アルカナTHEリベリオン   作:イオ・りん

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ここで各使用者の変身ポーズを公開。みんなも真似してみよう!!

獅子堂ハルト/ソルリベリオン:(デバイスを持つ手は左)右手を突き出し、拳を握る。
三日月伊織/ルナリベリオン:(デバイスを持つ手は左)右手で刀を持つ様に構え、左手を後ろに下げ、前に出す。
切島一貴/デッドリベリオン:(デバイスを持つ手は左)右手を横に振り、手を鎌の様な形にする。
国枝半蔵/チャリオットリベリオン:右手でデバイスを横に見せる様に持ち、左手をパーにして、腕を曲げる。
星流凜/スターリベリオン:(デバイスを持つ手は右)手の甲を前にし、親指、人差し指、中指を出す。
和野要人/フォーチュンリベリオン:(デバイスを持つ手は左)右腕を前に出し、横に振る。
黒崎我怨/フールリベリオン:左手の親指を突き出し、横に向けた後、首を掻っ切る様なポーズを取る。
逆蔵真弥/ハングドリベリオン:(デバイスを持つ手は右)眼鏡を手で「クイッ」と上げる。
永遠野双葉/ラヴァーズリベリオンF:(デバイスを持つ手は右)両手で抱きしめる様なポーズを取り、一気に解き放つ様に腕を横に出す。
深井愛人/ラヴァーズリベリオンM:双葉と同様(ただし愛人の場合左手にデバイスを持つ異)
早乙女灯梨/ハーミットリベリオン:(デバイスを持つ手は左)デバイスを上に出し、反対の手で頬を押さえる。
田井中力/ストレングスリベリオン:(デバイスを持つ手は左)片腕でマッスルポーズを取る。
天条仁/テンパランスリベリオン:(デバイスを持つ手は右)手の甲を反対側の手で押さえ、デバイスを突き出す。


第25話「めくりめくる」

時刻は10時12分。

可夢偉町(かむいちょう)駅前。

 

赤いポストの目の前で、赤色のブラウスに、水色の短パン姿の桜木彩(さくらぎさや)は、時計を見つめながら、ハルトを待ちながら、スマホをいじりながら立っていた。待っていられまいと、足踏みを繰り返し、腰に手を当てながら、躍らせていた。

 

「まだかな~何時も時間にルーズなのは知っているけど、こういう時くらいちゃんと守ってくれてもいいんじゃないか」

 

灰色の鞄の中から、スマホを取り出し、ハルトに電話をしようとする。とそこへ、彩を呼ぶ声が聞こえた。

 

「おーい、待ったか?」

「う~ん、ちょっと待ったかな。ハルトにしては時間を守れた方なんじゃない」

 

赤色に、黒の太い二本線の入ったシャツに、迷彩柄のズボン姿のハルトが、駅前に到着し、彩と合流した。

ちょっと待ったとは言うが、実際の所、30分以上は待っている。ハルトを誘う際には、既にもうこの場に到着していたのだから。

 

「じゃぁ行こうか」

「んで、隣町に何しに行くんだ?」

「もう、そんなの向かってから決めるに決まってるじゃん」

 

パスを翳し、改札口を通り、駅のホームへ向かった2人は、10分後に到着する電車を待っていた。

辺りをよく見回すと、男女のカップルが、かなり多かったのを見て、彩はハルトに少し近づいた。

 

「ひぇ~それにしても人多いな」

「そうだね」

 

しかし、ハルトは一向に気づきもしない。彩自身分かっていたものの、ちょっと残念そうな顔をしていた。

 

そうこうしている内に、あっという間に10分経ち、電車が到着し、中へ入っていく。

電車の中は、満員寸前の状態であった。扉の前の隅っこに立ち、電車のドアは閉り、出発した。

 

「ここから何分ぐらいだっけ?」

「え~っと、20分ぐらいだったっけな」

 

可夢偉から隣町の速海駅(はやみえき)まで約20分、それまでこの満員状態が続く。

電車の揺れに姿勢が保てず、彩はハルトの胸の方にもたれ掛かってしまう。

 

「あっ・・・・・ゴメン」

「ん?まぁ、こんな混んでちゃ、しょうがねぇだろ。大丈夫か?」

「えっ・・・・・・あっ、うん。大丈夫」

 

ハルトは動揺するわけでもなかった。だけど心配する優しさに、顔が赤くなってしまい、ハルトの服に顔を埋める(うずめる)

