東方銀翼伝 ~超時空戦闘機が幻想入り~   作:命人

52 / 102
天狗の里を抜けて、守矢神社に到着……


第6話 ~山の神々~

(話はさかのぼり、アズマが樹海近くを飛行していたころ……)

 

 妖怪の山ふもとに広がる樹海……。日の光も満足に降り注がないこの場所は嫌な「気」が集まりやすい。ゆえに人も妖怪も気味悪がってめったに近寄っては来ないのだ。

 

 私はそんな樹海でソレを集めるのがお仕事。人間の為、そして山の住民の為。地面からわずかに浮遊しつつゆっくりと舞を舞うようにくるくると回ると嫌な「気」が一緒に渦巻き私に寄ってくる。

 

 これら瘴気の正体は災厄。普通は目にも見えないものだが、ここまで渦巻くと青みがかったくすんだ灰色のような煙のようになり、肉眼でも見えるようになる。誰も触れてはいけない、触れさせてもいけない。だから私は一人ぼっち。これを浄化してくれる他の神様に引き渡すまでは。

 

 そんな折、強烈な瘴気を感じた気がした。厄? それとも違うもの? とにかくあんなものを放っておくわけにはいかないわ。私は引き寄せられるようにそちらへ浮遊する。薄暗い樹海をひたすら進むうちに突如日の光が私の視界全体を覆った。

 

 っ!? まぶしい!

 

 何度も瞬きながら状況を確認。くすんだ灰色の向こう側には真っ黒い岩が落ちていた。先ほどから感じる強烈な瘴気はあの石から出ている気がする。どうしよう……? これも持って行ったほうがいいのかしら?

 

 と、私は別の気配を感じた。今度ははっきりとした生者の気。いけない、鉢合わせなんてしたらあの方に厄が……。

 

 それでも黒い岩は調べたかったし、万一近づいてきた人間や妖怪があの危ない岩の特性を知らずに触れようとしたら私が全力で止めなければならない。そういうわけで、あまり離れるわけにもいかず物陰に隠れて様子を見ることにした。

 

 こんなところに近づく物好きは一体誰? 間もなく現れたその姿は明らかに人のものではなく、翼を持った妖怪のものであった。

 

 白銀の翼は日光に照らされて神々しいまでに光を放っている。均整の取れた整ったラインは美しくてまるで人の手によって作られた彫刻のよう。とにかくこんな薄汚れた樹海などには全然似合わない銀色の鳥の妖怪であった。あれが神様だと言われれば私は信じてしまうだろう。

 

 そんな銀翼の妖怪が見るも禍々しい黒い岩と対峙しているのだ。駄目っ、それ以上近づいては……。かといって私もうかつに出ることも出来ない。ただ祈るしかない……。

 

 ハラハラと銀翼の様子をうかがう。周囲をぐるぐると回り、だが最後まで近づくことなくこの場から立ち去っていった。

 

 よかった……。関係のない人がこんな見るからに危険な瘴気にあてられるのを見るのは本当に忍びない。さて、誰もいなくなったことだし、私も調べてみましょう。そう思い日光降り注ぐこの場所まで向かうのだが……。

 

 なんと黒い岩が地面に溶け込むようにゆっくりと沈み込むと、そのまま跡形もなく消えてしまったのだ。えええっ!? 慌てて消えた辺りの土を両手で掘り起こしてみるが、黒い岩など影も形も残っていなかった。

 

 あれは一体何だったんだろう? 岩と同時に強烈な瘴気も消え失せ樹海はまたいつも通りの静かな空気に戻る為、調べることも出来なくなったし、そもそも調べたところで答えにたどり着ける保証などどこにもない。

 

 だけど一つだけはっきりしたことがある。

 

 あれは、普段私が集めている厄とは根本的に違う何かであること……。

 

 

__________________________________________

 

 

 

(そして、天狗の里を無事に突破したアズマは……)

 

 

 天狗の住処はスッタモンダの末にどうにか切り抜けることが出来た。無駄に時間を使ってしまったが、新しい武装やスペルを手に入れたので良しとしよう。そして俺は今まさに守矢神社の鳥居をくぐろうとしている。

 

 この先は神様の住処。粗相のないように振舞わねば。とにかく手を合わせるか。

 

