 晴風艦長の岬明乃と副長の宗谷ましろは、これからの方針について確認し合っていた。

 先ほどまで混乱した状況だった晴風の艦橋は、幾分か落ち着きを取り戻した様子だ。

 晴風は入学して初めての海洋実習で遅刻してしまい、予定の集合時間から3時間後になんとか集合場所の西之島新島に到着した。

 しかし到着するや古庄教官の座乗する教官艦「さるしま」から実弾による砲撃を受け、これ以上は危険だと判断した明乃の指示の元、模擬弾の魚雷で反撃した。

 そのことで海上安全委員会より反乱扱いされ、現在逃亡中であった。

 

 知床

「で、でもちゃんと話を聞いてくれるかなぁ……」

 

 西崎

「とにかく、行ってみないことには何も始まらないじゃん」

 

 立石

「うぃ」

 

 艦橋メンバーと言われる航海長の知床鈴、水雷長の西崎芽衣、砲術長の立石志摩がそんな話をしている中、書記の納沙幸子が突如芝居掛かった口調で語りだした。

 

 納沙

「『おまえたちはぁ、さるしまを沈没させ、あまつさえ逃亡するという愚行を行ったぁ! ただちに処分をくだぁす! 全員退学だぁ!!』」

 

 知床

「えぇ!? 入学したばかりで退学!!??」

 

 鈴は目に涙を浮かべ悲痛な声を上げてしまった。

 

 宗谷

「そうならないために、鳥島を目指しているんだ! 混乱させないでくれ」

 

 ましろは少々怒気を込めた口調で幸子に言い放った。

 

 岬

「そ、そろそろ当直の人以外は部屋に戻って休んでね。今日の事でみんな疲れているだろうから、休めるときに休まないと」

 

 宗谷

「そうだな。後のことは明日また考えましょう」

 

 明乃は艦橋メンバーを落ち着かせるように言いながら、不安を抱えていた。

 

 岬

≪これからどうなるんだろう……とにかく、晴風のみんなを守らなきゃ。私は、晴風の艦長なんだから≫

 

 夜の海を晴風は進んでいく。

 この後、さらにとんでもない事態に巻き込まれていくとも知らずに……。

 




第一話でした。

いかがだったでしょう。

貴重な土日の休日をほぼ丸一日使って書いてましたw

まだ晴風メンバーとの出会いもかけてないよぉ……

次回には遭遇できると思います。

感想、評価していただけると今後の作品作りの参考になりますので、是非よろしくお願いいたします。

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