アルカナTHEリベリオン   作:イオ・りん

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久々のアルカナTHEリベリオンの更新です。
次の戦いで誰が消えるのか・・・・・・・・今回は新キャラが登場、果たしてどうかかわるのか・・・・・・・・・・・

余談:親知らずは無事抜けました。

前回までのあらすじ
凜の口から語られる、自らがリベリオン使用者となった真実・・・・・・・・・
スターリベリオンとラヴァーズリベリオン、ソルリベリオンとフールリベリオン、ルナリベリオンと新たなリベリオン。それぞれの場所で戦う中、スターリベリオンは、ラヴァーズリベリオンの必殺技で、致命傷を負う。
そして、フールリベリオンに止めを追い詰められたソルリベリオンを庇い、敗北してしまう・・・・・・死の間際に、語られる真実「黒幕は生き残っている使用者の中にいる」果たして黒幕は誰なのか・・・・・・?


第17話「試される愛」

「俺は・・・・・・どうすりゃ・・・・・」

 

ベンチに座り、顔を下に向け考え事をするハルト。この間、スターリベリオン=凜が倒され、今でも動揺が隠せない。そして彼の残した言葉「黒幕は使用者の中にいる」その事が頭から離れない。

 

「少なくとも、今まで倒された奴ら以外・・・・・・・だよな」

 

残るリベリオン使用者は18人、これまでやられた、デッド、フォーチュン、ハングド、そしてスター。さらに言えば元サンリベリオンの使用者である、姫宮灯もその黒幕の対象から外れる。ハルトの中では、伊織、半蔵の2人は黒幕でないと思う・・・・・・よりも信じたい。となると疑うのは自分を除く15人、この中に黒幕がいるのか・・・・・・・・

 

「このままじゃ・・・・・また誰かが命を・・・・・」

 

戦いが続けば犠牲者が増える。それは使用者だけでなく、一般人もクリーチャーの餌食となってしまう。そんな不安が過ぎるハルトの目の前に・・・・・・・・・・

 

「どうしたんだい、あんちゃん、そんな浮かない顔して?」

 

目の前には、体格のよく筋肉質で、刈り上げのやや老けて見える男がいた。男の口調はやや訛っていた。

 

「えっと・・・・・そんな風に見えるか?」

 

何とか誤魔化そうとするハルト。そんな彼に、男は、ある物を渡す。

 

「ホラ、特別だ!野菜を食えば、そんな浮かない顔も晴れるぞ~!!」

 

渡してきたのは、かぼちゃであった。形もよく、とても新鮮だ。男の背中をよく見ると、籠を背負っており、その中には、大量の野菜が入っていた。

 

「ついでに何か買ってくかい?あっ、こっからは料金もらうからね~」

 

「・・・・・・これ、アンタが育てた野菜か?」

 

「ん?あぁ、そうさ!コイツらはウチの畑で採れた野菜でなぁ!自分で言うのもなんだが、自慢の野菜達だぜ!」

 

男は自慢げに語る。その誇らしい姿を見たハルトは、笑った。理由はどうであれ、戦い続けの中で、一瞬の一時を味わっていた。

 

「悪いけど、今日は手持ちがなくてな、また縁があったら、買いに行くよ」

 

「おぉ、そうか!何時でも売ってるからよ、また探しに来てくれ、じゃぁな!」

 

そう言い、男はその場を去っていた。ハルトはかぼちゃを見つめ、ふと思い出す様に呟く。

 

「袋・・・・・・もらい忘れたわ」

 

かぼちゃは素手で持っており、せめて袋を貰おうとした事をうっかり、忘れてしまった。そして、その日の夜・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「ん?何やらいい匂いがするわね~」

 

珍しく、姉の夏姫が、自分の部屋以外の事に反応する。自慢げに、夏姫のいる部屋越しに、ハルトが声を掛ける。

 

「いやぁ~今日は意外な収穫でさ、ちょいと頑張ったのさ」

 

「どれどれ、おぉ~コイツは中々なもので」

 

本日の献立は、かぼちゃと豚肉の重ねマヨ焼き、かぼちゃの煮つけ、かぼちゃスープとかぼちゃずくしであった。並んだ食卓に、夏姫は思わずよだれを垂らしていた。

 

