東方銀翼伝 ~超時空戦闘機が幻想入り~   作:命人

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異変の首謀者である永琳をどうにか追い詰めたアズマ。
しかし、彼女もまた蓬莱人であり殺すことが出来ない。
更に悪いことに永琳は切り札たりうる巨大戦艦と一体化して襲い掛かってきたのだ。


第16話 ~その戦艦、三度改造され~

 永琳が呼び出したのは3つのコアを持ち、こちらを挟み込むように極太レーザーを撃つ巨大戦艦。こ、この形状はまさか……!

 

 こいつはヤバいぞ……。永琳自身をコアとしたその姿は俺の見間違いでなければ「ビッグコアMk-III(※1)」のもの。

 

 今までの図体だけがデカいザコ戦艦どもとは勝手が違う。少しでも動きを見誤れば極太レーザーの餌食になるか、囲いこまれてまともに動けなくなってしまう。そうなれば光学兵器を反射させるレーザーを用いてジリジリとこちらを追いつめてくるのだ。

 

「恐れているわね、その顔は? さすがアズマ。この戦艦の恐ろしさを知っているようね」

 

 正面を捉えられては駄目だ! 俺はアールバイパーを旋回させ、一度永琳から距離を取る。直前まで俺のいた空間に青い極太レーザーが通る。今も大口径をこちらに向けてバンバン放ってくる。幸い発射にタイムラグがある為アールバイパーで動き回っている以上は安全である。

 

 だが、彼女は不気味な笑みを浮かべると、オレンジ色をした細いレーザーを撃ってきたのだ。しまった、あれはこちらを追いかける為に一度軌道を変えるシロモノだ。

 

「止まれない……!」

 

 軌道を読まれないようにジグザグに飛行してオレンジ色のレーザーを回避する。これもどうにかやり過ごした。

 

「うううっ!」

 

 うめく白蓮。そうだ、聖は先程の戦闘で深い傷を負っているのだった。あまり無茶な飛行をしては彼女の負担になる。だが、永琳がバクテリアン戦艦の装甲を身に纏ってしまった以上、俺に白蓮を途中で降ろす猶予がある筈なかった。

 

 逃げ続けていても埒が明かない。俺は覚悟を決めてビッグコアMk-IIIの装甲を纏った永琳と対峙することにした。

 

 案の定極太レーザーがこちらの退路を塞いできた。そして反射レーザー。MK-IIIの極太レーザーに当たると反射して複雑な軌道を描きレーザーの籠に閉じ込めた銀翼をいたぶるものだ。

 

「ぎゃあぁっ!!」

 

 角度の計算が正確過ぎる。永琳はずっと俺と交戦する事で動きの癖のようなものを読み取ってきたのだろう。まるで避けるルートすら予測したかのように反射レーザーの軌道は面白いようにアールバイパーと重なる。

 

「貴方の行動パターンなどお見通しなのよ。流石にあんな素早く飛行されたら追いつけないけれど、レーザーの籠の中でスピードを出せない状況での貴方の動きなんて、手に取るように分かるの」

 

 再び永琳は反射レーザーを撃つ。恐らく俺の動きを読んでいるものだろう。つまりあれを回避する事はほぼ不可能。ならば……!

 

「(次は一気に接近すると見たわ。反射の範囲外くらいの懐にね)」

 

 やる事は1つ! 反射したレーザーがこちらに来ないうちにあらん限りの勢いで接近するのみ! 俺はアールバイパーの速度を最大に上げて一気に接近……しようとしてやめた。

 

 すぐに接近する癖は何とかしないとな。永琳だって接近戦が弱い事は露呈されているんだ。同じ手が2度通用するとは思えない。

 

 ではどうしようか。アールバイパーではないところから攻撃を加えるか。真っ先に思いついたのはオプションたち。オプションシュートやサイビット・サイファならコアにダメージを与えることもできるだろう。

 

 ……いや、駄目だ。あからさまにオプションを展開したら絶対に警戒される。一度攻撃らしいものをして、不発と思わせといて……くらい裏をかかないといけないだろう。ではどうすれば……?