 アールバイパーを適当な場所に停めると、リデュースを解除して機体から降り立つ。標高が高いだけあって寒い。身を震わせながら両手と口を清め鈴を鳴らした後、小銭を賽銭箱に投げ込み手を合わせる。確か二礼二拍一礼だったな。

 

 誰もいないのかな? 人の気配もしないのでとりあえずアールバイパーに再び乗り込んで周囲の探索をしようとする。俺は再び銀翼に乗り込むために神社に背を向けた。

 

「おいおい、挨拶しておいてそれだけかい?」

 

 背後で呼び止める声がっ!? 驚き振り向くと長身の女性が仁王立ちしていた。豊かな青髪を広げ、赤と黒の服に身を包んだ彼女であるが、それよりも背中に背負う巨大なしめ縄が一番特徴的である。

 

 風貌、振舞い方から彼女こそこの神社の主である神奈子さんで間違いないだろう。その佇まいに俺は思わず萎縮してしまう。

 

「あんたがここの神様……?」

 

「さよう。『八坂神奈子』とはこの私のこと。人の子『轟アズマ』、そして銀の翼を携えし超時空戦闘機『アールバイパー』よ。このような辺境までよくぞ赴いた」

 

 この女神様、アールバイパーを知っている……!? さすが外界出身の神様だ。まあその真相は全部早苗に教えてもらっただけってオチもあるかもしれないが。

 

「ところで、お前の話を聞く前に神であるこの私に捧げものはないのか?」

 

 捧げもの? お賽銭なら入れた筈だけど……。その旨を伝えたら神奈子さんはすごく渋そうな表情を見せた。不服だったのだろうか?

 

 お賽銭の金額に不満があるのだろうか? なんか霊夢みたいだなぁ。仕方ないので更に小銭を入れようとしたが「あー違う違う」とそれを遮って止めようとする神奈子さん。

 

「違う違う! お金ではない。どこぞの貧乏神社と一緒にするな」

 

 ならば食べ物だろうか? 何食べるんだろう? お米とかお酒かな? どのみち持ち合わせがないし、神奈子さんに話を出してみたが「それも違う」と言われてしまった。お酒飲みそうなんだけどなぁ、あの神様。ならばお菓子だろうか? たとえば……。

 

「ドーナツとか?」

「ちっ、違うわっ! 背中の注連縄(しめなわ)見て思いついただけだろう? そうではなくて神遊びだ!」

 

 カミアソビ? 神……遊び……遊び……ま、まさか!? その趣旨を俺が理解し始めた矢先、どこからか漆黒の柱が音もなく飛び交い、神奈子の背部に突き刺さる。しめ縄も含めてかなりいかつい姿になった。

 

「我は軍神なるぞ。お前が願いを聞くに相応しい男か見定めさせてもらう。さあ妖怪寺に住まう人間よ、この私にあらん限りの力を示せ!」

 

 怒らせてしまったわけではなさそうだが、弾幕勝負は回避できそうにない。この戦いが楽に終わるとは微塵にも思えないな。心してかかろう。

 

 来るなら来いっ……!

 

 菊一文字を使えば大方の弾幕には対処できるだろう。発動に時間こそかかるが、上手に活用すれば互角以上に立ち回れる筈……。

 

 ジリジリと間合いを調節し、相手の出方をうかがう。しびれを切らしたのは神奈子の方。放射状に弾幕を展開し始めた。

 

「いまだっ! ここで菊一文字っ!」

 

 タイミングよく射出されたポッドは神奈子の目の前まで迫るとバリアを展開した。惜しい、もう少し近ければ直撃したが……。だが、バリアとしての役割はしっかり果たせている。米粒のような弾幕は菊一文字のビームに阻まれて消え去ってしまった。

 

 ここから攻勢に出る。バリアの隙間から狙い撃つようにツインレーザーを放つ。あれだけの重装備だ。そう素早く動けるものでもない。よし、命中。さらにせわしなく平行移動すると再び攻撃。これを数回繰り返した。決定打にこそならないが、確実に追い詰めているぞ。

 

 菊一文字の効果が切れると背後に回り込むように飛行、もう一度菊一文字を発射する。

 

「そこかっ!」

 

 対する神奈子が繰り出したのは米状の弾幕ではなくて巨大な黒い柱。それがすさまじい勢いで菊一文字バリアへと向かう。それもど真ん中へ。いったい何を考えているんだ? 弾幕を防ぐ盾として機能しているのは今のを見て知っているはず……?

