道化と往く珍道中   作:雪夏

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麻帆良女子中等部の入学式へ臨むタマモたち。新たに出会ったクラスメイト、近衛木乃香と親しくなるタマモたち。

一言: ネギ美味しいよね。うどんとかにネギ沢山いれるよね?



その4 竜姫とタマモと1-A 後編

 

 

 

 

 

 

入学式の時間が近くになるにつれ、騒がしくなる教室。大多数の生徒が教室内にいることもあるのだろうが、中学生活に期待している生徒も多いのであろう。

 

「ふふふふふ。タカミ……いや、高畑先生か。これからは、毎日一緒……!ふふ」

 

……若干、動機が不純な者もいるようであるが。

 

 

 

 

 

自分の前の席で先程から悦に入っている生徒について、木乃香に尋ねる小竜姫。隣のタマモも気になるようで、話しに入ってくる。

 

「あ、あの木乃香さん?神楽坂さんは……その」

 

「教室入って来たときからこうだけど……大丈夫なの?」

 

「あー、明日菜はな?高畑先生が絡むとこうなんや。高畑先生ってのは……ほら」

 

木乃香が新入生名簿を開くと、担任教師の名前を指差す。

 

「うちらの担任なんよ」

 

「本当ですね。気づきませんでした。担任だったんですね……」

 

「へー、タカミチが担任なんだ。あ、刀子が副担任じゃない。あのとき、そ…「アンタ、高畑先生を呼び捨てに!!」…なによ」

 

自分の世界に入っていた明日菜が、タマモの言葉に反応する。

 

「アンタ、今タカミチって」

 

「ああ、それが?」

 

「どんな関係なのよ!!」

 

「落ち着きーや、明日菜。タマちゃん教えたって?明日菜も知りたがっとるし」

 

「どんなって言っても……ね?」

 

「そうですね。こっちに来たときに、街を案内してもらったくらいです。担任だったから、案内してくれたんですね」

 

「そ、そうなの?好きだとかは……?」

 

「私が?ないない」

 

思いがけない問いかけに、顔の前で手を振るタマモ。小竜姫も苦笑している。

 

「そう……。でも、タカミチって……。やっぱり好きなんじゃ!?」

 

落ち着いたかと思われた明日菜であったが、未だ暴走状態であるようで再度問いかけてくる。呆れ顔のタマモに代わり、小竜姫が口を開く。

 

「神楽坂さん、タマモちゃんはほとんどの人を名前で呼びますから。本当に他意はないですよ?」

 

「……たい?」

 

「明日菜、明日菜。好きじゃないってことや」

 

「そ、そうなの?良かった~」

 

やっと納得したのか、机にひれ伏し安心する明日菜。その様子に、明日菜は高畑のことが好きなのだと悟る小竜姫とタマモ。そこに、木乃香が明日菜のフォローをする。

 

「ごめんな~。明日菜は高畑先生のことが好きなんやけど、そのせいでちょっと暴走とかするんや。本人を前にしたら、テンションあげるか固まるかするしな。今朝も昇降口で先生に会って、固まってもうたからウチだけ先におじいちゃんとこ行ったんよ」

 

「へー。ま、頑張りなさいな」

 

「ありがとー。あ、さっきはゴメンね?私は神楽坂明日菜。明日菜でいいわ。苗字は呼びにくいでしょ?そっちの人もね」

 

机から身を起こしながら笑顔で自己紹介をする明日菜。タマモと小竜姫は、

 

「葛葉タマモ。タマモでいいわ。よろしく」

「妙神竜姫です。竜姫で構いません。よろしくお願いしますね」

 

 

「よろしく!!」

 

 

 

 

 

自己紹介を終えると同時に、チャイムが響き教室のドアが開く。開かれたドアから現れたのはスーツ姿の高畑。彼は教室に入ると教壇にたち、生徒たちを見回す。

 

「まずは入学おめでとう。担任になる高畑だ。自己紹介はまた後でするとして、時間がないからね。早速、入学式に行こうか。廊下に並んでくれるかな。何、僕の後について講堂まで行って、入場したらA組の席に座る。式が始まったら、放送に従う。そして、式が終わったら順に退場して教室に戻ってくる。簡単だろ?じゃ、行こうか」

 

時間がないことを印象付けるかのように、すぐに教室を出る高畑。本当に時間がないのだと判断した生徒たちは、足早に廊下へ向かい並び出す。慌ただしく動くクラスメイトを眺めながら、タマモが口を開く。

 

「時間がない……?まだ式まで十分に時間あるんじゃ?」

 

「おそらく、講堂の外に何分前までに待機するとか決まっているんでしょう。しかし、教師が自ら廊下に向かうことで、生徒たちに行動を促すとは。中々やりますね、高畑さん」

 

