真剣に私と貴方で恋をしよう!!   作:春夏秋冬 廻

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第58話投稿。

神、川神学園編入です。


第58話 力の一端、神VSクリス

――2009年 4月27日 月曜日 AM9:00――

 

果していったい何でこんなことになったのでしょうか誰か教えてくれませんかね。

 

目の前で対峙する人物を見ながら、どことなく他人ごとに考えてしまう。

そういえば初めてモモと勝負した時もこんな考えが脳裏をよぎったな、と懐かしい思い出に浸る。

 

傍目にはボケっと突っ立っているだけの俺に対し、目の前の人物は手にした武器を構えていつでも勝負を始められるよう臨戦態勢に入った。

 

俺たちを囲む生徒たちがその姿を見て歓声を上げる。俺はまだ戦闘態勢にすら入っていないというのに物凄い盛り上がりようだ。

周りに流されて受けてしまった以上はどうしようもないと分かっているが、『猟犬』と初めて手合わせした時の、日本人気質『場の雰囲気に合わせておく』、をまたしても発揮してしまった。

 

進歩してないな俺……

 

はてさてどうしてこんな事になってしまったのやら、開始の合図がされるまでの間、少し思い返してみよう。

 

 

 

          §  §  §

 

 

 

今日はみんなより早く川神学園に着いた。

 

俺が川神学園に編入するという事は、金曜集会の時に仲間たちにはすでに話してある。ヤマなんかは俺が帰って来た事で月曜日に自分のクラスの編入生が俺だとすぐに気付いたようだった。

 

一緒に行くとごねていたモモはみんなと一緒に行くように説得してある。まあそのせいで帰りは絶対一緒に帰ると約束させられたけどな。

 

先に鉄心さんのいる学長室に顔を出し、その後職員室で担任になる先生と顔合わせ。今目の前にいる女性が俺が編入する事になる2年F組の担任、小島梅子先生。

 

「君があの暁神か……」

 

俺を見て何故か感慨深そうに呟く小島先生。

 

「えっと、俺が何か?」

 

「いや、3年前の事件を覚えているから君はある意味で有名だ。最初学長から君の話を聞いた時は、実は半信半疑だったんだ」

 

ああなるほど、そういうことか。

確かに俺は一時期、助けたアメリカの政治家が『英雄』と称していたため有名だったらしい。その時の俺は記憶喪失になっていたため自分の事だとは露ほどにも思っていなかった。

 

「風間たちのグループとは幼い頃からの友達だと聞いたが?」

 

「はい、小学校4年生からですね……もしかしてそれで俺はF組に編入になったんですか?」

 

思い至った答えを小島先生に問い掛ける。俺が察した事に何故か満足気に頷いた先生は小さな笑みを浮かべた。

 

「その通りだ。編入試験の結果でいけば君は特進クラスのS組でも問題なかったが、日本に帰ってきたばかりだし友達が多い方がいいだろうとの学長の配慮だ」

 

最初ヤマたちから聞いた時は適当に決めたと思っていたが、少しは俺の事を考えてくれていたんだな鉄心さんも。

確かにいきなり特進クラスに入れられるよりは、仲間たちと同じな方が精神的にも楽だ。元々帰ってきても学校に行くつもりはなかったからな。

 

その事を小島先生に言うと、呆れた表情を浮かべた後で軽く頭を叩かれた。

 

「全く、少しは大人を頼れ。確かに君はしっかりしているがそれでもまだ未成年の子供だ。頼る事が出来るうちに頼っておきなさい」

 

本当に子供に言い聞かせるような小島先生の言葉に、少しだけ気恥かしさを感じながらも素直に頷いておく。言い返す事が出来ないのも本当だった。

 

俺が頷いた事を確認した小島先生は、もうすぐHRが始まるという事でついて来るようにと言って職員室から出ていく。

その後を言われた通りについて行き、特に話しもする事なく廊下を進む。他の生徒の姿は見えない事からHR前にはみんなきちんと教室に入るようだ。

そんな事を考えていると先を歩いていた小島先生が1つの教室の扉の前で止まり振り返った。

 

「ここだ。とりあえず君は呼ぶまで待っていてくれ」

 

