東方銀翼伝 ~超時空戦闘機が幻想入り~   作:命人

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人里で暴走し、辻斬りとなってしまった半人半霊の少女「魂魄妖夢」をアールバイパーのスペル「銀星『レイディアント・スターソード』」で撃破した貴方。
どうにか暴走を止めることはできたが、妖夢は力を使い果たしたのか、気を失ってしまった為、幻想郷一の診療所である「永遠亭」に連れて行こうとする。
しかし妹紅曰く永遠亭はしばらく休業中なのだとか。

白蓮の提案で妖夢が目覚めるまで命蓮寺で引き取ることになった。貴方は今回の辻斬り騒動ですっかり仲良くなった半霊と一緒に寺のお勤めやら妖夢の介抱やらに精を出す。

半霊は妖夢が目覚めた後、本来の半霊としての居場所を取り戻すが、貴方と長く過ごしていた為に新たな人格も形成され、その想いが半霊から分離、独立した存在として貴方の元に残る意思を見せる。
貴方は一回り小さいこの新たな半霊に「コンパク(コンパクトオプション)」と名付けた。

2つ目のオプションも入手したのでいよいよ妖夢、幽々子率いる「冥界の住人チーム」と共に永遠亭の攻略へ向かうのだが……


第9話 ~永遠亭へ~

 白蓮が同行するということで俺は彼女をアールバイパーに乗せる。俺が動けるうちは俺が進んで白蓮の体力を温存させるのが狙いだ。

 

 今は竹林をただ一直線に飛んでいる。迷いの竹林というだけあって目視ではどこを進んでいるのかが分からなくなってしまう程だ。しかし俺には(厳密には「アールバイパーには」なのだが)魔力を察知するレーダーがある。はるか遠くに不自然なまでに大きな反応が見えている。あそこで巨大な力が渦巻いているようだ。

 

「速い……」

 

 速度に驚き目を白黒させているようだ。得意になってさらに速度を上げる。

 

 俺は不自然なまでに膨れ上がった魔力に導かれるように一直線に進んでいた。間違いない、レーダー上では大きな白い丸で表示されているコレこそが永遠亭だろう。

 

 高速で飛行していると竹林が突然途切れる。何かしらの原因でここだけ妙に見晴らしがいい。急に月明かりにさらされ空を見ると……確かに月がおかしい。不自然なまでに大きいのだ。

 

「弾幕、来ますっ! 敵影1、2、3……囲まれている!」

 

 チィッ! 見晴らしのいいところに突っ込んだのがマズかったようだ。弾幕をばら撒きながら接近してくるのは恐らく妖精の類。今は相手をしている場合ではないが……。

 

「飛ばすぞ! 切り抜けるまで一言も喋らないように。舌を噛むからね」

 

 バーニア急点火! わらわら寄ってくる敵影を振り切るように絶妙なコントロールで降下しつつ包囲網を抜けていく。

 

「(邪魔だっ!)」

 

 青い刃「レイディアントソード」を振るい、すれ違いざまに進路先にいた妖精を斬り捨てる。一瞬真っ二つになった胴体が見えた気がするが、すぐに爆発して消え去った。むっ、今度は後ろに取りつかれたか。限界まで高度を下げると今度は急上昇。後ろを向きつつスプレッドボムを投下する。青白い爆風が追っ手を吹き飛ばし、更に目くらましを行い直撃を免れた追っ手を振り切る。

 

 そのままくるりと進路を再度変更した。これだけやれば振り切れるだろう。再び鬱蒼とした竹林へと突っ込む。

 

「もう大丈夫だ」

 

 改めてレーダーを確認すると永遠亭にかなり近づいたことが分かる。よし、このまま一気に突入するべく再び速度を上げて……。

 

「待って、永遠亭から高濃度の魔力反応が……」

 

 レーダーを見ると、永遠亭らしき白い点から小さい点がいくつか飛び出しこちらに急接近しているのが分かる。さらにそれよりも小さな点々がアールバイパーのすぐ傍に無数に点在していることも。

 

 その異変に気付いた矢先、虚空からウサギの耳をはやした少女が一直線に跳ねてきた。こいつら、永遠亭の刺客……!?

