道化と往く珍道中   作:雪夏

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短くてゴメンなさい。

一言: 今年の秋は……短い




その2 いざ京都……のその前に

 

 

 

 

 

 

「それで、部活の方は決まったんか?」

 

 お茶を飲む少女たちを微笑ましく見ていた横島が問うと、少女たちは談笑をやめて顔を見合わせたあと木乃香が口をひらく。

 

「今日はなー。うちらのお目当ての部活の説明会やったんや」

 

「ああ、図書館冒険部だっけ?」

 

「おしい! 図書館探検部や。そんで、説明会のあとすぐ入部届けだしたんよ。でも、部活勧誘期間が終わるまでは、活動出来んのが残念やな」

 

「仕方ないのです。図書館島は巨大な迷宮でもありますからね。入ったばかりの私たちだけでは地下へ行くのは危険という理由ですから。……本当に口惜しいですが」

 

 残念だと笑う木乃香。夕映は余程楽しみにしていたのか、本当に悔しそうである。そんな夕映の様子に苦笑しながら、横島は小竜姫とタマモに問いかける。

 

「で、お前らは? 部活どうすんだ?」

 

「言わなかった? 私たちは帰宅部ってやつ。この事務所やアンタの世話もあるしね」

 

「そりゃ、竜姫は助かるが……お前は世話される方だろ?」

 

「あら、世話させてあげているのよ。それに、アンタも私の体を楽しんでるでしょ?」

 

 タマモの言葉に、のどかと夕映は顔を真っ赤にして固まる。木乃香は変わらずニコニコ笑っている。

 

「なっ! 抜けがけしたんですかっ!?」

 

「抜けがけって言っても、竜姫より一回多いくらいよ。昨日、風呂上りの時にちょっとしただけだし。アンタも今日してもらえばいいじゃない」

 

 抜けがけがと食ってかかる小竜姫に、何でもないことのように告げるタマモ。その内容を聞いたのどかは、持ち前の豊かな想像力でナニを想像したのか、真っ赤な顔を両手で抑えソファーに沈み込んでいる。夕映も似たようなものである。

 

 因みに横島は、小竜姫がタマモに詰め寄る時に横島を吹き飛ばし為、絶賛気絶中である。

 

「そうですね……私も今夜にでもやってもらいます。でも、タマモちゃんは今夜はダメですよ? タマモちゃんだけあの心地よさを多く感じているなんて、ズルいですから」

 

「じゃあ、うちもいつかしてもらおうかなー。何や、二人の話を聞く限り気持ちよさそうやし」

 

 何故か、木乃香が自分もと主張する。夕映とのどかは、さらに想像(妄想)を掻き立てられたのか一言も言葉を発することなく、ただ震えている。

 

「木乃香さんもですか? じゃあ、早速今晩はどうですか? あ、そうだ。どうせですから、うちに泊まっていかれますか? 夕飯もご馳走しますよ?」

 

「う~ん、それも楽しそうなんやけど……明日菜がなー。あの娘のご飯作ってあげんといかんしなー」

 

 小竜姫の提案に心惹かれながらも、明日菜のことがある為、断ろうとする木乃香。そこにタマモが助け舟を出す。

 

「いっそ、明日菜も連れてきなさいよ。部屋には余裕あるし、客用の布団もあるし。ついでだし、アンタらも泊まってけば? 木乃香のついでにアンタらもやってもらいなさいよ」

 

 木乃香の発言で半ば想像の世界に飛び立っていた夕映とのどかだったが、いきなり向けられたタマモの言葉の意味を理解するなり大声で叫ぶ。

 

「無理ですぅ、男の人と……なんて! まだ、私にはそんな勇気は……」

「そうです! 大体、私たちは中学生になったばかりなのですよ! そんな破廉恥な関係は……大体、木乃香さんのついでにヤルとはどういう事ですか!?」

 

 その夕映の訴えに不思議そうな顔をするタマモたち。その様子を見て、夕映は自分たちとの意見が届いていないのかと、改めて言葉を紡ぐ。

 

「いいですか? 私とのどかは確かに横島さんを好ましいとは思っています。但し、それは人間的に見てであって、男女のそれとは違うのです。そんな相手に木乃香のついでに交わるなど、できるわけが……。大体、竜姫さんもタマモさんも、簡単に誘うなんてどうかしています。確かに、妻妾同衾という言葉もありますが……いえ、この言葉は造語らしいですから引用するのは間違いでしょうか。ともかくですね」

 

「あの、何か勘違いをされていませんか? 私たちは横島さんと、その……」

 

「残念ながら、アンタの考えているような関係じゃないわよ? 大体、そんな関係だったら、アンタらを泊めたりしないで私たちだけで楽しむわよ。私たちが言ってるのは、マッサージ。アイツうまいのよねー。風呂上がりに髪を乾かしてもらったあと、マッサージされるともう骨抜き?」