 

(もぅ・・・・・どうしてこういう時に限って優しいのよ。バカ)

 

「そういや、電車乗るのも久しぶりな気がするな」

「あっ・・・・そうなの?私は買い物や友達と出掛けたりする際によく使うけど」

 

アレ?そう言えば、ここ最近、ハルトってあの三日月伊織(みかづきいおり)と知り合ってから、あまり他の友達と遊んでない気がするけど・・・・・・・・

 

「俺、あんま遠出ってしないからってだけなんだけど」

 

それもそうだった。まぁ可夢偉には色々な施設もあるし、ワザワザ遠出する必要も特にないしね。おかしな事じゃないか。

はぁ・・・・・・・正直もうちょい電車に乗ってたいかも。もう少し、こうしていたいなぁ・・・・・・・

 

だけど、ハルトがこの想いに気づく事は余程の事がない限り、あり得ない。それは彩も柔順承知である。

顔を埋める彩を見て、ハルトは寝てるのかと思っていた。

 

「ん?まさか寝てるのか?まっ、こっからしばらく掛かるし、そっとしとくか」

 

彩が倒れない様、彼女の腕を掴んだ。つり革も掴んでいたので、両手が塞がってしまい、かゆい所に手が届かない状態だ。

 

「ヤっべ、腕攣りそう」

 

寝ているかと思われた彩は、ハルトに腕を掴まれて、胸の鼓動の高鳴りが、止まらなかった。

彼の大きな手に掴まれたあまり、思わず、二の腕に力が入ってしまう。

 

(ええええ―――――!?ヤバい、ドキドキしてきた)

 

少し顔を上げてみると、ハルトは窓の方を見ていた。何かを考えているかの様に・・・・・・・・・・・・・・

 

(戦いは、どんどん激しくなっていく。そして、その度に、また誰かが・・・・・・・・・・・・・)

昨日の戦いで、ハーミットリベリオンが倒され、脱落した。出てくるクリーチャーも強くなっていき、他のリベリオン使用者もどんどん力を増していく。心のどこかで、不安を感じていた。

 

(だけど、コイツの前でそんな顔は見せられないよな)

 

彩にだけは本当の事を知られる訳にはいかない。彼女がまた危険な目に遭わない為にも。

 

そうしている内に、隣町の速海駅まで到着した。電車から降り、改札口を出た。眩しい日差しが向かい入れ、セミの鳴き声が鳴り響く。

 

「はぁ~着いたぜ。これからどうするんだ?」

「んとね・・・・・あそこからバスに乗って、田舎方面に行くの。面白い所いっぱいあるんだよ」

 

ここからバスで約1時間半、豊峰(とよみね)という小さな田舎町がある。昔ながらの、懐かしい風景を見られるという。

 

「ほぉ~じゃっ、行ってみっか」

 

時刻は11時4分、豊峰へ向かうバスが止まるバス停へ向かい、丁度良いタイミングで、バスが来た。代金を払い、後ろの方の2人乗りの席の方にハルトと彩は座った。

 

「こんな都会から、田舎町へ向かうなんて、正直考えられないよな~」

「そうだね、けどそういう所も行きやすくなって思うと、便利な世の中になったものだね」

 

バスの通る所が少ない田舎町でも、15分に1度のペースで、バスが通る様になり、電車も開通し、通勤がより快適になったこの時代。まさに進歩を遂げたという所だろう。

 

「おっと、だいぶ風景が変わって来たな」

「うん、なんかいい感じだよね」

 

バスが出て約1時間、ビルなどの大きな建物が溢れる都会の街から、小さな家が並び、その後ろには森が続いた、田舎町へと着いていた。

それから30分、豊峰へ辿り着いた。次のバス停へと出発するバスを見送りながら、空の方をハルトは見上げた。

 

「空が良く見えるな。空気も美味しいし」

「こっちこっち、しばらく歩くといい所があるよ」

 

彩の後をついていく様に、ハルトは歩く。都会方面へ向かうトラックとすれ違い、畑で作業するおじいさん達を見ていると、ある事が脳裏に過ぎる。

それは、かつて戦ったストレングスリベリオンの使用者、田井中力(たいなかりき)の事を。

彼もかつては畑を耕しており、可夢偉町まで野菜を売りに行っていた。そんな彼も、故郷の復興の為に努力していたが、そこを付け込む様に、リベリオンバトルの誘いに乗ってしまい、犠牲となってしまった。

