たくさんの
『復讐をしろ』
『見殺しにするのか』
『裏切るのか』
『庇うのか』
『また人間に大切な者を殺される』
『おまえの怠惰で殺される』
『無意味な感情に呑まれた結果が、これなんだよ』
場面が変わり、少女の死ぬ映像が繰り返される。
「いやだ...やめろ、僕は......ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい........うわあああああああああ!!!」
彼女の声は未だ、聞こえない。
Robert side
あの日ボクが奪った居場所は今日消え去った......
〜三年前〜
「いやだ...やめろ、僕は......ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい.........うわあああああああああ!!!」
植木君が人間界に帰って一週間目の夜。
ボクとイチカは先代の神に身元を預けられている。
イチカの姿は少しずつ変わっていく。
イチカは起きている間は心のなくなったように、動かないどころか一言も喋らず、寝ている間は毎日魘され発狂して起きる。それを一週間前に倒れているところを発見されてから繰り返しているようだった。
一週間前はストレスによって髪は白髪が混じっている程度だったが、今では全て白髪に変わってしまった。
先代の神は
天界の上層部は
『これ以上は本人どころか取り込まれた天界人にも何か影響があるかもしれない』
という意見が発せられた。
天界の技術の中に先日の戦いを隠蔽するための装置が作られていた。それを使い、精神が安定するまでの時間、記憶を書き換えることになった。
「これは...,...!!!!」
その『大部分』とは......『ルナ』と呼ばれる少女が関係している記憶が殆ど.........いや『大部分』の記憶全てが関係している。
「クッ.........」
最終手段をとる以外方法はなかった。
(わかっている......わかっていたんだ!!!)
記憶の書き換えを行う.........曖昧な部分も含めて。
イチカが戻ってくるように。
その一心を込めて書き換える。
彼にとってとても
次の日の朝、イチカは笑っていた。
ただただ、苦しそうに笑っていた。
〜現在〜
目の前でイチカが叫んでいる。
痛みに悶え、苦しみ、それでも手に入れようと必死にもがいて。
「ね......え............さん?」
あの日ボクが奪った居場所は今日消え去った......
彼女から奪った居場所はなくなった。
笑って、泣いて、怒って、喜んで、知って、忘れて、選んで、見て、体験して、学んで、信じて、そして.........生きて
ボクが欲しかった
とてもとても楽しかった。
だが、イチカに会うその度に罪悪感が募って苦しかった。
それから何度も墓参りに行った。
彼女の墓を手入れするのはボクの役目になった。
だって、イチカはもう.........覚えていなかったから。
イチカは起き上がる。
「あの?ロベルトさん......少し外に行きませんか?」
ボク達は天界の森の中......イチカが倒れた場所に来ていた。
「ロベルトさん......僕は、ずっとずっと苦しんで生きてきました」
イチカは独白するようにそう言った。
「僕には『家族』はいませんでした。
『形』はありましたが、そこに『愛情』は存在していませんでした。いつも、
そんな日常に僕の精神は少しずつ疲労していったのです。」
笑ってそう言ったイチカは、どうにも辛そうだった。
「その後、『IS』が登場すると同時に『女尊男卑』が始まり、そのせいで疲労を溜めるスピードが早くなり、僕はあの『掃き溜め』から逃げ出しました。
そこで、僕はロベルトさんに救ってもらいました。
そのおかげで『ルナ姉さん』に会えました。」
本人から彼女の名前を聞かされ罪悪感が増す。
「あの日々はとても楽しかったです。
僕が初めて『人』として生きた時間でした。
その時間も、たった一年足らずで終わりましたが......」
表情には寂しげな感情が滲み出ている。
それほどまで大切にしていたのかと、己の行動を恥じた。
「僕はその後、復讐を始めました。
まあ.........結局、失敗しましたけど。」
「その後、苦しみ続けました。
苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて.........」
「ボクはーーー」
「でも、救われました。」
「え?」
罵倒の言葉がくると思った。
その表情は晴れやかなあたり先ほどの言葉に嘘はないだろう。
「僕はとても楽しかったんです。
決して忘れてはならなかったはずなのに、とても楽しかったんですよ。
ロベルトさんは僕の『
「違う!!!」
罪悪感に耐えきれずボクは叫んでいた。
「違うんだ!!!
ボクはそんなことはしていない!ボクはただ、目的が欲しかっただけだ!!!
あの頃のボクは生きる意味を持っていなかった。だけど、タイミングよくイチカが苦しんで、その苦しみにつけ込んでルナさんの立場を奪い取ったんだ!!!」
口から感情に任せた言葉が出てくる。
伝えたいことがあるのに感情が制御できずに漏れでてしまう。
「ボクは......ボクは......ただ、そんな日々が楽しくて......奪っているのを知っていて、それでも黙ってて......酷いことをしているのはわかっていたんだっ!!!でも......でも.........」
「それでも、僕は救われたんです。
第一にあの頃の僕もそうやって、マドカを引き取っていますしお互い様ですよ。」
そこには、寂しさも、狂気も、欠けたような感じも無い、まっさらな道を進んできた少年のような笑みを浮かべる。
「それじゃあ、僕は行きます。
三年ぶりに姉さんに会いに行きます。」
だから、ボクは.........
「ちょっと待ってくれないか?
伝えたいことが、君に渡したいものがあるんだ。」