 

「!?」

 

 が、柱とバリアがぶつかる瞬間、菊一文字は砕けた。どうせ防いでくれると回避行動を怠っていた俺は慌てて逃げに入る。エンジンを一気に吹かして急上昇を試みた。

 

 しかし柱は想定以上に速い。直撃こそ免れたものの、激しい衝撃がコクピットを襲った。視界が激しく揺れる! バランスを失い錐もみ回転しつつアールバイパーの高度が下がるが、俺の目の前はいまだに火花が飛び散っており、意識を集中できない。まるで激しく頭を叩かれた後のようだ。

 

「たった一撃でそのザマか。笑止!」

「負けるかぁー!」

 

 意識を取り戻した俺は再びバランスを取り、再度戦神と対峙する。こちらが戦意を取り戻したと見るや否や再び攻勢に出た。

 

「ただの御柱でそんなではスペルカードなんて喰らったらどうなるかな? そろそろ決着をつけよう! 贄符『御射山御狩神事』!」

 

 スペルカードか。どう攻めてくる? カードの発動を宣言すると神奈子は周囲に短剣を大量に浮かび上がらせる。なるほど、こちらを狙い撃つつもりか。同時に丸い弾を幾何学的に配置するものだから、何かの花を思わせる。最初に丸い弾が広がってきた。

 

「狙っているのがバレバレだ。菊一文字!」

 

 さっきの御柱とかいう柱は見るからに硬そうだったので防御に失敗したのだろう。だが、今度はあまり大きい弾ではない。こいつで防いでやろう。

 

 ふよふよと前に進むポッド。そして展開。怒涛の弾幕もバリアに阻まれれば無力……いや、短剣型の弾が着弾したかと思うと、ポッドはその機能を停止させて落下してしまったのだ。

 

「バカな! 菊一文字のど真ん中だぞ。どうしてバリアで防げない?」

「まだ分からないのか? ど真ん中()()()()()だ」

 

 なんでバリアの中心が脆弱部……あっ! 菊一文字の本体を狙ったんだ。ポッドから展開されるバリアは確かに優秀だけど、ポッド自体は衝撃にも弱いしちょっとしたことで壊れて機能停止に追い込まれる……。

 

 なんということだ。武器を振るう本人よりも先に敵にその弱点を見切られてしまうとは……。こうなってしまった以上、菊一文字は迂闊に使えないだろう。となるとあの狂気じみた弾幕に正面から挑まなければならなくなる。

 

 短剣はこちらを狙っているようで微妙に左右にぶれており、かえってタチが悪い。アールバイパーの機動力で振り切ることも出来なくはないが、これではいつまでも攻勢に出ることが出来ない。

 

 こうなればサイビットを用いるしかないのだが、いかんせん弾幕が激しすぎて有効射程内に入ることは絶望的だ。何か他に相手を自動で捕捉して攻撃してくれる優秀な兵装はないのか……。

 

 たとえば大量にばら撒かれたミサイルを一気に撃ち落とすことが出来るような……。っ! あったじゃないか。早苗さんが使っていたアレが。凄まじい速度で標的に迫る青いボール型の弾が。あの兵装は確か……。

 

『You got a new weapon!!』

 

 そう、あの動きは間違いない。ディスプレイを見るとリフレックスリングを標準装備化したことで空欄になっていたダブル系兵装の部分にノイズが走る。表示されたのはその素早い動きと低威力をカバーする圧倒的物量で確実に標的を屠る青き狩人。

 

『HUNTER』

 

 ハンター(※1)。やっぱりそうだ。霊夢のホーミングアミュレットにも負けない追尾力を持ったショット、あの青い巫女服と緑髪が映える彼女が使っていたのはそれに非常に似ていた。ガレキに埋まっていたとはいえ、あの技をちゃんと記録していたらしい。

 

「ハンター装備。標的、八坂神奈子!」

 

 横滑りしつつ弾幕の向こう側にいる赤い神様をロックオンサイトに捕捉。思い切りトリガーを引いた。

 

 おびただしい数の青い球体が正面の上下斜めに撃ち出される。そして球体はまるで意志を持ったかのように、神奈子めがけて突っ込んでいくのだ。

 

