道化と往く珍道中   作:雪夏

16 / 59
横島たちは一路、メガロメセンブリアを目指す。時を同じくしてメガロメセンブリアに向かう一人に男性。彼らはどのような物語を紡ぐのか……

一言: 高畑・T・タカミチのTって何でしたっけ?テスタロッサ?


1時間目:魔法世界から旧世界へ
その1 横島くん爆発する


 

 

 

 

 

 

 

メガロメセンブリアに向かうことを決めてから三日。横島一行は、街で路銀を稼ぐ傍ら情報収集にも励んでいた。

 

「じゃあ、次は南に遺跡があるそうなので、そこで何か金目のものを取ってきてください。そうですねー、横島さんなら一日で十分ですよね?」

 

「あのー、小竜姫さま?流石にそれは……。それに、私めに一人で行けと……?」

 

「ええ。元気が有り余ってそうですから、これくらい余裕ですよね?私たちはその間に、情報を集めておきますから」

 

横島に微笑みながら頼む小竜姫。まさに女神の微笑みである。……その瞳が笑っていれば。だが。

 

「あー、怒ってます?」

 

「そんなことないですよ?ええ、横島さんがそんな人だってことは知ってますから。情報収集に行った筈なのに、ナンパしかしていなかったとしても今更です。怒ったりしませんよ。ええ」

 

「アレ絶対怒ってるよな?な?……どないすればええと思う?」

 

「死ねば?」

 

小竜姫の怒気に腰が引けた横島は、タマモに意見を聞くがイイ笑顔で辛辣な言葉をかけられる。ナンパを繰り返す横島にうんざりしていることもあるが、何より油揚げを食べることが出来ない生活に苛立っているようである。

 

何を言ってもダメだと感じた横島は、遺跡でお宝を発掘して名誉挽回することを誓うのであった。

 

 

 

 

 

横島が“一攫千金で汚名挽回じゃー!!”と飛び出して行った後、小竜姫とタマモは宿の一階で横島について話をしていた。

 

「はぁ~。どうして、横島さんは飽きもせずナンパを……。実は、龍の因子を持ってますなんて言われても、私は驚きませんよ。ええ、龍は多淫ですし。……頑丈ですし」

 

「……ああ、納得しちゃった。美神に聞いたんだけど、父親も相当な女好きらしいしね。それに横島の霊能って、龍をモデルにしている気がするのよね」

 

「龍をモデルにですか?そんな風には思えませんけど……」

 

「サイキックソーサーが鱗。栄光の手は籠手型が爪で、霊波刀型が牙。あとは、槍型が角……かしらね。それで、文珠がアレよ。龍が持っている宝珠。アレ、人間の願いを何でも叶えるんでしょ?」

 

「文珠が龍珠……ですか?確かに龍の中でも特に力のあるものは、龍珠で何でも出来たそうですが……。あれ?言われてみれば、文珠と似たところが……。でも、そのような力を持つ龍なんて、竜神族の王とその兄弟くらいしかいませんし……。あれ?そういえば、竜神王とその兄弟が人間界に居た時期があったような……。え?本当に?」

 

話半分に聞いていた小竜姫であったが、文珠と龍珠の意外な共通点に焦り始める。冗談で言っていたことが、現実味を帯びてきたのだから当然である。

 

そんな、小竜姫の様子を見ていたタマモも慌てる。横島の霊能が龍をモデルにしてるなど色々言ったが、全てこじつけであり、真面目に考え込まれても困るのだ。

 

「ちょ、ちょっと!冗談よ、冗談!そんな真剣に考えないでよ!!……それより、ほら!横島のナンパ癖にも困ってものよね!私たちみたいな美女二人が居るってのに……。ああ、腹たってきた。帰ってきたら燃やしてやる……」

 

「……まぁ、私が美女かどうかはともかく。横島さんのナンパ癖だけは困ります。目立ちたくないと言ったのは、横島さんなのに。一番目立ってるじゃないですか。ここは一度、仏罰を与えるべきですかね」

 

横島にとって物騒なことを考えるタマモと小竜姫。憎からず思っている異性が、他の異性にばかり目を向けているのだから当然と言えば、当然の反応である。そう……彼らにとって、その程度の実力行使は日常なのである。例え、傍目には過剰な反応であったとしても。

 

 

 

 

 

そのまま、横島に対する愚痴を言いあうタマモと小竜姫。そこに、この数日で親しくなった宿の女将が話しかける。

 

「二人ともどうしたんだい?また、あの兄ちゃんがナンパでもしたかい?」

 

「女将さん……。まぁ、そうなんですが。全く、彼のナンパ癖にも困ったものです。それに、彼のあの癖が原因なのか、私たちにあんな男は放って遊びに行こうって誘う男性が増えてきて……」

 

「私たちはアイツにしか興味ないっていうのに、ウザイったらないわよ。せめて、どっちかだけでもどうにか出来ないかしら……?」

 

