アルカナTHEリベリオン   作:イオ・りん

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今回は謎が少しだけ明らかになる回です。そして伊織の前にアイツが・・・・・


前回までのあらすじ

新たなリベリオン、ラヴァーズリベリオンと出くわすハルトと凜。その中で、ハルトは、ラヴァーズリベリオンを無意識に、倒そうとしていた。
戦いの中で、我を忘れかけた所、クリーチャーに襲われかけた少女を助けるプロミネンスレオに気付かされる。そしてハルトは改めて「人を守るために戦う」事を決意する。
その頃凜は、ある情報を入手した・・・・・


第14話「真理の探究者」

「こういう事だったか・・・・」

 

凜が見ていたパソコンの画面には「姫宮グループ」に関してのサイトであった。姫宮グループは、エネルギー開発会社であったが、2年前に、倒産している。このサイトはその当時の復元、所謂、魚拓といった所だ。かつてハルトの前に「太陽」のリベリオンの使用者であった、姫宮灯の父が経営していた。しかし彼女は、ハングドに倒され、消滅している。そして父親も・・・・・

 

サイトには「電脳世界への発展」「それに伴う専用スーツ」の情報が書かれていた。電脳世界=サイバープログラム、スーツ=リベリオンと解釈すれば、合致する。戦いの発端は、姫宮グループにあるのか、サイトをよく見ながら、真剣に考える凜。

 

「こうしてはいられない、早くハルト達に―――」

 

凜が椅子から立ち上がり、ハルト達に、この事を知らせに向かう、その時―――急に辺りが暗転しだした。すると、突然後ろから、サーカスで使うバランスボールで玉乗りをしているモニタが現れる。

 

「チミチミ~いきなりネタバレはダメだよ~それじゃつまらないじゃないか」

 

モニタは凜に、ネタバレ、得た情報を伝える事を止めようとする、しかし凜は聞く耳を持たない。そんな彼に、あるカードを1枚渡す。

 

「まぁ、これで勘弁してよ~君の為にもさ」

 

モニタの言葉には、どこか重みがあった。凜はつい、そのカードを受け取ってしまう。カードには雷と風、すなわち嵐を思わせるデザインが描かれており「STORM」()「UNISON」(ユニゾン)の文字が、刻まれていた。それを受け取った凜は、体が震えだす。何か恐怖を植え付けられた様に・・・・

 

「まっ、そんな訳だからよろしく頼むね~」

 

モニタの右目は、血がにじむ様に、赤く光っていた。身体が震えながらも、凜はハルト達の元へ向かおうとする。

 

「ただの脅しだ、それよりも、早く伝えなければ・・・」

 

凜が操作していたパソコンには、岩石巨人を思わせるクリーチャー(ギガ・オーガ)が写る、これは一体何を意味するのか・・・・

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

それから1週間後、6月24日、14時20分

ハルトは欠伸をしながら、廊下を歩いている。周りは何かの準備で忙しい様子、教室内を屋台などの、出し物の準備だ。

 

「あり?何かあったかな~」

 

頭を搔きながら何が何なのか悩んでいると、後ろから彩が声を掛ける。

 

「知らないの?来週、他校との交流を兼ねた双園祭があるから、その準備だよ」

 

それは、テクノアカデミー高と、春ヶ岬学園との交流を兼ねた、合同双園祭の準備であった。どうやら、ハルトは知らなかった様だ。

 

「あぁ~そういやそんなのもあった・・・かな?」

 

「全く、しょうがないなぁ、ハルトは、ほら、アタシ達も準備があるんだから、教室戻るよ」

 

そう言い、彩はハルトの手を取り、自分の教室へと戻る。戻るとすぐ様、出し物の準備に掛かる。ハルト達のクラスは、どうやら喫茶店の様だ。アンティークな内装で飾っており、雰囲気を出している。

 

「随分凝ってるな~こりゃ、頑張らないとな~」

 

「だね~来週までには何とかなりそうだね」

 

準備の最中、ハルトと彩は、人一倍張り切っていた。一方、伊織の方はと言うと・・・・・

 

「お~い三日月、そこ頼むわ~」

 

「あぁ・・・分かった」

 