 

「他に弾が出せるところと言えばアンカーですよねぇ」

「アンカーが弾を出す!?」

 

 白蓮からの助け舟だったのだが、それは初耳であった。リフレックスリングはムラサのアンカーの扱い方をヒントに得た兵装。もしかしたら弾も撃てるのかもしれない。イメージすれば為し得るかも分からないぞ。とにかく試さない事には何とも言えない。

 

「リフレックスリング!」

 

 言われたとおりに射出した。距離が遠過ぎて遮蔽板まで届かない。だが、あそこから弾が出れば……!

 

 信じられない事が起きた。回転するリングが渦巻き状に弾幕を展開しているではないか。

 

「これはムラサの『ファントムシップハーバー』? 1つしかないけど」

 

 聞くとムラサ船長はアンカーを撃ちながらそのアンカーからも弾幕を展開する事が出来たのだという。ではリフレックスリングをアンカーに置き換えて考えると、クルクル回転しているからその弾道も渦巻き状になるらしいと俺の中で結論づいた。

 

 こいつはスペルカード級の発見だ! メモ帳にスペル名をサラサラと記入し、さっそく発動する。ムラサのような陽気な妖怪が教えてくれたスペル。少し趣向を凝らして……。

 

「名付けて……陽妖『リフレックスリング』!」

 

 これで「ヨーヨー」と読むのだ。まるでヨーヨーのようなリフレックスリングの挙動とムラサ船長のような陽気な妖怪由来の兵装、そのダブルミーニングである。

 

 反射レーザーが貫くは回転するリング。俺は痛くも痒くもない。そしてリングから放たれる弾幕で遮蔽板を削っていく。怯んだのか、アールバイパーを囲っていた極太レーザーが途切れた。

 

「こうなればこっちのものだ! 出てこいっ、ネメシス、コンパク! フォーメーションオプションだ」

 

 2つのオプションを左右に配置させる。剥き出しになったコアめがけて俺は怒声を上げる。

 

「操術『サイビット・サイファ』!!」

 

 光の弾丸となったネメシス達は弾幕もレーザーもお構いなしにコアめがけて突撃する。2つのコアを、そして永琳をこの巨体から追い出すことに成功。ビッグコアMk-IIIの装甲は音を立てて崩れた。

 

「さあ、今度こそ切り札を潰したぞ! いい加減投降するんだ!!」

「外装を破壊しただけで随分上機嫌になるのね。こんなのまた纏えばいいじゃない」

 

 片手を掲げ合図を送ると再び永琳の周辺に機械の装甲が形成される。これではジリ貧だぞ……。

 

 赤黒い光が鈍く光ると、再びバクテリアン戦艦の装甲を身に纏う永琳。今度は先ほどとは違う種類の巨大戦艦のようだ。

 

「今度は『デルタトライ(※2)』かよ……」

 

 こちらを追いかけてくるドラゴン型のレーザーやあらゆるものを貫通する剣型のレーザーを使いこなす強敵。

 

 先程から強力なコアばかり呼び出してくる。そしてこのデルタトライを倒したところで、また別のコア系ボスを呼び出すに違いない。こんなのが続けばいずれ俺は潰されてしまうだろう。

 

 永琳を攻撃しても無駄だ。装甲を壊してもすぐ呼び戻され、永琳自身を倒そうとしても復活してしまう。そう、初めから俺は勝てない勝負を仕掛けていただけなのだ。

 

「ならば最初から勝負などしない!」

 

 そう、永琳に機械の装甲を与えているバクテリアンの親玉が何処かにいる筈なのだ。そして先程の赤黒い光でなんとなくそれを確信した。奴はすぐそばにいる。

 

