A.えー、作者のコモドです(半ギレ)
18禁にすべきだという異議申し立てがありましたが、ビデオ判定の結果、18禁にすると表現の幅が広がり安易なセックスに逃げてしまいますが、全年齢で貞操逆転することによって制限の中で工夫を凝らそうと作者が試行錯誤し、それに伴って読者が生殺しになることが判明しました。両者ともに餌を前にお預けされた状態になる、マゾヒズム的な苦痛を味わうことになるため、もうそれでいいんじゃないかと作者が考えました。なのでビデオ判定の結果、モッピーを退場処分に致します(半ギレ)
ISスーツで公衆の面前に立たされることになったとき、整列するクラスメートの最前列に並ぶ一夏は、男子校の中心でスク水を着て視姦される、元の世界の女子高生の気持ちを味わったにちがいない。
ISの実習授業でぼくたちのクラスは初めてISに触れる機会を得て、全員がISスーツを身にまとうことになり、女子はスク水にニーハイソックスを履いたような、男子はスパッツにへそ出しタンクトップのようなデザインの、デザイナーの性癖を疑うそれをぼくと一夏は嫌々着るはめになった。
一夏は恥ずかしいのだろうが、ぼくだって恥ずかしくて仕方ないのだ。男がショートパンツ履いて生足を晒す。元の世界の男子だってためらう人は多いのではないだろうか。
第一、ぼくのはデザイナーが無駄に気合を入れたオーダーメイドなのに加え、面積がボクサーパンツほどしかなくて下着と変わらない露出なので、はっきり言って殺せと誰かに懇願したくなる羞恥心がぼくを襲っているのだが、それがこの世界の『女性的立場』の一夏のものと比べて嫌悪感がどうちがうのか、確かめる術はなかった。
とにかく恥ずかしい! 周りの人たちはちらちら盗み見しないで真面目に授業を受けてくれ! 生唾飲んだり顔を赤らめたりしないでさぁ!
「あのー、みなさ~ん? 気持ちはわかりますけど、そろそろ授業に集中してくれないと織斑先生の堪忍袋の緒が切れちゃいますからねー? ……はぁぁ、私のときは男の子なんて影も形もない灰色の学園生活でしたのに、羨ましいですねぇ。生で見る天乃くんは写真より美少年だし、織斑くんは着痩せするタイプなようで目に毒ですしぃ」
「山田先生、あとで話があります」
頬に手を当てて悶える山田先生に仏頂面の織斑先生が宣告した。
普通の先生だと思っていた山田先生も陥落し、どんどん少なくなるまともな人材の存在に足元がガラガラと崩れ落ちてゆく感覚にとらわれた。
よくよく考えると教師であんなに胸元をあけて谷間を強調してセックスアピールしている人が異性に興味がないわけがないのだ。年齢的に大学生くらいのはずだから、失われた青春を取り戻そうと躍起になっている可能性もある。
学生時代を勉学や部活動に費やして遊んでこなかった人は、その分を取り返そうと社会人になってからも落ち着かない場合がままあるらしい。前の世界の父さんの談だけど。
「専用機持ちで搭乗経験のあるアタシたちだけ授業免除で自習かぁ。どうする?」
「クラス対抗戦を控えている鈴さんの調整時間にあててくれたのでしょうから、実戦形式の練習でもするのが有意義な時間の使い方では? 付き合いますわよ、クラス代表殿」
「そんなこと言って、甲龍のデータを取るのが目的なんでしょ? 受け取るのが怖いのよねえ、外交に友好が存在しない国の善意を受け取るのは」
「あらあら、残念ですわ。こちらとしては、我がクラスの代表が不甲斐ない戦いをされても困りますから、僅かながらでも助力になればと思っておりましたのに」
鈴さんとセシリアさんが挑発的な微笑みをたたえながらおっかない会話をしている横で、ぼくは所在なく傍観していた。
事前に受けた講習を受ける必要がないと織斑先生が専用機持ちを自習にし、みんなから離れた場所に隔離されたぼくたちは、持て余した暇を有効活用しようと話し合おうとしていた矢先の出来事だった。
つい先日、クラス代表の座を賭けた戦いに勝った、敗れたの関係にある二人はギクシャクした仲を隠そうともせず、ISスーツに袖を通した途端に臨戦態勢になったのだ。
ぼくしかいない状況でこれは勘弁してほしい。ストッパーになれる人いないのに。
「煽る意図抜きに、手助けなんて必要ないわよ。一番の障害だったアンタを倒しちゃったんだもの。あとは消化試合みたいなもんだし」
「そんなに余裕綽々で大丈夫ですの? 四組には日本代表候補生がいたはずです。ふんぞり返って、本番で足元を掬われても知りませんわよ?」
「大丈夫よ。その代表候補生は専用機なし、打鉄での出場が確定。打鉄を相手にした戦闘なんて何度もシミュレーションしてるわ。代表クラスならともかく、同じ候補生が相手なら負けやしないわよ」
すいません日本代表候補生の人、ぼく(と一夏)が入学した所為で専用機の開発が遅れてしまってすいません!
