道化と往く珍道中   作:雪夏

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超から見た大停電。


休み時間 その4
超鈴音さん見る


 

 

 

 

 麻帆良某所にある超の隠しラボ。大停電を数分後に控えた時間にも関わらず、そこで超は作業をしていた。

 

「さてと、準備完了といったところネ。これで、麻帆良のあらゆる場所を記録できる。記録によれば、今夜暴走した旧家の分家筋の人物が麻帆良に侵攻をしかけてくる筈。誰が何処の防衛についたのかまでは記録されていないが、数年ぶりに大規模な召喚がなされた戦いとして記録に残っている。つまり、威力偵察の絶好の機会ネ」

 

 超の眼前には複数のモニターが配置されており、それぞれ麻帆良で警備を担当している人物を捉えていた。

 

「しかし、タマモさんたちが不参加になったのは想定外ネ。集団戦闘のデータも欲しかったのだが……ま、今夜は横島忠夫のデータが取れるだけよしとするネ」

 

 超がメインとなる画面に表示したのは、横島と高畑が担当する地区の監視映像。監視されていることを知らない横島たちは、呑気に会話をしている。

 

「さて、そろそろ仕込んでいた魔法生徒が見つかる頃ネ。彼女たちの対応に高畑先生が追われれば、必然的に横島忠夫が召喚された妖怪たちの相手をすることになる。さてさて、サポートタイプと思われる彼はどう切り抜けるか見物ネ」

 

 超が呟いている間に、画面から高畑が消える。仕掛けが上手く作動したのを確認した超は、思惑通りにことが進んでいることにほくそ笑むのであった。

 

 

 

 

「何というデタラメな男ネ……。気でスタングレネードを再現するとは」

 

 横島が”サイキック猫だまし”と呼ぶ技を繰り出した直後の呟きである。横島を監視していたカメラは閃光が走った瞬間から映っておらず、カメラは完全に横島を見失っていた。

 

「横島忠夫は見失ったが、妖怪たちは数を減らしているが健在。ここは慌てず、妖怪たちを中心に全体を俯瞰するネ。妖怪たちを倒す際に攻撃方向を推測すれば見つけることも出来る筈ネ」

 

 冷静に対処しながら記録を続ける超は、横島の技について考えを巡らす。

 

「目くらましとして使っていたようだが、本質は気を拡散させることで広範囲にダメージを与える技と見たネ。低級な妖怪程度ならそれだけで送還可能か。名前が和風なこととあわせて考えると、旧世界の神道系の術者と見たネ」

 

 超の脳裏に浮かんだのは、拍手(かしわで)。神社の参拝時に行う両手を音が鳴るように打ち合わせる行為である。拍手は邪気払いの儀式としても行われる為、横島のサイキック猫だましで低級妖怪が退いたことで、超は横島が神道系の術者であると推測したようである。

 そんな中、画面では異変が生じていた。

 

「あれ、妖怪の数が減っているネ。攻撃の瞬間を見逃したか?」

 

 画面では次々と姿を消していく妖怪たちが逃げ惑う姿が映っている。倒れる姿から攻撃が来た方向を推測するが、攻撃の軌道を操作しているのか常に移動しているのか横島の居場所を特定できない。

 

「単純なサポートタイプではないのか? しかし、正面から戦闘をしないということは防御に難があるのか。一撃で倒しているから、火力は十分な筈だし……。戦闘スタイルはアサシンって感じなのかもしれないネ。この移動力と完璧な隠遁術でサポートに徹したら、相当に厄介ネ。しかも、攻撃もある程度以上の威力がある……タマモさんや竜姫さんと組まれたら……」

 

 以前見た二人の戦闘スタイルを思い出し、相当に厄介なことになると確信する超。真正面から敵を攻撃する小竜姫に、変身を駆使し搦め手を使うタマモ。それらを影からサポートし、時に攻撃を行う横島。

 

「流石は向こうで傭兵を行っていただけのことはあるネ。三人揃えば本気のエヴァンジェリン相手でも優位に戦えるかもしれないネ」

 

 考え込んでいた超が画面に視線を戻すと、妖怪が倒されるところであった。

 

「今のは……魔法の矢ではないネ。知らない魔法……気ということも考えられるネ。盾みたいなものに見えたけど、もしかして護符? いや、単純に神道系の術者と言う訳でもないのか? タマモさんといい、この男といい中々手の内を明かしてくれないネ」

 

 タマモが以前見せたのはアーティファクトを用いた戦闘のみ。横島が使ったのも神道由来と思われる拍手の強化版に、盾のような何かを飛ばす技の二つのみ。しかも、横島に至っては画面に映らないという状態である。ちなみに小竜姫に関しては、手の内を知ってもどうしようもないというレベルである。

 

「あ、最後の一体が……。低級とはいえ、短時間にあの数を一掃するとは……。他の警備員たちより早いネ。あ、刀子さん所はもうすぐ終わるネ」

 

 横島の戦闘が終わったことで、その他の地点を確認する超。横島以外では刀子と神多羅木のペアが残りが少なく、首謀者と思われる男についても高畑と遭遇した為、今夜の侵攻が鎮圧されるのは時間の問題であろう。

 

「やはり、歴史に名を残す実力者は強いネ。それ以外も、順調に敵を倒している。流石は、麻帆良の警備を担当する人物たちといったところか。特に応援が派遣されることもなかったということは、この程度の侵攻は問題ないということ。大規模な召喚がされたとはいえ、低級妖怪のばら撒き程度では、おおまかな実力を測るのが精一杯か」

 

 後は記録した映像をゆっくりと分析することにした超は、自らの目的の為に用意する最低限の戦力を上方修正しながら、就寝する為にラボをあとにするのであった。

 

 

 




 幕間的お話。次話からは刹那との修行とかです。

 超の行動。
 これらは作中設定です。

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