「ほんじゃ、食うとしますか~」

 

箸を手に取り、かぼちゃの煮つけを食べる2人。その感想は・・・・・・・・・・・

 

「う~ん!我ながらいい味出してるー!」

 

「うん、かぼちゃそのままの味が出て、とても美味しいわ」

 

絶賛の様だ。その後も黙々と、食べ続けるハルトと夏姫。気づけば食器には何も残っていなかった。

 

「ふぅ~食った食った~」

 

夕飯を食べ終え、すぐ様部屋に戻る夏姫。食べ終えた食器を片付け、自分の部屋のベッドに寝転がるハルト。色々と疲れたのか、そのまま眠ってしまう。

ふと目を覚ますと、目の前は何時もの黒い空間だった。テーブルではモニタが、トランプタワーを作っていた。

 

「よいしょ、よいしょ」

 

後一歩の所で、タワーは崩れ、テーブルの辺りに、カードが散らばる。そのカードはトランプではなく、タロットカードであった。何事もなかったかの様に、モニタは話を進める。

 

「やぁやぁごきげんよう!元気に戦ってる~?さて、今回もまた1人倒されちゃってね。そんでもって、今回倒したリベリオンは・・・・・・・・・・」

 

モニタが躍り始めると、周りから、スポットライトが回り始める。今回、スターリベリオン=凜が倒され、その倒した使用者に特別なプレゼントが与えられる。

 

「ジャジャン!!フールリベリオン~ってまた君か~みんなもうちょっと頑張ってよ~」

 

フールリベリオン=黒崎我怨に、スポットライトがあてられ、某有名なロボットにみたいな言い方で発表した。これまで我怨が倒したのはフォーチュン=要、ハングド=真弥、そしてスター=凜の3人。

デッド=切島は自身のクリーチャーに食われ、自滅している。現状、フール以外の使用者は、誰1人倒していない。

 

「ちょっとまってよ!私達が倒したはずよ!」

 

テーブルを強く叩いた双葉が、モニタに文句を言う。愛人と双葉は、凜と交戦しており止めを刺した、と思っていたが・・・・・・・実際、凜は生き延びており、ハルトを庇って、我怨に倒された。

 

「そうなんだ~でもツメが甘かったようだね~ボクはちゃ~んと戦いをみているんだよ~!どうせ止めを刺すなら息の根を止めるまで、グぃっとやっちゃえばいいんだよ」

 

双葉に止めを刺しきれなかった事を指摘するモニタ。どさくさに紛れ、えげつない言葉を吐く。

 

「そんじゃ、フール君のデバイスにプレゼントを用意したから、好きな時に使ってね~」

 

そう言い残し、モニタは姿を消す。

未だに自分達が倒してない事に納得がいかない双葉。今は愛人の姿が見えない、どうやらこの空間に入れるのは1人だけの様だ。

 

「ちょっとまちな――――――――」

 

双葉がモニタを引き留めようとするが、視界が暗転し、眠っていたベッドの上から起き上がる。

 

「どうしたの?そんな顔して」

 

双葉が起きた事に反応し、隣で寝ていた愛人が、目を覚まし、双葉の頬に触れる。

 

「それがね、あの時戦った奴、私達が倒してないんだって・・・・・・・・」

 

事情を放し落ち込む双葉に、愛人は励ます様に頭を撫でる。

 

「そんな事か、気にする事ないさ。ソイツを倒せば・・・・・・・・奪う事が出来るかもしれないだろ」

 

「そう・・・・・・そうよね!私達でなら・・・・・・何だって出来る・・・・・そうよね」

 

「あぁ、最期に勝つのは僕らさ・・・・・・・」

 

何時もの如く、愛を囁く2人、しかしこの時まだ気づかなかった。恐怖のどん底への道へ進んでいる事に・・・・・・・・・・・・・

 

 

◇◆◇

 

「朝か・・・・・・・・・」

 

目が覚めたハルトは、ベッドから起き、制服に着替え、クリームパンを加え、学校へ向かう。そしてある事に気づく。

 

「そういや、最近遅刻してないな・・・・・・・」

 