「永琳をいくら攻撃しても無駄だ。絶対に倒せない。彼女に力を与えている赤黒い眼球『ゼロスフォース(※3)』を打ち砕かない限りはな」

 

 アールバイパーが向かう先は永琳の奥、不自然に未だに暗黒が支配する空間。そういえば永琳はその場所を守るかのように立ち回っているように感じる。

 

「ツインレーザー!」

 

 遠くまで届く兵装にチェンジし、奥に潜んでいるであろうゼロスフォースに攻撃を加えるが、一向に手ごたえを感じない。やはりバイパー自体があそこに行かなければならないのだろうが……。

 

 迫る機雷を避けて、それをツインレーザーで破壊する。間髪いれずにうねるドラゴンレーザーをぎりぎりで回避するが反撃の機会は見られない。こんな調子では永琳の背後など取れる筈がない。どうにか弾幕を避けて安全そうな場所に躍り出た。だが直後、俺はその選択を酷く後悔することになる。

 

「ライトニングソード!」

 

 剣の柄のような形に変形していたデルタトライから青白い大口径レーザーが発射される。それをもろに受けてしまった俺はバランスを崩し、墜落させてしまう。バウンドする機体の中、俺は耐えがたい衝撃に両目を堅く閉ざす。

 

「これ以上はマジでやばい……」

 

 辛うじて飛行を続ける我が銀翼。だが、俺やバイパー以上に深刻だったのが白蓮。今の衝撃で閉じかけていた傷口が再び開いてしまったらしい。白いインナーを染める赤黒色が痛々しい。

 

 追い打ちをかけるかのように赤色や青色の機雷がゆっくりとアールバイパーに忍び寄っている。

 

「ちくしょう! 弱っちい自分が情けない……。俺も白蓮さんみたいに強力な弾幕ができれば……」

 

 叶いもしない事が脳裏をよぎる。そんな夢みたいな事ある筈が……。

 

 次の瞬間、強烈な頭痛と吐き気を催した。俺の体も参ってしまったのか……。いや違う。この感覚は前にも……。

 

 俺の脳が白蓮と一体になるような不思議な感覚。俺はアズマであり白蓮だ。そうだ、前も疲弊していた輝夜をアールバイパーに乗せていた時に……。

 

 おもむろに虚空めがけてリフレックスリングを射出する。回転しながらの小さい弾幕を展開する筈だったリング。しかし、今はおびただしい量の紫色の弾幕が広がっていく。二重にも三重にも……。速さの違う弾が美しい軌跡を描き、デルタトライの機雷を一掃する。

 

 この弾幕は俺のものじゃない。こんな美しく強烈なもの、今の俺には扱える筈がない。それにこれってそのまんま……。

 

「『紫雲のオーメン』ですね。アズマさんに魔力が流れる感覚があったので何かと思いましたが……。しかし今は、この状況を打開する事が……」

 

 もう何も言うなと彼女の口を止めると、俺は改めて操縦桿を握り直す。白蓮の分まで戦っているんだ。こんな所で負けるわけにはいかない!

 

 紫雲のオーメンを放つリングを更に奥に飛ばし、デルタトライの遮蔽板を破壊した。ここで俺はリフレックスリングの回転を逆方向にする。今度は周囲のものを吸い寄せるようになった。目的は永琳の確保。

 

 リング内に永琳を捕らえた事を確認するとアールバイパーを中心に大回転。ハンマー投げの要領で永琳をデルタトライから引き離し投げ飛ばした。

 

「今しかないっ!」

 

 銀翼を永遠亭の最深部へと進める。

 

 むわっと蒸し暑い最深部。不自然に真っ暗になっていた場所には赤黒い眼球があった。ギョロリとこちらを睨みつけるそれは非常にグロテスクである。

 

「こいつが全ての元凶『ゼロスフォース』……」

 

 背後からは物凄い形相でアールバイパーを追う永琳の姿があった。相変わらずデルタトライ型の装甲を纏っている。だが、俺は待たない!

