ただ空木君の学校に一時的にユミコさんと小村さんが転校したらという話です

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絶対ナル孤独者 短編

埼玉県立吉城高校の金曜の昼休み。僕、空木ミノルはあまり人が来ない廊下の奥で電話をかけていた。

空木 「もしもし教授ですか」

教授 「珍しいなミッくん。君が電話をしてくるなんて。なんかあったのか?」

僕は教授に電話をした理由を話し始めた。

空木 「ええ。さっき一瞬赤のにおいがした気がしたんです。一瞬だったので絶対とは言い切れませんが。一応報告しておこうと思いまして」

さっきまでと違い僕の言葉を聞いた瞬間に教授の声が真剣な声に変わった

教授 「ミッくん今は学校だよな。さっきと言ったが具体的に何時くらいだ。」

空木 「たしか12時を少し過ぎたくらいだったと思います。」

教授 「間違いだったという可能性は?」

絶対にそうだ・・・とは言えないけど勘違いだったとは思えないので僕は

空木 「五分五分です。一瞬だったので」

と答えた。

教授 「そうか・・・ミッくん今日の放課後になんか予定はあるか」

教授は少し考えてから僕に今日の予定を聞いてきた。

空木 「いえ特にないです」

教授 「なら今日の放課後は学校に残って調査をしてくれないか」

空木 「それはいいんですけど調査って具体的にどんなことをすればいいんですか?」

教授 「なあに簡単だよ。校舎内を見て回っていつもと違う場所があるか確認するだけでいいんだ」

特課に所属してから初めてのこういう任務だったので少し身構えてしまったのに、教授から聞いた内容が思ってたのと違い、少し情けない返事になってしまった

空木 「はぁ。報告はいつすればいいですか?」

教授 「明日の会議の時でいいよ。じゃあ頼んだぞ。」

空木 「はい。ではまた。」

そう言って教授は電話を切った。僕はまだ食べていなかったお昼ご飯を食べるために教室に戻った。

 

教授 「では今日の会議はこれで以上だほかになんかある人はいるか」

空木 「はい」

僕は手をあげ、昨日の調査の結果について報告しようとする。

教授 「そうだったな。昨日の件があったな」

ユミコ 「昨日の件って何ですか?」

ユミコさんはまだ知らなかったみたいで教授に尋ねていた

教授 「ミッくん説明してくれ」

空木 「え!?僕がするんですか」

教授が無言でうなずく。僕は教授に無言の抵抗をしようとしたがユミコさんに早く話せという視線が向けられあきらめて昨日のことについて説明を始める。

空木 「昨日のお昼に一瞬僕の学校で赤のにおいがしたんです。そのことを報告したら校内で何か変わったことがないか調査するように言われたんです」

ユミコ 「そうなんだ。で調査の結果は?」

空木 「とくに変わったところはありませんでした」

教授 「どこもか?」

空木 「はい。というか僕は学校で教室と体育館ぐらいしか行かないので普段と変わっているかなんてわからないです。」

最後のはユミコさんが聞いたら怒ると思ったが言ったあとではもう後の祭りだった。

ユミコ 「何で他の人に聞くとかしないのよ!!」

ほらやっぱり怒った。ユミコさんは簡単に言うけど僕には難しいことをわかってない

空木 「そんなことしたら『変なことを聞かれた』とか相手の記憶に残るじゃないですか!それにもし噛んだらその記憶を消すのにどれくらいの時間がかかるかわかってるんですか!!」

たぶん1週間やそこらでは足りないだろう。

ユミコ 「知らないわよそんなこと!教授からも何とか言ってやってください!」

教授 「まあまあユッコちゃん。何とかしないといけないと思うがミッくんにだって事情があるんだよ。それに今回はもう対策を考えてあるから大丈夫だ。」

空木 「対策ってまだするんですか。」

教授 「もちろんだ。まだ敵はそっちにいるかもしれないし、いなくてもいずれ戦うことになるんだ。能力ぐらいは知っておいた方がいいだろう」

確かに教授の言った通りいずれ戦うことになるのなら相手の情報はあった方がいいだろう

空木 「わかりました。その対策というのは?」

教授 「まだ秘密だよ。慌てなくても月曜にはわかるから安心したまえ」

僕はユミコさんならその対策をしているんじゃないかと思ってユミコさんを見るとユミコさんも何も知らないようで首を横に振った。

 