 

「急接近する大きなエネルギー反応に、急に姿を現して突っ込んでくる刺客……。嫌な予感しかしない」

 

 突っ込んでくるイナバのウサギどもをいなしているうちに、その予感が的中したことを俺は知ることになる。

 

 音もなく浮遊してやって来たのは筒のような姿をした機械であった。

 

「なに……これ……?」

「青白いコア……、また出やがったか!」

 

 人里にて突然遭遇した「ビッグコア」と同じような青いコアを持った巨大な機体。こいつは「デス(※1)」だ。誘導ミサイルと極太レーザーを使いこなす文字通りの破壊者(デストロイヤー)。

 

 永遠亭から飛び出した高魔力反応の正体はこのデスで間違いないだろう。となるとボス級戦艦があと数体存在することになる。幸いデスは真正面にいなければさして驚異的な存在ではないので何とかなる筈……。

 

「怖い……」

「大丈夫だ、俺がやる」

 

 里でビッグコアと対峙した慧音の顔面蒼白ぶりや、今の白蓮の怯えぶり。幻想郷の少女達にはより恐ろしく見えるのだろう。俺に言わせりゃ弾幕のほうが怖いんだが。とにかく安心させるために優しい言葉を投げかけた。

 

 デスの前方のハッチが音を立てて開く。誘導ミサイルが来るか!

 

「ネメシス、コンパク! トレースオプションの構え!」

 

 デスが攻勢に出た刹那、俺は2つのオプションを展開。その後急上昇し、ヤツの真上を陣取る。眼下では白い煙を上げたミサイルがアールバイパーをかすめていた。あ、あぶねぇ……。ミサイルをすり抜けたコンパクが開いたハッチの中身めがけてリップルレーザーを放ち、ネメシスと俺でデスのがら空きになったどてっ腹にスプレッドボムを喰らわす。爆弾とレーザーの複合攻撃に耐えられず、デスのハッチが破壊された。よし、誘導ミサイルを封じたぞ!

 

 上昇しての体当たりでこちらを押しつぶそうとするデス。残念ながらその動きはお見通しだ。俺は一度後ろに引くとオプションの構えを変えた。2つのオプションを自分の左右に1体ずつ配置し、V字型に広げることで擬似的な編隊を形成する。俗にいう「フォーメーションオプション」ってやつだ。

 

「操術『サイビット・サイファ』!」

 

 その構えから俺はスペルカードを発動。魔力をまとったネメシスとコンパクに突撃をさせる。遅れて俺も一直線に突撃。

 

「レイディアント……」

 

 間合いを詰めながら俺はレイディアントソードに換装、更に距離を詰めてすれ違う瞬間に……

 

「ソード!」

 

 青い刃を展開しデスを一閃。そして奴に纏わりついていたオプションたちを呼び戻しつつ静かにその剣をしまう。

 

 背後で一瞬だけ両断されたコアが見えたが、次の瞬間には眩い光と耳をつんざく爆音へと変わっていた。

 

 デスを華麗に撃破したかと思った矢先、再びレーダー上に高エネルギー反応が急接近してくる。デスよりも大きな姿をしたそれは2つのコアを持っている。機体上下に巨大なカバーを装備しており、コアに攻撃が届かないようになっていた。

 

「『ビッグコアMk-II(※2)』といったところか。急いでいるんだ、さっさと終わらせる!」

 

 奴はカバーを閉じている間はまともにダメージを与えられない。狙うならカバーを開いて14の砲門を用いての一斉掃射する瞬間だ。じりじりと間合いをキープしつつその時を待つ。

 

「今っ!」

 

 カバーが開いた。その瞬間に攻撃を叩き込もうとするがおびただしい量のレーザーに怯み、間合いを取ってしまった。

 

「速い……。彼らには弾幕ごっこの常識が通じないのかしら?」

 

 忘れてた、こいつは無敵のオプションに攻撃を任せるのだった。あのレーザーの雨あられの中、隙間を縫って凌ぐのは至難の業である。

 

「ネメシス、コンパク! トレースの構えだ!」

 

 号令と共に一度格納していた2体のオプションを展開、自分の後をついていくようなフォーメーションを組ませる。あとは同じく間合いを計りながら、最大の好機をうかがい……

 