 

「そういや、アイツもあぁやって頑張ってたんだな・・・・・・」

 

畑の方を見つめるハルトを、彩が近づいてきて、驚かした。

 

「わっ!どうしたの?」

「あっ・・・・いや、何でもない」

 

何事もなかったかの様に歩き続けた。そこから10分、彩が1軒の小さな建物を見て、指さした。

 

「ホラ、あれだよ、あの駄菓子屋さん。たまたまネットで見つけてさ、一度行ってみたかったんだよね~」

 

その建物は、駄菓子屋「ゆきかぜ」60年も前から経営しており、今もなお、地元の人や、海外から訪れる人もいると言う。

店内には、奥の方に、畳の上で座布団を布き、座っているおばあちゃんが1人、周りには、昔懐かしの駄菓子がざっと並んでいた。

 

「ほぇ~こんな所があるんだな」

「ねっ、面白い所でしょ?」

 

彩はまずはじめに、ヨーグルを、店に置いてある小さなカゴに3個とビンラムネをを2個、さくら大根4枚、さらに冷蔵庫に入ってあったガリガリ君コーラ味を1本を入れた。

 

ハルトもカゴを手に取り、駄菓子を探す。最初に目にしたのは、レモン味、コーラ味、メロン味、ピーチ味のこんにゃくゼリーをそれぞれ2本ずつ、早速カゴに入れ、次に注目したのは、フルーツの森、器も食べられる。さらに、ココアシガレットを3つ程手にし、最後にソーダ味のポッキンアイスをカゴに入れた。

 

「すんませーん、お会計いいですか?」

「あいよ、あら、珍しいお客さんだね」

「はい、たまたまここを知って、ずっと気になってなってて」

 

彩がおばあちゃんに声を掛けると、物珍しそうに、こちらを見ていた。するとおばあちゃんが彩の耳に顔を近づけ、ヒソヒソ話をしていた。

 

「彼氏さんと来るなんて、お熱いねぇ。アタシにもあったよ、そういう青春が」

「いっいいいいいいいいいい、いや、別にそういうのじゃないですよ~ただの友達、友達ですよ!!」

 

彩の顔は、何時にもまして真っ赤になって、激しく動揺していた。ついでにおばあちゃんは自分の過去の話もコッソリとしていた。

 

 

「あら、そうなのかい。まぁ、頑張りなさいよ。はい、500円ね」

「あっ・・・・・・・はい!コレで」

「ほい、丁度頂いたわ。ほれ、次はお兄さんね」

 

次はハルトがおばあちゃんの前に立った。ハルトの顔を見たおばあちゃんは何かを感じたかの様に問う。

 

「なんかお兄さん、疲れた顔してるね」

「あ・・・・・そう見えますか?」

「そらぁね、何で疲れ切ってるかは知らんが、あの娘に心配懸ける様な事するんじゃないよ」

「えっと・・・・・・ありがとうございます」

 

ハルトは頭を掻きながら礼を言った。戦いが続く中、自分はそんなに疲れた顔をしているのか?正直自分でも分かっていなかった。

彩に心配懸けるな。その言葉が何処かハルトの心に刺さっていた。

 

「んじゃ、320円頂くね」

「マジか!?そんな安いんか?んじゃっ!」

 

あまりの安さにハルトは驚いていた。駄菓子は多く買っても手頃な値段、そこが売りで、美味しい所だ。

 

「はい、こちらも丁度ね、毎度あり~」

 

会計を終え、店を出た2人は、近くの自販機で、ハルトはラムネを、彩はCCレモンを買った。

駄菓子を食べようと、向かった先は、小さな公園だった。ブランコ、ジャングルジム、すべり台と懐かしい遊具が並んでいた。

 

「おっ、あそこいいじゃん~」

 

ベンチを発見し、そこへ座った。2人は溶けない内に、先にガリガリ君とポッキンアイスを食べる事にした。

 

「ん――――――――――!!やっぱ暑い時はアイスだよな~」

「最高だね、買って正解だよ」

 

アイスを食べ、キーンっとなったのか、頭を押さえる2人。徐々に彩のガリガリ君が溶け、液が地面に垂れる。そこに群がる様に、アリが寄って来た。

 

「おっ、君達も腹ペコなのかな?」

 

