古明地さとりの精神攻撃に屈してしまったバイド艦隊、そして白蓮。
そんな中、アズマは最後まで奮闘するも決定打を与えることが出来ずに焦燥し切った二人を庇うように撤退。
地底で友達になった原始バイドのバラカス達に助けられ、彼らの里に匿われ、そこで作戦を練ることしたのだが、無防備になったアズマをお燐が狙う。
あわや命の危機と思われたが、お燐は戦いに来たわけではなく、地霊殿の事情を説明しに来たというのだ。
彼女曰く、地上からバイドを集めているのは同じくさとりのペットである「霊烏路空」であり、さとりはバイド化した彼女がアズマ達に殺されないように庇っていたというのだ。
バイド化していく体に苦悩するお空を見ているのが辛く、その肉体を滅ぼしてほしいとアズマ達に懇願し、旧灼熱地獄へ続く抜け道まで案内するというのだ。
本当に討つべきはさとりではなくてバイド。アズマ達は炎の抜け道から地底の最奥を目指す……。
その頃地上ではマグマや間欠泉が噴き出ることで地面が割れたり、バイドも一緒に噴き出たりしていた。
沈静化させるべく早苗と神奈子が河童の里に出向くものの早苗がバイドの攻撃を受けて地面の裂け目に落ちてしまった……!
旧灼熱地獄……。ゴウゴウと身を焦がす炎の熱気は銀翼の中にいても伝わってくる程であった。吸い込む空気も下手をしたら肺を火傷をしてしまうレベルかもしれない。
ムラサやにとりと別れてお燐が先導する中、俺と白蓮、そしてバイド艦隊と続いていく。
「一本道だからはぐれることはないと思うけれど、念のためね。ええと確かこの辺りに……あったあった」
燃え盛る火炎の中、小型の貨車と地獄の底へと続いているであろう線路……。恐らく大量に集めた死体をこの貨車に乗せて灼熱地獄の燃料としているのだろう。……よく燃えるものなら死体じゃなくてもいい気がするとも思ったが、口に出すのはやめておこう。
お燐と白蓮が同じ貨車に乗り込み、アールバイパーはその後ろでリデュースしたまま牽引されている。貨車といっても簡易的なものであり、(降るのかは知らんが)雨も凌げないであろう。要は見た目はそのまんまトロッコである。
しかし決定的に違うのが何かしらの動力でちゃんと動いていること。確かにエネルギーは有り余っている場所ではあるが……。ちょっと怖いので動力について聞いておくのもやめておこう。
それにしてもこれだけの酷暑、ちょっと外には出たくない。こんな酷い環境ではあるが、流石にジェイド艦隊、特に提督はサイズの関係上絶対に乗り込めないので傍を低空飛行することになったようである。
「いいでしょ、あたいが線路敷いたんだよ。河童達がさ、線路を敷く機械が古くなっちゃったって言うんで格安で譲ってくれたのさ。『カルベルトワーゲン(※1)』って名前だったかしら?」
か、カルベルトワーゲンだって? また早苗が喜びそうな……じゃなかった、なんちゅう物騒なもの作ってるんだよ、河童どもは!
