真剣に私と貴方で恋をしよう!!   作:春夏秋冬 廻

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第55話投稿。


第55話 最後のメンバー、由紀江頑張ります

「何やらドタバタしてるが台所は空いてるぜー」

 

「では行きます松風……夕方に計画を発動させます」

 

「久々にまゆっち本気モードだぜ。激アツだぜー」

 

「はい! あ、でも先に買い物に行きましょう」

 

「しまらねーな……まゆっち」

 

 

――2009年 4月26日 日曜日 AM10:00――

 

  side 篁緋鷺刀

 

川神駅前商店街“金柳街”。

 

駅前のロータリーから続く道に並ぶ店で構成される商店街。

本屋からファミレス、昔ながらの八百屋や魚屋まであり、繁華街に大きなスーパーやデパートが出来ているが、僕としては情緒あふれる商店街の方が好きだ。

 

家を出る前に確認した買い出しリストを手に、最後の目的地である魚屋へと歩みを進める。

 

今日の夕飯の献立は既に決まっている。今夜は僕1人分だけだから簡単なものでもいいだろう。

凛奈さんは昨夜に続き今夜も新作の打ち合わせで外食らしい。というより僕は昨夜の打ち合わせの事は思い出したくない。

 

なんで関係のない僕まで連れて打ち合わせに行くのか不思議に思っていた。

最初は担当編集者さんやマネージャーさんが入学祝をしてくれるのかな、と思っていたが、連れられて行った料亭にいたのは見知らぬ女の人とその2人。

担当編集者さんの紹介で、今人気の少女漫画家さんと聞かされた時に物凄い嫌な予感がした。

 

だってあの人、僕が部屋に入った瞬間、凄く嬉しそうな楽しそうな、例えるなら面白い玩具を手にした子供のような顔をした。

 

案の定、嫌な予感は的中。どうやらこの漫画家さんが『男の娘』――男性でありながら女性にしか見えない人の事らしい――を題材とした新しい漫画を考えていて、僕に取材をしたいとの事だった。

 

うん、暴れても誰も僕を責める事は出来なかったはずだ。

 

だが僕は堪えた。

この紹介話は凛奈さんが言い出した事らしいから、暴れても取り押さえられるのが目に見えていたからだ。無駄な事はしてもしょうがない。

 

泣く泣く僕は顔で笑って心で泣いて握り拳で怒りを表して取材に答えたのだった。参考になったかは知らないけど。

 

だがどうやら打ち合わせ場所を高級料亭にしたのは、担当編集者さんとマネージャーさんのせめてもの罪滅ぼしからだったらしい。この2人も凛奈さんに強引に進めさせられた、いわば被害者なのだろう。

 

別れ際に謝意と謝罪の意味を込めた視線を送っておいた。

きちんと受け取ってくれたので一応は溜飲を下げたのだった。

 

家に帰り上機嫌だった凛奈さんは、そのまま夜にもかかわらず自分の新作の執筆を開始した。気分が乗っていたから一気にやってしまおうと考えたのだろう。

僕としてはそのままずっと起きておいてほしかったが、朝を迎え僕が起きて来た時にはすでにベッドで就寝していた。

 

たぶん、下手すれば夕方まで起きてこないだろう。

 

そんな事を考えつつ目的地の魚屋へ着いた時、見知った後姿が視界に入った。大事そうに刀の入った竹刀袋を抱える姿、間違いない。

 

「まゆ?」

 

「あ、タカさん!」

 

僕の呼び掛けに必死の形相で買った魚を受け取っていたまゆは、声に気付くと嬉しそうな声をあげて振り返った。

その腕に抱えられているのは食材の山……とまではいかないけど、とても1人で食べるとは考えられない結構な量の食べ物だった。というより付け合わせのものばかりでメインの食材は余りない。

 

変わった買い物をするなと思ったが、そういえば島津寮は土日自炊だけど、材料は常に冷蔵庫に入っているからメインの食材は買う必要がないんだっけ。

 

「タカさんも買い物なんですね」

 

「そうだけど……まゆの方はどうしたの? そんなにいっぱい買って」

 

僕の荷物を見て自分と同じ理由でここにいると察知したまゆに対して、僕もまゆの持つ荷物を指さして問い掛ける。

その問い掛けにまゆは少しだけ気合の入った声で答えてくる。

 

「はい、実は昨夜クリスさんとおっしゃる留学生さんの歓迎会に参加させていただいたんです」

 

「歓迎会って……島津寮での?」

 

そういえば遊んでいる時にモモ先輩が肉を持参してプチ宴をやるって言ってたっけ。僕はあの思い出したくもない用事のせいで断ったけど、まゆも参加していたんだ。

 

行けば良かったかな?