月曜

ドウシテコウナッタ

ユミコ 「安須ユミコです。父の仕事の都合で1週間だけこっちの学校に通うことになりました。よろしくお願いします。」

スウ 「小村スウです。安須さんと同じ理由で転校してきました。よろしくお願いします。」

これが教授の言ってた対策かな。まあ調査だけなら僕がクラスのみんなの前で関わることがないから大丈夫だ。それにスウさんは『視線』は大丈夫なんだろうか。そんなことを二人の自己紹介を聞きながら見つからないように寝たふりをしながら考えていた。

クラスの男子 「「「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーー!!」」」

二人の自己紹介が終わるとクラスの男子から歓声が上がった。さらには後ろの方からは小声で

モブ1 「お前、どちらかを彼女にできるとしたらどっちがいい?俺は安須さん派!」

モブ2 「俺は小村さんだな」

モブ3 「いやいや付き合えるんだったらどっちでもいいだろ!」

といった会話も聞こえてきた。僕は二人と知り合いだとばれないようにしようと改めて心に誓った。

先生 「この二人に学校の案内を———

モブ1 「俺やります!」

モブ4 「いやいや俺が!」

モブ3 「俺が!」

先生が言い終える前に男子が立候補する。

先生 「お前ら早い。早いよ。先生に最後まで言わせてくれよ」

先生がちょっと泣きそうになっていた。

モブ5 「そんなことよりどうするんですか」

先生 「そんなことってひどいな。さてどうやって決めようか」

ユミコ 「それなら私たちで決めていいですか?」

先生 「そうだな。そうするか。お前ら誰が選ばれても文句言うなよ!」

クラス中が静かになりユミコさんが選ぶのを待っている。そんな中僕には嫌な予感がしていた。

ユミコ 「じゃあ・・・空木君お願いね」

クラス内を見回して僕を見つけたのかこう言った。

小村 「ミノルさんお願いしますね」

先生 「なんだ知り合いだったのか。じゃあ空木頼んだぞ」

クラス中の男子からの敵意の視線を受けながら僕には氷見課長に記憶を消してもらう人が増えたなと、現実から目を背けることしかできなかった。

 

空木 「最後にここが体育館になります。」

ユミコ 「ほんとに特に変わったところなんてなかったわね」

小村 「普通の学校でしたね」

ユミコ 「教授に報告するから少し待ってて」

そう言ってユミコさんは電話をかけはじけた。その間に僕は朝から聞きたかったことをスウさんに聞いてみた。

空木 「あのスウさん。DDさんはどうしたんですか。こういうのはDDさんの方がいい気がするんですけど」

小村 「『能力を使ってくれなきゃ追えない』って言ってたし、それに学校に潜入するなら見た目的に無理だから私たちになったの」

スウさんの言葉を聞いて納得した。確かにDDさんじゃ学生には見えないし、先生にも見えない。けど・・・

空木 「けど、スウさんは視線の問題がありますよね。大丈夫なんですか?」

小村 「今までと同じように嫌な視線も見える。けど今はそこまで気にならないの」

空木 「そうなんですか。なんで今は大丈夫なんでしょうね?」

小村 「それはたぶん——」

スウさんが言いかけたところで電話が終わったらしいユミコさんにさえぎられた。

ユミコ 「教授から放課後についての指示が出たわ。空木くんと小村さんは学校周辺の調査と不審人物がいたら追跡をお願い」

空木 「ユミコさんはどうするんですか?」

ユミコ 「私は部活に入ってそこで調査をするように言われたわ。空木クンこの学校って陸上部ってあったわよね」

空木 「はいありますよ。陸上部に入るんですか?」

ユミコさんは陸上部にトラウマがあったはずだ。それは大丈夫なのかな

ユミコ 「ええそのつもりよ。そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫よ。あのことはもうけじめをつけたつもりだから」