その工作列車を用いて地獄に線路を敷いて日々の業務を楽にこなせるようにしたってことだろう。
「俺の知っている『カルベルトワーゲン』は武装もしていたはずだが、バイド汚染とか大丈夫なのか?」
「いやー、線路を敷くにはちょうどよかったんだけど貨物列車としてはちょっとデカすぎたんで今は押し入れで埃被って眠ってるよ」
恐らく大丈夫だろう、そう思いたい。俺は余計な手間が増えないことをガタゴト揺れる貨車の上で祈った。
今もあちこちで火柱が上がっており、近くまで迫るたびに俺は肩をすくめる思いをしてきた。こんなのがいつまで続くのだろうか? そう思っていた矢先、思いもよらぬ形……いや、予測通りというべきか。とにかくおおよそ快適とは程遠いものの、便利な貨車の旅は終焉を迎えることとなったのだ。
目の前に噴き上がった火柱。いや、まっすぐに伸びるわけでもなく、ウネウネとうねりながら龍の姿を取り始める。そして大蛇が獲物を狙うかのように鎌首をもたげ始めた。もちろん狙いは……。
「来ますっ! 貨車から離れてっ!」
一早く声を張る白蓮。それに応じて俺も戦闘態勢を取る。それとほぼ同時に、カパッと大口開いて貨車に飛びつく炎のドラゴン。お燐が、白蓮が貨車から飛び退くように離れ、遅れて俺も離脱する。その直後に貨車は思い切り噛み砕かれバラバラに砕け散った。その残骸が今も小さく炎上している。
「俺が囮になる。そぉら、こっちだ!」
銀翼でわざとゆっくり龍の目の前を飛行する。こちらに標的を定め、白蓮達から興味の対象を逸らしたのだ。高度を上げて食らいつかんと突っ込んでくる牙をギリギリでかわすと、再びこちらに噛みつかんと迫ってくる。
「アズマさんっ、このままでは巻きつかれてしまいますっ!」
「いや、上手くやっている。なるほど、考えたな。あのドラゴンはあんまり賢くないようだし、狙い方も甘いようだからな」
そう、慌てる白蓮を窘める提督が言う通り、こちらを追いかける狙いが甘いせいで、炎の龍はアールバイパーの周囲をグルグル回るだけになってしまっている。奴は急カーブが出来ないのだ。こうなってしまっては一度距離を取らない限りはもはや俺に食らいつくことなど不可能である!
「まあ離れさせもしないけどな。レイディアントソード!」
あとは頭が目の前に現れたタイミングを狙い青い剣を振り下ろすのみだ。綺麗に真っ二つに切断された頭がマグマに落ちると、胴体もドロリと溶け落ちていく。貨車を失ってしまったので後は線路沿いに普通に飛行して進まなければならないのだが……。
「背後からたくさんのドラゴンが。まるでプロミネンスだ!」
そう、先ほどの龍と全く同じ奴らが徒党を組んで上から下からうねりを上げてこちらに迫ってくるのだ。いちいち相手していてはキリがない。
「逃げたいところだが、ジェイド・ロス提督が俺のスピードについてこれない……」
白蓮なら身体強化の魔法でバイパーの速度に追いつくことは可能だろう。お燐も見るからに足が速そうだ。しかし提督はどうするか? 見殺しにするわけにもいかないし、リフレックスリングで掴んで飛行するのはサイズ的に無理だ。ううむ、どうしたものか……。
そう悩んでいると溶岩から目玉が覗いた気がした。見下ろすと目玉は再びマグマの海に埋もれて消えてしまう。
「何かいるな……。アズマっ、新手の敵だ。狙われているぞ!」
再び不意に盛り上がる溶岩。肉塊のような、目玉のような部位が再びマグマから姿を現すと赤い光線をいきなり放ってきた。流石にマスタースパークレベルの太さではなかったが、アールバイパーの武装を凌駕しているであろう火力であることは明白。俺は咄嗟に回避行動に出るが、避け切れたわけではなく、衝撃で吹き飛ばされてしまう。
「うわあっ!?」
直撃という最悪の事態だけは避けたものの、かすっただけでこの衝撃。こんな場所でバランス崩すわけにはいかない。溶岩に飛び込む目の前で再び立ち直ると反撃の機会をうかがう。しかしレーザーを撃った目玉は再びマグマに埋もれていた。
「今のレーザーは……? 恐らく今の目玉が本体だろう。見つけ次第強烈なのを叩き込むんだ!」
代わりに周囲から火柱が上がり、炎の龍が突っ込んでくる。
「このぉっ!」
頭部をニードルクラッカーでめった刺しにすると、龍はドロリと溶けて溶岩の中へ消えていく。今度は「本体」と思しき目玉が天井から現れて素早く細いレーザーを連射してきた。
背後から迫るドラゴン相手に縦横無尽に飛び回る白蓮を狙った一撃。それは提督が自らの巨体で受け止めることでかばった。
「ぐっ……! むっ? 違うな、これはマグマではない?」
ダメージを受け、ふらつくジェイド・ロス提督の後ろから緑色の影が飛び出す。波動砲をチャージさせつつ。
「そこかっ!」
素早くゲインズが目玉に反撃を試みるが再びマグマに消えると、少し離れた場所からレーザーを放ちつつ飛び出る。モグラ叩きのモグラみたいにあちこちで出たり引っ込んだりを繰り返しており、奴に一撃も喰らわせることが出来ない。こんな状況なのに、ジェイド・ロス提督は冷静だ。
「ふむ、レーザーを放つ肉塊のコアに破壊するとドロリと溶けるドラゴン……。してやられたな、アズマ。我々は既にバイドの手中にあるようだ」
な、なんだって!? それってどういう意味なのだ?