こちらも準備に取り掛かっていた、伊織のクラスの出し物は、お化け屋敷の様だ。ダンボールを迷路の様に設置し、黒く塗り、雰囲気を出している。伊織はクラスメイトに頼まれ、ダンボールを黒いペンキで塗っていた。

 

(っく・・・・面倒くせぇ・・・)

 

内心伊織は、嫌々であった。そんな中、1人のクラスメイトの女子が隣に座る―――カレンだった。

カレンは、伊織に声を掛ける。

 

「三日月伊織さんだよね、私、青葉カレン、よろしくね」

 

カレンは伊織に、自己紹介をする。しかし彼は話を聞いていない様で、黙々とペンキを塗っている。

 

「ちょっと聞きたい事あるんだけど、いいかな~?」

 

鬱陶しく感じたのか、伊織は溜息をつく。

 

「最近噂されてる、連続失踪事件の事なんだけど、何か知らないかな?」

 

連続失踪事件について何か知ってるか聞かれた。伊織は鋭く彼女を睨み、言い返す。

 

「何で俺なんだ、悪いが知らないね」

 

「そっか、やっぱそうだよね、ゴメンね、手止めちゃって。それじゃ」

 

カレンはそのまま、伊織の元を離れる。伊織は何故か、浮かない顔をしていた。少しキツく言い過ぎたのではないかと。ハルト様なのなら、まだ問題はないが、相手は女性、他人はどうでもよいと思う程、彼の根は腐ってはいない様だ。

 

「っく・・・・妙な事に首突っ込んでるな、面倒事にならなきゃいいが」

 

伊織がリベリオンバトルで1番避けたい事それは、他人を巻き込む事、妹の命が掛かってるとは言え、関係ない人を巻き込む事には、罪悪感を抱いてる様だ。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

そして放課後、家に帰って来た伊織は、すぐ様、ベッドの上に寝転がる。その様子を見た葵が、声を掛ける。

 

「珍しいね、義兄さんが、そんなに疲れるなんて」

 

「あぁ・・・まぁな、ん・・・アレは?」

 

伊織のテーブルの方を見て、見慣れない熊の置物が何なのか、葵に聞く。

 

「あぁ~ついさっきまで、おばさんが帰ってきてね、その時のお土産だって、すぐに行っちゃったけど」

 

熊の置物は、伊織の叔母である、三日月日和(みかつきひより)が持ってきたお土産であった。彼女は世界をまたにかける仕事をしているらしく、中々帰って来れない。帰って来れたとしても、すぐ様仕事に戻る程、忙しいらしい。

 

「そうか・・・」

 

納得した伊織は、そのまま眠りに付こうとした時、ある事を思い出す。双園祭で合同に行うもう1つの学校、春ヶ岬学園の事を。

 

「嫌でも、面倒な事になりそうだな・・・」

 

春ヶ岬学園には、チャリオットリベリオン事、国枝半蔵がいる事を思い出した。伊織は何か、嫌な予感を感じていた。それがあんな事になるとは・・・・まだ自分自身もしらない・・・・・

 

 

 

 

◇◆◇

 

そして、一週間が過ぎ、7月1日。朝8時丁度。全ての準備が終わり、後は双園祭が始まるのを待つだけ。伊織は、自販機でブラックコーヒーを購入し、眠気覚ましに、それを飲む。そこに、1人の男性が声を掛けて来た。鼠色の整えた短髪に、銀淵眼鏡が目立つ、身長180㎝程の男性だ。そして伊織とは異なる、灰色の学生服である事から、春ヶ岬学園の生徒と思われる。

 

「すみません、生徒会室は何処でしょうか?」

 

男性は、生徒会室が何処かを尋ねた。面倒だが、仕方なく、伊織はその男性を生徒会室まで案内する。

 

「この角曲がった先、ここが生徒会室だ」

 

生徒会室まで案内した伊織は、そのまま、生徒会室のドアを開ける。

 

「ん?三日月君か、何か用かな?」

 

「俺じゃなく、この人が」

 

生徒会室には、界斗が入念に、今日のスケジュールを確認していた。後ろに下がった伊織に変わる様に、男性は生徒会室に入り、自己紹介をする。

 