時間を見てみると、7時丁度、ここ最近戦いが続き、体が勝手に起きてしまうのだろうか?と考えるハルトだが、気にしても仕方ないと、学校まで走り出す。

 

「ん?アイツは・・・・・・・・・・」

 

ふと横を見ると、そこには昨日であった、カボチャを渡してくれた筋肉質な男が路上で、野菜を販売していた。

 

「ん?昨日のあんちゃんじゃないか!!」

 

気づいたのか、男はハルトに声を掛ける。

 

「ウッス、朝から張り切ってるな~おっちゃん!」

 

「まぁな、この時間帯は、通る人も多いし、近所のお母さん方はよく買ってくれるもんだべ!それと、俺はこう見えて18だ」

 

男が18歳である事に、思わず開いた口がふさがらないハルト。見た目だけで判断してはならない。それは以前にも経験した事だ。デッドリベリオン=霧島和人も、温厚的であったが、中身は残酷非道な男であったのだから・・・・・・・・

 

この時間帯は人が多い、主婦が通り掛かる事も多い。ハルトは並んでいる野菜を見ていた。にんじん、じゃがいも、キャベツ、レタス、大根、カブなど、様々な野菜が並べられている。ざっと数えて、100は超えているだろう。

 

「これ全部1人で運んだのか!?スゲェな・・・・・・・・」

 

「おぅ!これくらいなら軽いもんさ!」

 

男の隣には、大きなカゴやダンボールが置いてあった。大方、アレで運んでいたのだろう。それにしても、この数を1人で持つとは、相当の力持ちである。

 

「あら、いい大根、コレ買うわ」

 

そこへ紫色のエプロンが目立つおばちゃんが、販売している大根に目が入り、男に声を掛ける。

 

「まいど!2本で300円だべ!」

 

「あらま!安い事で!これは買い得ね」

 

男に300円渡し、袋に入った大根2本を受け取り、嬉しそうに歩いていた。

 

「お安いもんだな、コレくらいならもうちょい高くても・・・・・・」

 

大根を2本で300円は流石に安いと感じたハルト。その理由を尋ねると・・・・・・・・・・

 

「まぁ、少しでも稼ぐ為さ。家族の為にもな」

 

男の話は始まった。時刻は7時10分、最近遅刻をしないハルトだが・・・・・・・・・・・・・・

 

「ウチはなぁ、遠いド田舎暮らしでな。農業をやってるんだ。故郷じゃ、中々繁盛しなくてな、こうして遥々都会まで来たわけよ、親父にお袋だけに苦労させたく無くてな、弟達にもちょっとでも楽させてやりてぇのさ」

 

男の話を聞いて、ハルトはもらい泣きをしていいた。男の肩を掴み、励ましの言葉を贈る。

 

「アンタ・・・・・・弟達の為に遠路はるばるこんな所まで・・・・・・・そりゃ、弟達の為に頑張らないとな!!」

 

「ありがとな、でも同情するなら野菜かってくれだべ」

 

ハルトの言葉に礼を言う男、だがからかい混じりに、野菜を買ってくれと勧める。そんな時、ハルトは大事な事に気が付く。

 

「あっ・・・・・・やべぇ!学校行かなきゃ!!」

 

時刻は7時20分。遅刻確定まで約20分、この距離から学校までは36分。青ざめた顔で慌てていた。

 

「悪い!買うのは学校終わってからでもいいか?また来るからさ!」

 

「しゃあねぇな、待ってるぜ、あんちゃん」

 

「そういや、名乗ってなかったな。俺はハルト、獅子堂ハルト。よろしくな!」

 

「俺は、田井中力(たいなかりき)、んじゃ、またここで待っとるで!ハルト!!」

 

男の名は田井中力。慌てて走るハルトを見送る様に手を振る力。そんな彼の前に、続々と、主婦勢が集まって来た。

 

「へい、らっしゃい!どれも新鮮でお買い得でっせ~!!さぁさぁ、一目見るだけでも!」

 

 

「力の奴・・・・・何となく伊織と似て・・・・るわけないか」

 

家族の為に、都会まで出稼ぎをする力と、妹の為に戦う伊織に何処か面影を似ていると感じたハルト。しかし、性格が全く違う事に、思わずつい笑ってしまうハルトであった。この後、彼が遅刻をするのは誰もが予想していた事だった・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