顔も知らない日本代表候補生に申し訳なく思い、心のなかで謝り倒しているあいだに、二人の関心がこちらに向いた。
「ま、そういうわけでこっちの心配は無用よ。調整なら一人でやるから、専用機持ちは専用機持ちで各自練習でもしましょう。あ、そういえば、天乃くんはどうしよっか? データだと搭乗経験は殆どなかったわよね?」
「ああ、わたくしたちが唯さんに教えるのもいいかもしれませんね」
素人だというのを指摘され、それにセシリアさんが乗っかって、この授業中で二人に指導を受ける羽目になった。
確かにぼくはISに乗れるだけの男子だけど、専用機が持たされることになった経緯を考えれば仕方ないんじゃないかと思うんだ。ぼくがISに乗る意義は広告塔の役目を果たすためで、ぼくの専用ISの役割は希少な男性IS操縦者の護身なのだから。
実際問題、ISでテロとか起こされたら洒落にならない被害が出るし……まあ突発な事態が発生した場合、ある程度は自分で対処できるように操縦を鍛えておくのは意味があるかもしれないが。
本来は宇宙開発の為に開発されたらしいけど、テロ活動に使うのが一番効率的なんじゃないかと思うスペックのISを起動しながら、そんなことを思った初めての実技。
余談だが、二人の指導は何を言っているかさっぱり分からなかった。感覚派と理論派に挟まれて酔っぱらったような気分になった。
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「あーっ! もう、最悪だ! ジロジロ見やがってあいつら~。誰だよこのスーツのデザイン考えたヤツ! セクハラだろ!」
授業を終え、ロッカールームに戻った一夏は荒れていた。ISスーツを床に脱ぎ捨てると怒りのあまり地団駄を踏んで当たり散らしていた。
クラスメートに視姦されたのがよほど腹に据えかねたらしい。そこまで怒ることないだろと思うが、発言自体には同意する。
ぼくも鈴さんにチラチラと何度も体を盗み見されたのだが、見かねたセシリアさんが鈴さんを注意した。その際、鈴さんはあたふたとして、「いやぁ、だって天乃くんのスーツ姿すごく似合ってるから……」と言い訳したのだ。
それにセシリアさんは、「それはそうですが……」と言葉に詰まって、ぼくを見た。そこは強く非難して欲しかった。
布面積的に、タンクトップとホットパンツが似合うと言われて嬉しい男子がいるのだろうか。
あと、女性が「胸を見てる男子の視線に気づいている」というのはよく聞く話だが、こんなの気づかないわけがない。傍から見て視線が下に行っているのはバレバレだし、顔の表情からも判然としているのだから。
「落ち着いて、一夏。こういうのに怒ってたらキリがないよ。卒業するまでの我慢だって。水泳の授業とでも思えばいいでしょ?」
「そうなんだけどさー、感情の問題なんだよ……唯はよく気にしないでいられるよな。俺より何倍も注目されるのに」
ぼくが言及すると一夏は口を尖らせながら怒りを収めた。
元・そのジロジロと異性の裸を見て鼻の下を伸ばす立場だったからです、とは言えなかった。
元の世界の男嫌いの女の子も、男子のこういうスケベなところに嫌悪感に抱くイメージが強いし、それが男子校に放り込まれたら一夏のような反応をするのも仕方ないと思う。
でもぼくらは女所帯にいるわけだし、あまり敵対になりすぎるのもどうかと思った。郷に入っては郷に従えではないが、環境に適応していかないと生き辛いだろう。
「女の子が男のカラダに興味を持つのは普通のことじゃない。ぼくたち男は、女の子のそういうところも理解して受け止めてあげなきゃダメだよ」
「……」
性欲を持て余した女の子に付き合ってあげた実体験から学習した持論を展開すると、一夏は感心したような、一目置く人物を見るような眼差しをぼくに向けた。
「? どうしたの?」
「いや、唯がモテるのも当然だな、と思って。俺が女なら唯を放って置きませんわ」
先ほどまでと打って変わって、快活で冗談っぽく笑う。……そんなこと言われても嬉しくないんだけど。