隣で小竜姫が立ち上がりながら答える。タマモも移動しながら、会話を続ける。

 

「でも、出席も取らないってのはどうなの?」

 

「気配で人数を把握でもしたんじゃないんですか?事前に欠席の連絡があった人を除いた人数が教室に居たから、取らなかったとか」

 

「ま、どうでもいいけどね」

 

そう言うと、タマモと小竜姫の二人は列の最後尾に並ぶのであった。先頭を見れば、明日菜が木乃香を引っ張って立っているのが見えた。高畑が教室を出るのと同時に動き出しただけのことはあると、明日菜の行動力に感心する二人であった。

 

 

 

 

 

 

 

人によっては退屈な入学式も終わり、現在生徒たちはそれぞれの教室に戻ってきたところである。教壇には式の前と同じく、高畑の姿があり、その横にはスーツ姿の刀子の姿もあった。

 

「あー、それではLHRを始めるよ。まず……改めて入学おめでとう。君たちの担任となる、高畑・T・タカミチだ。ミドルネームのTについては、秘密ってことにしておこうか。担当教科は英語。よろしく頼むよ」

 

そこまで言うと、隣に立つ刀子を促す高畑。それを受けて、刀子は一歩前に出ると自己紹介を始める。

 

「副担任の葛葉刀子よ。担当教科は古典。よろしく」

 

そう言って、一歩さがり元の位置に立つ刀子。その後は、生徒たちの自己紹介へと移っていく。

 

「さて、今日は軽く自己紹介をしてもらおうか。そのあとは、明日の連絡事項を伝えたら解散だ。そうだね、出身小学校と……あ、麻帆良外部から来た子は外部って言えばいいよ。あとは、趣味とかかな?それじゃ、窓側の席の……後ろの方から頼むよ」

 

その高畑の言葉で自己紹介は始まっていくのであった。

 

 

 

 

 

「龍宮真名。外部から来たが、実家は龍宮神社。趣味は、ダーツかな」

 

長身で褐色の肌の美女が自己紹介を終えると、同じく長身で長い髪をポニーテールにまとめた美女が自己紹介を始める。

 

「大河内アキラ。麻帆良女子付属から来ました。趣味というか、好きなことは泳ぐことです。よろしくお願いします」

 

その後も、順調に自己紹介は進み小竜姫の番が回ってくる。

 

「妙神竜姫です。苗字は呼びにくいでしょうから、竜姫と呼んでください。外部から麻帆良に来ました。趣味は、剣術の稽古ですかね?よろしくお願いします」

 

「これは、手合わせをお願いしたいとこでござるな」「くー、強そうアル」

 

小竜姫の言葉に反応する者が数名いたが、何事もなく次の明日菜の番になる。

 

「か、神楽、神楽坂明日菜です!!本校初等部から来ました!す、好きなものは、たか…「落ち着いて、明日菜くん」…は、はい。好きなことは、体を動かすことです」

 

高畑の前ということで緊張していた明日菜は、自己紹介を終えるなり机に突っ伏す。あまりの緊張に、余計なことまで口走りそうになったが、気のせいであると信じたい明日菜であった。

 

その後、自己紹介は折り返しとなる人物へと差し掛かる。その人物は、長い金髪をなびかせ席を立つと周囲を見回し、自信あふれる態度で自己紹介を始める。

 

「雪広あやかですわ。本校初等部からこちらへ来ました。初等部のときもクラス委員長を任されていましたから、中等部でも立派に勤め上げる所存ですわ。趣味は色々ありますが、華道が好きですわね。皆様、よろしくお願いしますわ」

 

タマモと小竜姫は自己紹介を終えた少女を見つめる。護衛対象となるかもしれないのだから、他の生徒よりも興味を持って聞いていたがお嬢様言葉を現実に使うものがいることに驚いてもいた。

 

((お嬢様言葉って漫画だけの話じゃないんだ……))

 

 

 

 

小竜姫たちが衝撃を受けている間に、木乃香の番が回ってきていた。

 

「ウチは近衛木乃香いいます。本校の初等部から来ました。趣味は占いで、中等部になったんで、占い研究会をつくろうと思ってます。興味あったら、一緒にやらへん?」

 

笑顔で勧誘を兼ねた自己紹介を終えた木乃香。やって来たチャンスを逃さない、強かさを持っているようである。

 

「葛葉タマモ。タマモでいいわ。苗字だと先生とかぶるしね。外部から来て、趣味は……食べ歩き?好物は油揚げよ」

 

タマモが自己紹介を終えるが、次の人物が中々自己紹介を始めない。それに気づいた高畑が、促すとその少女――長い髪を首のあたりで二つに結んだ、メガネをかけている――が自己紹介を始める。

