IS - イチカの法則 -   作:阿後回

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期末テストが終わり、漸く新章に入ることができました。
次回はもっと早く投稿できる様に努力します。


第2章 襲撃編
16話 転校生


Memory side

 

 

「おいイチカ!あの試合中なぜあそこまで無意味な攻撃をした⁉︎」

 

クラス代表決定戦の次の日、私は目の前の二人とともにイチカを呼び出した。呼び出した主な理由は、クラス代表決定戦中のイチカの突然の変貌した事についてだ。マドカやハイジも私と同じようにイチカの変貌について心配したから聞きに来たのだ。

 

「そんな事は知らん!」

 

「兄さん、本当の事を言って下さい!!!」

 

イチカは溜息をついていた。

 

「知らないって事は本当だよ。」

 

「じゃあ、どうして兄さんはあの試合であそこまで傷つけたのですか?」

 

私は二人のの心配とは理由が違う。ハイジ達はハピネス社のイメージダウンとイチカ自身の学園生活の事について心配しているが、私はイチカが昔の感情がまだ残っている事についての心配だ。ハイジ達は神を決める戦い時のイチカを知らないからそのくらいの心配で済んでいるが、私は違う。人間を常時殺そうとしていたイチカに戻ったとなれば、今までとは違う昔のイチカの感情が戻ればなにをするかわからないのだ。イチカからその事を聞き次第ではイチカと対立することがあるのだ。

 

「俺自身ではわからないから知らないって答えたんだよ。戦っている間にあのカスの声や行動がなにかと被るように見えて体の中からふつふつと怒りと憎しみが湧き上がって来たんだ。」

 

「ねえ、イチカ。

あなたは神を決める戦い時に織斑に対する感情を失ったのよね?」

 

私はこの時、初めてその場で声を出した。この返答次第では今後の関係にも繋がる。

 

「ああ、失った。

だが、繁華界から人界(こっち)に戻って来てからは、そういうこと(怒りや憎しみで暴走すること)が起こりやすくなった。」

 

「それじゃああんたの中には織斑を憎んでいた頃の感情はないの⁉︎」

 

「それは違う。

俺の感情があるなら、こっちに戻って来た時にありとあらゆる方法を使って、あのカスやあのカスが住んでいた町の人間に復讐してる。」

 

イチカは呆れ半分で私を見ている。

なら、イチカにどうしてそんな感情が湧き上がってくるのかわからない。

 

「兄さん。それは大丈夫なんですか?」

 

マドカが心配そうに問う。それもそうだ。イチカの中にそんな感情があれば、普通の生活を送ることが難しくなってくる。

そんなマドカを見つめ、イチカは優しく撫でながら言った。

 

「大丈夫。この問題はもう少しで解決する。」

 

イチカはなにかを確信しているようだ。だが、イチカからはそのことについて『聞いてはならない』というような威圧を放っていた。

 

その後、私達はそれぞれの部屋に戻った。

 

 

 

Memory side end

 

 

 

Ichika side

 

 

「兄さん!隣のクラスに転校生が来るそうですよ!!!」

 

ある日の朝のホームルーム前、教室は騒がしかった。俺は先日にあった織斑との試合のおかげか、マドカ達以外とは特に用がなければ話かけられることがなくなった。

 

(まあ、裏で悪い噂等あるがどうでもいい。)

 

そのことで、マドカに話かけられる回数が増えた。きっと試合のことを気にしているのだろう。

今日もマドカに話かけられた。どうやら転校生が来るらしい。

 

「マドカ。転校生ってのは誰なんだ?」

 

「誰なのかはわかりませんが、中国の代表候補生みたいですよ!」

 

(中国か。たしか織斑だった頃にそんなことがあったような)

 

俺は織斑一夏の記憶にあった中国の『転校生』を思い出した。

 

(まあ、最悪な奴だったけどな)

 

「どうしたのですか。兄さん?」

 

織斑の頃の嫌な記憶を思い出したことで顔を歪めたことを見たのか、マドカに心配をかけてしまった。

 

「いや、なんでもない。それよりマドカ、転校生には注意しろ。」

 

「スパイの可能性ですか?」

 

元『亡国企業』なだけあってスパイなどのことを理解しているようだ。

 

「ああ、まだ入学してからそうたってないのに転校して来たことは、きっとなにかある。ハピネス社のデータが目的かもしれない。だからあまりこの学園の人間を信じない方がいい。」

 

「それはわかってます、兄さん!

それにこの学園の人間とはあまり親しくなりたくありませんから。」

 

マドカがそこまで言うとなると、この学園にはかなり女尊男卑が広まっているようだ。

 

「マドカ......ありがとう。もう少しでホームルームだから、席についておいた方が『バン』

 

 

俺の声は突然の大きな音で遮られた。その音と共に教室内に声が響いた。

 

「その情報、古いよ!」

 

『鳳鈴音』

 

織斑と会話するその女に、感情を失くした自分でも酷く不愉快な記憶が蘇った。

 

 

Ichika side end

 

 

Madoka side

 

教室に変な女が入って来てから、兄さんの雰囲気が変わった。酷く不愉快なものを見る様な目でその女を見ていた。

 

「兄さん、どうしたんですか?

あの女がなにかしたんですか?」

 

私はとりあえず話を聞く事にした。

 

「ああ少し不愉快な記憶を思い出しただけだよ。」

 

「不愉快な記憶とは?」

 

「簡単な話だよ。織斑の頃の最後の一年に転校して来たあの女が、転校して来た学校に馴染む為にイジメに加担してたんだよ。女尊男卑の所為で少しずつエスカレートしていって階段から落とされた事があったんだよ。だから、その頃の感情がなくとも不愉快な気持ちになったんだよ。」

 

酷い話だった。

大半の人間は自分の為に他人を犠牲にする。これは、もう一人のロベルト兄さんから教わったことだ。それは今回、兄さんに当てはまったことだ。兄さんはあそこにいる女の『スケープゴート』にされた上に、階段にまで落とされた。

 

(許せない!!!)

 

「駄目だよ、マドカ。」

 

「なんでですか⁉︎兄さん!」

 

「許せない気持ちはわからなくもない。だが、俺達はハピネス社の人間だ。身勝手な行動はしないようにしろ。」

 

兄さんの言葉は冷静で、少し優しげな感じがした。

 

「わかりました。」

 

「あともう少しで、ホームルームが始まるから席に座った方がいいよ。」

 

時間を見るとホームルーム開始1分前になっていた。

 

「ありがとう、兄さん。」

 

兄さんの忠告通りすぐに席についた。

その後織斑達は、織斑千冬にホームルーム開始時間までに座らなかったことで殴られていた。

 

 

Madoka side end

 




誤字脱字等あればよろしくお願いします。

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