 

 オプションを呼び出し、ありったけの火力をこのバクテリアンの大ボスに向けてぶっ放す。

 

「やめ……」

 

 懇願する月人の叫びは、それよりも大きくおどろおどろしいゼロスフォースの断末魔にかき消された。

 

「ヴァー!!」

 

 グチュと肉が潰れる嫌な音と共に、ゼロスフォースは爆発四散した。特徴的な断末魔は永遠亭中に響き渡り、俺達が永遠亭の異変を解決した事を知らせた。

 

 輝夜達が戦っていた場所に戻ると無数のコア系ボスがそのコアの光を失い生気が抜けたかのように横たわっていた。バクテリアンを生み出し使役していたゼロスフォースが倒されたことによってその機能を止めてしまったのだろう。

 

 俺は銀翼から降りて永琳に接近する。

 

「今度こそチェックメイトだ。もうお前の切り札であるバクテリアンはいないぞ」

 

 永琳を取り囲む俺や白蓮、そして輝夜達永遠亭の住民達も……。

 

「恨めしい……恨めしい……。そこまでして私を消そうというのね! この魔住職の犬ッコロがぁー!!」

 

 俺に掴みかからん勢い。執念の為せる業だろう。俺は足がすくんでしまって動けなかった。

 

「お師匠様、もうやめましょう……! これ以上異変は起こせないんです。私達の敗北なんですよ……」

 

 月のウサギが今や怒りでオーバーヒートした月の頭脳の暴走を止めようと躍起になっている。

 

「せめて最期くらいは綺麗に消えたいものウサ……。あまり往生際が悪いと後の歴史で笑い物にされるウサ」

 

 永遠亭の住民にとってこの異変は自らの存在を守るための異変という認識。それの完遂に失敗したという事は自らの消滅を意味している。彼女らの頭の中はその考えに支配されているのだ。

 

「消える……? そんなことはないと私は思いますが……」

「その口が言うの!? 散々私達の存在を脅かしておいて!」

 

 今度は住職につっかかる。しかしその結果を予測していたかのように白蓮は少しも取り乱さない。永琳をかわすように立ち回ると、今も地面でうずくまる幽々子のところまで案内した。

 

「永琳さんは幻想郷一のお医者さんでしょう? 人間だけではなくて妖怪や果ては亡霊なんかも診察できる……そんな方永琳さんを除いて幻想郷にいましたか?」

 

 そこまで言うと白蓮を押しのけるように涙目になった妖夢が永琳に頼みこむ。

 

「幽々子様が、幽々子様が……。この深い傷を治して下さい……」

 

「ほらね」と言わんばかりに白蓮は月人を見る。目が覚めたかのようにハッと目を見開く永琳。その瞳からは一筋の涙が零れ落ちていた。

 

「私は……必要とされているのね。忘れ去られたりなんかは……」

「当然です。人里では永遠亭がずっと閉まっているから混乱していましたし、妖夢が寝込んだ時もここで診察が出来なかったので、何日も命蓮寺で看病していたのですよ。永琳さん、それだけ幻想郷に貢献しているのに、今更誰が貴女達の事を忘れるのです?」

 

 住職サマに優しく諭されると心の荷が下りたのか、ガックリとバクテリアン戦艦の残骸でひしめく床に崩れ落ちる。

 

「そんな……。私は忘れられたりなんてしなかったのに、外界の技術に(うつつ)を抜かし、なんて恐ろしい事をしてしまったのか……」

 

 バクテリアンももはや復活せず、永琳も自らが忘れ去られ消滅してしまうなど起きえないことを知った。どうやら今回の異変もこれにて一件落着のようだ。

 

 俺も全てが終わったことに安堵し、深くため息をついた。さあ、命蓮寺に帰ろう。俺は踵を返し来た道を戻る……。

 

「ヒヒヒ。まったく、とんだ茶番だったな」

 

 次の瞬間、地面の一部で青色の閃光がほとばしる。俺は急な状況の変化に対応できずに手をこまねく。だが、相手は待ってはくれない。

 

 地面から機械の触手が無数に伸びると、崩れ落ちて泣いていた永琳を絡め取りガッチリとホールドしてしまったのだ。

 

「『パラサイトコア』っ? どうして動けるんだ!?」

 

 キイキイと甲高い声で笑う脳みそが浮遊していた。ゴーレム、生きていたのか!