どうやら僕が考えていたことは顔に出てしまっていたようだった。

空木 「わかりました。報告はどうしますか?」

ユミコ 「帰りながらしたいから部活が終わったころにまた学校に戻ってきてもらっていい?」

空木 「了解です。スウさんもいいですよね?」

スウさんがコクンとうなずいた。

空木 「じゃあ部活が終わったころに校門の前で待っています。」

ユミコ 「わかったわ。それじゃあ教室に戻りましょうか。これ以上遅くなるとお昼ご飯を食べる時間が無くなりそうだし。それに・・・」

ユミコさんが体育館と本棟を結ぶ渡り廊下の方に見る。それにつられて僕も渡り廊下の方を見るとそこには野獣のように目をぎらつかせてこちらを見るたくさんの男子生徒がいた。

小村 「それにそろそろ戻らないとミノルさんがどうなるかわかりませんし」

そう言ってユミコさんとスウさんは教室に向かって歩き出した。

 

金曜日

僕とスウさんは、尾行をしている。対象は頭からちょこんとアホ毛の生えた目の腐った学生だ。

空木 「このまま尾行し続けてもあの人が赤かどうか確認できないと思うんですが」

小村 「大丈夫。私に考えがある。ミノルさん財布って持ってる?」

空木 「持ってますが財布をどう使うんですか?」

小村 「それが落ちてたふりをして話しかけて。そうしてミノルさんが足を止めさせてるうちに私が能力を使って相手に背後から近づく。もし赤なら何かしらの反応があるはず。反応があったら私が捕まえる」

空木 「作戦は分かったんですが、赤だった場合スウさんが危なくないですか?それに赤じゃなかったら僕の財布持っていかれる可能性もありますよね?」

小村 「私の被探知圏は50cm。その距離なら確実にとらえられるわ。赤じゃなかったら私が姿を現して回収するから大丈夫。」

空木 「ただし危ないと思ったらすぐに離れてください。」

小村 「わかってる。準備ができたら携帯鳴らすからそしたら作戦開始。」

空木 「はい!」

 

準備が終わった連絡が来たので僕は学生さんに声をかける。

空木 「あのすいません。」

僕は声をかけたが気づいてないのかそのまま進んでいく。僕はもう一度声をかけるがそれでも進んでいく。僕は学生さんの肩をたたいた。

学生 「ひゃい!!」

驚いたのか変な返事が返ってきて、やっと足を止めてくれた。なるべく時間を稼いだ方がいいと思い

空木 「あのすいません。なんでさっきから声をかけてるのに反応してくれないんですか」

とりあえず声をかけていたのに反応しなかった理由を聞いてみた。

学生 「いや俺じゃないと思ったんで。それよりなんか用ですか?」

もう少し時間を稼ぎたかったけど相手が本題を言うように切り出し時間稼ぎができなくなったので僕は本題を切り出した。

空木 「財布が落ちてたんであなたのじゃないかと思って」

学生 「ちょっと見せてもらえますか」

僕は財布を渡そうとすると聞きなれた声が横から割って入ってきた。

小村 「あ、それ私の財布です。見つかってよかった。見つけてくれてありがとうございました。」

スウさんが財布を持って走っていく。スウさんが曲がり角を曲がり見えなくなったところで

学生 「財布の持ち主も見つかったことだし俺はこれで」

空木 「はいご迷惑かけてすいませんでした。」

僕はそう言ってスウさんが歩いて行った道をたどって角を曲がった。角を曲がるとスウさんが待っていた。

小村 「あの人は赤じゃなかった」

空木 「そうですね。僕としゃべっている間も特に変わった様子はなかったですし。結局僕の勘違いだったってことですね。僕の勘違いで転校までしてもらってすいませんでした」

