道化と往く珍道中   作:雪夏

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お泊まり回の続きです。

一言:ネタがない……。


その5 お泊まり会 ガールズトーク?

 

 

 

 

 

「横島さんの手……ホンマ気持ちよかったわ~」

 

「確かに気持ち良かったですが……」

 

「……あぅ」

 

 横島が自室に戻った後も、談話室で談笑する少女たちの姿があった。最初は、他愛ない噂話――麻帆良都市伝説など――であったが、次第に話題は横島が彼女たちに行ったマッサージへと移っていた。

 彼女たちは先程の心地よさを思い出しているのか、頬を上気させながら感想を呟く。そんな彼女たちに向かって、どこか勝ち誇った顔でタマモが告げる。

 

「だから言ったじゃない。横島のテクを味合うと骨抜きになるって」

 

「それはそうなのですが……正直、想像以上といいますか。竜姫さんが割と平然としていましたので、油断したといいますか……」

 

「そやな~。竜姫さんもちょっとくらいは声出しとったけど、夕映とのどかなんて気持ちよすぎて、あふんあふん言わされとったしな~」

 

「なっ!? のどかはともかく私は違うのです!」

 

 木乃香の言葉に真っ赤になり否定する夕映。槍玉に挙げられたのどかはといえば、顔を真っ赤に染め上げ、隣りに座る夕映にも聞こえない程の小さな声で何やらブツブツと呟いている。妖狐の聴力でその内容を聞き取ったタマモは、その内容の過激さにのどかに対する印象を修正するのであった。

 

 その後も、からかう木乃香とムキになる夕映、妄想の世界に入り浸るのどかにその妄想を聞くタマモと混沌とした状況がしばらく続く。そんな彼女たちが正気に戻ったのは、横島の京都行きの準備を手伝っていた小竜姫が戻って来たときであった。

 

「皆さん、如何したんですか?」

 

「ああ、竜姫さん。横島さんの手伝い終わったん?」

 

「ええ。手伝いと言っても荷物の整理くらいですから、すぐ終わりました。それで、何を話していたのですか?」

 

「マッサージ気持ち良かったな~って、皆で話とったんよ」

 

 小竜姫の問いかけに、木乃香がほがらかに答える。

 

「ああ、心地よかったでしょう?」

 

「もうホンマ最高やったわ。まぁ、ちょっと恥ずかしかったけど……でも、竜姫さんたちが勧める訳が分かったわ」

 

 木乃香たちが受けたマッサージは肩と腕のみであったが、それでも異性に触れられるのはやはり恥ずかしかったようである。特に、男性が苦手なのどかなどはマッサージをする前から羞恥で真っ赤になっており、些細な刺激にも敏感に反応しては声をあげてしまい、更に恥ずかしがるという事態になっていた。

 

 因みに、本日は木乃香たちの前と言うことで自重していたが、普段は他にも背中や足もマッサージしている。そして、太もものマッサージ中に横島が我慢できず襲いかかり、タマモか小竜姫に撃墜されるまでがワンセットとなっている。

 

「それは良かったです。本当は足や背中もマッサージしてもらうのですが……」

 

「流石にそれは遠慮するわ。腕までならともかく、足を触られるのは恥ずかしすぎやし。のどかなんて引っくり返ってしまうんとちゃうかな?」

 

「そうかもしれませんね」

 

 そう言うと、のどかと夕映に視線を向ける小竜姫。木乃香はそうでもなかったが、この二人は横島と触れ合うと言うことを意識しすぎてしまい、少しの刺激で敏感に反応してしまっていた。他人に触れられる機会が少ない足や背中だと、冗談ではなく気を失ってしまう可能性があるのではと小竜姫は考えていた。

 

「ですから、決して癖になりそうとか思っていません。ええ、横島さんに全身を委ねてみたいとか思ってないのです。そこのところは誤解のないようお願いするです」

 