アリをじっくり眺める彩。その様子を見て、ハルトはクスっと笑っていた。

 

「やっぱ、ハルトはそうじゃなくっちゃ」

「え?」

 

彩の言っている事に首を傾げていた。一体何の事やら、みたいに。

 

「何か、最近疲れた感じしてたからね。ちょっとでも元気になってくれてよかったよ」

「あぁ・・・やっぱり、そう見えるか?」

「見えるよ、どう見ても!らしくないぐらい、悩んでるみたいだし」

 

そんなに疲れてるのか・・・・・・俺は。確かに、ここ最近戦いが加速し、大変な状態だ。やっぱ、彩は勘が鋭いな~

けど、まだ正体がバレてるって感じじゃないから、流石に黙っておくしかないか。

 

「いやぁ、宿題が捗る様な、捗らない様なって感じで、頭を使ってるだけだよ」

「そう?何だ、心配して損したじゃん。まっ、ハルトらしいっちゃ、らしいけどね」

 

何とか誤魔化した。でもそれが何時まで続くか・・・・・・・・不安が完全に消えたとはいい難い。

でも、今しか出来ない事をしよう。アイツが笑顔でいられる時ぐらい。

 

「って・・・・・・昼コレとか言わないよな?」

「え?いいじゃん、今日くらい。1日昼がお菓子でもバチは当たらないって」

「お前なぁ・・・・・・・まっ、仕方ないか」

 

時刻は12時50分、これが昼飯となるのであった。

とは言え、隙あらばカップ麺を食べている半蔵先生よりはマシな方かな。

って、また食べてなきゃいいけど・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

一方、同じ頃、国枝半蔵(くにえだはんぞう)はというと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「うん、おやっさん、やっぱこのラーメンは最高だね」

「おぉ、そうかい。先生に気に入れられて、こっちもありがたいぜ」

 

可夢偉町商店街にある、ラーメン屋「黒鉄魂(くろがねだましい)」に来ていた。

ここは半蔵がよく訪れるラーメン屋で、お気に入りの場所である。常連の縁もあり、店にはサインが置かれている。

 

「カップ麺ばかり食べるな、だもんね。だからこれはセーフ」

 

半蔵が食べているのは、濃厚とんこつ醤油ラーメン、くどい油がまた癖になる。

 

「さて、ハルト君は出掛けてしまったし、これからどうしたものか・・・・・・・・・」

 

小説も行き詰っており、中々進まない、気分転換に外へ出たが、何もすることがない。ゆっくりスープを啜りながら、何をするか考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ハルトと彩はというと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「いやぁ~美味かった」

「うん、やっぱ駄菓子っていいよね♪」

 

駄菓子を食べ終え、満足そうに歩いていた。

 

「なぁ、他、何か行く所あるのか?」

「そうだね~どうするか」

 

特に次の予定は考えていなかった。ひたすら歩く2人、するとある場所を発見する。

 

「ここって・・・・・・・神社か?」

「そうだね、なんだか歴史を感じるな~」

 

左を向くと、そこには神社があった。まるで赤い鳥居が2人を引き寄せる様に・・・・・・・

 

「ふぅ、何だか落ち着くな、ここ」

「何だろうな~不思議な感じがするね」

「あぁ、それに・・・・・・・俺、何か初めて来た気がしないんだ?」

「何それ?今日私と初めて来たばっかじゃん」

 

突然のハルトの言葉に、彩はからかいながら指で突っついてくる。

 

「そうなんだけどさ、けど・・・・・・・・・うっ―――――!?」

 

その時、強烈な頭痛がハルトを襲った。まるでノイズが流れ、かき乱される様に。

そしてフィルムが流れる様に、脳内から映像がフラッシュバックされる様に投影される―――――

 

その映像は、今いる神社の場所で、彩とハルトが2人でいる。しかし異なる点がある。それは服装、この映像の2人は学生服だ。

それともう1つ、雪が降っている。かなり親密に2人は寄り添い合っていた。そして――――――――――ここで映像は消えた。

 

「ハッ―――――これは一体・・・・・・」

「大丈夫!?急に頭押さえてどうしたの?」

 

頭を押さえるハルトを心配する彩。彼の肩に手を当て、そっと近づく。

 

「あっ・・・・・何だろうな?俺にも分からねぇや」

 

頭から手を降ろし、膝に手を付く。心配させまいと、笑顔で誤魔化した。そんな笑った顔を見て、彩はため息を尽いた。

 