 

「やりぃっ! 遂に『月の頭脳』を手に入れたぞ! ずぅっと隠れていたかいがあったもんだ」

 

 反射的に俺はゴーレムの目玉めがけてツインレーザーを撃つ。避けるそぶりも見せずに、ゴーレムは目玉にレーザーを受けた。その目玉はつぶれてしまった。

 

「今更俺様を倒してももう遅いさ! 月の頭脳だけあって心に隙を見せなかったから付け入れる事が出来なかったが、お前らが倒してくれたおかげでこの通りさ、ヒャーッハッハッハ! これで『あの方』がお目覚めになる。バクテリアン軍、万歳ー!!」

 

 それだけ言うと脳みその化け物は触手でバンザイしつつ爆発した。

 

『ハハハハ……、ハーッハッハッハ!』

 

 小さい爆発の直後、まさに悪役の高笑いとしか表現できない不気味で下品な笑い声が周囲にこだまする。白蓮や輝夜が声の主を探し周囲を見渡すが、それらしい姿は見当たらない。

 

 間もなくバニシングコアのスポットライトがひとりでに再起動するとある一点を照らし始めた。永琳を捕らえたパラサイトコアのすぐ隣である。

 

 そこにはあまりにもおぞましい姿が映し出されていたのだ!

 

 赤黒いグロテスクな顔。脳みそが剥き出しの頭部からは無数の血管が伸びておりそのグロテスクさにより一層拍車をかけている。俺はこいつを知っていた。大きな野望を持ってバクテリアン軍を使役するアイツだ……!

 

「お前が本当の黒幕か『ゴーファー(※4)』!?」

 

『我が名を知っているようだな。いかにも、我こそ最強のバクテリアン特殊部隊を率いるゴーファーである』

 

 余程上機嫌なのか、常に笑い声が絶えない。

 

「貴方が永琳を、てゐを騙して弄んだ犯人……!?」

 

『左様。この幻想郷と呼ばれる地を我らバクテリアンの要塞に変えるのだ! そのために紛い物の小賢しい脳と、本物の月の頭脳を利用させてもらった。思い通りに事が進んで実に気分がいい。

ハーッハッハッハ!』

 

 なおも得意げに豪語する巨大な顔。自らの魅力的な技術力を餌に永琳たちを騙していたのだ。初めからバクテリアンは幻想郷の住民に付け入り野望を達成させ易く利用していただけだったのである。今度は白蓮が突っかかる。

 

「幻想郷の……支配!? どうしてそんな馬鹿げた事を!」

 

『簡単な話だ。この地で生き抜くため、その為には貴様らが邪魔だからに他ならない。

……特にそこの超時空戦闘機! 貴様ら銀翼には何度辛酸を舐めさせられたか……。

だがそれも今終わった! この永遠亭を足掛かりに幻想郷を頂く』

 

 永琳を絡め取っていたパラサイトコアが天井の大穴から飛び立とうとしている。はるか上空に浮かぶ「ゼロス要塞」へと運ぶつもりなのだろう。

 

『それにしても素晴らしい娘だ。

頭脳明晰な上に死してもたちどころに息を吹き返す蓬莱人。

この娘を取り込めば我らバクテリアンは

至高の頭脳、永遠の命、朽ち果てぬ体を得られる!