「はいはい、そういう事にしていてあげる。……ま、アンタたちが溺れるのも時間の問題だと思うけどね」

 

 夕映の言葉を聞いたタマモは、小さな声で呟く。その呟きが現実となるのか。今はまだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

「さて、これからどうしますか? 横島さんはもう休むそうですが」

 

「そやったら、横島さんのこと話さへん? ほら、本人の前じゃ、話しにくいこともあるやん? ……せっかくやし、この機会にタマちゃんたちがどう思ってるのか教えてーな」

 

 ずっと真っ赤になっていたのどかが落ち着いた頃、小竜姫がどうするかを尋ねると、木乃香が横島について語ろうと提案する。まだまだ共通の話題と呼べるものが少ない為、共通の知人を話題にしようというのである。

 最も、タマモたちが横島をどう思っているのか聞きたいというのが本音であろうが。

 

「何が折角なのかは分かりませんが……私は構いませんよ?」

 

「私も別に構わないわ。その代わり、木乃香たちが横島をどう思っているのかも聞かせなさいよ?」

 

 あっさりと了承する小竜姫とタマモ。それに少々拍子抜けしながらも、木乃香も了承する。夕映とのどかはと言えば、別に恋愛感情を持っている訳でもないのでと、こちらもあっさりと了承する。

 

「じゃ、言い出しっぺの木乃香からね。大分横島に懐いてるみたいだけど、どう思ってんのよ」

 

「おもろい人やな~とは思っとるえ。あとは、兄弟みたいに思てるとこはあるかも」

 

「兄弟……ですか?」

 

 木乃香の言葉に首を傾げる小竜姫。確かに、年の近い横島を兄弟のように感じることは不思議ではない。だが、人懐っこい性格の木乃香なら横島は友達だと答えると思っていたので、そこまで横島に親近感を抱いていたとは思っていなかったのである。

 

「そやけど……何か変?」

 

「いえ、そんなことはないですよ。ただ、横島さんが弟なのか兄なのか、どっちかなと思いまして」

 

 小竜姫のこの一言で、横島は兄か弟かという話へと変わる。

 

「そりゃ、弟でしょ。横島より、私たちの方がしっかりしてるしね」

 

「ああ、それは同意です。彼は兄というにはちょっと頼りない感じがするです。まぁ、年上で既に働かれている方に言うことではないのですが」

 

「そう……ですね。アレでやるときはやる人なんですが、普段はちょっと頼りないところがありますからね。やはり、弟でしょうか。のどかさんはどちらですか?」

 

 タマモと夕映、小竜姫の三人が弟だと主張。小竜姫に話を振られたのどかは、あわあわと慌てながらも自分の意見を述べる。

 

「わ、私は、その……お兄さんかと。横島さんは、その……優しいですし、私を気遣ってくれますから……木乃香さんはどうですか?」

 

「ウチ? ウチもやっぱりお兄さんかな~。頭撫でられたときや手繋いだときとか、お父様にされたときみたいな感じがしたし」

 

「まぁ、のどかへの気遣いは素晴らしいとは思いますが、やはり兄という感じはしませんね。何処か目を離すと何かやらかしそうと言いますか、悪戯好きな弟を見ている気がすると言いますか」

 

 のどかと木乃香の言葉に、夕映がやはり横島は弟みたいだと言っている背後で、タマモと小竜姫が顔を寄せて小声で相談していた。

 

(これは……ちょっとマズイ?)

(ですね。夕映さんは問題ないとして……のどかさんは横島さんの優しさに気づいてますからね。まぁ、木乃香さんの場合は、横島さんに父性を感じているようですし、問題ないのでは?)