 

「はい。それでそのお礼として今日のみなさんの夕食を私が作ろうかと思いまして」

 

なるほど、どうして声に気合が入っているかと思っていたらそういう事だったんだ。そういえば以前、お弁当を交換しようと言ったけど拒否されてまだ実現していない。

僕より先に寮のみんながまゆの手料理を食べるという事実に、何故か少しだけ不満な気持ちが心に広がった。

 

「でも材料ってそれで足りるの?」

 

そんな自分の心の感情を表に出す事なく、再度まゆに問い掛ける。

対するまゆは嬉しそうに顔をほころばせた。

 

「実は実家から結構な量が送られて来たんです。でもさすがにお魚はありませんでしたので、買いに来たんです」

 

「そうなんだ。確かにいきなり魚を送られてもビックリするよね」

 

まゆの言葉に頷き少しだけとぼけて言葉を返すと、まゆも可笑しそうに笑いをこぼした。

 

「オイまゆっち、そろそろ帰らないと時間的にヤベーぞ」

 

またしても唐突に松風乱入。本当にタイミングが掴めない。

まゆは松風の言葉に腕時計で時間を確認する。僕もそれにつられて確認すると時間は午前10時半を指していた。

それに気付いたまゆは僕に向き直ると小さく頭を下げた。

 

「すみませんタカさん、そろそろ帰って仕込みに掛からないといけませんので……」

 

「別に謝らなくてもいいよ。頑張ってね」

 

「はい。ではまた明日、学園で」

 

「うん」

 

別れの挨拶をして去っていくまゆに軽く手を振って答える。

姿が見えなくなるまで見送り、一息ついてそういえば魚を買いに来たんだと思いだし振り返ると、魚屋のおばさんが何やら厭らしい笑みを浮かべていた。

 

しまった……まゆとの会話をしっかり見られているのを忘れていた。

 

「仲いいわねヒロちゃん。彼女?」

 

それから30分、恋話好きのおばさんの質問攻めに四苦八苦するはめになったのだった。

 

  side out

 

 

  side 黛由紀江

 

玄関から気配を感じました。

この気配から察するに直江先輩がご帰宅されたようです。

 

背中で感じるクリスさんの視線を受けながら、私は料理の手を止めずに進めます。と背中に感じる視線と気配が増えました。風間先輩と直江先輩と椎名先輩です。

どうやら私が料理している事に気付き台所に来たみたいです。

 

「あ、直江先輩。お、おおお帰りなさいです。き、きき今日は私が皆さんのご夕飯を、作りますから」

 

何とかいつもよりどもらずに、表情も険しくならずに言えたと思います。

そのおかげか、いつもなら顔を引きつらせて私を見る直江先輩が不思議そうに眺めた後、居間にいるクリスさんに言葉を掛けました。

 

「どうなってるんだクリス?」

 

「……本人に聞けばいいだろう」

 

何故か怒りを含ませた声で答えるクリスさん。そういえば朝なにやらドタバタしていたようですが、どうやら直江先輩とクリスさんが関わっていたようです。

そんなクリスさんを呆れたような雰囲気で見ていた椎名先輩が、直江先輩に私が料理を作っている理由を教えました。

 

「焼き肉のお礼だって。料理得意らしいから」

 

「おお、そりゃあわざわざありがとう!」

 

直江先輩がとても喜んでいらっしゃいます! ここは気合を入れてお答えしなければ!

 

「あ、いいんですいいんです!! お礼に是非食べて欲しいんです!!」

 

ああ! 期待されるとは何とも心地良いものなんでしょう松風! 凄くやる気が湧いてきます! 黛由紀江頑張ります! 最高の料理を作ってみせます!

 

(おー頑張れまゆっち!)

