また、文量にばらつきがあります。ご了承ください。
程度の差はあれネタバレを含みます。話によっては結構なネタバレがあります。
下記に有と記載したものは結構なネタバレありです。閲覧時の参考にしてください。
以下、簡易的内容
和美@取材助手
裕奈@お買い物
アキラ@お散歩
木乃香@図書館島
最後に。基本的にいちゃつき話です。
一言: ありがたいことです。ほんなこつありがたいことです。
取材宣言(和美@取材助手)
「ほら、次はこっちだよ。早くしないと日が暮れちゃう!」
「もう今日はここまででいいんじゃないか? ほら、丁度よくそこにベンチもあるし、休憩してから帰ろうぜ?」
「むぅ~、確かに今からじゃ狙ってた絵は取れないか。じゃ、明日もよろしくね?」
「ああ、いいぞ。何せオレは便利屋“よこっち”だかんな。美女、美少女の依頼は最優先でやってやるよ。それに、和美ちゃんにはいつも宣伝してもらってるからな」
「大したこと宣伝はしてないんだけどなー。ま、役に立ってるんならいいよ」
そう言ってベンチへ腰掛ける横島と和美。彼らは、二人で麻帆良新聞へ掲載する記事の取材を行っていたのである。と言っても、横島が記事をかける筈もなく、ただの機材持ちである。
「しっかし、歩いたなぁー。オレは大丈夫だけど、和美ちゃんは大丈夫か? 疲れたんならおぶって帰るぞ?」
「大丈夫。いつも取材で歩き回ってるからね。体力にはそこそこ自信あるんだ。まぁ、普段はチャリなんだけどね」
「ん? じゃあ、何で今日はチャリじゃないんだ? オレがいるからか?」
「あー、違う違う。今回の企画については説明したでしょ? “徒歩で行く麻帆良オススメスポット”って。歩いて行くことが前提となる企画だからね。こういうのは私も実際に歩いてみないとさ」
「何で?」
「う~ん、何て言ったらいいかな。リアリティがなくなるっていうか、何処か嘘っぽくなる気がするんだよね。それに実際に歩いた方が、読者と視点を共有できる気がするし」
「ほー、そんなことも考えてんのか。和美ちゃんは偉いなぁ」
感心した様子の横島に、和美は少し恥ずかしそうに顔を背ける。報道部員として取材を重ねてきた和美には、横島の言葉に裏がないことがよく分かるからである。
そんな和美の様子に気がついていない横島は、言葉を続ける。
「それで、あといくつ取材する予定なんだ?」
「えっと、あと二つかな。それで、最後に世界樹広場の写真を撮って終わりかな。駅前から出発して、世界樹までってコースだからさ」
「じゃ、昼からでも余裕だな。明日は昼飯食ってから、駅前集合でいい?」
「ああ、いいよ。……何ならお昼一緒に食べる?」
「魅力的なお誘いだが、それはまた今度な。オレだけ外食なんてしたら、タマモたちが拗ねちまう。この前も千鶴ちゃんと二人で食事に行ったら、タマモたちが拗ねて大変だったしな」
横島の言葉に拗ねるタマモたちの姿を思い浮かべる和美。外食云々よりも、横島と誰かが食事に行くことの方が、タマモたちには面白くなかったのではないだろうかと和美は思う。
いつも落ち着いた雰囲気の彼女たちだが、横島の口ぶりからして、裏では拗ねたりしているらしい。これは直撃取材をして真相を暴かなければと、和美が気合を入れていると横島がジッと前を見ていることに気づく。
横島が見つめる先、それは沈みゆく太陽――夕日であった。
此処ではない何処か遠くを見ている横島の姿に、しばし言葉を失う和美。気がつくと、和美は横島の手を握りしめていた。
「どうした?」
「ううん、何でもない。さ、帰ろ?」
「お、そうだな。日も沈んじまったし、さっさと帰るか」
いつものように笑って答える横島。それに和美は何も答えず、横島と手を繋いだまま夕日に背を向け足早に帰り道を歩く。和美には夕日が、横島を自分の知らない何処か遠くに連れていくような気がしていた。
そんな感情に戸惑いながらも、和美は横島に話しかける。
「夕日もいいけど、私を放ったらかしにしないでよね! 遠くの夕日より、近くの美少女を見た方が絶対いいって!」
「はは、そりゃそうだ。近くにこんな美少女がいるんだ。夕日を見るより、和美ちゃんをみなきゃな」
いつもの調子で答える横島に安心した和美は、小さく呟く。
――いつかあんな顔をした理由を取材してやる! 私のことをどう思っているのかもね!