 どこから撃っても必ず命中する。その弾道は過剰に大回りしているような気もしないではないが、これで回避に集中しながら攻撃を加えることが出来るぞ。

 

散りばめられる花びらも突き刺さるように突っ込んでくるナイフも全て持ち前の機動力で振り切るとハンターの青い弾を当て続けた。

 

「この程度の攻撃……効かないわ!」

 

 確かに被弾してもびくともしているようには見えない。とはいえこちらも神奈子の攻撃をすべて回避している。アールバイパーが疲弊するのが先か、それともこの軍神がバテるのが先か……。

 

「チッ! ちょこまかと……。このままじゃ埒が明かないわね。もっとパワフルなのを喰らわせるっ! 」

 

 しびれを切らしたか、大技が来るぞっ……!

 

「御柱『メテオリックオンバシラ』!」

 

 こちらもスペルカードを取り出して迎撃を試みることにした。ゆっくりと錐もみ回転を始め、徐々に加速していく。ここぞとばかりにオプションを2つ展開。これで火力全開っ……!

 

「銀符『ツインレーザー』!」

 

 無数の隕石の如し御柱と光の針が正面からぶつかる……。純粋に力と力のぶつかり合いだ。絶対に負けられない……。

 

「何してるのさ!?」

 

 だが、この勝負を切り裂く甲高い声が響いたと思うと、俺も神奈子さんも弾幕を中断してしまった。どこから声がした? 周囲を見渡すとあまりに特徴的な目玉のついた帽子を被った金髪の背の低い少女が睨み付けていた。

 

「諏訪子っ、神聖な決闘を邪魔するというのか!?」

「なーにが『神聖な決闘』よ? 今のままぶつかり合ったら人間の方が潰れちゃうでしょ? アツくなりすぎ。本来の目的はどうしたのさ?」

 

 その「本来の目的」が何なのかはこちらは分からないが、諏訪子と呼ばれる少女に怒られて神奈子さんがシュンとうなだれていることだけはよく分かった。

 

「ぐ……。返す言葉もない……」

 

 今までの威厳などどこへ行ったのか、フランクな口調で再戦の約束を交わした。意外な結末に驚きを隠せない俺であったが本来の目的って何だろう?

 

「まったくもう。なんで私が神奈子のやろうとしていたことを指摘しなきゃいけないのさ? ブツブツ……」

 

 彼女曰く守矢神社では2柱(神様の数え方は「柱」なのだ)の神様をまつっており、神奈子と諏訪子がそれにあたるのだそうだ。つまりこのちんまいカエルっぽい子も神様。あんまりぞんざいに扱うと祟られそうだ。

 

「もっとお前さんとは神遊び(弾幕ごっこ)したかったが、ここは我慢だ。なんたって今アズマにバテられたら困るからね。だが、お前さんの実力が本物だってことは分かった。もっと見たいものがあるのよ。おうい、早苗ー。出ておいで!」

 

 戦神の大声が守矢神社中に響き渡る。かすかに「はーい!」と返答が聞こえたかと思うとドタドタと走る音が聞こえた気がした。もうじき早苗さんがここに来るのだろう。

 

 諏訪子いわく、神奈子は本当は俺と早苗さんが弾幕をしているところを見たかったらしいが、それでもアールバイパーの実力を肌で感じたかったために、力量を試すという建前でつまみ食い的に勝負を挑んだだけとのことらしい。

 

 で、その旨を俺に伝えるためにわざとかしこまった口調で俺と接する姿を、後ろで見てクスクスと声を殺して笑っていたのが諏訪子だったのだとか。

 

 で、あのままメテオリックオンバシラを食らってたら諏訪子さんいわく俺は潰れていた……と。つまみ食いで潰されたらたまったもんじゃないよ、もう……。

 

「なっ!? そんなところまでバラさなくてもいいじゃないか! そうよ、私だってアズマと弾幕したかったんだよ。白玉楼の亡霊もスキマ妖怪も、永遠亭の蓬莱人だってコイツと弾幕したことあるらしいのよ? で、命蓮寺に住んでるからきっと白蓮とも弾幕済みだろうし……」

 

 まあ白蓮とは弾幕ごっこしたことないんだけどね……。そうしていると見事な緑髪を持った青い巫女が息を弾ませながらやって来た。守矢神社もかなりの広さなのだろうことが見てわかる。