 

心に響く松風の応援を背に私は一生懸命料理を作ります。そんな私の後ろで何やら風間先輩たちがお友達のみなさんに呼びかけをしているみたいです。

椎名先輩が『モモ先輩たち』と仰っているので恐らく昨日、川神院から来た3名の方でしょう。風間さんが仰っている『ガクト』さんと『モロ』さんもいつも一緒に登校している方たちと思われます。

 

「タカはどうする大和?」

 

「呼ぶか。ヒロも今日は用事ないだろ」

 

その後聞こえた椎名先輩と直江先輩の言葉に、思わず料理の手が止まりかけました。

 

今、椎名先輩、『タカ』って言いませんでしたか? 言いましたよね? 聞き間違いじゃないですよね? 私の耳がおかしくなたわけじゃないですよね?

 

(オラにもちゃんと聞こえていたぜ。確かに『タカ』って言ってたな)

 

松風も聞いていたいという事は聞き間違いじゃないようです。

確かに毎朝の登校の時の人数は8人でした。遠目でしか見ていませんでしたが何となくタカさんに似た雰囲気の方がいらしたのは見ていました。

 

あれはやっぱりタカさんだったんですね! 私の願望が思わせていた勘違いじゃなかったんですね! なんかタカさんとの出会いは私にとっていい事尽くしですよ松風!

 

(まるで運命の出会いだなまゆっち!)

 

う、運命だなんておこがましい! あれ? でも待って下さい。という事はもし私が風間先輩たちのグループに入る事が出来れば、タカさんともっとお近付きになれるという事じゃないでしょうか?

 

(おお! まゆっち! そりゃあ一粒で二度美味しいぜ! タカっちにも食べてもらえるかもしれねーんだ! こりゃ料理を頑張るしかないんじゃねーのか!?)

 

はい! タカさんにも食べていただけるかもしれないんです! 黛由紀江、誠心誠意精魂込めて丹精込めて頑張らせていただきます!

 

  side out

 

 

  side 篁緋鷺刀

 

大和君から電話を貰い、凛奈さんには晩御飯を食べてくと言い残して、僕は島津寮の玄関をくぐった。

 

台所からいい匂いが漂ってくる。まゆが作った夕飯だろう。

これから出てくる料理に、自分でも何故か分からないが大きな期待をよせて僕は居間へ足を踏み入れた。

みんなはもう揃っていたようで、僕が最後だったけどちょうど料理をテーブルに並べていたまゆと視線がぶつかる。

 

「タカさん!」

 

「また会ったねまゆ」

 

みんなから突っ込まれると分かっていても、嬉しそうに小さな笑顔を浮かべて声を掛けながら駆け寄って来るまゆを見ると、僕も嬉しくて笑みがこぼれて仕方なかった。

 

「やっぱりタカさんだったんですね」

 

「やっぱり?」

 

「はい、実は以前から寮のみなさんが一緒に登校しているのを後ろから見ていたんです。その中にタカさんらしい人を見かけていたんですけど……」

 

「確信がなかったって事だね。で、今日ここに僕が来た事で『やっぱり』って言葉になったんだ」

 

僕と会話をしているまゆの後ろで、モモ先輩と大和君と岳人君と京ちゃんの顔が、新しい面白い玩具を見つけたように表情が厭らしいニヤケ顔に変わった。

 

やっぱり間違いなくからかわれるね、あの顔を見ればすぐに分かるよ。ほら始まったよ。

 

「『タカさん』ねぇ……」

 

「『まゆ』だってさ……」

 

「やけに仲がいいじゃねーかよ」

 

「なるほど~あの1年が噂のタカのレズ相手だったとはな~」

 

「聞きたい事はいっぱいあるだろうが今は飯が先だ。せっかく作ってくれたんだから温かいうちに頂こう。尋問は後でも出来る」

 

大和君に京ちゃん、なんか物凄く含んだ言い方だね。

岳人君、そんなニヤケながらも嫉妬めいた器用な視線を送るのはやめてくれないかな。

モモ先輩、その噂に対して僕が嫌な思いしてるの分かっていて言ってるよね絶対。

ジン兄、助けてくれたのは嬉しいけど尋問は酷いんじゃないかな。間違っていないから余計に悲しくなるよ。

 

とりあえずみんなジン兄の言葉に従って、僕とまゆに対する――殆どが僕に対してのみだと思うけど――追求をいったん止めて席に着く。

もう既にキャップと一子ちゃんと卓也君とクリスさんの4人は席に着いていた。キャップと一子ちゃんなんて目の前に並べられた料理を食べられるのを今か今かと待ち構えている。

