道化と往く珍道中   作:雪夏

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何番煎じか分からないクロス作品。更新速度は遅いです。
夢に何度も出てくるので書き上げましたが、続くのかなぁと不安ではあります。
クロスですが、クロス先の世界にはまだいきません。


0時間目:ハジマリを告げるは悲鳴?
その1 横島くん修行する


 

 

 

 

 

 

 

「ああぁぁあああぁあああっっっ!!!!死ぬー!!死んでまうー!!いやー!助けてー!!猿に殺されるー!!小竜姫さまー!!ヘルプ!ヘルプミー!!あああっぁああっ!!!美神さんのアホー!!!何がちょっと修行してきてね?っじゃー!!!時給上げてくれるっちゅうから来たけど、その前に死んでまうわー!!!!!!」

 

大声をあげながら逃げる青年。年のころは二十歳手前といったところである。顔は二枚目……とまではいかなくとも、十分に整っていると言えるであろう。

 

 

 

……その顔が涙に濡れ、鼻水を垂れ流してさえいなければ

 

 

 

彼は今、鬼ごっこに興じているところである。

 

彼の主観では、命懸けの逃亡劇が開始されてから一時間あまり。疲れが見えてきた彼は、鬼に振り返ると小さな珠を投げつける。

 

ビー玉程度の大きさを持つその珠は、鬼にあたることなく地面へと落ちる。その瞬間――

 

 

――鬼の足元に大きな穴が出現した。

 

 

突如出現した大穴にはまった鬼に向かい、青年は高笑いをしながら土をかけ始める。

 

 

「ふはははっ!!喰らえ!必殺――平安京エイリアンの術!!!」

 

 

そう叫びながらも、青年は必死に土をかけ続ける。鬼は穴の中で身動きが取れなくなったのか、僅かに身をよじらせるだけである。しばらくしても鬼が動かない為、青年は鬼が観念したと思ったのか、穴の中を覗き込むと声をかける。

 

 

「降参するなら今のうちだぞー。今なら、この世界一臭い缶詰の投入だけは勘弁してやる!!」

 

 

その言葉を青年が告げた瞬間。鬼の体が一際大きく揺れる。それを見た青年は、自分の優位を確信する。

 

「ふっ。流石にこれは嫌か。まぁ、臭いからな。それじゃ……

 

――ズシャーーーッッ!!!!

 

……へ?」

 

青年が最後通知を行おうとした瞬間。目の前の穴から、大量の土砂が天へと噴き上がる。

 

慌てて距離をとる青年の瞳には、土煙の奥に揺らめく影が写っていた。

 

「ははは……。怒った?」

 

……ここに命懸けの鬼ごっこは再開されるのであった。

 

 

 

 

 

鬼ごっこ再開から一時間。青年は地面に仰向けで倒れていた。その青年のもとに一人の女性と、老人が近寄る。二人とも、中華服に身を包んでおり、女性の頭部には角が生えていることから人間ではないようである。老人の方は多少毛深い所があるが、ほとんど人間と変わらぬ容姿に見える。

 

「お疲れ様です。横島さん。よく逃げ切れましたね?途中、死んだかと思いましたよ」

 

「ぜェぜェ……。そ、そう思うなら……た、助けてくださいよ……小竜姫様」

 

青年――横島――が息も絶え絶えに、女性――小竜姫――に告げる。それを聞いた小竜姫はにっこりと笑いながら告げる。

 

「修行ですから」

 

「そ、そうですけど……。これはやり過ぎ……でしょう?」

 

「……まぁ、私も予想外でしたけど……」

 

横島の言葉に小竜姫は、額に一筋の汗を垂らしながら答える。そこに黙っていた老人が声をかける。

 

「ウキッ!ウキキキッ」

 

失礼。猿が鳴いた。

 

「あ~、何て言ってんのかさっぱり分からん。小竜姫様はわかります?」

 

「それは、その……流石に私でも……猿の言葉は……ちょっと」

 

横島と小竜姫の二人が小声で会話している間も、猿はウキウキ鳴いている。なにやら話をしているようなのだが、二人には猿の言葉は理解できない為、揃って猿の独り言――独り鳴き――を黙って聞いている。その内、二人は聞くのにも飽きたのか何処からか取り出した湯呑でお茶を飲み出す。

 

「……ズズッ。ハァ……それにしても、長いですねぇ」

 

「そうですね~。しかし、さっきは本当に死ぬかと思いましたよ。鬼ごっこだって言うから、小竜姫様とキャッキャウフフって感じかと思ってたのに。まさか、本当に鬼を連れてくるとか……」

 

「そんな修行あるわけないじゃないですか。それに、私が鬼なら”超加速”状態での鬼ごっこになりますよ?逆もまた……です」

 