「失礼します、始めまして、私、春ヶ岬学園の生徒会副会長逆倉真弥(さかくらしんや)と申します。」

 

男性の名は、逆倉真弥。春ヶ岬学園生徒会の副会長を務めている。挨拶がてら、界斗に挨拶しに来たのであろう。

 

「こちらこそ、会長の神ヶ崎です。今日は一日よろしく」

 

界斗も、真弥に自己紹介をする。その様子を見た伊織は、その場を離れ、外にあったベンチに座る。

 

「ハァ・・・」

 

ため息をついていると、呑気に蹴伸びしている、ハルトの姿を発見する。

 

「よぉ」

 

「ハァ・・・気楽な奴だ・・・」

 

ハルトの能天気っぷりに、伊織は呆れていた。

 

「こんな、お祭り日和なんだ!そんな時ぐらい他のしまないとな!」

 

一週間ちょっと前まで、悩んでた様な奴とは思えないくらいのテンションだな。やはりコイツは本物のバカだ。まぁ・・・それがコイツらしいんだがな。

 

「多分葵ちゃんも来るだろうぜ、そういや凜にも連絡・・・あっ、アイツ、携帯持ってないか・・・」

 

そうか・・・葵も来るとか言ってたな、まぁ、凜の事だ、やる事くらい、気付いてるかもな。

 

ピンポンパンポーン

 

校内から、放送が流れ始めた。

 

「これより、開会式を行います。各生徒は、体育館に集合してください」

 

もうそんな時間か、まぁ、仕方ない、そう思いながら、仕方なくあのバカと一緒に体育館へ向かう事になった。

 

「これより、テクノアカデミー高、春ヶ岬学園合同の、双園祭を開催いたします。1日限りですが、深い交流が行えればよいと思っております」

 

9時丁度、会長の界斗の言葉と共に、双園祭は始まった。会場はテクノアカデミー高であるが、2校で行うため、規模はデカい、屋台、出し物、展示、様々な物が展開されている。

 

「ふぇ~忙しいもんだぜ、以外に多いなぁ」

 

ハルトは、料理担当で、裏方で、注文された料理を作っている。オムライス、パスタ類、洋風な物を中心のメニューとされている。

 

「すいません、このオムライスと、コーヒー2つ」

 

「ハイハ~イ、ハルト君、オムライス2つに、コーヒー2杯、お願いね~」

 

白と黒のウェイトレス姿の彩が、客の注文を聞き受け、それをハルトにオーダーする。料理担当はハルトを含め4人、まさに猫の手も借りたいくらいだ。ハルトも大忙しだ。

 

「ヒィ~こりゃ、手が足りねぇぜ~」

 

しかし、ハルトの作る料理は、逸品だ。本番前に試作で作ったオムライスは評判が良かった。教師からも「ハルトは料理は美味いな」と言われる程、しかし何処か何とも言えない。

 

客からも「これは美味い」「お店のより美味しいかも!」と声が聞こえる。その言葉を聞いたハルトは、一倍やる気が出ている。

 

一方の伊織はと言うと、お化け屋敷の首だけの落ち武者の役をしている、落ち武者の長髪のカツラを被り、自作であろう、刺さった弓矢が味を出している。だがあまりに無表情の為、3人に1人は鼻で笑う。彼にとっても恥ずかしいものだ。

 

(っく・・・何で俺がんな事・・・)

 

内心面倒だと思っている。そんな彼の後ろからカレンが肩を叩く。

 

「ちょっと、ちょっと、そんなんじゃ誰も怖がらないよ~もっと驚かせないと」

 

彼女の言葉を聞き、顔に少し不満を募らせたような表情になった。それを見たカップルはその恐ろしさに怖がり、走り出す。

 

「ギャーーーー!!」「落ち武者ってか、般若の面よーーーー!!」

 

その驚きの様子に、伊織は少し戸惑っていた。

 

「そんなにか・・・・?」

 

伊織の登板も終わり、当てもなく、校内を歩いていると、葵の姿が見えた。

 

「あっ、義兄さーん」

 

「おぉ、葵か、よく来れたな」

 

「うん、何とかね、さっきハルトさんの所行ってきたよ~あっちもそろそろ終わるから、合流出来るって」

 