時間は少し後に遡る。

 

「ふぅ・・・やっぱり君と飲む紅茶は格別だよ」

 

「うふふ、それは私も同じよ」

 

愛人と双葉は・・・・・・・・・・・・・・喫茶店(トゥンクティ)で2人の一時を過ごしていた。と言っても24時間ずっといるのだが・・・・・・・・・

 

「それにしても、あのフールって奴、もうすでに3人は倒してるんですってね」

 

フールについて話していた。モニタの言ってた、既に3人のもリベリオン使用者を倒している事に、双葉は少々恐れ、怯えていた。そんな彼女の手を、愛人が優しく握る。

 

「倒した数何て関係ないさ。最後に勝つのは僕らなんだからさ、例え誰が相手でも、僕らの連携を崩せる者はいないよ」

 

「愛人・・・・・・・そうよね、最期に勝つのは私達よね」

 

愛人の言葉に安心したか、双葉はそのまま愛人をギュッと抱きしめる。そんな愛し合う二人の前に・・・・・・・・・・・・・

 

「それは面白い事を聞いたな」

 

2人(愛人と双葉)の間に1人の男の右足が割って入る。フールリベリオン=黒崎我怨だ。

 

「最期に勝つのは「僕ら」か・・・・・・随分な余裕言ってんじゃねぇか。獲物を取り逃がした分際でよぉ・・・・・」

 

「って事は、君がフールリベリオンって事でいいんだよね。」

 

「だったら、どうする?」

 

「丁度いいわ。貴方は私達が倒してあげるわ!!」

 

自分を倒すことを宣言された我怨は、挑発する様に、顔を双葉の方へ近づける。その行動に双葉は怯えたのか、一歩後ろへ下がる。

 

「彼女を不安にさせる君は早いうちに始末しないとね!」

 

何時もは冷静な愛人だが、双葉を怯えさせる我怨に対し、怒りの表情を露にする。

 

「フッ、面白れぇ。さっさと始めようぜ」

 

我怨達は、戦いの場所へと移動を始める。トゥンクティの店員が料金を払っていない愛人達を引き留めようとするが、後ろにいた我怨の鋭いガン飛ばしに臆したか、一歩も動かないまま、我怨達は去っていく・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここなら、思う存分やれるよね」

 

愛人達が辿り着いた場所は、以前ハルト達がデッドリベリオンと戦った荒廃したビル。この場所はあの戦いの後、立ち入り禁止区域となっていたが、サイバープログラムの中で戦うリベリオン使用者に意味はなかった。

 

「負けても泣きべそかくなよ・・・・・・あぁ、死ぬから泣けねぇのか」

 

我怨の挑発的言葉を受けても、愛人は動じなかった。双葉の為、2人だけの幸せの為に戦う彼に迷いはない。例え世界が滅んでも・・・・・・・・・・・

2人(我怨と愛人)はビルの入り口のカードキーに、アルカナデバイスを翳すと、互いの左二の腕に、アタッチメントが装着される。

 

「セット・オン――――」

 

「セット・オン――――!」

 

お互い、アタッチメントにデバイスを取り付け、体がスキャンされる様に、我怨はフールリベリオンに、愛人はラヴァーズリベリオンを装着する。

 

「フッ――――」

 

2人同時に、カードキーの中に吸い込まれ、サイバープログラムへと移動する。

 

「頑張って・・・・・愛人」

 

愛人を応援し、自らも戦いに備え、他のビルへ移動する双葉。

 

 

 

 

 

「さぁ、始めようぜ・・・・・戦いをよぉ!!」

「・・・・・・・・・・・・・」

 

<<ショットイン>>

 

<<ソードイン>>

 

サイバープログラムに到着し、フールリベリオンはダイルブレードを、ラヴァーズリベリオンはラビリンスボウを構え、どちらが先に動くか、お互いに睨み合う。

 

「っ―――――――――――――――――!!」

 

風が吹き始めた時、2人共、同時に前進し、互いに襲い掛かる――――――――――――――!