俺が頷くと小島先生は扉を開けて教室に入っていった。これからHRを始めるようだが、さり気なく教室の中の気配を探ってみると何やら騒がしい。

どうやら編入生の俺の事に対していきなり小島先生に何かを聞いているようだ。

 

「イケメンですか? お金持ちですか?」

 

何やら透き通った女子の声が聞こえたが、今時の女子高生はこういう事を質問するんだな。こんなところにも2年8ヶ月の日本ブランクを感じる。

 

「静粛に!」

 

ざわめきだんだん大きくなってきた時、小島先生の厳しい声と鞭を打つ音が聞こえてきた。なるほど、先生が鞭を持っていたのはこういう時に使うためのものか。かなりの遣い手だとは思っていたが、日常でも生徒を叱るために使っていたとは。まさに教鞭の文字通りだな。

 

「もう来ているから質問は本人にしろ。入ってきなさい」

 

入室を促した小島先生の言葉に従い、俺は扉を開き教室の中に入る。

教室内のクラスメイトになる生徒たちの視線が一気に集まるが、別段気にもならないし自分で言うのも何だが、緊張するほど初々しくもない。

 

女子の甲高い歓声と男子の何やら怨念がましい溜息の中、軽く見渡してみるとヤマたちは知っているので驚いていない。ゲンとクリスは驚いた顔をしている。そういえば話していなかったなと、驚いているその顔を見て今になって気付いた。

 

自己紹介と促されてチョークを手渡されたので、黒板に名前を書く。だが書き終わってチョークを置いた瞬間、クラスの雰囲気が一変した。

何やら緊張感の含んだ雰囲気に、おそらく俺の名前を見てみんな3年前の事件の事が頭をよぎったのだろう。さてどういう質問が来るかな、と思いつつ正面を向くとクラスメイトの表情は俺が思っていたものは全然違った。

 

「今日からみなさんと共に学ぶことになります、暁神です。よろしくお願いします」

 

当たり障りのない自己紹介をするも何も反応が返ってこない。

さっきの反応といいこの反応といい、いったい何なんだろう。どう見ても俺の名前を知っているし信じられないといった雰囲気なのに、行方不明の人間を見ての驚愕じゃない。まるで『この人が?』といった感じの驚愕の表情をしている。

 

何が何だか分からず、思わず隣にいる小島先生に助けを求めようとしたその時だった。

 

 

『『『『『『『『『『モモ先輩の彼氏!?』』』』』』』』』』

 

 

仲間とゲンを除くクラス全員の叫びが1つになった。

 

だがそんな事どうでもいい。なんでみんな知ってんだよオイ。

 

俺はさっそくヤマに視線を向ける。あ、反らしやがった。次から次に仲間に視線を送るが同じように次から次に反らしていく。

これは間違いなく全員が関わっている。いやよく考えろ。下手すればモモが元凶かもしれない。いや間違いなく元凶だろう。

 

後でしっかりと聞かせてもらうぞ。俺の言いたい事を視線で感じ取ったのだろう、ヤマは諦めたように溜息を吐き頷いた。

 

「自己紹介する必要が無かったな暁」

 

皮肉を込めた小島先生の言葉に俺は何も返せない。最初で最大級のインパクトを与えてしまったようだ。

 

これから続く高校生活に、早くも暗雲が漂い始めたような気がするのはきっと間違いじゃないはずだ。まあ風間ファミリーの仲間だとバレたら、穏やかな学校生活なんて無理なのは分かっていたが、いきなりモモの彼氏というのがバレるとは思ってもいなかった。

 

今時女子高生っぽい格好の小笠原千花さんの質問。

 

「モモ先輩の彼氏って聞いたけどホントなの?」

 

「本当だよ」

 

このクラスの委員長らしい甘粕真与さんの質問。

 

「いつ川神に戻ってきたんですか?」

 

「3日前の金曜日」

 

カメラを持った男子生徒、福本育郎の質問。

 

「モモ先輩とはもうやっちまったのか?」

 

「殺すぞ?」

 

これからの事に頭を抱えたいのを堪えながら、次から次にされる質問に簡潔に答える。どうやら月曜日の1時限目はSHR(ショートホームルーム)らしく俺への質問の時間になった。

 