「男子校で育つとみんな唯みたいになるのか? 現代で絶滅したと言われる日本男児はここにいたんだな」
「そういう風にからかうのホントやめて、一夏……」
ぼくは背中がむず痒くなり、意地悪く笑う一夏に懇願した。
ついでに早く服を着てほしかった。これまでのやりとりの最中、ずっと一夏はフルチンだったからだ。
この光景を日本中の女性が見たがっていると思うと、ぼくは悲しくて現実から目を背けたくなるのだった。
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それから、クラス対抗戦まで一組は和気藹々とした空気のまま、親睦を深めていった。
一夏もぼくには女嫌いを公言して愚痴をこぼしながらも、表面的には上手くやっている。最初は鈴さんとだけだった交流も、クラスメートとして最低限の親交を保つ程度には行うようになった。
ぼくもまた、クラスメートには全員平等に接するよう心掛けている。下心を持って近づいてくる人が多いから、特定の誰かを優遇していると思われでもして妙な勘繰りをされでもしたら面倒なので、そこら辺のバランス感覚を養うのは骨が折れた。
布仏さんや谷本さん、相川さんといった、積極的だが仲の良いクラスメート、友人の関係からそれ以上に進むことができない人は、同じように接していればいいから楽なのだが、セシリアさん、そして箒さんは気疲れするのだ。
特に箒さんがめんどくさい。あれ以降、味を占めたのか忘れられないのか定かではないが、意味深な視線を送ってきたり、何が目的か分からないけれど、「き、昨日は何してた?」と突拍子もない世間話を振ってきたり、とにかく接触しようとすることが増えた。
ぼくのところに来ることが多くなると、必然的に隣の席で、尚且つぼくに好意的なセシリアさんの目に留まることになる。セシリアさんはぼくの騎士を自称しているから、悪い虫を追い払おうとするだろう。
ぼくの懸念は当たり、この間、こんなことが起きた。
「そ、そのだな、天乃。そ、相談があるのだが……一人で、私の部屋に来てもらえるか?」
放課後にぼくの席に来て、赤面しつつ、もじもじと話しかけてきた箒さんは、最後の部分だけ小声で耳打ちして誘ってきた。
なるべく周囲に気を使っていたのだろうが、それが聞き耳を立てていたセシリアさんの耳に入ってしまい、声を荒げて箒さんに食ってかかった。
「お待ちなさい! 聞き捨てならない言葉を耳にしたのですが、殿方を自分の部屋に招いてどうなさるおつもりで?」
「む、聞こえていたのか。どうするも何も、少し相談に乗ってもらいたいだけだが」
「わたくしには男性を誘う為の体の良い口実にしか聞こえませんが、なぜ男性を、一人だけ部屋に呼ぶ必要があるのですか? 同室の方にでもすればよいのではありませんか?」
「いや、それは、その……天乃が一番適任だったからで」
「ならわたくしが同席しても構いませんでしょう? 邪魔はしませんし、親身になって相談に乗って差し上げますから、構いませんわよね?」
図星を突かれたか、はたまた初めから後ろめたいところがあったからか、押され気味だった箒さんだったが、高圧的なセシリアさんにカチンときたらしく、みるみるうちに困り顔が険しくなっていき、遂に爆発した。
「構うに決まってるだろう! 人が下手に出ていれば言いたい放題……何なんだお前は! 天乃のナイト気取りか!」
「気取りではなく、そのつもりなのですが」
「……自分で言ってて恥ずかしくならないのか?」
「いえ、まったく」
箒さんは激昂したのだが、こっぱずかしいことを平然と宣うセシリアさんに毒気が抜かれて、すぐに気後れしてしまった。
そしてたじろいだところに、またセシリアさんが追撃の言葉を放った。
「それより、わたくしの記憶では、あなたは織斑さんに懸想していた覚えがあるのですけれど、どうして唯さんに言い寄っているですか?」
「うっ……」
