プロローグ1
??? side
「あれから5年も経つのか。」
5年前のあの日の出会い。
3年前の能力者との戦い。
2年前の繁華界での戦い。
色々なことがあり、色々な人と出会い、色々なことを知った。
「だが、始まりはあそこからだったんだ。」...
another side
インフィニット・ストラトス。 通称”IS ”。
それは、宇宙進出の為に作られたマルチフォームスーツ。開発時は、注目されなかったが、なんらかの事故により、世界各国の軍事コンピュータが暴走を起こし、2341発のミサイルが、日本に向けて発射された。2341発のうちその半数以上を搭乗者等不明のIS《白騎士》が迎撃した。
後に、この事件を『白騎士事件』と呼ばれる。
ISの登場により世界は歪み、宇宙進出から、軍事方面に転用された。さらに歪みは続き、ISは女性以外乗れないことから、『男女平等』から『女尊男卑』へと移り変わっていった。
そんな世界に織斑一夏という少年がいた。
件のISの生みの親たる篠ノ之束とその友人たる織斑千冬、物事に十全に発揮できる秋一を兄に持ち、両親に捨てられたが、幸せに過ごしていた。
だが、幸せはそう続かず才能を発揮した二人と凡人だった彼は比較され、兄秋一を中心とした周囲の人間によっていじめられ、ISの登場によりさらに悪化していった。
Ichika side
〜5年前〜
「人間なんてみんな死ねばいいのに。」
俺は、人間に絶望していた。自分は、努力しているのに勝手に期待して勝手に失望して努力が実らなければ『出来損ない』扱いをし、努力が実ると『織斑千冬の弟なら当然。』と言われる。そんな毎日はとても苦痛だった。それでも俺は、努力をしていればきっと誰かが認めてくれると信じていた。ずっと、才能のある姉や双子の兄に比較され続いたとしても努力を続ければ姉や兄の隣に立てると信じていた。兄のあの言葉を聞くまでは。
『あの出来損ないくんまだ頑張っているみたいだね。そこらへん兄としてどう思うよ。 織斑くん。』
『見ていて滑稽だね。あの出来損ないが僕や姉さんの隣に立つことなんてできるわけがないのに。』
『まあ、そうだよね〜。』
『うん、あんなクズさっさと死ねばいいのに。』...
そこからは、聞いていなかった。ただただ呆然としていた。兄からは好かれていないとは思っていたが、自分がそこまで嫌われているとは思っていなかったのだ。だが後になって考えると自分に腹が立ってきた。あんなクズどもを目標にしてきた自分や、自分をいじめを行ったあのクズどもが...。だから僕は、あいつらも、ISを生んだあの人も、この腐った世界も全て許さない。
「へぇ、君は面白いことを言うんだね。」
考えごとにふけっていて気づかなかったが、人がいるのだと思い、声の方を向いてみると頭に包帯を巻いた一人の少年が立っていた。
「僕の名前は、ロベルト・ハイドン。君は。」
「一夏」
「イチカっていうんだね。じゃあイチカ、僕と一緒に人間を滅ぼさないかい。」
その日、その言葉を聞かなければ、真実を知ることはなかっただろう。だが後悔はしていない。あの日、あのとき、あの人に出会わなければ、『力』と、『理想』手に入れることができたのだから。
だから俺は、その『人』と契約した。