道化と往く珍道中   作:雪夏

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お泊り編?


その5 麻帆良探索 始まるお泊り会

 

 

 

 

 

「さてと……先にDVDだっけ? それを見る?」

 

 よこっちの二階、共有スペースに移動したタマモたちは小竜姫が淹れたお茶で一息いれていた。そこにタマモが今後の予定を尋ねると、意外にもすぐに見ると言うと思われた木乃香が悩んでいた。

 

「う~ん、どないしようか? 明日菜は今すぐ見たい?」

 

「私!? いや、どっちでもいいって言うか。何で、本屋ちゃんたちとタマモたちの家に泊まりに来てるのか分からないし」

 

「ああ、それは今日のどかがうちの横島とデートしたから、そのついでね」

 

「ああ、本屋ちゃん今日デートだったんだ……って、デート!?」

 

 一人何も知らずにいた明日菜が驚愕する。そういえば、言っていなかったなと木乃香たちが考えていると、明日菜がのどかに対し興味津々と言った表情で質問する。

 

「で、デートってどんな感じなの? というか、横島? って人どんな人!?」

 

「そう言えば、アンタには説明したことなかったわね」

 

「そうですね。学校では一緒ですけど、放課後は美術部やらバイトやらで忙しそうでしたからね。横島さんに紹介するような時間はなかったですね」

 

 入学してからの明日菜は、憧れの高畑の近くにいたい一身で美術部に入部し、バイトの時間以外は美術部に篭っていた。その為、横島のことは全くといっていいほど知らなかった。これには、木乃香たちが横島と会うのは放課後なので、横島のことを話題に出すのが決まって放課後、つまり明日菜が美術部に特攻したあとだったということが原因の一つとしてあげられる。

 

 そんな明日菜に横島のことを説明していくタマモたち。彼女たちの主観で語っているので、説明が進むにつれて明日菜の中の横島像が二転三転する。

 結局、明日菜が理解したのは横島がタマモと小竜姫の保護者であり、生活を共にしていることと、便利屋を営んでいることだった。性格についても説明はあったのだが、落ち着いているという意見もあれば、落ち着きがないという意見もあり実際に会わなければ分からないと明日菜は判断していた。

 

「はぁ~、保護者ってことは、私と高畑先生みたいな関係ってことか」

 

「そうやね~。明日菜と一緒で、タマちゃんも竜姫さんも横島さんのこと好きやし」

 

 その木乃香の言葉に、二人の顔を凝視する明日菜。二人は明日菜の視線に若干引きながらも、頷くことで木乃香の言葉を肯定する。

 それを確認した明日菜は、二人の手を取るとぶんぶんと音がなるほど上下に動かす。

 

「頑張りましょう、二人とも! 私も協力するから、私と高畑先生のことも協力して!」

 

「あー、ありがとう?」

 

「が、頑張りましょうね?」

 

 明日菜の勢いに押されて頷く二人。そんな三人の様子を見ていた夕映は、のどかに小声で話しかける。

 

「タマモさんと竜姫さんが同じ人を好きなのに、どうするつもりなのですかね?」

 

「あははは、平等に応援するんだよ。きっと……」

 

 困った反応をしていたのどかだが、その後、明日菜がのどかが横島とデートをしたことを思い出し、友達がライバル!? と騒ぎ始めることを知る由もなかった。

 

 とにかく、第二回お泊り会はこのように騒々しく始まるのであった。

 

 

 

 ――その頃、横島くん――

 

「ふぃー。やった全部還したか? 普段の除霊に比べれば、数が多いだけだったなぁ」

 

 木の根元に腰を下ろし、一つため息を吐く横島。時間にすれば十数分の出来事であったが、闇に紛れて怪物たちにサイキックソーサーを命中させていくのは疲れたようである。尤も、怪物たちの方は横島が時間稼ぎに作った罠に気をとられ、気がつくと静かに一体ずつ還されていく状況に、阿鼻叫喚といった状況だったのだが。

 

 ともあれ、無事に陽動連中の撃退に成功した横島は、周囲の状況を知るために無線に集中する。

 

『……くん! 横島くん! 大丈夫かい? ……こちらは』

 

「お、無線が復活したか? こちら横島、陽動の奴らは全部倒しました」

 

『……良かった。ボクの方はちょっとトラブルがあってね。ここから離れられそうにないんだ。襲撃犯の捕縛には成功したから……だから、……くんはここで待機……いや、他のところに応援なんて行かなくていいから……』

 

 何やら、高畑は近くにいる人物と話をしているらしく、無線に途切れ途切れに会話が聞こえてくる。その声が女性であったことから、殺意が沸いてくる横島であったが、彼女が高畑が持ち場を離れた原因らしいことから、じゃじゃ馬な性格だと判断する。横島はこちらは一人で大丈夫だからと高畑に連絡するのであった。

 

「はぁ~、術者が捕まったってことは今日の襲撃は終わりかなぁ。にしても、こっちはこんな森の中に一人だってのに、高畑さん女と一緒とかいいよなぁ。いや、今のオレにじゃじゃ馬の相手する気力はないけど」

 

 高畑との連絡を終えて呟く横島。普段の横島なら、是が非でも合流を促すのだが女性の容姿が分からないことで幾分理性的に判断したようである。尤も、横島の勘は声の主が美少女だと囁いていたのを、仕事中だからと無理やりに諦めたともいえる。

 

「しっかし、こっちに来てから戦うのは竜姫たちに任せてたからなぁ。あの程度の奴らを相手に無駄に霊力を使っちまった気がする。文珠もストックはあるけど、逆に威力がありすぎて、使う文字を考えないとダメってのがなぁ」

 

 美神の所にいた時は、除霊時の物損を気にせず使っていたが、こちらでは秘匿されている為、なるべく人工物や自然に影響を与えないようにと竜姫に注意されている横島。その為、先ほども『爆』の文珠の使用を控え、静かに狩る方を選択したのだが予想以上に霊力を使ってしまったようである。

 まぁ、戦闘は竜姫たちに任せれば問題ないかと軽く考える横島だったが、後日この時のことを竜姫に聞かれた横島が正直に答え、特訓と言う名の地獄を見ることになるとは思いもしなかった。

 

「っくし。うー、春とは言え夜は冷えるなぁ。早く交代の時間にならんかなぁ」

 

 




 お泊り編とその頃横島の続きでした。といっても、この後お泊りも横島の方も大きな動きはない為、次回は明日菜も加えて麻帆良探索に戻ります。

 図書館島関連。
 これらは作中設定です。

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