ちなみに俺の席はゲンの左隣で前はの席はミヤ、右斜め前がヤマ、左斜め前がタク。キャップもカズもガクもクリスも割と近くの席に座っており、風間ファミリー&島津寮のメンバーが纏まっている感じだ。

 

「いいだろうか」

 

俺を取り囲みつつ質問を繰り返していたクラスメイトの中から、クリスの凛とした声が響いた。視線を向けると律義に手を上げて真剣な表情で俺を見ているクリスの姿。

 

あの目、何かを決意しているな。

 

そう感じ取り視線だけで質問を促すとクリスは頷いて俺の席の前に立つ。

 

「昨日の自己紹介を聞くに、暁殿は何かの武道を嗜んでいるとお見受けする」

 

「否定はしないな」

 

曖昧に答えておく。事実俺は武術も武道もやっていない。

俺の力や強さは『暁の一族』である故のものだから、正確にいえば武術・武道ではなく『武』そのものの体現しているのだ。

 

「貴殿は編入初日、自分もこの学び舎に通い始めてまだ2日。いきなりこんな事言うのは恥知らずかと思うのだが――」

 

そう言ってクリスは一瞬だけカズに視線を向けたが、すぐに俺に向き直ると制服のポケットからワッペンを取り出し俺の机の上に置いた。その行動に俺たちを取り囲んでいたクラスメイトがざわめき始めた。

 

「この学園の決闘制度をもって、貴殿の勝負を申し込む」

 

クリスの言葉に教室が喧騒に包まれる。

騒然となるクラスメイトには悪いが、俺はいったい何の事だか分からなかった。

 

クリスが俺と勝負をしたいというのは分かったが、その理由が分からないし決闘制度がいったい何なのか分からない。それなのに周りは俺を置き去りにして盛り上がる。

とりあえず制服を貰うと同時に受け取ったワッペンを取り出す。すると一層盛り上がり騒がしくなるクラスメイトたち。

 

これは受けておくべきなのか?

 

どうすべきなのか分からない俺は、周囲の喧騒に流されるがままにクリスの置いたワッペンの上に、自分の持ってたワッペンを重ねたのだった。

 

 

 

          §  §  §

 

 

 

以上が事の起こりなのだが、果して俺に悪いところはあっただろうか? 流されて何も考えなかったのが1番の原因か……

 

決闘制度のことをたんとヤマたちに聞いておけば回避できた事だが、それを怠った俺も悪いし、クリスの真剣な表情を見て断るのも憚れたし、まあいいとしておこう。

 

「よージン、クリと勝負するんだってな?」

 

生徒の輪の中からモモが出てきて俺の隣に並ぶ。

 

「決闘制度を詳しく知らなかった結果だ」

 

「あははは、そうか」

 

あっけらかんと笑うモモに俺は後でヤマに聞こうと思っていた事を問い掛ける。まず間違いなくモモが元凶だという確信を持って。

 

「なあモモ、お前自分が彼氏いる事を所構わず言いふらしてただろ?」

 

「な、何の事かな?」

 

この答えでもう分かった。間違いない。絶対に事の始まりはモモにある。あのクラスでバレていたのは幼馴染みの風間ファミリーが誰かに聞かれ、モモ自身が言っている事だから隠す事じゃないと判断したんだろう。

 

怒られるかと心配そうに見ているモモの頭に手を乗せて、怒ってないと教えるように軽く叩く。どうせいずれはバレる事だからそれが早くなったと思えばいいだけだ。

ただ周りの反応を考えると億劫になる。だってほらモモの頭に手を乗せているだけでいろんな感情の込められた物凄い数の視線が突き刺さる突き刺さる。

 

人気者の彼女を持った宿命か。

 

「これより川神学園伝統、決闘の儀を執り行う! 両者、前へ出て名乗りをあげるがよい!」

 

見届け・審判役の鉄心さんの言葉にモモの隣を離れ中央へと歩みを進める。クリスはずいぶん前から臨戦態勢で待ち構えていた。

 

「2年F組、クリスティアーネ・フリードリヒ!」

 

「今日から2年F組、暁神」

 

クリスの名乗りの時はひと際大きな歓声が上がったが、何故か俺の名乗りの時はブーイングが起きた。恐らくさっきのモモとのやり取りを見ていた生徒たちのものだろう。

人気者の彼女を持った宿命だな本当に。

 