 

 タマモの言葉にしばし呆然としたあと、顔を真っ赤に染めあげる夕映。自分の勘違いに恥ずかしさ爆発と言った所であろう。密かにのどかも真っ赤になっているのは、そういうことだろう。

 

「ま、そう言う訳でアンタたちの懸念はなくなったわけだけど。どうする? 泊まってく?」

 

「え~と、先程のことは是非とも忘れて頂きたいのですが……」

 

「忘れてもいいけど、アンタら泊まりね。そして、横島のテクに溺れるがいいわ!」

 

 ふははと高らかに笑うタマモ。一体、彼女の目的は何なのだろうか。そう疑問に思う夕映とのどかだったが、ここはタマモの言葉に従った方がよいと判断する。

 

「分かりました。ただ泊まるだけなら、元々問題はなかったのです。弱みを握られた以上、泊まる事に異議はありません。いざ、お泊まり! です」

 

「ゆえゆえ、そんな言い方はダメだよ」

 

 力を込めて宣言する夕映にのどかが注意するが、恥ずかしさを隠すためか何処か興奮した様子の夕映には聞こえていないようである。

 

「事実ですから、気にしなくても構いませんよ。まぁ、安心してください。タマモちゃんも本気で言ってる訳ではないので。それで、木乃香さんはどうします? って、あら?」

 

 小竜姫はそんな二人に声をかけたあと、未だ高笑いを続けるタマモを尻目に木乃香に問いかける。しかし、そこには先程までいた筈の木乃香の姿はない。

 

 小竜姫が周囲を見渡していると、キッチンの方から木乃香と、先程まで気絶していた筈の横島が、お茶のおかわりをもって現れる。茶菓子の場所が分からない横島でも、お茶のおかわりを用意することは出来たようである。

 

「お~い、お茶のおかわり淹れた来たぞーって、どういう状況?」

 

「ホンマや。夕映とのどかはいつも通りやけど、タマちゃんが高笑いしとる。……何や、様になっとんなー」

 

 木乃香の言葉に、高笑いを続けるタマモに視線を向ける横島と小竜姫。確かに、タマモの姿は様になっている。

 

「本当。いつも偉そうだからだな、きっと」

 

「もしかしたら、美神さんの影響かもしれませんよ?」

 

「それは、嫌だなー。美神さんみたいな人は一人で十分だし」

 

「まぁ、そうですね。あの様な方が何人もいたら、地球は破滅するでしょうし」

 

 何やら物騒なことを口にした小竜姫であったが、すぐに何でもなかったかのように木乃香に話しかける。話題は勿論、お泊まり会についてである。

 

「それで、木乃香さん。お泊まりの件は……」

 

「あ、さっき横島さんにも言ったけどOKや。明日菜もいいんちょたちの部屋でお泊まりらしいから、問題なしや。ついでに、外泊届けも出してくれるって。夕映たちの分も頼んでおいたで」

 

 いつの間にか連絡していたようで、問題はないと答える木乃香。その上、夕映たちについても手配済だと告げる。その手際のよさに感心しながら、小竜姫は気になったことを尋ねる。

 

「明日菜さんといいんちょ? さんは仲がよろしいのですか?」

 

「んー、普段は犬猿の仲って感じやけど、いいんちょと明日菜は仲ええで。今日のお泊まりだって、バイトを始めて生活不安定な明日菜が無理していないか、近くで見る為やろし。今日も遅刻寸前だったのを気にしてたしな」

 

「そうなんですか。しかし、これで皆さんお泊まりということで。横島さんもいいですよね?」

 

 小竜姫が横島に確認をとる。名目上、この“よこっち”は横島の所有物であるからである。

 

「いいんじゃないか? 部屋はまだ余ってる筈だし。そうだ! 折角だから夕飯は奮発して、すき焼きでもするか!」

 

「ふふ、それじゃ買い物に行かないといけませんね。留守はタマモちゃんたちに任せて、木乃香さんも一緒に行きませんか? 着替えとかの荷物を取りに行くついでに」

 

「ええよ。ついでに、のどかたちの荷物も持ってくるなーって、聞いてないみたいやな」

 

 小竜姫に買い物に誘われた木乃香が、のどかたちに声をかけるが二人とも全く気づいていないようである。

 

 一応、タマモたちに書置きを残して、小竜姫と木乃香は横島を荷物持ちに引き連れて、買い物(と、荷物回収)へ向かうのであった。

 

 

 

 

 




 何でこうなったのでしょうか。本当は京都へささっと行く予定だったのですが。次話こそ京都に行きたい。その前にお泊まり会……はいいか。

 それと二日間はPCに触れません。SuperGTを観戦に行くので。
 ですので、感想などの返信は遅れると思います。

 これらは拙作内設定です。

 ご意見、ご感想お待ちしております。
 活動報告の関連記事は【道化】とタイトルに記載があります。

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