 

僕も自分の行動に恥ずかしがっていたまゆを促して席に着いた。

 

「お、お口に合えば良いのですが……」

 

最後に僕が座ったのを確認してまゆが遠慮がちに切り出した。

テーブルに並ぶまるで料亭で出されるような料理の数々に、みんなそれぞれ感想を述べると一子ちゃんの『いただきます』の言葉にいっせいに箸を伸ばした。

 

花造りで盛られた鯛の刺身を口にしながらまゆの様子を見る。

何やら緊張した面持ちだが、あれはたぶん美味しいと思って欲しいと考えているんだろう。見た目すら凝っている料理の数々を見れば心配する事じゃないと思うんだけどね。

 

「おお、美味いなこの鯛の刺身」

 

「盛りつけも花造りで見た目も凝ってるな」

 

「春菜の粕漬けがいい味を出しているし、(ふき)(とう)の湯葉包み揚げもカラッとして……」

 

まゆの心配もよそに料理はみんなに好評だった。特にクリスさんには日本料理そのものな献立の今回の料理に、まさに至福の時とでも言うような笑顔を浮かべていた。

 

みんなから与えられる称賛に、ちょっとだけおどおどしながらもまゆは素直に、でも少しだけ表情を強張らせながら受け取っている。

 

「あの、タカさんはお口に合いましたか?」

 

みんなとの会話の合間を縫って、まゆは隣に座っていた僕に耳打ちして聞いてきた。

きっとまゆはこういった行動がみんなに娯楽を与えているって事に気付いていないんだろうな。異性どころか同性の友達もいないって言ってたから。

 

「うん、思っていた通りの腕だね。やっぱり今度お弁当交換しようよ」

 

だが分かっていても僕は答えてあげる。今のまゆは友達とコミュニケーションを取るのが嬉しくて仕方ないんだろう。

噂も、からかわれる事も、今のところは僕が我慢すればいいだけだし。

 

「ありがとうございます」

 

僕の答えに満面の笑みを浮かべるまゆ。そんな彼女を見て自分たちに対する時の態度と、僕に対する時の態度の違いにモモ先輩が本格的に底意地の悪い笑みを浮かべ始めた。

今度はジン兄の援護は受けられないだろう。事実ジン兄は僕の視線を受けてしょうがないといった感じで肩をすくめた。

恐らくクリスさんを除くみんなは絶対に僕とまゆの関係を聞きたいはずだ。

 

「さ~てタカ~。話してくれるんだろうな」

 

笑顔と同じ底意地の悪い口調でモモ先輩が先陣を切った。

とぼけても無理だろうし正直に話をした方がいいだろう。だけどまず先手を打っておかなければならない事がある。

 

「分かったよ、聞かれれば答えるけどまゆには質問しないでね」

 

「どうしてだ?」

 

「さっきまでの態度を見ていれば分かるだろガク。質問しても緊張してまともに答えを返すのは難しいという事だ」

 

僕の言葉が意外に思ったのか、不思議そうに聞いてきた岳人君の言葉に答えたのはジン兄だった。

その言葉に今までの寮内と昨日の歓迎会でのまゆの行動を思い出したのだろう、寮住まいの4人とモモ先輩、一子ちゃんは頷き、それを見た卓也君もまゆの性格を察したんだろう頷いていた。

 

まゆ自身も今までの自分を振り返って恥ずかしかったのだろう、僕の隣で顔を伏せ小さくなっていた。

 

「まあいい。じゃあタカに聞くが、その子が噂の彼女か?」

 

「ぐっふ! ゲホ! ゲホ!」

 

唐突なモモ先輩の言葉に口直しに飲んでいたお茶を喉に詰まらせるまゆ。僕はそんなまゆの背中をさすりながら少しだけ困りながら答える。

 

「噂になってるのは知ってたけどそんな関係じゃないからね。そもそもその噂、僕が女って事が前提でしょ?」

 

「どっちから声かけたの? タカのナンパ? その子の逆ナン?」

 

今度は京ちゃんからだが、あり得ないって分かってて聞いてるよね。

 