「そうか」

 

心の中では(あのバカと一緒に行かなアカンのか・・・)と不満が垂れかけている。

 

「でも、義兄さんのお化け、見たかったなーちょっと残念」

 

「あぁ・・・・辞めといた方が・・・いいぞ」

 

客が走り出す程の怖さを、葵には見せられない、そう感じた伊織、少し苦笑いをしている。

 

「えぇ~お化けなんて怖くないのに」

 

葵は「ブゥ~」と頬を膨らませる。そんな中、ハルトと彩が後ろからやって来た。

 

「うぃ~す、お待たせっ!」

 

「別に待ってねぇよ」

 

合流したハルトに、愚痴を零す。その一言に「グサっ」と何かが刺さる様な表情のハルト。仲の良くない2人を見て、少し寂しそうな顔をする葵。2人には仲良くなってほしい、その思いが胸に募る。

 

「あっ、そういや、凜見なかった?アイツ携帯持ってないから、連絡取れなくて・・・」

 

「それなんですけど、実は今日、会ってないんですよ」

 

葵ちゃんも凜にあってないのか・・・来ると思ったんだけどな~まっ何か買ってやっかな。

 

それから俺達は、色々回った。屋台、電池博物館、作文、ミニライブ、演劇、3時間で半周近く周れたかな?

 

「ふぅ~結構回ったな」

 

「だね~楽しいね、ねっ葵ちゃん」

 

「はい、とっても楽しかったです、だよね?義兄さん」

 

「あっ・・・あぁ、()()()()にな」

 

伊織も少しは楽しめた様だ。その言葉を聞いて、葵は満足そうな笑みを浮かべた。

 

「ちょい、行ってくるわ」

 

突然、伊織は、右側の廊下の方に歩き出した。下駄箱近くにあった自販機で、ミルクティーを買う。伊織はミルク系はあまり飲まないのだが・・・・そして伊織の向かった先は―――

 

「ふぅ~これで休憩っと」

 

伊織のクラスの教室のお化け屋敷であった。そこには当番を終えたカレンの姿があった。伊織は、そんな彼女の元へ向かった。

 

「あっ、三日月君、どうしたの?休憩なのに」

 

「・・・・この間は悪かったな」

 

伊織はカレンにミルクティーを差し出した。先週キツく言ってしまった事を気にしていたのだろう。ミルクティーを受け取り、少し顔がニヤける。

 

「フフっ・・・意外といい人なんだね」

 

何時もは何考えてるか分からない伊織が、意外に優しいだと思い、笑みを浮かべる。

 

伊織も心がされた様な顔をしている。そんな2人に、1人の少女が声を掛ける。身長167㎝程で、長い金髪で、翡翠色の瞳をした、帰国子女の様な美少女だった。

 

「ちょっといいかな?このジャンボパフェのある所に行きたいんだけど、何処か知りませんか?」

 

「あぁ~そこなら、ここの階段上がって、4階の教室の2番目ですよ」

 

カレンが少女に、ジャンボパフェのある店の場所を説明する。それを聞いた少女は、すぐ様、階段の方へ向かう。

 

「そこだったか、ありがとう」

 

その時、伊織と目が合う様な気がした・・・・伊織もまた彼女に見惚れた様に見ていた・・・

 

・・・・何だったんだ?まさか・・・な。一瞬リベリオン使用者なのか、と思ったが流石に考えすぎか・・・

 

少女に見惚れた伊織を、カレンが肘撃ちでからかう。

 

「もしかして見惚れてた?意外とあういう子が好みなのかな?」

 

「・・・んなワケないだろ、様は済んだ、じゃぁな」

 

そう言い、伊織はその場を去る。彼の意外な一面を見たカレンは、少々面白がる様に浮かれていた。

 

 

◇◆◇

 

一方ハルトはと言うと・・・・・

 

「イテテ・・・・なぜこんな事に・・・」

 

トイレにいた、そして隣のトイレには・・・

 

「ヤレヤレ・・・・恐るべしだね」

 

国枝半蔵が隣のトイレにいた。お互い腹を抱えている状態であった。何故この2人がトイレにいるのと言うと・・・・話は少し前に遡る。

伊織がカレンの元へ向かった後、ハルト達は半蔵と遭遇した。

 