再び詰め寄られることになり、痛いところを突かれた箒さんは何も言い返せず、難しい顔のまま口を噤んだ。
まさかセシリアさんもただで同級生にキャバクラを体験させてもらい、一度させてくれたのだから二回目も大丈夫だろうとお願いに来ているのだとは夢にも思うまい。
その相手がぼくで、そのような体験をする羽目になった原因が、ぼくがセシリアさんにキスした現場を箒さんに見られたであることも、想像すらしていないだろう。
これ以上箒さんを刺激すると、短慮で怒りっぽい箒さんが口を滑らす危険があったので、見かねて間に入ってその場は事なきを得た。
教室のど真ん中で何をやっているんだろう。段々とその場しのぎでやったことがぼくの首を真綿で締め上げてきている気がするが、セシリアさんが変わらず良い人なので箒さんが性欲魔人なだけかもしれない。
体育会系の性欲を甘く見ていた……冷静に考えてみると、ここは軍人学校みたいなものなので全員が体育会系だといっても過言ではないのだが。
それにしても、この世界に来てからというもの、ぼくは本当にモテるなぁ。
放課後、廊下を歩きながらそんなことを考える。容姿は変わっていないのに前の世界とはえらい違いだ。
自惚れでなければ、前の世界でもぼくはそこそこ人気があったと思う。告白されたこともあるし、容姿が良いと注目されていたことも知っていたが、人気の本質が根本的に違う気がする。
前の世界の女子は、ぼくという人間が好きだったが、この世界の女子はぼくの体が好きなのだ。
恋に恋しているのではなく、ぼくの体に恋しているのだ。憧れではなく、性欲が彼女たちを突き動かしているから、母数が多く、衝動的で稚拙な迫り方をするのだ。
男性が恋人と街を歩いていても、すれちがう美女に鼻の下を伸ばして目移りしてしまうのと同じ感覚だから、一途に思い続けていた幼馴染と再会しても、箒さんのように顔が良いコに優しくされれば容易く堕ちてしまうのである。
そしてそれに流され続けた結果が、クラス中の男子に言い寄られながらイギリス貴族の美少年をキープしつつ、友人の幼馴染に粉をかけてその気にさせておきながらやはり放置する、前の世界のぼくならクソ女認定すること間違いなしの現状なのだが、本当にどうしたらいいんだろう。
純粋に恋心を抱き、慕ってくれている――と、ぼくは勝手に思っている――セシリアさんに申し訳ない感情が湧いてくる一方で、この状況が心地よく思い始めている自分もいる。
こういうの、なんていうんだっけ。ネトゲの姫プレイ? 周りがちやほやしてくれるのって、すごく気持ちがいいものなんだね。
下心しかないと分かっていても、異性に求められるのは嬉しいものだ。ましてや、それが美少女ならなおさら。健全な男子が思春期の理性で欲望を抑えつけておくには、この状況は刺激が過剰すぎた。
有名になって、名前も顔も知らない無数の誰かに容姿を褒められ、欲望に濁った目を向けられることでぼくの眠っていた自尊心が揺り起こされた。
赤面物の恰好で異性の前に出ても、それを馬鹿にするでもなく欲情して目を離そうとしない姿に、羞恥心は次第に自信へと変わっていった。
流石に進んでアイドルの真似事をしたいとは思わないけれども、箒さんにしたような、誘惑紛いのことをして、女性が戸惑っている様子は見たい気持ちが今はある。
しかし良心の呵責が度々ぼくの心を苛む。具体的には、セシリアさんにキスしたり、箒さんを手玉に取った後に襲ってきたの後悔と元の価値観がブレーキとなって、少年的衝動に駆られるのを踏みとどめていた。
本音を言えば、これだけ可愛い女の子に好意を向けられているのだから、男らしいことの一つや二つをやってみたいとは思うのだけれども。
「わぷっ」
「おっと」
考え事をしながら歩いていたら、曲がり角で誰かとぶつかってしまった。
胸に当たった軽い衝撃に、快活そうな少女の声。視線を下に向けると、見覚えのあるツインテールが揺れていた。
「!?」
勢いがそれほどではなかったから、その人物の顔は胸に収まってしまっていたのだけれど、やがて状況を理解したらしいぶつかった彼女は、爆発の前兆のように身を竦めてから、猫のように後ろに飛び上がって距離をとった。