「ワシが立ち合いのもの決闘を許可する。勝敗の結果は参ったと言わせるか気絶させるかのどちらか。決した後にも関わらず相手を害しようとするなワシが介入する。よいな?」

 

「承った」

 

「分かりました」

 

告げられた注意に答える。それに頷いた鉄心さんは1歩後ろに下がり手を振り上げ、

 

「いざ尋常に――はじめいっ!」

 

開始の合図と共に勢い良く振り下ろした。

 

開始直後クリスは俺に向かって突っ込んで来た。それに対して俺は足を肩幅ほどに広げ両腕をだらりと下げ、構えることなく待ち受ける。

 

「ハァッ!」

 

そんな俺を訝しく思っただろうがクリスは動きを止めることなく間合いに踏み入ると、裂帛の声と共に手に持つレイピアで鋭い突きを放ってきた。

 

クリスの間合いは俺の間合いより1歩広い。身長的には俺の方がリーチが長いが、武器を持っているクリスの方が若干間合いが広くなるのだ。

こちらが踏み込めば交差法的に反撃する事は出来るが、とりあえず様子見でクリスの攻撃を捌く事に決めた。

レイピアの切っ先が当たる直前に右腕を前に出し、人差し指と中指でその切っ先を挟むと間を置かずに手首を捻り肘を曲げると、突っ込んできた勢いを殺さず利用してクリスを後ろに投げ飛ばす。

 

周囲の驚きの声、その後で沸き上がった歓声と気配に、クリスが身をひるがえして着地したのを感じ取り、俺はゆっくり振り返る。

驚愕の表情を浮かべていたクリスだったが、俺と視線が合うとすぐに持ち直し再び切っ先上げて構え直した。

 

だが今度は無闇に攻撃を仕掛けてこなかった。どうやらたった1回の交差で俺の強さを読み取ったようだ。

 

俺からは仕掛けるつもりはないから、これを機にクリスの気をしっかりと探る。

素手のミヤよりは強いが武器有りだといい勝負だろう。カズとは引き分けだと聞いていたが現状はクリスの方が強い。カズが自分の特性を理解して戦えばいい勝負だ。

 

実際引き分けになった勝負、カズは最後何も考えずに薙刀をレイピアにぶつけたと言っていた。カズの特性は反射神経と速さにある。頭であれこれ考えるよりも、戦いの流れに乗ってそこから感じたままに動く方がカズは強い。

あの勝負では最後にそれが発揮されたんだろう。だから引き分けに持っていけたんだ。

 

「どうしたクリス? もう終わりか? 存分に掛ってきて構わないぞ」

 

完全に動きが止まったクリスに声を掛ける。

ただ対峙しているだけにも関わらず、クリスは汗が噴き出ているし息も荒くなっている。それを見た観客の生徒たちも何が起こっているのか分からず少しずつ騒がしくなっていく。

 

それもそのはず。特に構える事なく突っ立っているように見せいているが、裏腹に付け入る隙や踏み込ませる隙はいっさい見せていない。

それを分かっていて攻撃を仕掛けてくるか、それとも為す術なく降参するか。クリスの武に対する心構えが問われる事になる。

 

踏み込んでくればそれだけ自負と意気込み、強くなりたいという意思があり、降参すれば所詮そこまでだという事だ。

 

「ハァッ!」

 

迷いを断ち切り自分を鼓舞するかのように声を上げたクリスは、レイピアを持って突き出していた右腕をたたみ胸につけると、腰を落とし力を溜め地面を蹴ると再び俺に突っ込んできた。

最初の1撃よりもさらに間合いに踏みこんで、今度は連続で突きを繰り出す。だが刺突は至極軌道が読み易く、また真っ直ぐなクリスの気性からか虚撃(フェイント)が殆どないので簡単にかわす事が出来る。

 

攻撃が当たらない事に焦れてきたのだろう、だんだんと動きが雑になってきた。それを見逃さずに左半身になって右手で突き出された右手首を掴み、左腕で腰を払い攻撃の勢いを利用してクリスをひっくり返えす。

呆然となっているところに追い打ちで左拳を振り下ろすが、クリスはすぐに我に返り俺の攻撃を身体を捻ってよけると、勢いよく立ち上がって間合いを取る。

 