(そうね……のどかも男が苦手みたいだから、これ以上横島と触れ合うことはないだろうし、問題ないか)

 

 三人が横島に惚れないかと、警戒を強めたタマモと小竜姫の二人であったが、問題ないと判断するのであった。

 

 

 

 

「何か脱線したけど、夕映は横島のことどう思ってんの? ま、さっきの話を聞く限り頼りないと思ってるのは分かったけど」

 

「勘違いしないで欲しいのですが、横島さんが全く頼りにならないと思っている訳ではないのです。お仕事では、チラシ配りや営業と堅実な手を打っていますし。……ですが、駅前で那波さん相手にナンパに見えるような行動をとったり、少々迂闊なとこがあると言うか、考えが足りてないような点が所々見受けられるのです。客商売をされるのですから、もっとご自身の行動が周りにどう見えるかを気にすべきではないでしょうか」

 

「そ、そうですね……明日にでも横島さんに注意しておきます」

 

 夕映の指摘に、小竜姫とタマモが最もであると同意する。横島のナンパ癖はいつものことと軽視していたが、商売をするのであれば評判は気にして然るべきであると。そんな当たり前なことも、横島のことだからと流していたという事実に慄く二人であった。

 

 そんな二人を他所に、夕映はのどかはどう思っているのかを尋ねていた。

 

「私は……いい人だと思う。それに、他の人と違って怖くないし……私の話をちゃんと聞いてくれるし」

 

 割と好意的な答えを返すのどか。そのことに少し意外そうな顔をする夕映であったが、のどかに対する横島の接し方を思い出して納得する。

 

(基本的に、のどかは男性と話すとき言葉に詰まってしまいますからね。相手もそんなのどかに苛立って聞き返したり、急かしたり。それで、萎縮して更に言葉に詰まるという悪循環。全く、男ならもっと余裕を見せて欲しいものです。まぁ、小学生に求めてもムダでしょうが。その点、横島さんは聞き上手ですし、リアクションが大きいので話していて楽しいですからね。私も……)

 

 次第に自分の考えに集中しだす夕映。そんな彼女を元に戻したのは、タマモの発した言葉であった。

 

「しっかし、横島が好印象ってのは違和感あるわね~」

 

「まぁ、一般受けはしにくい人ですからね」

 

 苦笑しながら紡がれた小竜姫の言葉に首を傾げる夕映たちであったが、詳しく聞くことはせず次はタマモたちの番だと声をかける。その瞳が好奇心で輝いて見えるのは、気のせいではないだろう。

 

「それで、タマちゃんたちはどうなん? タマちゃんは横島さんのこと好きなんやないかな~って、ウチ思っとるんやけど」

 

 その木乃香の言葉に、夕映とのどかが頷く。それに対するタマモの答えは……

 

 

「そうだけど?」

 

 

 実にあっさりしたものであった。あまりにもあっさりと紡がれたソレに、尋ねた木乃香たちの方が戸惑っていると、そこに小竜姫が言葉を重ねる。

 

 

「私も好きですよ。横島さんのこと」

 

 

「「「……え?」」」

 

 

 

 しばらくの間、停止していた木乃香たちであったが、すぐに二人に質問を重ねるのであった。

 

「ホンマ!? いつからなん!?」

「というか、何処で出逢ったのですか? いや、いつごろ知り合ったのかを聞くべきでしょうか?」

「あ、あの、告白とかは……?」

 

「っていうか、今のって宣戦布告なん?」

「というか、好きな人と同居というのは、問題があるような気がしてきました。タマモさんは、進んで間違いを起こしそうですし」

「……二人一緒に迫るとか? ああ、初めてが同時なんて」

 

 

 

 三人に迫られたタマモと小竜姫は、苦笑を浮かべながらもこの状況をどう解決しようかと悩むのであった。

 

 

 




 かなり期間が空いてしまい申し訳ありません。迷走していました。
 今回は、ガールズトーク回です。まぁ、強制終了ましたが。
 次回は一気に京都……の筈。多分。

 麻帆良都市伝説。
 これらは拙作内設定です。

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 活動報告の関連記事は【道化】とタイトルに記載があります。

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