「ハァ・・・・・・・変に心配させないでよ。まさか勉強して頭でも痛めたの?」

「え~っと・・・・・そうなのかな?」

「じゃぁ、しばらくは思いっきり遊ばないとね。戻ろっか!」

「あぁ、そうしよう」

 

何だアレ・・・・・・・・俺にそんな記憶はない。いや、過去?どちらかと言えば未来?でも何であそこに・・・・・・

 

ハルトの見たビジョン、それは過去の出来事なのか?それとも未来予知なのか?だが最後に一瞬見たもの、それはワールドリベリオンだった。これは何を意味しているのか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスで速海(はやみ)まで帰る最中、窓の方を見つめ、田舎から都会になる瞬間、ハルトは瞬きをする。自分の知らない記憶らしき何かがが投影され、心の何処かで困惑していた。

1時間後、目的地である、速海まで着き、可夢偉町(かむいちょう)へ戻る為、駅へ向かう。時刻は既に16時を過ぎていた。

 

「もうそんな時間なのか」

「まだまだこれからだよ、まだ夏は長いんだから!!」

 

まだまだ元気に一回転する彩。今日はとことん付き合わされると思いながらも、楽しそうにハルトは笑い返す。

その間に、電車がやって来た。乗って20分、可夢偉町に戻って来た。

 

「さぁさぁ、次はあちらに向かいましょうか!」

 

彩が走った先、そこはカラオケハウスであった。それの目のまえにしたハルトは、空いたが口が塞がらない状態だった。

 

「え?まっ・・・・・・マジで言ってるの?」

 

ハルトは後ろに3歩下がり、逃げ出そうとする行動を取る。だが逃げようとした彼の手を、彩が強く掴んだ。

 

「うん、本当だよ!さぁ、行こうか!!」

「えええええええええええええええええええ!!」

 

嫌そうな顔で思わず叫んでしまった。そう、ハルトはかなりの歌音痴であるのだ。それを知ってて、彩はここを選んだ。

無理にも連れていく彩に、必死で抵抗するハルト。そしてとうとう店内に入ってしまった。

 

「いらっしゃいませー2名様ですね?」

「はい、えーっと、2時間で、ドリンクバーありで」

「2時間ですね、では、こちらの番号のお部屋にどうぞ」

 

119と書かれたプレートを渡され、まず初めに、ドリンクバーの方でハルトはコーラを、彩はメロンソーダを取り、119と書かれた部屋へ入っていった。

 

「はぁ・・・・・・・・入っちまった」

 

ハルトは深く頭を下げ、額に手を当てた。その一方で小刻みに踊りながら、マイクを持つ彩。画面を見ると、既に曲が入っていた。曲は「愛言葉 作詞・作曲・編曲:DECO*27」あきらかに、遠回しにハルトに愛を伝えたいようだ。

歌う最中、彩はハルトの方を見つめる。だが、そのハルトは「おぉ~」みたいな顔をしていた。

 

(むむ・・・・・やはりそう上手くはいかないか)

 

「なんか、彩めっちゃ上手くなった?」

「えっ・・・・・そっ、そう?まぁ、友達とかと言ったりしてるからねぇ!」

 

突然の誉め言葉に、顔を真っ赤にして、両手を振る彩。かなり動揺している。

 

「へぇ~結構行くんだな・・・・・・・・ん?」

 

右側の窓の方を向く、そこには見覚えのある男がフラついて歩いていた。

 

「どうしたの?」

「あっ・・・・いや、なんでもない」

 

その見覚えのある男とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「ハァ・・・・この間よりは長く使えた、けどまだだ、まだ完全に使いこなせていない」

 

伊織だった。ユニゾンの力を使いこなす為、この日はひたすらクリーチャーと戦い続けていた様だ。

だがまだ、完全にマスターしきってはいない、多少の疲労感に見舞われなくなり、必殺技の使用後でも、30分は活動可能となぅていた。

 

「じゃなきゃ、俺は・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

壁にもたれ掛かり、手に持っていた水を飲み干す。一旦落ち着いたか、フラついて歩く事はなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

「アイツ・・・・・・・・まさか今日も戦ってたのか」

 

窓を見ているハルトに、彩はマイクを突きつける。

 

「さぁ、ハルト君。今度は君の番だよ」

「えっ、俺?ってお前、何だよこれ!?こんなの歌えるか!!」

 