「撃てぇー!」

 

 あらん限りの攻撃を浴びせる。アールバイパー自身もなるべく前に出てスプレッドボムを遮蔽版めがけて投下する。爆風と眩いリップルレーザーが巨大戦艦を襲う。

 

 よし、遮蔽版をすべて取り除いた。あと少しで倒せる。所詮はビッグコアの発展型。(ゲームの中でだが)散々やりあっている相手だ、俺の敵ではない。

 

 だが、遮蔽版を失うと今度はそれを守るようにアームを閉じきってしまった。くそう、これではダメージを与えられない。再びつかず離れずの間合いを保ちつつ……。まずい、突っ込んでくる!

 

 錐揉み回転しつつその巨体で体当たりを仕掛けてきたのだ。かろうじて直撃は避けるものの、衝撃で一瞬バランスを崩す。さらに器用に方向転換をするとカバーを開いてこちらに迫ってきたのだ!

 

 しまった、背後を取られた。今も錐揉み回転しつつこちらを狙うレーザーを乱射しているのだ。

 

「くっ、振り切るぞ!」

 

 背後への攻撃手段のない俺はひとまず逃げることにする。竹林の中、ジグザグに飛び回る。あれだけの巨体だ、竹に阻まれてそこまで素早く動けないはず。アールバイパーを最高速にし、とりあえず背後は見ないことに……。

 

「アズマさんっ、振り切れません!」

 

 なんと……、Mk-IIはそのマンボウのように平べったい体を駆使して背後にピッタリとついているではないか! これではあのレーザーに貫かれるのも時間の問題である。

 

 どうすれば……?

 

「あの……アズマさんっ、一度リデュースを解除してください」

 

 なっ、何を言っているんだ! こんなところで元のサイズに戻ったら妖精やイナバどもの弾幕でハチの巣にされてしまう。それにビッグコアMk-IIだって追跡中なのだ。そんな自殺行為など出来る筈が……。

 

「あれだけの暴力的な弾幕ですが……被害を受けているのは私達だけではありません」

 

 よく見ると無慈悲なレーザー光線に晒されているのは俺たちの他にも、こちらの害をなす妖精どもがいるではないか。

 

「アレは……私が相手します!」

 

 止めても聞かないだろう。俺は静かにリデュースボタンを押し、元のサイズへと戻る。直後、キャノピーが開かれると我らが住職サマは銀色の翼の上に立ち、そこから大きく飛翔した。

 

 飛翔した白蓮が巻物を掲げる。重低音が響き、彼女の背後で巨大な蓮の花が咲く。本気だ、あの美しくも畏れ多い姿。光で描かれたのは蓮の花をかたどった魔法陣。白玉楼で見た幽々子さんの扇子型のオーラも凄かったが、この蓮の花もそれと同じくらい素晴らしい。

 

 魔法陣から小さな「何か」が4つわずかに浮き出る。それは花の蕾であった。その蕾からまばゆい光を宿し、そして……

 

「破ぁっ!!」

 

 白蓮の掛け声とともに、4つの蕾からコアを直接狙い撃つレーザーが照射される。跡形もなく青い瞳は砕け散った。砕けた側のカバーがだらりと垂れさがる。半身が機能停止したMK-IIは未だ機能している反対側のアームをブンブン振り回してレーザーを放ち続けるが……。

 

 それは悪あがきにすらならなかった。問答無用で放たれた2発目の光線に再びコアを撃ち抜かれる。コアを失った巨大戦艦はボロボロと形を失い、そして爆散した。

 

「強い……。白蓮にはまた助けられてしまった……」

「いいえ、貴方がいなければ私も奴を倒せなかったでしょう。私はアズマさんが攻撃を加えようとした場所を狙い撃っただけです。貴方の行動があって奴の弱点を見破れたのですから。それに……」

 

 レーダーを見るとまだまだ強大な魔力がここに集まってくる。これ以上消耗するわけにはいかない。俺は白蓮を再びバイパーに乗せるとリデュースを行い最高速度で飛ばした。

 

「アールバイパーのスピードには目を見張るものがあります。さあ、今度こそ永遠亭を目指しましょう!」

 