今日という日に感謝(裕奈@お買い物)
麻帆良市内商業区にあるスポーツ用品店に横島は来ていた。元々は事務所で出すお茶などの補充に来ていたのだが、店を出たところで偶然出会った裕奈に付き合わされたのだ。
「う~ん、やっぱりこっちかにゃ~。でも、値段がな~」
「ほー、バッシュって高いんだな。いや、スポーツ用品が全体的に高いのか? 運動する為のもんだから、しっかり作ってある分ってことなのか」
「う~ん、それともこっち? でも、やっぱり値段がな~」
「部活が盛んなせいか凄いな~。スポーツ用品だけで四階建てって。しかも、ワンフロアが広いし」
「う~ん、やっぱりこっち? 値段はちょっと高いけど……」
「麻帆良の運動部を全てカバーしてるってのが凄いよなー。ラクロスの網? とか売っているとこ初めてみたし」
「う~ん、どっちにしようかにゃー。それとも他のにしよっかにゃ~」
「あ~、どれで迷ってんだ?」
スポーツ用品店の規模に感心している横島だったが、裕奈の聞いてアピールに根負けして問いかける。聞かれた裕奈は、横島の手を取ると迷っているバッシュについて説明し始める。だが、知識のない横島には値段以外の違いはよくわからなかった。
「つまり、一番欲しいのは値段が高くて手持ちが足りない……と。因みにどれくらい足りないんだ?」
「えっと……3000円くらいかにゃ?」
横島の問いかけに財布の中身を確認しながら答える裕奈。その間もチラチラと横島を横目で見ていることや、先程までの言動からしてお金を借りられないかと思っているようである。お金は借りたいが、自分から言い出すのはどうかと迷っているのが横島にはよく分かった。
「ま、いいかな? そういえば裕奈ちゃんって、この前のテストで成績上がったんだって?」
「え? う、うんちょっとだけだけど……。中間より50位くらい上がったけど……なんで?」
「じゃ、そのご褒美ってことでオレが3000円出してあげるよ」
「いいの!? あ、でも、流石にそれだけで貰うわけには……。貸してくれるだけでいいよ? あとでちゃんと返すしさ」
横島の提案に一度は喜んだ裕奈であったが、すぐにそれは悪いと借金という形でいいと言う。裕奈はその後も断り続けるが、横島は笑って取り合わない。結局、欲しいバッシュが買えるのだからと裕奈が折れるのであった。
数分後には、購入したバッシュが入った袋を胸の前で抱きしめる裕奈の姿があった。
「うぅ……ごめんなさい、お父さん。誘惑には勝てなかったよ……でも、嬉しっ!! ありがとね、横島さん!」
「うむ、それを履いて精進したまえ」
「ははは、なにそれ! でも、頑張るよ。目指せっ! 一回戦突破!!」
「え? そんなに弱いの?」
「……あー、何かやる気なくなったなー」
「ゴメン、ゴメン。お詫びにケーキでもどう?」
「しかたにゃいにゃー。今回はそれで手を打ってあげよう。さ、そうと決まったら早く早くっ! 美味しいお店知ってるんだ!」
胸を張って言う裕奈。あれほどお金を貰うことを遠慮していたのに、そこは女の子。ケーキを奢ってもらうことは別のようである。裕奈は横島の手を掴むと駆け出す。
走りながら、裕奈は横島に大きな声で告げるのであった。
――バッシュも買えたし、ケーキも食べれる。横島さんと会えて良かった!!
アナタと歩く(アキラ@お散歩)
「ありがとう、横島さん。散歩の付き合ってくれて」
「いいって。こんな早い時間にアキラちゃんみたいな美少女を一人には出来んしな」
「もう……すぐそういう事言う。お世辞でも恥ずかしいんだよ?」
「お世辞やないんやけどなぁ。……でも何でこんな早朝に?」
「……秘密」
早朝の麻帆良都市内を並んで歩く横島とアキラ。
アキラは昨夜“よこっち”で開かれた勉強会に参加したあと、タマモたちの勧めるままに泊まっていた。慣れない寝具だった為か普段より早く起きたアキラは、散歩でもしようと玄関を出たところで、新聞配達の助っ人から帰ってきた横島と鉢合わせ、横島と共に散歩へ出かけたのである。
「それで何処まで行く? 世界樹広場まで足を伸ばしてみるか?」
「そうですね。横島さんが構わないのなら」
「じゃ、決まりだな。そうだ! 途中で朝飯買って広場で食べよう! パン屋ならこの時間でも開いてるとこあるだろうし」
「タマモちゃんたちが心配しませんか? 帰りに買って皆で食べた方が……」
「ああ、それもいいな。しかし、アキラちゃんと二人きりってのも捨てがたい。……美少女と世界樹の下で朝食。しかも、さわやかな朝がこれ以上ないほど似合うアキラちゃんと」
「また恥ずかしいことを……先に行きます!!」