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

一方同じ頃、午後12時、遅刻を免れず、教師に説教をくらい、ゾンビの様に肌が青ざめ、暗い表情で職員室を出るハルトを、彩が迎える。

 

「最近学校来るのが早いと思ったけど、やっぱハルトは遅刻の帝王ですね~」

 

「いや、今日は・・・・・・・寝坊じゃ、ないんだよな」

 

寝坊でないは事実、だが「知り合いと話していました」何て恥ずかしくて言えるわけがない。無論教師にも。

 

「ほら、買ってきたから元気出しなよ」

 

彩が手に持っていたのは、校内で大人気のチキンカツサンドであった。どうやら、ハルトが説教をくらっている内に買っててきたのだろう。

 

「彩・・・・・・ありがとう」

 

半泣きながらも、彩に礼を言うハルト。ハルトにチキンカツサンドを渡そうとする彩だが、一気に上の方に手を上げ、ハルトに手を差し出す。

 

「その前に、チキンカツサンド代」

 

彩はチキンカツサンドの代金200円を要求してきた。

 

「分かったよ・・・・・・ほら」

 

ハルトは素直に、チキンカツサンド代200円を彩に支払った。落ち込む様なハルトの表情を見て、彩は笑った。

 

「それじゃ、屋上で食べようよ!」

 

「えっ・・・・あっ、ちょ――――」

 

彩に引っ張られるがままに、ハルトは屋上へ向かう事になった。屋上へ辿り着き、最初に目にしたのは、満面な青空、何時も見ている光景なのに、何故か不思議とこれまで見た時よりも綺麗に思えた。

 

「どうしたの?物珍しそうに見てさ」

 

「あっ・・・・・いや、何でもない」

 

青空を見るハルトにベンチに座っている彩が声を掛ける。その声に反応し、彩の隣に座る。

 

「んめぇ~~~~~!!やっぱここのチキンカツサンドは絶品だな~」

 

「うんうん、チキンもそうだけどさ、一緒に挟んであるレタスも味を出してるよね~」

 

チキンカツサンドは、チキンカツとレタスにデミグラスソースを染み込ませ、パンで挟んでいる。校内でも人気ナンバー1の商品だ。因みにコーラと一緒に買う者が多いと言われている。

 

「ハルトさ、最近変わった?」

 

「ん?そうか、そんな風に見えるか?」

 

「だってさ、今日はしたけどここ最近は遅刻してないし、授業中寝てないわ、何か疲れてるし」

 

彩は、ここ最近のハルトを見て、少し変わっていると感じていた。ハルトが、リベリオン使用者として戦ってる事は知らないが、何処か心配している様な目で、ハルトを見ていた。

 

「俺も少しは真面目に頑張ろうかな~なんてね」

 

誤魔化す様に言い返すハルト。戦いの事を彼女に知られる訳にはいかない。巻き込みたくない。そんな思いでいっぱいであった。

 

「そう。なら今度の中間テスト、いい点とらなくちゃね~」

 

来月には中間テストがある。その事を思い出したかの様に、ハルトは頭を抱える。

 

「そうだな・・・・・・・頑張らなくちゃな」

 

嫌そうながらも、頑張る姿勢を見せるハルト。その恰好を見て、微笑ましく笑う彩。こんな日が続けばいいのに、心の中でそう思っていた・・・・・・・・・・・・

 

「ねぇ、もうちょっと近くに寄ってもいいかな・・・・・?」

 

唐突にアプローチを始める彩。鈍感なハルトは微動だにせず、それに「別にいいぜ」と答える。その時であった――――――――

 

バダン―――――

 

「・・・・・・・・何やってんだ?」

 

屋上の扉が開き、扉の方を見ると、伊織の姿が見えた。それに焦ったのか、彩はハルトから少し離れる。

 

「えっ・・・・・・・いやっ、普通に昼食を取ってた所だよ!!」

 

自分でも分からないくらいに誤魔化す彩。その素振りにハルトは呆然とした表情だった。

 

「あっそう。別に俺はお前らが何してようが関係ないがな」

 

何食わぬ顔をしながら、伊織はハルト達とは反対側の方向の壁に座りながら、弁当箱を開き、黙々と食べ始める。弁当箱の中身は、1段目には白いご飯がぎっしり詰まっており、2段目にはからあげ、ポテトサラダ、ミートソースの絡めたマカロニ、豆腐ハンバーグ。デザートには大きなウサギのリンゴが2つ。どれも冷凍食品ではなく、手作りである。