女将に答えている内に、別の問題を思い出したのか肩を落とす小竜姫たち。彼女たちにとって、他の男性からの誘いは迷惑以外の何ものでもない。横島以外の男性に興味がないのは事実ではあるが、問題は別にある。

 

横島に誤解されると困るから?……そうではない。その光景を見た横島が、所構わず呪をかけようとするからである。目立つ上に、危険人物としてマークされないかと心配なのである。現在は、呪をかける前に二人のどちらか――あるいは両方――が横島を止めているので、どうにか事なきを得ているが、いい加減にして欲しいと思うのは仕方がないことであろう。

 

そんな二人の気持ちを察したのかはわからないが、女将がある提案を二人にする。それは……

 

 

仮契約(パクティオー)ですか?それって、従者契約ですよね?それが何の解決になるんですか?」

 

「おや、知らないのかい?昔はただの従者契約だったんだけどね?今じゃ、パートナー=恋人同士ってのが普通なのさ。だから、仮契約してパートナーになっちまえば、世間に恋人がいますって言ってるようなもんさ」

 

 

「「恋人……」」

 

 

「アンタたちみたいな賞金稼ぎなら、尚更しといた方がいいんじゃないかい?アーティファクトも手に入るかもしれないし、念話も簡単にできる。ま、その気があるなら考えてみな。この街にはないけど、アンタたちメガロに行くんだろ?こっからメガロ方面の街には大抵、仮契約屋があるからね。」

 

 

「「仮契約屋……」」

 

 

「そ。金を払って仮契約の魔法陣を買うのさ。確か、キスでする魔法陣が一番安いって話さ。ま、恋人同士でするのが一般的だからね」

 

 

「「キ、キス……」」

 

女将の言葉を聞いた二人は黙って考え込む。その様子を見た女将は“いやー、青春だねー”と一言言うと仕事へと戻っていく。

 

残された二人はその後もしばらく考え込んでいたが、やがて日課の情報収集へと向かう。

 

 

――その顔には、確かな決意が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

その頃、横島は遺跡の最奥に位置する大広間へと辿り着いた所であった。ここまで侵入できたトレジャーハンターはいなかったのか、広間には財宝が山のように積まれている。

 

「ふはははっ!!この程度のトラップなど、数々の罠を掻い潜り覗いてきたワイにとっちゃ朝飯前ちゅーもんや!美神さんの入浴姿を覗く為、鍛えに鍛え上げたトラップ感知能力を思い知ったか!!」

 

横島の発言内容はアレだが、数々のトラップをものともせず遺跡最奥へ辿り着くあたり、その感知能力は本物のようである。能力を得た理由が理由なので、素直に賛辞出来ないのが横島らしい。

 

 

 

そのまま、しばらく勝ち誇っていた横島であったが、我に返るなり手当たり次第に財宝をリュックに詰め込み始める。

 

「ふぅ。これだけあれば十分だな。この財宝の山を見せれば、小竜姫さまもタマモもオレのことを見直して……そして。グフフ……」

 

何とも締まらない顔で歩き出す横島。どんな想像をしているのかは、時折漏れる独り言で容易に判断できるが、相変わらずロクでもないことなので割愛する。

 

 

広間の出口へ向かい軽やかに歩く横島。しかし、横島は失念していた。広間内の罠をすべて解除した訳ではないことを。そして、気が緩んだ時にこそ罠に気をつけなければならないことを。

 

 

――カチッ

 

 

「カチッ?」

 

 

自分の足元からした不穏な音に思わず足をとめる横島。その顔からは、多量の汗が吹き出していた。

 

 

「あれー。コレはマズいかなー。嫌な音がしてきたもんなー。具体的には、遺跡が崩れる音?さっさと退散しないと生き埋めってパターンかなー。

 

……ちっくっしょー!上手く行ったと思ったらこんなんかよー!!いやじゃ!どうせ埋もれるなら、美女がいいーー!!」

 

 

途中まで冷静に(?)事態を把握していた横島であったが、血相を変えて遺跡の外へと駆け出す。遺跡崩壊の音に混ざって、爆発音も聞こえてくるので必死である。

 

必死にかける横島。その背後には爆炎が迫っており、頭上からは遺跡の天井であった石が降り注いでいる。

 

「よしっ!!もうすぐ出口や!」

 

横島の目の前には、遺跡の出口が見え始めていた。残りは、十メートルといったところであろうか。このペースならば脱出は余裕だと、横島が速度を少し緩めた。その時――

 

 

横島は足元で起こった爆発により、宙へ打ち上げられるのであった。

 

 

 

 

 

 




横島一行メガロメセンブリアへの道。さてさて、小竜姫たちはこのタイミングで仮契約するのか?
それは、まだ秘密ということで。

仮契約屋についての設定は独自設定です。

ご意見、ご感想お待ちしております。
また、活動報告にもアンケートなどを記載しております。宜しければ、ご協力の程お願い致します。タイトルに【道化】とある記事が関連記事となります。

では次回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。