 

「あっ、貴方は……!?」

 

 驚き俺を指さす風祝。そう、実は俺と早苗さんは初対面ではない。無縁塚での一騒動でお世話になった恩がある。

 

「そう。俺が銀翼『アールバイパー』のパイロット、轟アズマだ。早苗さん、無縁塚では世話になった」

 

 後ろのアールバイパーと俺を交互に見比べると、早苗さんはきゃーきゃーと黄色い声をあげてまず俺に握手を要求、その後アールバイパーに近づいてその外装をあちこち触り始めた。

 

「すごーい。本物ですよ、本物! 近くで見ると迫力満点ですね♪」

 

 はしゃぐ女子高生の後ろでやはりもの珍しそうに神奈子も細部をよく観察していた。

 

「これはあの時もう少し粘って何としても家に引き入れたかったな。アズマよ、今からでも遅くない。これからはうちの子として……」

「やめんかいっ! というか私はコレ苦手……。なんか蛇っぽくてさ……」

 

 この3人を見ていると神様と巫女というよりかは家族に見えて仕方がない。家族……か。

 

「本当なら今すぐ早苗と勝負してほしいところだが、お前さんも疲れただろう。私と戦う前に天狗に絡まれたり、天狗の里に現れた付喪神退治をしたそうじゃないか」

 

 情報が早い……。もしかして山の上から見ていたのだろうか?

 

「大したものもないが、少しお茶でもしないか? これからの対戦相手、お互いをよく知っておくもの良いだろう」

 

 なんか戦うこと前提になってるんだが……。しかし疲弊しているのも事実だし、ここは施しを受けておこう。

 

 命蓮寺以外の場所で食事(今回はお茶だけど)のお誘いがあったのは白玉楼で一度あったきりである。俺は振舞われた茶菓子やお茶を手に、同じ外界出身で、しかもその外界ではシューターであったらしいということで早苗さんとは会話が弾んでいた。

 

「クレイジーコアって知ってるか? アレが天狗の里に現れてさ……」

「『極パロ』の高速面のボスですよね? うわぁー、見てみたかったです。あのー、ゼロス要塞でのエピソードも聞いてみたいです」

「ああ、あのときか。あれはだな……」

 

 ここ最近幻想郷に現れたSTGゆかりの兵器やら外界での思い出やらに花咲かせる。

 

思えば幻想入りしてから人間の友達っていなかったなと思い出させる。霊夢も魔理沙も散々俺を振り回すだけだったし、咲夜さんもなんか俺のこと認めてくれてない感じだったし……。

 

 他にもどの面でどの装備で進んでスコアを稼ぐかとか、お蔵入りして幻と消えたゲームの話題とか出てきた。二人とも外界の出身なのだから。

 

「それでー、こうやってオプションを広げて……」

「『このようにかせぐのだ』って?」

「そうそれですっ!」

 

 だが、今は幻想郷の住民だ。なので話題は過去の外界の話から現在の幻想郷の話題へとシフトしていく。

 

「最近、流れ星多いですね。アズマさんも見ましたか?」

「ああ、見たぞ。それどころか小隕石として幻想郷に落ちているところも目撃したことがある」

 

 樹海で見かけたあの黒い石。あれは隕石で間違いないだろう。濛々(もうもう)と煙が立ち込めており、落ちてまだ間もなかったかもしれない。

 

「流れ星はロマンチックですが、落ちてくるのは怖いです!」

「さすがに頭の上に落ちてくるなんてのは天文学的な確率だろう」

 

 順調に消費されゆくお茶菓子。しばし談笑し、その身を休めるとどちらともなくお互いをよく知ろうという欲求がわいてくる。

 

「幻想郷式の挨拶と言えば……」

「アールバイパーの凄さを知ってもらうためには……」

 

 ほぼ同時に顔を見合わせてこう言い放った。

 

「弾幕ですね」と。




(※1)ハンター
サンダーフォースシリーズに登場する自機の兵装。
青くて丸い弾を高速発射する。弾は大回りするような軌道で標的を追尾して命中する。あまりに近い距離の敵を狙うのは少々苦手。
本作品に出てくるハンターはサンダーフォースV版なので、地形を貫通することは出来ず、閉所では思うように力を発揮できない

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。