「ああ~。それも勘弁っすね~。いや、でも……」

 

そう言うと横島は葛藤し始める。どちらも洒落にならないのなら、見た目麗しき女性との鬼ごっこの方がマシかと悩んでいるのである。

 

そんな横島を横目に見ながら、小竜姫も先程まで追われていた鬼については伝えまいと決意する。

 

猿が声をかけた鬼は、この修行場――妙神山――の門を守る鬼門など比べるまでもない鬼なのだから。

 

(いくら横島さん(お気に入り)の修行だからって……酒呑童子に鬼役を頼むたなんて……。しかも、酒呑童子もノリノリですし……。まぁ、遊び気分だったから良かったものの……)

 

小竜姫は思い出す。横島が落とし穴にはまった酒呑童子()を挑発した時のことを。

 

(正直、アレにはゾッとしましたね。老師に止められてなかったら助けに入ってましたよ。本当、よく無事で……)

 

小竜姫は未だ葛藤している横島を見る。酒呑童子だと知っていたらどうしたのだろうかと。

 

(……何故でしょう。同じことをするような気が……)

 

小竜姫は容易に思い浮かぶその光景に頭を抱えるのであった。

 

 

 

 

 

頭を抱える小竜姫に葛藤する横島。それに、独り鳴き続ける猿。そんな光景もやがて終わりを迎える。猿――妙神山の主、猿神(ハヌマン)斉天大聖が、自分の言葉が通じていないことに気づいたのである。

 

「ウキッ……ウキ?」

 

斉天大聖老師が取り出した棍を横に振り抜くと、空間にヒビが入る。そのヒビが空間全体へと広がると、一気に崩壊していく。

 

次の瞬間、彼らの姿は先程までのどこまでも広い空間から、時代劇に出てくるような日本家屋の一室に移動していた。

 

「ふぅ……。全く。早く言わんかい。せっかく、ありがたい言葉を告げてやったと言うに……猿の鳴き声じゃ威厳も何もないではないか」

 

「あ~。お言葉ですが、老師。あの加速空間の中ではその……猿になってますし、威厳なんて、横島さんにはどうせ通じないかと……」

 

「まぁ、そうなんじゃがのぉ。ほれ、横島。さっさと霊力を高めんか。せっかく、魂に負荷をかけ、魂の出力を高めたんじゃ。その状態で霊力が尽きるまで、最大霊力を維持せよ。そうすれば、魂がその状態に慣れ、使える霊力が増えるじゃろうて」

 

老師に小突かれて正気に戻された横島は、老師の言葉に面倒くさそうな顔をしながらも従う。ちゃっかり要求した上で。

 

「へいへい……。ブッ倒れた後は、小竜姫様が膝枕で看病してくださいよ!!……ハッ!!!」

 

横島の要求に答えず、ただ笑顔を向けた小竜姫は、老師と共に横島と距離を置く。横島の集中を妨げない為である。

 

「それにしても、本当にこれで霊力が増えるんですか?」

 

「さてのぉ。この前“てれびじょん”で見た“あにめ”に似たような修行方法があったから試しておるだけじゃしのぉ。なんでも、限界まで放出し続けるとその状態に慣れ、最大値があがるそうじゃ」

 

「“あにめ”ですか……。人界には凄いものがあるのですねぇ」

 

小竜姫もテレビは見るのだが、ワイドショーばかり見ているのでアニメの存在を知らないようで、修行方法を紹介する番組か何かと勘違いしているようである。真実をすれば、止めていたことだろう。

 

「それにしても、どうして加速空間を使ったんですか?横島さんは既に潜在能力を開花させてますから、霊力を高めるだけなら私の修行で十分ですよ?」

 

小竜姫の疑問は当然である。元々、老師が作る加速空間での修行は魂に負荷をかけ続け、一時的に魂の出力ますことで、己の潜在能力を引きずりだし易くしたもの。既にその修行を終えた横島には、小竜姫が言うように小竜姫の修行で十分なのである。

 

「なに。これが上手くいけば、横島は人間の限界を超えるじゃろうて」

 

「人間の限界ですか……?」

 

それっきり、老師は口をつぐむ。これ以上語る気がないと感じた小竜姫は、黙って横島を見守ることにするのであった。

 

やがて、霊力を放出し尽くした横島が気を失うと、小竜姫は看病の為に彼を抱え、部屋を移動するのであった。

 

 

 

 

 

「う~ん。柔らか~。ああ、このまま……「せいっ!!」……うがっ」

 

何故か痛む頭を抑えながら、横島が体を起こすとゲームをしている老師とお茶を飲んでいる小竜姫の姿が見えた。

 

「あぁー!!何で膝枕してくんなかったんですか、小竜姫さまー!!」

 