「わああああああっ! ち、ちがッ! ああ、あ、天乃くんこれはちがうの! ほんと事故! 前をよく見てなかった不慮の事故で、決してわざとじゃ!」
相手は鈴さんだった。ぼくの胸に顔を埋めた鈴さんは、顔を真っ赤にして慌てふためきながら身の潔白を訴えてきた。
ぼくはその慌てようと男の胸に触れて謝る姿がおかしくて、思わず吹き出してしまった。
「そんなに慌てなくても、分かってますよ。わざとじゃないことくらい」
「へ……? お、怒んないの……?」
くすくすと笑いながら言うと、鈴さんはおずおずと様子を窺うようにして尋ねてきた。
「怒ってほしいんですか?」
「ううん、そういうのじゃないけど! これが一夏だったらゴミを見るような目であたしを見てたから、ちょっと意外で」
慌てふためいて弁明する鈴さんのセリフには、経験談の一夏の反応が入っていて、実際にやらかしては冷たい反応が返ってきたのだろうなと、想像するだけで面白い場面が浮かんできた。
まあ、反応が冷たいのは、一夏の友人の妹と組んで着替えを覗こうとしたり、思春期の抑えがきかない欲望に忠実なのが原因だとは思うけれども。
「一夏が好きだからといって、あまりエッチなことをするのは感心しませんよ?」
「してないしてない! 天乃くん、一夏の言うことを間に受けないでよ。あたし、そんなにエッチじゃないから」
「本当ですか? 一夏の着替えを覗いたり、大量のエロ本を隠し持ってるって聞きましたけど」
「ち、ちがうの! それは蘭が唆してきたからで、あたしはダメだって言ったのよ!? でも蘭がどうしてもって言うからあたしも渋々協力しなきゃいけなくなっただけなの!」
追求すると鈴さんはますますあわくって否定し始めた。ぼくはその慌てようがおかしくて笑いをこらえるのに必死だった。
その言動に、少女でありながら少年的なものを感じて、性に目覚めたばかりの男の子と話している気分になった。
明らかにそのコが好きなのに、好きなんでしょうと言及されると「あんなやつ好きじゃねえよ」と突っぱねてしまう男子小学生のような未熟さと、性に興味津々な男子中学生の好奇心旺盛ぶりがミックスされているような感じ。
高校一年生なのだが、背丈の低さや容貌のあどけなさから年下を相手にしている感覚がある。一夏もそんな感じなんだろう。ぼくから見ても箒さんやセシリアさんとはちょっとちがう。
「蘭というのは、一夏の友人の妹さんでしたよね。その人も一夏のことが好きなんですか?」
「え、えー、いやぁ、うん。そうだったと思うけど……どうなのかしら。あたしたちの年頃って、ほら、身近に優しくて、美形のお兄さんがいたら無条件で憧れちゃうものだし、恋愛と性欲の区別がついてないだけよ、きっと」
「その理屈だと、鈴さんもエッチで綺麗なお兄さんに迫られたら、誰にでも好きになってしまうことになりますけれど……」
「え”っ!?」
「鈴さんって節操ないんですね……」
「ちょっと待って、何でその話蒸し返すの!? 天乃くん、女の子なら仕方ないって言ってくれたじゃない!」
勝手に墓穴を掘って、そこを突かれるたびに半泣きで弁明する鈴さんは、容姿も相まって可愛かった。
そうか、これが童貞をからかう余裕たっぷりなお姉さんの気持ちなのか。なるほど、確かに、これは良いものだ。翻弄する立場のアドバンテージがあると、余裕をもって接することができるから、楽しむ要素が増えていくんだね。
ぼくはこの上なく柔らかい声で言った。
「ごめんなさい、慌てる鈴さんがかわいくて」
「へ……? か、かわッ!?」
涙目から今度は顔が赤くなった。百面相みたいだ。純粋無垢な少年を誑しこむ悪女の気分になったぼくは、悪意を容姿の皮で隙間なく包み込んだ、異性ウケを意識した微笑を鈴さんに送った。
「立ち話もなんですから、どこか落ち着ける場所でお話しませんか?」
安西先生……(鈴ちゃんに)セクハラがしたいです……