道化と往く珍道中   作:雪夏

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お泊まり回です。

一言: 忘年会シーズンですねー



その4 いざ、お泊まり会!

 

 

 

 

「さて、私は夕飯の準備をしますが……皆さんはどうしますか? 今日はすき焼きですから、夕飯の手伝いもいりませんし」

 

 よこっちに戻って来た面々に小竜姫が尋ねる。食材を切るくらいしか手伝うことがないのだが、小竜姫にかかればそれもすぐに終わってしまうからである。

 

「そうねー、取り敢えず部屋に案内するわ。そんなに準備に時間かからないでしょ?」

 

 そう言うと、木乃香たちを部屋に案内する為に立ち上がるタマモ。木乃香やのどかは小竜姫に丸投げすることに気が引けているようであったが、構わないと言う小竜姫の言葉でタマモに続き部屋へと向かうのであった。

 

 

 

「今使える部屋は三つ。どれも内装は一緒。違うのは階段からの距離くらいね」

 

 三階に上がるとタマモが、階段近くの部屋の扉を開けながら言う。そのまま部屋の中に三人を案内する。

 

「ま、テレビとかはないけど寝るには十分でしょ。ああ、部屋自体は竜姫が掃除しているから綺麗よ? シーツとかも時間があれば干してるみたいだし。で、この部屋の向かいが竜姫の部屋ね。その隣りが横島で、もう一つ奥が私の部屋。使えるのはこの部屋とその隣りの二部屋ね」

 

 部屋から廊下に出たタマモが、使える部屋を指差すとどの部屋を使うのか木乃香たちに尋ねる。尋ねられた木乃香たちは、顔を見合わせるが横並びの三部屋のどれを選んでも変わりはないと即座に決めるのであった。

 因みに、階段に近い部屋から夕映、木乃香、のどかの順となった。

 

「じゃ、荷物を整理したら各自で下に降りてきて。あとでお風呂の順番も決めないとね。ここお風呂は一人用だから、ちゃんと決めないと横島と鉢合わせることに……」

 

 からかい混じりのタマモの言葉に、ナニを想像したのか顔が赤くなる夕映とのどか。木乃香も顔色こそ変わらないが、どこか恥ずかしそうである。

 そんな三人を放置して、タマモは先に二階へと戻るのであった。

 

 

 

 数分後、木乃香たちが降りてくると横島とタマモが食器をテーブルに並べ終え、席に着くところであった。

 

「お、来たか。ちょうど準備が出来たから、呼びに行こうかと思ってたんだ」

 

「それはいいタイミングだったようですね。しかし、何の手伝いもせず申し訳ありませんでした」

 

 夕映が謝罪していると、台所から食材を運んできた小竜姫が席に座りながら告げる。

 

「気にしないでください。皆さんはお客様なのですから。それより、今はすき焼きを楽しみましょう」

 

「そうそう。折角いい肉買って来たんだし、遠慮せず食べてくれ。ほら、座った座った」

 

 横島の声かけで、席に着く木乃香たち。横島の両隣にタマモと小竜姫が、タマモの向かいに夕映、その隣に木乃香、のどかの順で席に着くと、第一回よこっちすき焼き大会が開始されるのであった。

 

 

 

 はじめは横島の食べっぷりに驚いたり、遠慮からか中々箸を付けなかった木乃香たちだったが、次第に慣れてきたのか今は楽しく食事を進めている。

 そんな中、夕映が肉を溶き卵にくぐらせながら横島に問いかける。

 

「しかし、このお肉は本当に美味しいです。竜姫さんの腕も良いのでしょうが、素材自体が良い。かなりお高いのでは?」

 

「まぁ、今回は奮発した方かな。けど、夕映ちゃんたちは金のことなんか気にしなくていいぞ? 未来の美女たちへの先行投資と思えば、安いもんだからな」

 

「そうそう、気にしなくていいわよ。大体、私たちみたいな美少女たちと一緒に食事出来るんだから、横島はもっと喜びむせび泣いて私たちに貢ぐべきだわ。具体的には、お揚げを」

 

 軽口で夕映の質問に答える横島。タマモも気にすることはないと追随すると同時に、お揚げを要求する。そんなタマモに苦笑しながら、横島がお揚げをタマモの器に取り分けていると、木乃香が自分もと器を差し出す。タマモの我が儘で入れてみたお揚げであったが、中々好評のようであった。

 

「ま、タマモみたいになれとは言わないけど、オレに遠慮なんかしなくていいから。そんな大した人間じゃないし、年もそんなに離れてないし」

 

「横島さんは何歳なのですか? 見た目は若そうですが?」

 

 横島の言葉に夕映が質問する。木乃香たちもそれは気になるようで、箸を止めて横島の言葉を待っている。

 

「オレ? 一応、17歳かな」

 

「一応?」

 

 横島の一応という言葉に引っかかりを覚えた木乃香が聞き返すと、横島は箸を咥えたまま話しだす。最も、小竜姫に行儀が悪いと注意された為、すぐに箸を咥えることはやめたが。

 

「うーん、17歳を延々と繰り返してた気がするんだよなー」

 

「延々とですか?」

 

「そ。17歳の時のバレンタイン何て三回は……」

 

「何を言っているのか分かりませんが、これ以上聞かない方がいい気がします」

 

 横島の言葉を遮り、話題を打ち切る夕映。彼女の額には、カセットコンロの熱が原因ではない汗がうっすらと浮かんでいた。

 

 

 

 その後は、木乃香たちの初等部の頃の話を聞いたりしながら、穏やかに食事を進めていく。

 楽しかった食事が終わると、木乃香たちは竜姫と一緒に後片付けを行い、横島はその間に自室で京都行きの準備を進める。準備を終えた横島が入浴を済ませ、談話室へと向かうと、パジャマ姿の可愛らしい少女たちの姿が。既に入浴した後なのか、微かに上気した顔が少女たちに色気を与えている。

 

 そんな少女たちと共に、小竜姫の淹れたお茶を飲んでいた横島だったが、彼は急に立ち上がると叫びだすのであった。

 

 

 

「いやいや、お風呂イベントは!? オレが風呂に誰かが入ってるって気づかずに中に入って、タマモか竜姫にしばかれるってのがパターンだろ!?」

 

「……アンタ憑かれてんのよ。ほら、もう寝なさい。ね?」

 

 




 すき焼き食いてー。はい、お泊まり編です。もう一話続きます。
 風呂イベントはなしの方向です。期待された方はすみませんでした。
 次回はガールズトークの筈。


 これらは拙作内設定です。

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