T.F.V.エピローグ ~「脅威」は未だ去らず~
また目玉があった。命蓮寺の天井に有る筈のない「穴」が開いていた。
穴の中から不気味な目玉が「提督」を、白蓮を、アズマを凝視していたのだ。
「これはこれは……。侵略者を手懐けるとはなかなかの手腕だこと。まああの銀翼もある意味侵略者だけどね。さて、毒には毒をってことでしょうが、これは私も何かしておかないと……」
目玉は部屋の壁をツツツと伝うと赤い暴走戦艦とその取り巻きに目をやる。
「凶暴な侵略者と幻想の民の境界は決して曖昧にはできないわ。貴方達は『他』とは違うようだけれど、はてさて一体どんな活躍をなさるのでしょうね? くすくす……」
一人ほくそ笑んでいるとバイドの種子が再び飛来してくる。命蓮寺からは遠い場所であったが、スキマ妖怪にとっては遠くに「目」をやることなど造作もない。
「あれがバイドの種子。今度はどんな怪物が……あら、溶けてなくなった? いいえ……違うわ、アレは地面の下へ潜ったのね。奴らの親玉が地底にでもいるのかしら?」
あーあと残念そうにぼやくと、気だるそうに続ける。
「地底だなんてまた厄介な場所に……。これは霊夢に調査させないといけないわね」
そうしているうちに命蓮寺に居候するバイド達は皆境内へと入っていった。一連の出来事を見終わると誰かに気づかれることもなく目玉は消えた。おぞましい紫色の亜空間の「穴」と共に。
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(その頃幻想郷某所……?)
深淵の深淵、そのまた更に深淵。ここ地面の底は暗黒に包まれているも、真っ暗闇ではなかった。ゴウゴウと燃え盛る紅蓮色が周囲を暗く照らす。そしてその燃える暗闇を見る「眼」はやはり深紅色であった。
その「眼」に映るもの。それは黒い大小の塊。塊が一心不乱に「眼」へと群がっていく。
それはたった1つの卵子に群がる無数の精子のようであった。
引き寄せられるように、漆黒の塊が更なる漆黒に誘われるように。「眼」はそれでも表情を変えることはなかった。
あたかも「それが当然の摂理」と言わんばかりに……。
そう、地上での異変は氷山の一角。アズマ達は未だ「本当の脅威」を退けられないでいたのだ……。
そんな事も知らずにいるアズマ達を、その「眼」はどのような心情で見据えているのだろうか?
そして「眼」が心臓のような鼓動を、不気味に、それはもう不気味に刻んでいた。
まるで、間もなく引き起こされる「幻想郷史上最悪の異変」までのカウントダウンのように……!
東方銀翼伝 ep3 Third Fear the ”Visitor” END
しかし、轟アズマの幻想郷ライフはまだまだ続く……!
東方銀翼伝第三部は比較的短めだったと思われますが、実は続く第四部があまりに長くなってしまったので、二つの部に分けたという経緯があったためです。
第四部ではいよいよバイドの脅威が本格化してきます。
幻想郷を襲うバイド異変はここからが本番なのです……!
それに伴い、東方銀翼伝も作風がシリアス寄りになるかもしれません……。