ハイスクール・フリート 旭日のマーメイド   作:破壊神クルル

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半舷上陸 パート2

 

半舷上陸にて、再びオーシャンモール四国沖店へとやってきた葉月。

天照のクラスメイト達も久しぶりの休暇に羽目を外さないか心配でクラスメイト達の様子を見回ろうとした時、葉月は楓と出会った。

楓はこうしたショッピングモールを巡る事には慣れていなかった様で、葉月と同行する事になった。

楓と共にショッピングモール内を見回ろうとした時、葉月と楓は青木と美海、マチコの三人に捕まって服屋を巡り、着せ替え人形化させられたが、マチコの機転で、脱出に成功。

改めて見回ろうとした時、別のクラスメイトから声をかけられた。

 

「あっ、万里小路さんと先任」

 

葉月が振り向くと、其処には

 

「ああ、杵﨑さんか‥‥」

 

葉月の視線の先には先程、自分らの事を呼んだ杵﨑姉と山下、鶫の三人の姿があった。

 

(あまり見ない組み合わせだな)

 

普段一緒に行動を共にする様な組み合わせでない事に意外性を感じつつも、

 

(まぁ、自分も万里小路さんとは普段行動を共にしていないから、自分らも同じ様なモノか‥‥)

 

と、限られた人数の中で出来た特殊な組み合わせなのだろうと納得する葉月。

 

「炊事委員は私だけなので、航海科の二人に混ぜてもらったんですよ。先任と万里小路さんは?」

 

杵﨑姉がこの二人と行動を共にしている理由を話す。

確かに彼女の言う通り、炊事委員の残り二人はもえかと同じ組であり、葉月の組では、杵﨑姉一人だ。

恐らく、楓と同じように一人で回るはつまらないと思っていた中、たまたま近くを山下と鶫が通りかかり、パーティーメンバーに入れてもらったのだろう。

 

「こちらも似たようなモノだよ。エントランスで偶然、会って一緒に回ろうってことになったんだ」

 

「一人と言うのも心細く思っていましたので、先任のお供をさせていただくことにした次第です。おかげさまで楽しいひと時を過ごさせていただいておりますわ」

 

にっこりと微笑みながら言う楓に葉月は照れくさいモノを感じる。

 

「いや、さっきまで、等松さんたちと一緒に居て、服屋を巡り歩いていたんだ。自分、そう言うのあまり、詳しくなくて‥だから、楽しかったのはきっと等松さんのおかげだと思う」

 

どうにも慣れていない時代背景に女性を上手くエスコートできたか自信がなかったので、楓を満足させることが出来ているのかちょっと不安なのだ。

 

「‥‥先任、どうしたの?」

 

「えっ!?あっ、いや、なんでもない」

 

山下に覗き込まれて慌てて顔を背ける。

 

「んんん~?」

 

山下はちょっと不審がっている。

 

「そんなことより先任、折角ですし、お昼ご飯一緒に食べません?私達、ちょうど美味しそうな店がないか探していた所なんですよ」

 

鶫が葉月と楓を昼食に誘う。

 

「もう、そんな時間か‥‥」

 

青木と美海らに付き会っていた時、かなりの時間が経っていた様だ。

 

「確かにもう正午だし、どうだろう?万里小路さん」

 

「はい、勿論私は先任のお供をさせていただきます」

 

「それじゃあ、行こ行こ!先任と万里小路さんはなに食べたいですか?」

 

「おおっ、そういえばお腹すいた~」

 

鶫がはしゃいだ様子で言うと山下も空腹を覚えたようでお腹をさすった。

そして、葉月達は空腹を満たす為、昼食を摂る店を探し始めた。

ショッピングモール内には飲食店が数多く存在し、ざっとみても和食、洋食、中華、イタリアン、カレー、うどん・そば、ラーメン等の麺類、ありとあらゆる飲食店が並んでいた。

どのお店の食べ物も美味しそうなのだが、コレだと言う決め手がない。

 

「誰か、これが食べたいって言うモノはある?」

 

葉月がクラスメイト達に沢山あるメニューのカテゴリーの中から何が食べたいかを尋ねる。

 

「むしろ、あれもこれも食べたい」

 

「‥‥」

 

山下の答えに戸惑う葉月。

流石にこの辺の飲食店全てを食べ歩きするのは無理がある。

だが、山下の答えに鶫は何か閃いた様で、

 

「あっ、それだよ、しゅうちゃん。そうしよう」

 

「ん?どれ?」

 

鶫の言葉の意味が分からないのか首を傾げる山下。

 

「なになに?八木さんどうするの?」

 

杵﨑姉も鶫の言葉の意味が気になる様子。

 

「空いているテーブルを確保した後、それぞれが食べたいものを持ち寄るのはどう?」

 

「ふむ、なるほど」

 

「いいかも!!それ!!」

 

「でしょう?」

 

「じゃあ、早速テーブルを確保!!」

 

「おー!!」

 

そう言って鶫と山下がフードコートにあるテーブルを確保しに行く。

そんな中、

 

「外で買って、外で食べる‥‥」

 

楓がポツリとつぶやく。

 

「ん?どうしたの?万里小路さん」

 

葉月が楓に尋ねる。

お嬢様の楓はもしかした、この様な食べ方は嫌いなのかもしれないと思ったが、意外な返事が返って来た。

 