 こちらを襲う敵は大体無視し、竹林をひた進む。遂にその屋敷が姿を現した。

 

「おかしい、異変が起きているというのに静かすぎる」

 

 先程まで散々ドンパチやっていたのにこの周辺だけは敵の気配がまるでないのだ。仮にも敵本拠地の入口なのに……だ。

 

「十中八九罠ですね、これは」

 

 直後、こちらを絡め捕らんという勢いで4本の機械の触手が地面から飛び出す。遅れてその触手の持ち主が姿を現した。

 

「テトラン(※3)か。触手による防御は侮れないからな。確かに門番にはふさわしい」

 

 目いっぱいに広げた触手をゆっくりと回転させてこちらににじり寄ってくる。どいつもこいつもオリジナルと同じ動きばかりしやがって……。いや、レーダーに記された巨大戦艦らしき強力なエネルギー反応はまだ残されている!

 

 テトランと対峙する矢先、ワープアウトしてきたのは「カバードコア(※4)」と「ネオビッグコア(※5)」。テトランも含め、いずれも同クラス程度の戦艦と共に本拠地を防衛する任務に就いた経験のあるまさに「恐るべき守護者たち」である。

 

 更に悪いことに、奴らは一気に俺を倒そうとしているのだ。1体ずつならまだしも、これでは多勢に無勢。俺にやり切れるか……?

 

「アズマさんっ! ここは私が切り抜けます。私がここを引き留めているうちに奥に行って異変の犯人を……」

 

 無茶だ、奴らは本気でこちらを殺しにかかってくる巨大戦艦だ。弾幕ごっこの強者とはいえ3体を同時に相手するなど無謀にも程がある。

 

「大丈夫ですっ! こんな奴ら、さっきの戦艦みたいにすぐに片づけてまた貴方と合流しますから。それよりも異変の根源を叩くのが重要です。アールバイパーの機動力ならすぐにたどり着けるでしょう」

「了解……した。白蓮さん、ご武運を……」

 

 共倒れは何としても防がなくてはならない。少し心配だが……このバクテリアンもどきを動かしている犯人を捕らえればいいだけだ。俺は白蓮を外に出すと手薄になった永遠亭入口めがけて一気に飛んだ。

 

 永遠亭内部は月明かりも入らずに相当薄暗い場所であった。どこまで続くかもわからない長い長い廊下を突き進み、最深部を目指す。部屋はいくつもあり、今もウサギの耳をはやした衛兵からの弾幕をいなしつつ探索を続けている。単機での行動は予想以上に困難を極めていた。

 

「大丈夫だ、レーダーによるとこっちの方向で合っているはず」

 

 指示された方向へアールバイパーは飛行している。とはいえ途中で通れなくなったりするかもしれず、この入り組んだ建物の中ではイマイチ信憑性が持てない。

 

 とりあえずこの道を突き進んでいこう。それしか情報がないのだから。それよりも邪魔をしてくる敵どもの処理が先決だ。

 

 背後から追ってくる奴は微妙に速度を落としつつのレイディアントソードで、まとまって突っ込んでくる奴らにはスプレッドボムで、そしておびただしい量の真白い使い魔を引き連れているような奴相手には……。

 

「操術『オプションシュート』!」

 

 この暴力的なまでの執念深さと火力を併せ持ったスぺルで一網打尽にする。撃ち出され、オレンジ色の光の球体となったネメシスは予想以上の働きを見せ、最後にオーラを爆発させる頃にはほとんどの敵を倒していた。仕事を全うしたネメシスを首尾よく回収、さらに先に進む。

 

 散り散りになって逃げ惑うイナバの中で隊長格らしき敵影を発見する。見た目は幼い少女のものだが、よく見ると他のウサギ達をアゴで使っている。こいつだけ黒髪だし目立つ。

 

 しかし、こちらに気が付くと彼女は一目散に逃げ出してしまった。なるほど、アールバイパーには敵わないと見て脱兎のごとく(文字通り)逃げ出しているのだろう。ここでさらなる増援を呼ばれたら厄介だ。追いかけてとどめを刺す。どの道レーダーによるとあまり脇道にもそれないし、不安要素はできるだけ排除したほうがよいだろうから……ね。