 

(ちぇっ・・・・・もうちょいでいい雰囲気に慣れたのに)

 

心の中で不満を漏らす彩。何も気が付いてないハルトは体がふらついて、そのまま彩の膝の上に寝転がる。

 

「えっ・・・・・ちょっ!?ハルト・・・・・・・・」

 

最初はあまりの恥ずかしさに、ハルトを叩き起こそうとしたが、愛らしい寝顔を見て、笑いながら彼の頭を撫でるのであった。

それを目の当たりにしている伊織は、呆れたのか、ため息を尽く。が、どこか笑っている表情にも思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

その頃、フールリベリオンとラヴァーズリベリオンはというと・・・・・・・・・

 

「ハハッ、どうしたよ、そんなヌルい攻撃しか出来ねぇのか!」

 

ラヴァーズリベリオンの拳の攻撃を、軽々と交わすフールリベリオン。その隙を突き、ラヴァーズリベリオンの右足の脛を目掛けて、"ローキック"の一撃を与える。

 

「ッ―――!?」

 

一撃が痛感したか、ラヴァーズリベリオンは、地面に倒れる。愛人に右足には、今でも過去に受けた怪我の後遺症が残っており、これまでの様な運動は出来ない。だが、リベリオンを使用する事で、それを軽減する事が出来た。だからこそこれまで戦ってこれた。しかし、ダメージ喰らえば、痛みは倍増する。

 

倒れ込んだ所を追い討ちを掛ける様に、フールリベリオンはラヴァーズリベリオンの右足を踏みつける。

 

「ハハハ―――――一言ってた通りだなぁ・・・・・・"右足"が弱点だってなぁ」

 

「貴様・・・・・・・どこでそれを・・・・・・・」

 

どうやら、我怨は愛人が右足を痛めている事に気づいていた様だ。その理由を問うと・・・・・・・・・・・

 

「あぁ、教えてもらったのさ、ちょいと強引だったけどなぁ」

 

 

 

 

 

それは昨日の話になる。スターリベリオンを倒し終えた我怨は、ラヴァーズリベリオンの正体を知り、かつて愛人の通っていた学校へと潜入した。その時に、当時同じクラスだった生徒何人かを捕まえて、愛人と双葉の情報を聞き出そうとしていた。

 

「お前ら、知ってるんだろ?深井愛人と永遠野双葉の事をよう・・・・・・」

 

1つの教室の中、我怨は男子生徒1人の背中に乗り、竹ぼうきを手に持ち、他の生徒を脅す様に、話しかける。背中に乗られている男子生徒は、額から血を流しており、我怨に返り討ちにあってしまった事が分かる。

 

「はっ・・・ハァ?いきなり来てなんなのさ!?こんな事して・・・・・」

 

怯えながらも、我怨に反発する1人の女子生徒。その反論に怒りを感じたか、立ち上がり、女子生徒の肩を掴み、机の方に押し倒す我怨。その女子生徒の耳元で言い放つ。

 

「いいから黙って教えてくれりゃ、痛い思いはしねぇよ」

 

女子生徒の首元から下まで、指をなぞる我怨。彼に恐怖を抱いたのか、2人について話す。

 

「あっ・・・・愛人は、前に友達ボコボコにして・・・・・・・右足を怪我して・・・・完治しない・・・・・そうです」

 

今にも泣きそうで、体が震えている。話を聞いた我怨は、女子生徒から手を放し、そのまま教室を去る。あまりの恐ろしさに、女子生徒の下の方から、何かが溢れてい

た・・・・・・・・・

 

 

 

 

「ってわけよ。おかげでお前の弱点を知ったわけよ・・・・・・・」

 

「何て卑怯な・・・・・」

 

ラヴァーズリベリオンの首元を掴み持ち上げるフールリベリオン。そして強烈な一言を言い放つ。

 

「卑怯?何寝ぼけた事をいってんだ・・・・・これは勝ち残る為の戦いだろ。ルールの範囲内なら卑怯もクソもねぇんだよ――――!!」

 

そう、この戦いにルールがあっても、戦い方に制限はない。ラヴァーズリベリオンを突き飛ばし、そのまま接近し、ダイルブレードでラヴァーズリベリオンの右肩を貫く―――――!