彩がハルトが歌う曲を勝手に決めていた。曲は現在有名な48人のアイドルが歌う曲。とても可愛らしい曲だ。

仕方なく歌うハルトであったが、恥ずかしさのあまり、歌い方がぎこちない、噛みまくりの、声のトーンが全く合っていない。

ハッキリ言って、音痴にも程があるレベル。その音痴っぷりに口を押えて彩は笑っていた。

 

「お前なぁ!勝手に歌わせといてそれはないだろ!!」

「いやぁ、ゴメン、ゴメン・・・・・・・それにしても相変わらずの音痴っぷり・・・・・ププっ」

 

へへ~ん、ちょっとはお返ししなくっちゃ、でも、ちょっと可哀想すぎるからやめておこっ。でもいい顔見せてもらったよ。

 

「はぁ~めっちゃ恥ずかしかった」

「大丈夫だって、聴いてるの私だけだから」

 

それが不幸中の幸い、他の奴らに聴かれてたらと思うと・・・・・・・・・・・・・・死にたくなっちまう程だ。

その後も、彩がひたすら歌った。凄く楽しそうに、ハツラツに歌っていた。なんの曲なのかは、俺には正直分からない。

 

ずっと、君の側にいたくて、寄り添いたくて、それが叶わないのが切なくて

これが最後でもいい、もう1度君に伝えたいんだ。

ダメでもいいから、何もしないよりはずっといい、でも実る事を祈っているんだ。

 

「・・・・・・・来年バンドとかいいかもな」

 

ハルトが突然な事を言い出す。それに乗った彩も話に食い付く。

 

「えっ、どうしたの、急に?」

「いやぁさ、こんなに歌上手いんだした、バンドとかいいかもなって、だからさ、来年の双園祭とかにどうかなって」

「いい・・・・・・・いいと思うよ、やろうよ!やりたい!!」

 

ハルトの手を握り、彩がハルトの話に賛成する。前々からハルトは、ギターやドラムには興味を持っており、バンドが気になり始めていた。

 

「そうと決まれば、来年に向けて、何か始めないとな」

 

これはすぐに白紙になるオチとみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝つのは俺だ・・・・・・・俺は勝って生活を取り戻す」

 

時を同じく、灰色のシャツに、ジーパンの天条仁(てんじょうじん)は、街中歩く中、戦いに勝つ事を呟いていた。

その時、スカジャンを着た男2人とぶつかってしまう。

 

「ってぇな!何処見てんだ兄ちゃん・・・・・・って思ったら借金まみれの天条じゃねぇか、こりゃ丁度いい」

 

その男2人は、仁と同じクラスの生徒であった。襟元を掴まれ、仁は路地裏へと連れていかれた。

 

「金がねぇお前はサンドバッグがお似合いさ!!」

 

無抵抗な仁を、男2人はサンドバッグの如く殴る、その衝撃で壁に吹き飛ばされた。

 

「おいおい、これ以上は死んじまうぜ、死なない程度にやれよ」

「おぉ、そうだな」

 

吹き飛ばされた仁に近づいていく男2人。そんな時、仁は小さな声で呟いた。

 

(死ぬのはお前らだ、バーカ)

「あぁん?何か言ったか?ゴラァ?」

「もう、やっちまおうぜ」

 

仁に近づいた時、辺りは黄色い煙で包まれた。戸惑う男2人、足元を見ると、徐々に足が消えていくのを目にする。

 

「おい・・・・・・何だよこれ!?」

「どうなってんだよ!?まだ死にたくねぇよ!!」

 

徐々に体が消えていく男の姿を見て、仁はニヤリと笑う。

 

(死にたくないとか、半殺しにしかけて何言ってんだか)

 

煙が晴れ、男2人の姿はなかった。路地裏から出ると大いに仁は笑う。

 

「俺は悪くないさ、悪いのはお前らみたいなクズだろう」

 

高らかに笑う最中、仁の頭の中に、サイバープログラム内に、クリーチャーが現れるビジョンが浮かぶ。

 

「せっかくだ、お前らも痛めつけてやるよ」

 

階段を登り、電子ロックのある扉にデバイスを翳すと、左二の腕にアタッチメントが取り付けられる。手の甲を反対側の手で押さえ、デバイスを突き出し「セットオン!」の叫びと共に、全身がノイズに包まれ、テンパランスリベリオンへと変身し、電子ロックのある扉に吸い込まれる様にサイバープログラムへと入る。

 

階段を降りると目の前には、ウサギの様に白く、手がボンボンの様な物で包まれているクリーチャー(ホルンラビット)が3体、徘徊していた。

 

「お前らか・・・・・・・・相手になってもらうよ!!」

 

テンパランスは、ホルンラビットに近づき、聖杯弓(せいはいきゅう)アーチャースライサーで斬り掛かる――――――

 

ギぃ―――――!?