「やぁ、またあったね、ハルト君」

 

「半蔵さん!来てたんですね」

 

2人の親しさに、彩と葵は不思議に思っていた。

 

「ん?あの2人、随分親しいね」

 

「国枝先生と親しい仲・・・ハルトさんいつの間に・・・」

 

半蔵は、2人にハルトと親しくなった理由を放す。

 

「彼を見た時、面白いと感じてね、是非作品の参考になれるかなと思って、おかげで次は新しいジャンルが書けそうだよ」

 

「いやぁ~そんな褒められるような~」

 

ハルトは相変わらず照れた表情をしていた。

 

「あっ、そうだ!もしよろしければコレ・・・」

 

葵は、鞄に入れていたある物を半蔵に渡した。その中身は・・・・

 

「おや?コレは美味しそうだね、ありがとう」

 

クッキーの詰め合わせであった。可愛らしい熊やウサギの形、手作りであるだろう。その事に気付いたハルトは少々苦笑いをした。そんな彼にも・・・・・

 

「実は・・・もう1つ作ってあって、本当は義兄さんに渡すつもりだったんですが・・・ハルトさんに上げます」

 

「おっ・・・俺にも!?あっ・・・ありがとう」

 

葵の料理は少々何処かずれている。その事に不安を感じているのか、ハルトの顔は引きつってる。

 

「じゃぁ、僕はこれで、またね」

 

半蔵はその場を後にした。別れるのが寂しいのか、葵は少しションボリとした顔をしていた。

 

「俺も・・・ちょっと外の方見てくるわ」

 

そう言い、ハルトも下の階段の方へ走り出す。そして人目につかない隅っこで葵の手作りクッキーを見つめる。

 

「大丈夫・・・だよな・・・せっかくだし―――」

 

クッキーを1枚取り出し、思い切ってそれを口にする―――その瞬間、ハルトの腹から嫌な音が鳴り始めた。腹を抱え、急いでハルトはトイレの方向に駆けこむ。

 

その頃葵と彩は・・・・・

 

「あっ、もう1袋ありました」

 

「お~どれどれ」

 

葵はもう1つクッキーの袋がある事を思い出し、彩に渡し、それを「パクり」と食べる。

 

「う~ん美味しいね、いい奥さんになれるかもね」

 

「そんな////私が奥さんだなんて・・・・」

 

クッキーを高評価され、葵の頬が赤く染まる。彩は所々味オンチなのか、葵のクッキーを食べても何ともなかった。しかしハルトは・・・・・

 

「予感はしてたけど・・・・まさかここまでとは・・・」

 

ハルトは、トイレの中で蹲っていた。当面出れそうな様子じゃない。隣からも、同じような声が聞こえてきた。

 

「うぅ・・・・これは・・・予想外だよ」

 

「その声・・・・半蔵先生!?やっぱり・・・」

 

国枝半蔵だった。彼もまた、葵のクッキーを食べ、腹を下していた。

 

 

「イテテ・・・・なぜこんな事に・・・」

 

「ヤレヤレ・・・・恐るべしだね」

 

葵のクッキーは2人にとって、腹を下す程であった。一体中身は何をいれていたのか・・・・・

そこへ、伊織が手を洗いにやって来た。2人の唸り声を聞き、ため息をつく。

 

「何やってんだ・・・あのバカ・・・それにチャリオットも・・・・」

 

ハルトはチャリオットと言う言葉に反応し、伊織に声を掛ける。

 

「おいちょっとまて!チャリオット・・・・・半蔵先生がか!?」

 

「気付かなかったのか?まぁ、お前みたいなバカじゃ気付かないよな・・・ソイツはチャリオットだ」

 

呆れれ口調で、半蔵の正体をアッサリと教える伊織、チャリオットリベリオンの正体に驚きを隠せないハルト、それを聞いた半蔵に声を掛ける。

 

「どういう事だよ!?アンタ・・・何であんな戦いに!!」

 

「まぁ・・・色々あるんだよね、これだけは言っとくよ、僕は別に君を倒す為に近づいた訳じゃないよ・・・最初は半分その気だったけどね」

 