「約束してませんから」

 

目を覚ますなり、不満の声をあげる横島にすまし顔で答える小竜姫。横島は気づいていないが、その頬には朱がさしていた。横島はそのまま、膝枕を要求し小竜姫に迫るも、しつこいと小竜姫に撃墜される。

 

その様子をゲームをしながら見ていた老師は、ため息を吐く。

 

(小竜姫も素直じゃないのぉ。それに横島のヤツも間が悪いと言うか手癖が悪いと言うか……いや、アレでこそ横島じゃな)

 

 

横島は知らないことであるが、小竜姫はちゃんと膝枕をしていたのである。しかも、愛おしそうに、頭を撫でながら。

 

それが、何故目を覚ました時には離れていたのか。それは、横島が気絶から睡眠へと移ったことで、寝返りをうったからである。それだけならば、問題はなかったのであるが、そこは横島である。そのまま、小竜姫の腹部に顔を埋め、右手でお尻を撫で始めたのである。それを恥ずかしがった小竜姫が、横島の頭に肘を落とし、素早く距離を取ったのである。

 

 

 

 

 

横島と小竜姫のスキンシップと言う名の折檻を止めると、老師は横島に状態を尋ねる。

 

「それで、どうじゃ?扱える霊力は増えたか?」

 

「え?……あ、はい。そんな感じはしますね」

 

横島は自分の状態を確かめるかのように霊気を発すると、そう告げる。

 

「ふむ……。魂に負荷をかけた状態での、長時間に渡る命懸けの攻防(鬼ごっこ)。それによって、高められた霊力を扱うことで、殻を破ったようじゃな」

 

 

「は……?殻?何のことです?」

 

「ホッホッホ。気づいてないのか?……お主が発する霊力に」

 

意味が分からないという顔の横島に、横島が霊力を発した辺りから黙っていた小竜姫が震える声で告げる。

 

「よ、横島さん……。今のアナタは……下級神魔並の霊力です」

 

「……へ?またまたぁ~。そんな冗談なんて……マジ?」

 

「マジです」

 

 

 

 

 

固まった横島は元に戻るなり、「ワイの時代が来たー!!」と騒ぎ立て小竜姫に沈められるという行動を数回繰り返す。現在は、小竜姫の淹れたお茶で一息ついたところである。

 

「まぁ、オレが神魔並の霊力を持ったってのは分かりました……。信じられないけど」

 

「予想はしておったが、本当にやるとはのぉ。文珠といい本当にお前は驚かせおる」

 

「予想していたとはどう言うことですか?本来、人間が下級神魔とは言え、そのような強大な霊力など持てる筈が……そもそもチャクラを……」

 

小竜姫の言うように、本来人間一人では神魔クラスの霊力は持つことはできない。7つのチャクラを全て回して、初めて下級神魔に手が届くかというレベルなのである。現在の横島のように常時神魔クラスというのはありえないのである。

 

「横島だから、じゃ。横島には魔族の霊気構造が混じっておるじゃろ?」

 

「……ええ」

 

「それが、この結果じゃ。魔族の霊体は、当然ながら人間以上の力を扱ったことがある。それが、横島の魂に錯覚させたんじゃ。まだ、力を扱えると。それで、殻を破ったんじゃ。あとは、それに慣れればもしやと思ってな」

 

「そ、そんなことが……。横島さん。ルシオラさんは、今もアナタの力に……。横島さん?」

 

小竜姫が横島に話しかけるが、返事がない。不思議に思った小竜姫が横島に目を向けると……

 

「う~ん。美神さ~ん……おキヌちゃ~ん、シロ……タマモ~。この神魔を持つワイに任せ……。え?神魔並の霊力身につけたから、事務所をオレにくれる……?それで、美神さんたちは……?オレのものになる……?そ、それって……「せいっ!」……グフッ」

 

「いい夢を見てたようですね……?」

 

「ハッ!!夢か……そうですよね~。オレなんかが……」

 

「はぁ……いつから寝てたんですか?」

 

「え~と、チャクラがどうのこうのってあたりっすかね~」

 

どうやら、大事なところを全て聞いていなようである。小竜姫はため息をひとつ吐くと、先の内容を伝えようか悩む。そこに、老師が何気ない感じで一言告げる。

 

「ああ、そうじゃ横島。ちょっと霊体をもらうぞ?」

 

 

 

「「ハァァアアア!????」」

 

 

 

 

 




新連載。サブでの連載となりますので、更新は遅くなるかと。

未だGS勢しか出ていませんが、ちゃんとネギまとクロスします。

活動報告“新規投稿作品について”もご覧ください。
大した内容ではないですが、物語の骨子となる部分が書いてあります。

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