 

斬撃を直撃した1体は6m先へ吹き飛ばされ、残るに体が飛び上がり、テンパランスに襲いかかる。

 

「無駄だよ」

 

左腰のホルダーからシステムメモリーを取り出し、アーチャースライサーに取り付けてあるデバイスに装填「スモッグイン」んの電子音声と共に、周囲から黄色い煙が発生すると同時に、2体のホルンラビットは煙のせいで動けなくなり、地面に落下する。

吹き飛ばされたもう1体もまた、煙を吸って、倒れ込む。

 

「何?もう終わり?」

 

呆れた様に頭に手を当てるテンパランス。軽くホルダーからシステムメモリーを取り出し、デバイスに装填「フィニッシュイン」の電子音声と共に、ジーン・スモッグが現れ、再びホルンラビットの周りを濃い黄色い煙で覆い、アーチャースライサーで一気に切り裂く。一か所に集まった所を、煙から離れ、矢にエネルギーを貯め込み一気に放出し、必殺技(アンバランス・デスモッグ)が発動する――――――――――その一撃により、粉塵爆発が発生し、ホルンラビット3体は木端微塵になる。

 

「ふぅ・・・・・・・・なんだ、呆気ない」

 

簡単に倒してしまい、つまらなそうに頭の後ろに手を当てる。すると、前の方から爆発が発生した。テンパランスはビルの屋上から移動し、様子を見る。

 

 

 

 

 

 

「あぁ・・・・・もっと俺を楽しませろよぉ。こんなんじゃ準備運動にもならねぇぞ!!」

 

そこでは、フールリベリオンが無数のクリーチャーを相手に、戦っていた。その様子を見て「コイツと関わったら面倒だと」言い残し、テンパランスは去っていった。

その様子を、カメにジェットエンジンを取り付けたカメ型のクリーチャーに乗りながら、1人の戦士が見ていた。180㎝程ある巨大な木づちの様な武器、白金の全身に、屈強な鎧、胸の下辺りから黒と金の垂れたローブ、丸く、先端の尖った肩、ひし形の膝アーマー、ハンマー形みたいな黒い足、頭部に雷の形をしたヘッドギア、獲物を狙うような丸みの帯びた黄色い両目(ツインアイ)背中には赤と青の振り子の様なバックパックを背負っている戦士だ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

丸みの帯びたツインアイは、不気味なくらい、左右上下に動き、フールテンパランスを同時に見つめていた。

眼は背後に周り、監視カメラを介して、現実世界で帰る途中のハルトを、ベンチに座っている伊織を、ラーメン屋から出る半蔵を見ていた。

 

その様子を、感覚器官を共有する様に、モニタが黒い空間で、ジュースを飲みながら、巨大モニターで監視していた。

 

「さぁ~て、そろそろチミにも動いてもらおうか、暇でしょうがないでしょ♪」

 

モニター越しに、モニタが白銀の戦士に伝える様に呟いた。

 

「さぁて、コレを誰に渡そうか」

 

モニタが手にしていたのは、火山が噴火し、大地にマグマが垂れいく絵に、GAIA(ガイア)「UNISON」(ユニゾン)の文字が刻まれたカードであった。

 

「誰に渡すかは、ジャッジメント、君に任せるよ」

 

戦士の名はジャッジメントリベリオン。果たしてその力はいかに―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

現在リベリオン使用者 22人中残り15人

 

 

 

 

ToBe Continued……




それぞれの思惑が交差する戦いに、新たなカードが投入される。ジャッジメントリベリオン
果たしてどんな戦いを見せるのか?
そして第2のユニゾンカード。それは誰の手に渡るのか?
次回、大乱戦再び――――――――――お楽しみに!!

メインキャラの中で誰が1番好きか?

  • 獅子堂ハルト
  • 三日月伊織
  • 国枝半蔵
  • 黒崎我怨

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