半蔵は当初、ハルトの正体に気付き、倒そうと近づいてた。だが彼に会う度に、その気が失せてきた。前回ラヴァーズから助けたのも、同様かもしれない。

余談だが、ハルトと半蔵は、2週間に1度会っていたらしい。

 

「黙ってたのは謝るよ・・・・」

 

「・・・でも、そういや・・・・」

 

ハルトは以前半蔵と話した事を思い出した「ある人の行方を知りたい」それが彼の戦う理由だと、ハルトは察した。

 

「・・・・そうだったな・・・」

 

顔を下に向けるハルト。しかしここはトイレの中、暗い雰囲気もここではあまりにもシュールである。気を取り直したか、ハルトは再び伊織に声を掛ける。

 

「そうだ!頼みがあるんだ!!」

 

「何だよ」

 

その頼みとは・・・・・・

 

「ワリィ、トイレットペーパー持ってきてくれねぇ?」

 

ハルトのトイレのトイレットペーパーが、不幸な事に切れていた。呆れる様に溜息をし、ハルトの方に、トイレットペーパーを投げ込む。

 

「サンキュー」

 

「あっ・・・ハルト君・・・僕にも・・・」

 

トイレを終えたハルトに、半蔵もトイレットペーパーを要求していた。しかしハルトは半蔵の方に舌を出しながらこう言う。

 

「今までやられた分だ、これでお相子にしようぜ、先生♪」

 

これまで戦った時に襲撃された分の仕返しに、ハルトは半蔵にトイレットペーパーを渡さず、そのままトイレを去った・・・・・その状況に半蔵は大きく笑う。

 

「ハハハハハ―――やっぱり・・・君は面白いよ、嫌いじゃないよそう言うの」

 

悔しい様子はなく、むしろ彼を評価している。ハルトの方はと言うと、少しスッキリした表情をしていた、両方の意味で。

 

一方の伊織は、一仕事終え、屋上で寝転がりながら、空を見ていた。そして幼い日の事を思い出していた。

 

「お兄ちゃーん、こっちこっち~」

 

「そんなに、走ると危ないぞー」

 

幼い頃はまだ無邪気に走り、何も考えなくてよかった。あの日までは・・・・

 

「由那!どうした、しっかりしろ!?」

 

「由奈ちゃん!しっかり―――!!」

 

「お兄ちゃん・・・義姉ちゃん・・・熱い・・・何も見えないよ・・・・」

 

それは突然の出来事だった。妹の由那の病気は突然だった。あまりにも悲痛な苦しみ、胸を抑え、視界がぼやけ、そして何も見えなくなり、足も動かなくなった。由那の病名は未だに不明のまま、当然治療法もない。だからこそ、リベリオン同士の戦いに勝利しなければならない。未だに倒せないことに、悔しさを拳にぶつける伊織・・・・

 

「こんな事、してる場合じゃねぇ・・・俺は・・・」

 

後ろからドアの開く音が聴こえた。またハルトなのかと呆れて後ろを振り向くが・・・・・

 

「おや、先客がいましたか」

 

現れたのは、さっきあった副会長の逆倉真弥であった。彼だった事に驚く伊織。そして真弥は伊織の隣に立つ。

 

「何か悩んでるようですね、まるで「満月の掛けた三日月」の様だ」

 

その言葉に、伊織は反応し、真弥の顔の方を向き、目を鋭くする。

 

「その言葉、何処かで聞いた事あるんだよな、聞き間違いかな?」

 

「フフフ・・・その反応、やはり貴方でしたか、こうして会うのは初めてですね、三日月伊織クン」

 

その言葉は、かつてハングドリベリオンが伊織に放った言葉、つまり・・・ハングドリベリオンの正体は逆倉真弥と言う事になる。

 

「お前・・・最初から知ってて俺に近づいたのか?」

 

真弥は最初から伊織がルナリベリオンである事に気付き、あえて声を掛けたのか?その真意は?

 

「えぇ、ただ、勘付いていた、とだけ言っときましょう。あの言葉を言えば貴方が反応すると思いまして」

 

随分と挑発的な態度だな・・・・コイツ、だがいい機会だ、コイツには散々と借りがあるしな・・・返すのには丁度いい機会かもな「物理的に」な!!