ヤレヤレとため息をつきながら、この抜け道に誘ったお燐を睨み付ける提督。
「あ、あたいを疑ってるのかい!? 罠に誘い込んだって?」
いや、それはないと思う。普段から陽気な彼女があそこまで身を震わせ親友を案じていたのだ。本位でお空を救いたいと。俺はお燐の弱いところを見ていたので確信が持てた。今回は提督の意見に賛同できない。だが、提督は淡々とした語調を変えることなくこう続けた。
「そうではない。仮にそうだとしても今君を憎んだところで、どうにもならないだろう。比喩ではなくて、言葉通りの意味だよ」
コンバイラから実弾兵器「ファットミサイル」が発射される。それは一直線にお燐に向かっていき……そして通り抜けた。通り抜けた「ファットミサイル」はそのままお燐に迫っていたドラゴンの頭へ着弾する。しかしまるで怯まない。
「ひいっ!?」
そのドラゴンがあろうことかお燐を捉えると変形して胴体に組み込んでしまったのだ。そのまま何処かへ持ち去ろうとする。
「まだ気が付かないのか。周囲で渦巻いているのは溶岩ではない、熱された流体金属だ」
灼熱地獄だから炎とかマグマと思っていたが、そう思い込むこと自体が間違いであったようだ。そして俺達が既にバイドの手中にあるという発言。言葉通りというともしやこの流体金属自体がバイド体? そして時折こちらを覗きこんだ肉塊のような目玉とそこから発せられたレーザー。
「あっ! そういう事か……だとしたら、なんて大きさなんだ!」
分かった。分かってしまった。この灼熱地獄そのものが既にバイドの手中に落ちていたのだ。流体金属を自在に操り、更にコアからはレーザーを放つバイド……。間違いない、俺達は「Xelf-16(※2)」の体内に入り込んでしまったんだ。
奴は地獄で熱された流体金属を龍の形にしてこちらに飛ばしていた。つまり奴を倒さない限り俺達は攻撃に晒されっぱなしだし、この先に向かうことも不可能ということになる。神出鬼没のあのコアに強烈なのを叩き込まないと! だがその前に……
「お燐を助けないと!」
スロットルを思い切り倒す。あらん限りの速度を出して離れ行くドラゴンを追う。
マグマによって熱された流体金属がプロミネンスのように吹き上がる危険な状態。だが、猶予はない。お空に続いてお燐までもがバイドの毒牙にかかってしまっては……。
不意に前方の地形が盛り上がる。炎が吹き上がる前兆と判断した俺は急いで機体を上昇させる。強烈なGが俺を機体下方へと押し付けてくる。負けじと俺は進行方向一点を睨む。そして炎は吹き上がった。速いっ! 危うく飲み込まれるところであった。
今度は天井側の流体金属が盛り上がる。今度は機体をギリギリまで降下。銀翼は熱対策はなされていないので必要以上に接近するのは危険だ。容赦なくコクピットを蒸し焼きにする炎。そして上方から噴き出るプロミネンス。どうにか銀翼に届くことなくやり過ごせたようだ。
「暑い……」
ならばこんなスレスレの飛行は不要。機体をわずかに上昇させる。だが、荒ぶる炎はそれを許してくれない。今度はほぼ機体の真下。狙いすましたかのように炎が噴き出てくる。このままだとぶつかるっ……!