 

「アアアアアアアアア――――――――っ!!」

 

「愛人!私に変わって!このままじゃあなたが――――」

 

デバイスを通じて戦いの状況を見ていた双葉は、自分と交代する様に言う。それに賛成し、ラヴァーズリベリオンは近くにあった小さなモニターからサイバープログラムを脱出しようとするが、フールリベリオンに背中を掴まれ、身動きが取れなくなる。

 

「さて・・・・・・お嬢ちゃんは何処にいるのでしょうか」

 

ダイルデンジャーの中のデバイスを取り出し、この一帯の地図をモニターに移す。後ろのブレーカーの方に、1つの反応があった。そのブレーカーの所に、フールリベリオンは移動する。

 

「なるほど・・・・・・そこにいたかぁ!!」

 

ブレーカーの方に手を伸ばすと――――――――

 

「ッ――――!?」

 

双葉のいる所は、フールリベリオンが示したブレーカーのすぐ近く。そう、デバイスに反応していたのは双葉であった。

ブレーカーからフールリベリオンの手が現れ、双葉は左腕を掴まれ、そのまま、サイバープログラムへと吸い込まれてしまう。

 

「双葉――――――!」

 

「あっ・・・・・・愛人・・・・・・」

 

サイバープログラムへと連れ込まれた双葉は、フールリベリオンに首を掴まれる。反対側の方に掴んでいたラヴァーズリベリオンをフールリベリオンが投げ飛ばす。

普通の人間なら消滅してしまうが、アルカナデバイスを持つ人間は消滅せず、体を維持出来る。

 

「これでお得意の戦法は封じられたなぁ」

 

「くっ・・・・・・何て奴だ!」

 

双葉がサイバープログラムへ連れ込まれた事により、互いに入れ替えながら戦う戦法を封じられたラヴァーズリベリオン。双葉を取り戻そうと、フールリベリオンに近づくが・・・・・・

 

「ほらよ」

 

ラヴァーズリベリオンがストレートを放とうとした時、フールリベリオンは双葉を盾にする様に、目の前に出し、ラヴァーズリベリオンの手が止まってしまう。

 

「クっ・・・・・・・卑劣な真似を・・・・・・・」

 

「ホラホラ、そんなんじゃ、俺は倒せねぇぞ!」

 

双葉の間から、ダイルデンジャーからビーム光線が放たれ、ラヴァーズリベリオンを襲う。それを間一髪避け、一歩後ろへ下がる。

 

「クっ!何としても双葉を・・・・・・・・」

 

今はフールリベリオンを倒す事より、双葉を救う事を優先するラヴァーズリベリオン。双葉は信じている、愛人は必ず助けてくれると・・・・・・・・・

 

「来ないなら・・・・・・こっちから行くぞ――――――!」

 

フールリベリオンがラヴァーズリベリオンに目掛け、ダイルブレードを突き刺そうとした時だった――――――突然フールリベリオンとラヴァーズリベリオンのアーマーが解除されたのであった――――――

 

「あぁ?どういう事だ・・・・・・・?」

 

「今だ――――!」

 

突然の事に疑問を抱く我怨の隙を突いて、彼の腕を解き、双葉をこちらに抱き寄せる。

 

「双葉・・・・・・よかった」

 

「愛人・・・・・・・・」

 

愛を囁く時間はない。そう察した2人は、我怨から少し離れる。何故、リベリオンのアーマーが解除されたのかを、考えていると、ある事に気づく。

 

「そうか!制限時間!ここでリベリオンを装着できるのは1時間・・・・・・今で丁度1時間だったのか・・・・・」

 

そう、サイバープログラム内でリベリオンとして戦えるのは1時間。そしてその1時間が経過すると・・・・・・・・・出口は全て封鎖され、24時間は出る事が出来ない・・・・・・・

 

「だけど、逆にチャンスじゃない、私は変身できる。今ならアイツを・・・・・・・・」

 

確かに双葉は今は1時間の制約は受けていない。この隙に我怨を倒す事も出来るが・・・・・・・・

 