 

「どうやら、因縁に決着を付けるには持って来いかもな」

 

伊織は裾に隠していた、アルカナ・デバイスを突きつける。それに対抗し真弥も、アルカナ・デバイスを制服の中から取り出す。彼のデバイスは茶色がベースで、クリーチャーシンボルにはバンデットシーミアが刻まれている。

 

「いいでしょう、そろそろ貴方の顔も見飽きた、ここでケリを付けましょう」

 

そう言い2人は屋上の監視カメラに同時にデバイスを翳す「セットオン―――」の発言と共にデバイスを右二の腕に取り付け、伊織はルナリベリオンを、真弥はハングドリベリオンを装着する。そのまま監視カメラの中に入り、サイバープログラムへ向かう。

 

「ん・・・・この感覚・・・また戦いが始まったかぁ・・・」

 

校庭には、串焼きを食べながらリベリオン同士の戦いを察知した我怨の姿があった。

 

 

◇◆◇

サイバープログラムへ辿り着き、ルナリベリオンは真月を、ハングドリベリオンはハングドナイフを手に取り、互いに向かって突撃する―――

 

カキン―――!!

 

互いの武器がぶつかり合い、激しく火花が飛び散る。ルナリベリオンが力押しでハングドリベリオンを押そうとするが、突然足に何かが絡み、一回転して地面に叩きつけられる。その後ろのには、ハングドリベリオンの契約クリーチャー、バンデットシーミアが手を伸ばし、ルナリベリオンの足を引っ掻けていた。

 

「ここが違うんですよ、戦いは力任せじゃどうにもならない」

 

ハングドリベリオンは自分の頭を指で突き、挑発的な態度を取る。その態度に怒りを感じたか、ルナリベリオンは上空に飛びがり、急落下の勢いに任せ、真月を振りかざす。

 

フゥ―――ズドォォォォォ―――ン!!

 

それを軽く避け、回避される、降ろされた真月は地面を叩き付け、その衝撃で地面が割れる。

 

「ほほぉ・・・侮ってはいけませんね、少しは楽しませてくれますね」

 

余裕に信号機の上に乗るハングドリベリオン。その姿を見て、ニヤリと笑うルナリベリオン、何か策があるのか?そして2人が入った監視カメラのある屋上では、我怨が串を噛みながら、様子を見ていた。

 

「やってるねぇ、ゾクゾクさせるねぇ・・・」

 

そして彼の手には九尾の狐のクリーチャー・・・アポロナインフォックスの描かれたカードを手にしていた。そのカードはかつてサンリベリオンが使用していた「SUN」の文字が書かれておらず、フールリベリオンの「FOOL」の文字が書かれていた。

 

 

◇◆◇

 

そして同じ頃、凜は・・・・・

 

「ハァ・・・ハァ・・・こうなるとは・・・思っていたが・・・」

 

ギガ・オーガに苦戦する、スターリベリオンの姿があった。真実を知った凜、これはモニタが口封じの為に彼を消そうとしているのか・・・・

それぞれ、違う所での戦いが始まっていた・・・・

 

 

現在リベリオン使用者22人中残り20人

 

 

ToBe Continued……




【今回登場したクリーチャー】


バンデッドシーミア

全長200㎝

ハングドリベリオンが契約する、手長サル型のクリーチャー。ランクB-
腕が自在に伸縮し、ハングドリベリオンとの連携で、相手を有利な場所へ誘い込む。
身軽な動きで相手を翻弄する。


ギガ・オーガ

全長400㎝

岩石巨人を思わせるクリーチャー。ランクS+
巨大な両腕が特徴的で、どんな相手もこの拳を防ぐのは困難である。


遂にハングドの正体が明かされました。知的でどこか腹黒い奴です。
そして様々な場所で戦いが繰り広げられる・・・・その一方で主人公であるハルトはどう動くのか・・・

そしてアポロナインフォックスのカードを手にしていた我怨・・・・次回第1部ラストの後が明らかに―――!!

次回もご期待ください!

感想待ってます。

メインキャラの中で誰が1番好きか?

  • 獅子堂ハルト
  • 三日月伊織
  • 国枝半蔵
  • 黒崎我怨

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