「ええいやむを得ない。スピードダウン!」
これ以上の速度は出ないのなら、直撃を防ぐには銀翼の速度を落とすしかない。今度はGが前に俺を引っ張り出してくる。目の前ではプロミネンスが爆ぜていた。何もかもを一瞬で飲み込む炎が途切れる。だが、エネルギーが有り余っているのか、同じ場所を何度もプロミネンスが噴き上がったり止んだりを繰り返していた。炎が鎮まるタイミングを見計らい……俺は再びスロットルを倒す。
「今だぁー!!」
直後、俺の背後で再び炎が爆ぜた。間一髪、炎に飲み込まれずに済んだのだ。
だが、俺に安堵の時は訪れない。上から下から一直線に道を塞ぐかのように火柱がまっすぐと噴き上がるのだ。加えて火山弾や熱された流体金属でR戦闘機を象った兵器「メルトクラフト」が容赦なく襲い掛かってくるのだ。
「何が『旧』灼熱地獄だよ。思いっきり現役じゃないか!」
お燐を救うためには後退は許されない。覚悟を決めて俺は前進した。
行く手を阻むは火柱とバイドの軍勢。俺はレイディアントソードを取り出し、迎撃の体勢を取る。こんな奴ら相手にしている場合ではないっ。すれ違いざまに斬り伏せてやる。
左右に機体を激しく移動させ、火柱を回避。すれ違いざまにメルトクラフトや火山弾を刃の錆とする。
そして更に進むと奴が見えた。お燐を連れ去った炎の龍が。
「そいつを離せっ!」
こちらに気付いて頭をもたげこちらを見据える龍に、俺は挨拶代わりのニードルクラッカーを食らわせる。龍は相変わらず食う事しか能がないのか、新たな標的を見つけると大口開けてこちらに突っ込んできた。ならばこのまま切り伏せるっ!
「ちっ、火柱か」
だがその行く手を阻むように炎の柱がせり上がる。コイツ自体は大したことなさそうだが今も敵の手の上で踊らされていることは忘れてはならない。俺は複数上がった火柱の細い隙間を機体を限界まで傾けて通り抜け、遂に近接武器の射程内にまでたどり着いた。
「お燐を返してもらうぞ。リフレックスリング!」
輪っか型のノコギリが炎の龍の胴体を切り裂き、そしてお燐を掴んだ。あとはヨーヨーのように引き戻せば……。
「ひゅー! やるじゃんお兄さん♪」
先程まで捕まっていたとは思えない呑気な歓声。そうだ、熱くなりすぎてはいけないな。さて、人質を失った敵に容赦は要らない。俺はお燐をリングから解放するとこちらに向き直った龍にレイディアントソードを向ける。
「行くぜっ。ネメシス、コンパク! オーバーウェポンだ!」
3つのオプションを呼び出し、魔力を収束させていく。機体に、血潮に魔力が流れる妙な感覚と共に光を集めるはレイディアントソード。狙いを定めて……まだだ、もっと引きつけて引きつけて……今だっ!
「重銀符『サンダーソード』!」
ほとばしる光が炎の龍の額に突き刺さり、雷がはじけ飛んだ。細切れになった流体金属がボトボトとマグマに落ちていく……。
更にお燐と一緒に奥へ向かおうとしたらそこは行き止まりであった。こいつ、何が何でも俺達を先に行かせないつもりだな。
「そろそろ本体も出てきた方がいいんじゃないか? 逃げながらじゃまともに戦えないだろ?」
俺の挑発に乗るがごとく、溶岩の壁面で不自然に盛り上がった突起が頭頂部から裂けると、そこから肉塊が飛び出した。遂にお出ましか、A級バイド「Xelf-16」の本体!