究極の軍団が完成するのだ……!』

 

 永琳が連れ去られる……。俺は怒りに任せ、ゴーファーにショットを当てる。だが、ホログラムの類に攻撃しても無意味であり、空しくもショットは透き通ってしまう。今度はゴーファーの虚像を照らすバニシングコアの残骸にショットを当てた。

 

 ライトの光がわずかにちらついたかと思うと、ザザザとノイズが走り、憎たらしい赤い顔も大きくゆがむ。

 

『娘を、幻想郷を取り返したくば、はるか上空のゼロス要塞まで来るのだ。

丁重に、それはもう丁重にお持て成ししよう……』

 

「ふざけやがって……。そんな馬鹿デカい要塞など爆破させてやる! ゴーファー、首を……いや、頭の血管を洗って待っていろよ!!」

 

 ゴーファーの姿は見えなくなっても不気味な笑い声だけが永遠亭に何度も響き渡っていた。早速アールバイパーに乗り込み、逃げたパラサイトコアを追跡しようとする。

 

「アズマ、私も連れて行きなさい」

 

 意気揚々とゼロス要塞へ向かおうとする俺に水を差すのは姫様。裾を引いて俺を引き止めている。せっかく気分が盛り上がっていたのに俺はつんのめってしまった。

 

「永琳を連れ戻すのでしょう? 一発ブン殴らないと気が済まないわ。超技術の誘惑、そしてそこから生まれた悪夢から永琳を解放するためには……ね」

 

 要は自分で永琳を連れ戻したいということらしい。ただワガママなだけの箱入り娘かと思ったら、随分と部下思いである。こちらの返答も聞かぬままバイパーに勝手に乗り込んでしまった。

 

「どうしよう……」

「戦力は多い方がいいでしょうし、輝夜さんにとっては特別な方を連れ戻すのです。是非とも作戦に参加させてあげて!」

 

 やる気満々だし、断る理由も見つからない。俺は再び姫のエスコートを行うことになったのだ。ええい、ゴチャゴチャ考えていても埒が明かない。要はあのいけ好かないデカ顔をぶっ潰せばいいだけだ!

 

「その意気です。今のアズマさん、とってもかっこいいですよ。永遠亭や幽々子さんの件は私や鈴仙さんに任せて頂戴な」

 

 月の頭脳の弟子、鈴仙もある程度の医療技術を持っているのだろうか。いつも師匠と慕っているのだし。とにかく行かなくては。俺はアールバイパーのキャノピーを閉じる。

 

「アールバイパー、出ます!」

 

 轟音を立て、俺は永琳を追ってぐんぐんと高度を上げていくのであった……!




(※1)ビッグコアMk-III
横STG「グラディウスIII」に登場する巨大戦艦。
極太レーザーでこちらを囲い込んだのちに細い反射レーザーで追い詰めてくる。
初登場時は反射レーザーの速度があまりに速くて目で見ての回避が困難であった。

(※2)デルタトライ
横STG「グラディウス外伝」に登場する巨大戦艦。
こちらを追尾する「ドラゴンレーザー」と極太レーザー「ライトニングソード」が特徴的。
実はグラディウスと同じコナミが手掛けた縦STG「トライゴン」の自機がモチーフとなっている。

(※3)ゼロスフォース
グラディウスシリーズに登場する赤い球体をした生物兵器。断末魔が「ヴァー!」。
コレを標的の惑星に埋め込んで成長させることでバクテリアン軍の要塞惑星に変貌させる。
「沙羅曼蛇」ではラスボスに抜擢されてたり、「オトメディウス」では特定モードの最終ボスとして君臨してたりする一方で、「グラディウスV」では大量に湧いて出てくるザコ敵……いや、障害物扱いに……。

(※4)ゴーファー
グラディウスIIやIVのラスボスである巨大な顔。実は中間管理職。
オトメディウスでは彼の娘がバクテリアン軍として暗躍しているようだ。

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