「ダメだよ、この戦いのルールの1つ、生身での攻撃は禁ずる、のはずだよ。今はうかつに攻撃できない・・・・・・・・」

 

この戦いの7つ目のルール7つ目は「リベリオン同士の戦い以外での殺す事(脱落させる事)もペナルティと見做す」つまりは生身の状態を不意打ちで倒す事が出来ない。つまりはこの1時間、戦闘は行えないという事だ・・・・・・・・・・・・・

 

「やれやれ、これは長期戦になりそうだね・・・・・・・・」

 

油断は出来ない。何故ならここはサイバープログラム。クリーチャーがうじゃうじゃいるのだから。生身の状態だと、食べて下さいと言わんばかりだ。しかし、愛人と双葉にそれは問題ではいない。お互い交互にラヴァーズリベリオンを使用し、互いを守りながら戦えるのだから。

 

「とりあえず、一旦距離を置くよ」

 

「えぇ」

 

愛人と双葉は、その場を離れる。それを我怨が追いかけようとするが・・・・・・・・・・・・・

 

「あぁ?ちっ・・・・・邪魔が入ったか・・・・・・・・」

 

我怨の背後から、数匹のベノスティンガーが、襲いかかり、尻尾が我怨に直撃――――――――――

 

バキっ―――――――――――!

 

ベノスティンガーの尻尾を、バイオヘルダイルが食らう。その隙に、我怨もその場を離れる。

 

「さぁて、これからどうしますか・・・・・・・・・」

 

出口が出現するまで、後24時間・・・・・・・・壮絶な長期戦闘が繰り広げられる・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

それから数時間経った頃・・・・・・・・・・

 

「フゥ、これで全部か?随分と多かったもんだ」

 

クリーチャーの反応を察知したソルリベリオンは、複数のマーリンフルーレと交戦し、それを全滅させていた。

 

「そういや、近くでスゲェ音したけど、また他のリベリオン使用者が戦って・・・・・・・」

 

ソルリベリオンから遠い距離のビルから、激しい爆発音が聞こえた。恐らくフールリベリオンとラヴァーズリベリオンとの戦いであろう。

 

「また誰かが犠牲になる前に・・・・・・・・・」

 

これ以上犠牲を出したくない。そんな思いで、ソルリベリオンは爆発音のした方へ向かう。しかし―――――――

 

ズゴォォォォォォ――――――――ン!!

 

突如と、ソルリベリオンの目の前に"何かが"落下してきた。

 

「何だ・・・・・・一体?」

 

その"何か"は立ち上がる。その正体は、両腕が大きく、巨大なガントレットが目立ち、ゾウの耳を尖らせた様な、ヘッドギアをし、今までのリベリオンより、一回り大きく、体格がゴツイ、以前ルナリベリオンと交戦したリベリオンであった。力強い象徴を思わせるリベリオン・・・・・・「力」(STRENGTH)のタロットカードを意味する、ストレングスリベリオンであるだろう。

 

「クッ・・・・・・・戦うしかないのか!?」

 

拳を握り締め、ファイティングポーズを構えるソルリベリオン。果たして、戦いの行方は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

現在リベリオン使用者22人中残り18人

 

ToBe Continued……




【今回登場したリベリオン】

ストレングスリベリオン

【全長】234㎝

【体重】150キロ

【常設武器】強力腕ストロングブレイカー

タロットカードの「THE STRENGTH」を意味するリベリオン。総合ランクA-。両腕が大きく、巨大なガントレットが目立ち、ゾウの耳を尖らせた様な、ヘッドギアをし、今までのリベリオンより、一回り大きく、体格がゴツイ。22機のリベリオンの中でも、一番高身長で、体重が重い。使用者は現時点では不明。


1時間の制限時間を超え、極限のサバイバル状態となったフールリベリオンとラヴァーズリベリオン、どちらに勝利の女神は微笑むのか・・・・・・・
そして、ストレングスリベリオンとソルリベリオンが合い間みえる・・・・・・・・そして、その正体にハルトは・・・・・・・・・・・

次回もこうご期待!!

メインキャラの中で誰が1番好きか?

  • 獅子堂ハルト
  • 三日月伊織
  • 国枝半蔵
  • 黒崎我怨

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