 

「このっ! このっ!」

 

 逃げるウサギは空中を跳ねるようにこちらの攻撃を避けていく。おのれ、あの桃色ワンピース、逃げ足だけは速い。こうなればコンパクを用いて……。

 

「操術『オプションシュート』!」

 

 真白い霊魂が唸りを上げて標的めがけて突っ込む。当の標的であるイナバは何故か邪悪な笑みを浮かべていた。な、何がおかしいっ!? オプションシュートは確実に標的に大ダメージを与える。いくら逃げ惑ったところで絶対に……。

 

 だが、コンパクは急にコントロールを失ったかのようにその場でクルクル暴れ出し、そのままあさっての方向で爆発した。な、なぜ? とにかく力を失ったコンパクを回収せねば。俺は霊魂めがけて飛ばす。むう、ユラユラしていてなかなか回収できない。右へ左へと移動するが、一向に回収できる気配がないのだ。

 

 おかしい、まるで酒に酔ったかのように周囲がグワングワンする……。気付くと薄暗かった廊下にボウと赤い光が無数に光っていた。人魂か……? 違う、あれは瞳だ。赤い瞳がこっちを凝視しているんだ。これがあの妖夢が屈したという「狂気の瞳」ってのだろうか。

 

「にししし、お兄さんって騙されやすいタイプ? だって面白いほど深追いするんだもん」

 

 先程まで追い回していたイナバが勝ち誇ったようにふんぞり返る。その声が右から左から反響して脳に響いた。

 

「呆気ないものね。てゐ、よく誘い出してくれたわ。ネズミ……いえ、見た目的にはヘンテコな鳥のバケモノ……」

「だからアールバイパーは超時空戦闘機であって、ヘンテコな鳥のバケモノにゃどぢぃやぬっ……」

 

 てゐと呼ばれたイナバの同僚だろうか、新たに紫色の長髪の少女が現れる。彼女もウサギなので耳があるが少し性質が違うようだ。

 

 とにかく俺はそんな彼女を睨み付けていつもの口上を口にするが、肝心なところで呂律が回らず締まらない。憤りを瞳に込めてさらにきつく睨み付けた。だが、それがまずかったか、再び視界が何重にも剥離し焦点が合わなくなる。間違いない、こいつが狂気の瞳を持つという鈴仙だ。

 

 こんな感覚を狂わせる相手、俺に倒せるのだろうか?

 

 

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(その頃永遠亭門前……)

 

 アールバイパーに永遠亭の攻略を任せ、自らが巨大戦艦達の相手を務める白蓮。その戦況はあまり芳しいものではなかった。

 

 慣れないコア系ボスをそれも複数体を一度に相手しているのだ。執拗にこちらの正面を捉え、細かいレーザーで狙い撃つネオビッグコア、遠方から回転する黒いカバーで防御しつつ、ゆっくりと飛ぶミサイルで援護するカバードコア、そして門をふさぐように触手を四方に伸ばすテトラン。

 

 更に悪いことに定期的に座布団型の機雷「ザブ」がワープアウトし、白蓮へ体当たりを仕掛けてくるのだ。

 

 これらの複合攻撃に晒されて白蓮は防戦一方となっていた。もっとも執拗に侵入者を排除しようとするのがネオビッグコア。対する白蓮も飛び道具で応戦するが、頑丈な外殻に阻まれてしまい、なかなか遮蔽版を破壊できない。

 

 死角から忍び寄るカバードコアのミサイルが白蓮を上下から同時に攻める。前方には広範囲を焼き払うネオビッグコアの赤黒いレーザーが今まさに照射されようとしていた。

 

「超人……」

 

 この危機的状況を抜けるには人では成し得ないほどの高速移動を行う必要があった。それは速く動くための筋力、そして急加速や急停止に耐えうるほどの頑丈さ……。そう、白蓮にはそれが出来る。今まさにスペルカードを掲げ高らかに自らの名を叫ぶ。

 

「……聖白蓮!」

 