頬を染め足早に歩いていくアキラ。しばらく歩いたアキラは、立ち止まって後ろを振り返ると横島が着いて来ていることを確認する。そして、また歩きだすのだ。
そのあともある程度進んでは立ち止まり、立ち止まっては歩くという行為を繰り返すアキラ。そんなアキラの行動に横島は、飼い主を気にする犬の姿を思い浮かべるのであった。
しばらくその状態が続いていたが、次第にアキラが立ち止まる時間が長くなり、ついには横島が追いつくのを待つようになる。時間が経ったことで恥ずかしさが薄れていくにつれ、恥ずかしさより横島と並んで歩きたい欲求の方が強くなったらしい。
「お、もう逃げないの?」
「もういいんだ。せっかくの横島さんとふたりきりの時間なんだし、一緒にいないなんて勿体ないよ。損だよ」
素直に心情を吐露するアキラに今度は横島が照れる。アキラ自身は何を言ったのか分かっていないようで、至って平気そうな顔である。横島が照れていることにも気づいていないようで、何故黙っているのかと小首をかしげている。
「どうしたの? いこうよ」
…
「あ、ああ」
再び歩き出す二人。今度は隣り合って歩く。その距離は肩が触れそうになるほど近い。そんな状態の中でアキラの視線は、歩みにあわせて揺れている横島の手を追っている。その視線に気づいた横島が、アキラの手をしっかりと掴む。
「あっ……!」
「嫌だった? 握りたそうに見てたからさ」
「い、嫌じゃないっ! このままがいい……」
俯きながら告げるアキラに何かを刺激される横島だったが、今は黙って先へ進む。繋いだ手から伝わるぬくもりを堪能しながら……。
手を引かれ歩くアキラは、口元に小さく笑みを浮かべると呟いた。
――このまま、アナタと歩いていきたい……っていうのは我が儘かな?
秘密の約束(木乃香@図書館島)
「ごめんな~ウチのせいで」
「気にしなくていいって。それより木乃香ちゃんが怪我しなくて良かったよ」
横島と木乃香の二人がいるのは、麻帆良学園が誇る図書館島。二人は図書館探検部の面々と一緒に来たのだが、現在は罠にかかり分断されていた。
「でも……。ウチがぼーっとしとったせいやし。いつもは引っかからんのに」
「だから、気にしないでいいって。ちょっと落ちただけなんだし。皆ともこの先で合流できるんだし」
「まぁ、そうなんやけど……ウチ、ダメやなぁ。横島さんまで巻き込んで」
自分を責め続ける木乃香。普段はポジティブな思考の持ち主だが、横島を巻き込んだことが影響していているようである。
「うーむ。じゃあこうしよう。今度オレにお弁当作ってくれない? それでおあいこってことで……ね?」
「……そんなんでええん?」
横島の提案にそんな簡単なことでいいのかと問う木乃香。彼女にとって、弁当を用意することはそれこそ朝飯前のことなのだから。それに対して横島は勿論と笑顔で答える。
「美少女の手作り弁当だぞ? これ以上のお礼はそうそうないよ」
「そうなん? 横島さんがそれでええんやったら、喜んで作るけど。ホンマにそれでええん?」
「おう、頼むな。じゃ、そろそろ先へ行こうか。皆も向かってるだろうし」
「はいな!」
横島の差し出した手を握ると笑顔で答える木乃香。二人はそのまま、先へと進むのであった。
「皆ゴメンなぁー。横島さんを少しの間独り占めさせてな」
「ん? 何か言ったか?」
「なーんも。それより、オカズのリクエストとかある?」
「そうだなぁー、何でも食べるけど……玉子焼にはちょっとうるさいぞ? 木乃香ちゃんにオレを満足させられるかな?」
「むぅ……。絶対、横島さんに美味しいって言わせたる!!」
「お、そりゃ楽しみだ」
和やかに会話をしながら歩く二人。手を繋いだままはぐれた面々と合流して、羨ましがられたり、からかわれたりする十分程前のことである。
――愛情をいっぱい込めた特製お弁当。残さず食べてな?
皆様のおかげでお気に入り件数が1500件を突破しました。ありがとうございます。
超短編を4本お届けしましたが如何でしたでしょうか。時系列は内緒ですが何時かはこう言う関係になっていく……“かも”と思って頂ければ。ええ。“かも”です。
記念小説は今後も続けて行きます。次回は15万UA。これは現在執筆中です。
大体5万UA、お気に入り500件毎にやっていきます。
基本甘めとしていますが、出来上がってみるとそうでもなかったり。
因みに今回の裏テーマは“手を繋ぐ”です。各ヒロインに手を繋がせてみました。
麻帆良のスポーツ用品店事情。
これらは拙作内設定です。
ご意見、ご感想お待ちしております。
活動報告は気が向いたら更新しています。関連記事はタイトルに【道化】とついています。