小村 「別に気にしなくていい。久しぶりに学校に通えて楽しかったし、それにミノルさんと同じ学校に通えてうれしかった」

空木 「最後なんて言ったんですか?」

スウさんの声が小さくなり最後の部分が聞き取れなかった。もう一度聞くと

小村 「なんでもない。そういえば明日の集合時間が変更になったことはもう聞いた?」

空木 「明日・・・なんかありましたっけ?」

僕が言うとスウさんが驚いた顔をした。

小村 「もしかして誘われてないの?」

空木 「誘われる?何にですか?」

小村 「明日、私と安須さんがまた転校することになってるから、明日クラスのみんなが送別会的なのを開いてくれるって言ってたんだけど聞いてない?」

空木 「全く聞いてないです。」

そう言うとスウさんは何かを考え始める。この状況でスウさんが考えていそうなことがわかるので先にくぎを刺しておく。

空木 「あ、先に行っておきますけど僕は行きませんよ。どこでやるのかわかりませんけど、今から一人増やすのは大変でしょうし、それに呼んでなかった人がいても雰囲気悪くするだけなんで」

僕がそう言うとスウさんがまた何かを考え始めた。どうやら僕が考えていたことはあたっていたようだ。もし外れていたなら僕はベッドの上で悶えなきゃならなかっただろう。

そんなことを考えているといきなり

小村 「じゃあ明日の晩御飯、ミノルさんの家でいただいてもいいですか?」

空木 「いや何でですか!?」

いきなりスウさんが変なことを言い始めた。

小村 「久しぶりにお姉様のご飯が食べたかったじゃだめですか。」

空木 「だめじゃないですけど、さっきまでの話と何の関係があるんですか。」

小村 「ミノルさんが送別会に参加してくれないなら、私がミノルさんのところに行こうかなって。で、どうするんですか?送別会に来るのか、それともミノルさんの家に連れて行ってくれるのか」

空木 「じゃ、じゃあ—―」

 

翌日になり僕は家にいて、典江さんは料理を作っている。昨日スウさんを家に招く選択をした僕はその場で電話をさせられ典江さんにスウさんが晩御飯を食べたいと言っていることを伝えた。すると電話越しでも笑顔だと分かるような声で許可をくれた。そして今に至っているわけだが、さっきから典江さんの料理を作るペースがいっこうに落ちない。すでにテーブルの上には5人前を軽く超えるような量の料理があり、今作っている分を含めるとサードアイを僕とスウさんがいても食べ切ることはできないんじゃないかと思うほどの量がある。さっきから何度か「作りすぎなんじゃないか」と声をかけているが、そのたびに「余ったら明日食べればいいんだよ!」と言われ、ずるずると引き下がっていたがそろそろほんとに止めないとまずいと思って止めようとするとインターホンが鳴った。

典江 「ミーくん、おねがい!」

空木 「はい」

僕は玄関に行きスウさんを家に入れるためにドアを開ける。そこには、

空木 「何でユミコさんもいるんですか!?」

ユミコ 「小村さんだけ晩御飯に誘って私を誘わないのは不公平じゃない!」

空木 「そうですけど来るなら連絡くださいよ。量とかも増やさないといけないですし」

ユミコ 「そう。次からはそうするわ。今日は私が一緒でも大丈夫かしら。」

空木 「大丈夫です。むしろ来てくれて助かりました。僕たちだけで食べきれるかどうかわからなかったので」

ユミコ 「そうなの?じゃあ、おじゃまさせてもらうわね」

そんな会話をしていると後ろから布が落ちるような音がして振り向くと典江さんがいた

典江 「ミーくん。その初めて見る女の子ってもしかして・・・

 

ミーくんの彼女!?」

 

空木・ユミコ 「違います!!」

僕とユミコさんは典江さんが言ったことについて速攻で否定した。そして僕はこれ以上典江さんが余計なことを言わないようにユミコさんの紹介をするのだった。

 

 



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