肉塊のような目玉のような本体が蠢きながらこちらを睨みつけてくる。それにしてもバイドってのは生理的に嫌悪感を抱くような見た目の奴であふれ返っている。こいつなんて流体金属のバイドの筈なのにそのコア部分はどことなく包皮をかぶった陰茎に見えてくるのだから……。
逃げ回るのに限界を感じたのか、奴はいよいよ戦闘態勢を取り始めた。周囲の熱された流体金属をボコボコと盛り上げて、こちらを取り囲むように伸ばしていった。奴の弱点は時折露出する肉塊だ。お燐がひっきりなしに流体金属を引き裂こうとしているが、あれでは決定打を与えられない。
奴が本体を晒すその瞬間を狙い高火力の武器を使うのが一番だろう。俺はネメシス達を機体内に回収すると魔力の回復を図る。取り囲んだXelf-16の体の一部が棘のように鋭利になっているのを確認。
「お燐、離れろ。熱された金属の杭で串刺しにされるぞ!」
俺の声に反応して中央、おそらくコアが隠れているであろう突起部分の目の前に躍り出る形になる。俺もその近くまで避難した。直後、ジャキンジャキンと空を串刺しにするおぞましい音が響く。そしてその時が来た。奴がコアを露出させたのだ。
これを好機と俺はネメシス達を呼び出し、レイディアントソードを突き出す。先ほど屠ったあのドラゴンのようにこいつも貫き倒してやる。じりじりと機体を前進させ、慎重に狙いを定める。
が、奴も無防備ではなかった。コアの中心がオレンジ色に光り始める。まずいぞ、あれは極太ビーム「Xelfハイビーム」の前兆だ。ここにいては直撃してしまう! 俺はやむなくオーバーウェポンを解除、機体を回転させながら奴のコアから離れる。その直後であった。マスタースパークばりのビーム砲が火を噴いたのは。
これが収まれば今度こそ隙を晒すはず。その時を狙えばいいのだが、奴の砲撃はいささかおかしいのだ。
俺の知っているXelf-16は一度思い切りレーザーを照射し続けて終わりだった筈である。だが、今のこいつは細かく連射しているのだ。それはまるで標的が見えているかのような……しまった! こいつがビーム砲で狙っていたのは……。
こいつがビーム砲で狙っているのは俺達じゃない。その遥か後ろを航行しているジェイド・ロス提督の艦隊、そして白蓮だ……!
「このっ!」
慌ててレイディアントソードで奴の死角から斬りつけるが大したダメージにはなっていないだろう。向こうも俺の抵抗に反応してコアを再び埋めてしまった。今度は俺達を標的に、炎の龍を何匹も呼び出して襲わせた。こいつらはデカい分、R戦闘機を模した「メタリックドーン」よりもずっとタフだ。
しかし相手もこちらが見えていないらしく、やはり狙いは曖昧であった。先程のように小回りが利かないのを逆手にとって俺の周りをグルグル回るように誘導すれば無力化できる。
こうしていれば奴もいずれ痺れを切らせてまたコアを出して……いやそれではダメだ。先程から汗がボタボタと垂れ落ち、喉もヒリヒリと焼け付いているのだ。
「長期戦は……まずい」
元々が灼熱地獄である上に今は炎の龍に巻き付かれている状態。これではXelf-16やアールバイパーよりも先に俺の方が熱と渇きで参ってしまう。かつて霊夢や魔理沙はこんな場所に生身で飛び込んだというが、彼女らがどれだけ常識を逸脱した存在であるかを思い知らされる。
「お兄さんっ、串刺しにされるよっ!」
くっ、真上から金属の針が突き出されている。退路を龍に阻まれ、あの強烈な一撃を回避する術がない。いや、わずかに身を寄せればかわせる。俺は操縦桿を強く握り精密な操作を試みる……。
先程とは比にならないほどコクピット内が熱せられる。しまった、俺を巻いていた龍の胴体に当たってしまったようだ。機体を大きく揺らして取り込まれないように脱出をしたが、視界がぼやけていくのは防げなかった。
今度は真下から針が来る。だが、もはや俺にその動きに反応する体力は残されていなかった。辛うじて直撃こそ避けたものの、大きく銀翼は弾き飛ばされる。ぼやけた視界が再びあのビーム砲の前兆を認識させたが……。
「だめだ。もう、動けな……」
「ちょっと、アズマお兄さんっ! お兄さーーーん!」
そ、それでも意識だけは、意識だけは繋ぎとめないと……。
意識……だ……け……で…………
(※1)カルベルトワーゲン
19XXに登場した線路を設置する巨大な工作列車。
河童はなんちゅうものを開発してるんスか……。
あるいは旧式化してるって設定もあるので、幻想入りしたのを河童が拾ったのかもしれない。
(※2)Xelf-16
R-TYPE FINALに登場したA級バイド。流体金属を操る。
原作では墜落したスペースコロニーに住み着いていたので、熱されてはいない。