 下から迫ったミサイルを蹴り、一気にネオビッグコア目指して跳躍。おびただしい量のミサイルは何度もジグザグに飛行することで避けていく。白蓮の通り過ぎた道が光の道となり、そしてその光は弾幕として周囲に散らされていく。

 

 そしてネオビッグコアの目前に迫ると……。

 

「南無三っ!」

 

 巻物の模様は拳の軌跡。右ストレートがネオビッグコアの遮蔽版を瓦割りの要領で全て真っ二つにかち割った。白蓮の追撃はまだ終わらない。

 

 そのまま巨大戦艦を名乗るには少しばかりサイズの足りないコアの背後に回り込み、横からガッチリと掴むと、白蓮はネオビッグコアを抱えたまま反対側を向いた。その瞬間照射される赤黒いレーザー。哀れ、バクテリアン軍の強力な破壊兵器が味方を蹂躙し始めたのだ。

 

 焼き払われるカバードコアのミサイル、そして今もワープアウトを続けてくるザブども……。

 

 白蓮は次にカバードコアに狙いを定め、抱えていたネオビッグコアを投げつける。手裏剣のようにくるくると回転しながら飛んでいくネオビッグコアはカバードコアの遮蔽版を横から貫通し、そのまま引っかかった。

 

「!?!?!?」

 

 カバーが引っかかってしまい、自慢の漆黒の盾が回らない。本体とカバーによって挟まれ両断されるネオビッグコア、そして異物が混入し正常に機能しなくなったのが原因か、エネルギー暴走を起こしたコアは真っ赤に光り、そして最後は大爆発を起こすカバードコア。

 

 残るはテトランのみ。触手を高速回転させて弾幕を張ってみせるが、弾幕に慣れている白蓮にとっては子供だまし以外の何物でもなかった。触手をじかに使って戦えばまた違う結果になっていたのだろうが、普段通りの戦いをした僚機達が無残な最期を遂げたことに焦りや恐れを抱いたのだろう。

 

 冷静に白蓮は背後に蓮の形をしたオプションを展開、先程ビッグコアMk-IIを葬ったレーザーでテトランの息の根を止めた。触手ごと大爆発を起こすテトラン。

 

「これで全部……ですね?」

 

 しかし、再び数体のザブがワープアウトして白蓮に襲いかかる。これをいなす住職であったが、再びコアを持った巨大戦艦が複数で現れたのであった。

 

「まだ……やる気なのですか! アズマさん、無事だといいのですが……」




(※1)デス
横STG「沙羅曼蛇(サラマンダ)」に登場した宇宙空母。
後にグラディウスIIにも登場したが、空母としての機能はオミットされ、代わりに極太イオンレーザー砲を装備している。
東方銀翼伝に登場するのはこちらのバージョン。
それにしても空母なのか戦艦なのか駆逐艦(英語で「デストロイヤー」)なのか判断に苦しむ。
なお、オトメディウスによると綴りは「DEATH」ではなく「DES」。やっぱりコイツ駆逐艦なんじゃないかなぁ?

(※2)ビッグコアMk-II
横STG「グラディウスII」に登場した宇宙戦艦。
カバーを閉じている間は遮蔽版に攻撃が届かず、カバーを開くと14の砲門からレーザー砲が火を吹く難敵……と言いたいところだが、基本的な対処方法はビッグコアと同じだったりする。
ボスラッシュステージの常連であるらしく、Vに登場した時は攻撃パターンが多数追加されて強化された。

(※3)テトラン
横STG「沙羅曼蛇(サラマンダ)」に登場した宇宙巡洋艦。
4本の触手をゆっくりと回転させる攻防一体の戦い方を得意とする。
触手は撃墜された戦艦のパーツを回収するのにも使われる。
巡洋艦でアイドルっぽいけど、ナカチャンジャナイヨー!
コイツもボスラッシュステージの常連。

(※4)カバードコア
横STG「グラディウスII」に登場した宇宙戦艦。
回転するカバーで遮蔽版を防御しつつ、上下からゆっくり飛ぶ破壊不可能なミサイルで攻撃してくる厄介なヤツ。

(※5)ネオビッグコア
横STG「グラディウス外伝」に登場した宇宙戦艦。
流線型の見た目をした高機動型ビッグコア。攻撃パターンも多い。

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