「僕たちの性格を考えればあり得ないって分かってるでしょ? ナンパじゃないけど声を掛けたのは僕から」

 

「出会ったのはやっぱ入学式か?」

 

やっとまともな質問をして来たのは大和君。こういう質問を待っていたんだ。

 

「再会は入学式だけど、3年前にまゆの故郷の石川県で1度だけ会ったんだ」

 

「そういえばその頃、凛奈さんに連れられて加賀温泉郷に行ってたな」

 

僕の言葉にジン兄も3年前の事を思い出したのか、腕を組み考えながら僕の答えを裏付ける言葉をくれた。

ジン兄の言葉がちょうどいいきっかけだったので、僕は3年前のまゆとの出会をみんなに話した。まゆも所々ではあるが話に参加して僕たちの出会いを補完していた。ていうよりは、僕よりまゆの方が鮮明にその出会いを覚えている感じだった。

 

「ふ~ん、それで『タカさん』と『まゆ』って呼び名なのね」

 

「面白い出会いしてんな」

 

「でも凄い偶然だよね。昔1度会って本名すら名乗り合わなかったのに、3年後に同じ学校で再会するなんて」

 

僕たちのお互いの呼び名の理由に納得したといった感じで頷く一子ちゃん。当時の僕たちのやり取りに笑いが止まらないキャップ。ちょっとだけ興奮気味に僕とまゆの再会を感心したように言う卓也君。

 

でも1番興奮していたのはクリスさんだった。

 

「これはまさに運命ではないか! 幼き頃に出会った少年少女が大人になって再会する! そして互いを想い合い結ばれる!」

 

それはどこの少女漫画の世界ですかクリスさん。

それよりあまり声高に言わないで下さい。ほら、まゆが恥ずかしさに耐えきれず再び俯いちゃったし、モモ先輩と京ちゃんが物凄くイヤミったらしい笑顔でこっち見てるし、ジン兄も大和君もそんな2人を見て呆れていないで何か言ってほしい。

 

そろそろ僕でも許容できなくなりそうだよ。

 

「で? もうやっちまったのかタカ?」

 

無神経で場を弁えない、そしてまゆにとってセクハラ過ぎる岳人君の言葉に、ついに容量の限界が超えた僕は持っていた箸を手首のスナップだけで岳人君の喉めがけて投げた。

 

「グゲェ」

 

潰れた蛙のような声を出す岳人くんは、いつの間にか隣に移動していたジン兄が放った裏拳をまともに顎先に食らい、脳震盪を起こし気を失いテーブルに突っ伏した。

 

余りにも自業自得過ぎる結末に、誰1人として岳人君に同情しなかった。




あとがき~!

「第55話終了。あとがき座談会、司会の春夏秋冬 廻です。今回のお相手は――」

「皆様お久しぶりです、黛由紀江と――」

「オッス! オラ松風だぜ!」

「すでに2人1組扱いだね君たちは……まあいいか、さて今回のお話ですがまゆっち仲間入り前哨戦とでも名付けておきましょう」

「1話で終わらせるつもりじゃなかったんですか?」

「ズルズル延びてるぜ、ボンクラ作者」

「ひどい言われようだ。確かに1話で終わらせようと思っていたんだけど、原作と違ってすでに緋鷺刀という友達がいるんだから、オリジンルシーンを入れるとどうしても1話で収めることは出来ないんだよ」

「という事は原作とはずれた展開になるということですか?」

「いや、大まかな筋は一緒。ただね……」

「どうやってタカっちを織り交ぜようか考えてる最中なんだろ?」

「鋭いね松風。まあそういう事。次の話で君が風間ファミリーに仲間入りを懇願するんだけど、緋鷺刀をどういう立場で発言させようか、結構難しいんだよね」

「あの、それはネタバレになってしまうんじゃないでしょうか」

「確かに……この話はここまでにしよう」

「それよりも作者、タカっちはまゆっちに対して特別な感情でも持ってるのか?」

「ま、松風!?」

「(松風が言うってことはこの子は緋鷺刀が自分に特別な感情を持ってほしいと思っているのかな?)……どうだろうね。どうしてそう思うんだ?」

「いや、文の所々にそう感じる言葉が……」

「もうやめてください松風!」

「おおう! 悪かったぜまゆっち!」

「セルフツッコミとセフル謝罪……なかなか面白い事するねホント」

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