初めて俺から攻撃を仕掛けた事で歓声が湧き起こる。

 

だがクリスの心境は穏やかじゃないだろう。僅か2回の攻防だが自分では勝てないどころか勝負にならないのも感じ取ったはずだ。

息を荒げ身体よりも精神的疲れが圧し掛かってきているはず。それなのに顔を悔しそうに歪めるあたり、負けん気は強そうだ。

 

まだまだ強くなるな、クリスは。

 

「まだ続けるか? それともここで降参するか?」

 

俺の問いかけにクリスは首を振る。

 

「今の自分では貴殿の足元にも及ばないのは分かった。だが諦める事だけはしない」

 

言葉を切り右手を眼前に持っていきレイピアを掲げるように構え、まるで宣誓する騎士のような格好で言葉を続けた。

 

「次の1撃に自分の持てる全てを込める。受けてもらえるだろうか?」

 

「わかった。当てる事が出来たらクリスの勝ちだ」

 

俺が出した思わぬ勝利条件に一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに真剣な表情に戻り頷くとやや右半身になり右腕を胸につけレイピアの切っ先を俺に向ける。そして腰を落とし重心を低くし脚に力を込める。

連続突きを繰り出した時と同じ構えだが、纏っている気の質が違う。言葉通り全力を込めた一撃必殺を狙ってるようだ。

 

次の1撃で決着と周囲の生徒たちも悟ったのだろう息をひそめるように静かになった。

 

「ハアァァァ!」

 

静寂を打ち破るような掛け声を上げたクリスは地面を蹴り突っ込んでくる。地を滑るように駆けて俺の間合いの1歩だけ外に足を着いた瞬間、クリスに向けてだけ殺気を解放する。

急に浴びせられた高濃度の殺気に一瞬だけ躊躇ったクリスだったが、押し返すように気を込めると間合いに踏み込み俺の喉をめがけて渾身の突きを放った。

 

が――

 

「あと1歩、踏み込めなかったな」

 

クリスの放った突きは俺の喉には届いていなかった。

 

声を掛けられたクリスはその瞬間にレイピアを手放し両手と両膝を着いてうずくまると、大量の汗を流し過呼吸気味に息を荒げて肩を上下させている。

それも仕方ないだろう。命のやり取りをしたこのない少女が高濃度の、それこそ素人なら気を失いかねないほどの殺気に当てられたんだ。踏み込んできただだけでも凄い事だ。

 

ちょっとだけ大人げなかったなと反省しておこう。

 

「参り……ました」

 

荒い息のまま降参の意思を伝えたクリスを見て、鉄心さんの試合終了の号があがったのだった。




あとがき~!

「第58話終了。あとがき座談会、司会の春夏秋冬 廻です。今回のお相手は――」

「暁神です」

「大人げない暁神くんです。さて今回のお話ですが、神VSクリス。いかがでしたでしょうか?」

「まさか真っ先にクリスに勝負を吹っ掛けられるとは思っていもいなかったぞ」

「今回は君の強さの一端を学園中に知らしめるためのものだったんだけど、実は迷ったんだよね」

「何を?」

「最初は百代と戦わせようと思ったんだけど、学園で戦う理由がない」

「当たり前だろ」

「次に百代ファンの人たちとの戦闘なんだけど、君が百代の彼氏だと知ってるのは2-Fのクラスメイトたちだけ」

「ヤマたちが話したのはクラスだけだもんな」

「そう考えると、1番相手にふさわしいのはクリスという事になる」

「確かに転入初日にカズから勝負を吹っ掛けられてるもんな」

「その通り、クリスもそれに倣って君に勝負を申し込んだってわけ」

「でもなんでクリスはそうしたんだ?」

「クリスの心情は書いていないからここで言うけど、普段の状態では強さを見極められなかったんだ」

「強いのか弱いのか分からない、でもそんな俺にモモが素直に従っているから不思議に思い、それだったら自分で確かめればいい」

「そういう答えに至ったってわけ。書いてもよかったけど無駄に長くなりそうだから省いたんよ」

「ここで言うのに意味があるのか?」

「あとがきってある意味でのネタバレの場だからね」

「いつからネタばらしの場になったんだよ……」

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