 

「あ、長谷川千雨です。付属からきました。趣味は読書です」

 

そう言うと、少女――千雨――は座る。おとなしい外見とは裏腹に、その内心では嵐が吹いていた。

 

(なんだよ!このクラスはっ!お嬢様言葉のヤツはまだいい。実家が神社とかもいい。だけど、ござる口調のヤツはなんだ!!キャラつくってんじゃねーよ!!しかも、小さく“にんにん“とか言ってんじゃねーよ!!しかも、前の席は二人とも変だし!なんだよ、趣味が剣術って。剣道じゃねーのかよ!剣術って、アレだろ!実践的な!!そんなの趣味にしてる中学生なんているかー!!それに、葛葉ってヤツもだ。趣味はいい。好物も……油揚げってのは変わってるが、それだけならいい。でも、なんだよ!その髪!ナインテールって!そんな髪型みたことねーぞ!!名前がタマモで、好物油揚げで、ナインテールで金髪って!!お前はアレか!九尾の狐にでも憧れてんのか!!)

 

 

 

 

一人の少女の心にツッコミの嵐が吹いていても、自己紹介は何事もなく続けられていく。

 

「明石裕奈!付属から来ました。趣味は、お父さんのお世話です!」

 

(なんだよ!趣味が父親の世話って!!)

 

千雨の嵐はまだまだ続く。

 

 

 

 

 

「桜咲刹那。京都から来ました。趣味は運動」

 

それだけ言うと、刹那は自己紹介を終えて席につく。彼女は、正直自己紹介どころではなく、他の生徒の言葉もほとんど耳に入っていない状態であった。何故なら、彼女の鋭敏な神経は、ある少女の気配を探り続けているからである。

 

(お嬢様……)

 

 

 

 

刹那から伝わる緊張の気配を気にかけていたタマモは、再びやって来た護衛対象となるかもしれない少女の自己紹介に耳を傾ける。

 

「那波千鶴です。麻帆良小学校からきました。趣味はボランティアです。よろしくお願いしますね?」

 

千鶴の中学生では中々持ち得ぬ落ち着きに関心する小竜姫。タマモはその落ち着きようから、小竜姫のように年齢を誤魔化しているのではと思ってしまう。その瞬間、悪寒が走るがすぐに霧散した為、気のせいかと思うタマモ。後日、明日菜にこの時のことを話すと、タマモと同じことを考え、その瞬間に悪寒が走っていたらしい。

 

それにしても、とタマモは思う。このクラスは美少女と世間で評されるような容姿の子が多すぎないかと。実は、優秀な者を集めたのではなくて、容姿端麗なものを集めたクラスなのではないかと疑いを持つレベルである。中には、美少女よりも美女という言葉が似合う者までいる。

 

(ここに横島が来たら何ていうのかしら?中学生って事実を嘆く?それとも、中学生でもいいやってナンパするのかしら。……上手く利用すれば、私に有利になるかも)

 

タマモが頭の中で何やら企んでいる頃、事務所のガスなどの開通工事にたちあっていた横島は悪寒を感じたという。

 

その悪寒が意味することが、横島の矜持(=ロリ否定)を守る戦いが始まることを意味するのか、守りきれずにタマモの魔の手に堕ちることを意味するのか。はたまた、別の何かによるのか。この時の彼らには、知る由もなかった。

 

 

 

 

横島が原因不明の悪寒にさらされていた頃、麻帆良女子中等部一年A組では自己紹介も終わり、連絡事項の伝達へと移ろうとしていた。

 

「えーと、エヴァンジェリン君は体調不良で保健室だから、これで自己紹介はおわりだね。明日は、プリントやらの配布物の配布、委員決め、クラス懇親会がある。懇親会と言っても、特に準備するものはないから、持ち物はカバンと筆記用具で十分だ。じゃ、解散」

 

 

 

 

高畑の言葉で解散する一同。こうして、小竜姫とタマモの麻帆良学園女子中等部での初日は幕を閉じるのであった。

 

 




入学式の描写はなし。自己紹介は一通り軽く考えましたが、ヒロインpt上位者以外はカット。エヴァ?入学式サボりました。

刀子先生が副担任。麻帆良女子初等部、麻帆良女子付属初等部、麻帆良小学校の三校から中等部に進学。各生徒たちの出身小学校。龍宮が中学から麻帆良に来た。
これらは作中オリジナルの設定です。


現在、決定しているヒロインは以下の通りです。
小竜姫、タマモ、明日菜、木乃香、あやか、刹那、千雨、真名、アキラ、エヴァ、千鶴、裕奈。
計12人です。予定しているヒロイン数の約半分相当です。

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