「私、これまでそのような食べ方をしたことがございませんでしたので、大変興味深いです!!どのようにすればよいのか、是非ご教授下さいませ!!」

 

と、楓は目を輝かせていた。

 

その後、テーブルにはそれぞれが購入した食べ物が並べられた。

定番の焼きそば、フランクフルト、鶏の唐揚げ、たこ焼きにイカ焼きが並べられたのだが、中には‥‥

 

「これは‥‥なに?オムレツ?」

 

「あっ、それは、バインセオって言うベトナム風お好み焼きだよ」

 

と、杵﨑姉は自分が買ってきた料理を説明する。

さすが、炊事委員。一風変わったものを選んでくる。

 

「あれ?これはたい焼き?」

 

テーブルの上にはたい焼きが置いてあった。

 

「あーこれはね、ベーコンエッグたい焼きなんだって、外見はたい焼きだけど、中身はベーコンエッグなんだよ」

 

鶫も変わったモノをチョイスする。

山下はイルカのゆるキャラを模した人形焼きを買ってきたのだが、

 

「このキャラ、私的には微妙に怖いんだよね、なんか目が虚ろで何考えているのか分からなくて」

 

杵﨑姉がいきなりダメ出しをする。

 

「あっ、わかる。なんかえっちな事を考えていそう」

 

鶫も杵﨑姉と似たような意見を言う。

 

「いやいや、その気持ち悪さがいいんでしょう」

 

山下はそのキャラの気持ち悪さで買ってきた様だ。

 

(かわいいから買って来たんじゃないの!?)

 

鶫、杵﨑姉、山下の意見に思わず心の中でツッコム。

 

「いずれにしろ、食べてしまうのは少々かわいそうな気がいたしますね」

 

楓が微笑みながら、人形焼きを見る。

 

「人形焼きだし、食後のデザートにでもしようか?」

 

「大丈夫!!まかせて!!こっちも買ってきたらか」

 

と自信満々な様子で山下が出したのは、カラフルなトッピングがされた物体だった。

 

「何コレ?」

 

「チョコバナナ」

 

「えっ?これ、昼食?」

 

「いやぁ同じモノを買うよりもいいかなって。先任はなんか変わったモノとか買ってきていないの?」

 

「駅弁祭りがやっていたから、幾つか買ってきた」

 

葉月は駅弁を幾つか買ってきた。

定番の峠の釜めし、牛たん弁当、イクラとウニの海鮮弁当など‥‥

 

「万里小路さんは何を買ってきたんですか?」

 

杵﨑姉が楓に狩って来たモノを尋ねる。

 

「はい、此方が神戸牛の串焼き、そしてこちらが毛蟹汁でございます」

 

((((一番高いヤツだ!!))))

 

楓を除く、皆のメンバーの目がくわっと開く。

 

どちらも目立つ位置にあったのだが、値段の高さ方皆は真っ先に除外した商品であった。

 

「こうしていても冷めてしまいます。これらをみなさんで分け合って食べるのですよね?とても楽しみです。さあ、みなさん、いただきましょう」

 

楓はマイペースを保ち、皆に食べようと言う。

 

「それもそうだね。では、いただきます」

 

「「「「「いただきます」」」」

 

手を合わせていただきますをして、皆は昼食を食べ始める。

すると、杵﨑姉が早速動き出す。

 

「じゃ、じゃあ万里小路さん、私のバインセオあげるから、ぎゅ、牛串を少し‥‥」

 

「なるほど、物々交換の様にするのですね、承りました。それではこちらをどうぞ」

 

楓は杵﨑姉に牛串を少し分けて、

 

「では、私はこちらをいただきますね」

 

「はい、どうぞ‥‥ウフフ、神戸牛の串焼き♡~」

 

神戸牛の串焼きを手に入れてホクホクの笑顔の杵﨑姉。

そんな杵﨑姉に鶫がボソッと耳打ちする。

 

「‥‥ほっちゃん、バインセオって意外と安くなかった?」

 

「値段の事は置いておこうよ。美味しいから大丈夫だよ」

 

「もぐもぐもぐ‥‥大変、美味しゅうございました。中身はもやしなのですね、はじめて食べました」

 

楓は本当に嬉しそうに微笑みながら杵﨑姉をフォローする。

確かにこういう時に交換先の値段を気にするのは野暮と言うモノだ。

値段よりも食べたモノの味やこうした仲間たちの交流を楽しむ事の方が重要だろう。

食事が終わり、デザートで山下が買った人形焼きとチョコバナナを食べている時、

 

((((なんか、エロい‥‥))))

 

チョコバナナを食べている楓に思わず、皆はそんな印象を受けた。

楓本人は、その事を気にせずチョコバナナを食べていた。

 

「それじゃあ、私たちは行きますので」

 

「うん。あんまり羽目を外し過ぎないようにね」

 

『はーい!!』

 

昼食が終わり、葉月は楓と共に鶫達を見送った。

食事後も一緒に回らないかと誘われたのだが、三人はこの後服屋を見る予定だと言うので、慎んで辞退した。

服屋で青木達と鉢合わせをする可能性が高いので‥‥

 

「ふぅ~お腹一杯に食べたけど、ちょっと疲れたかな」

 

「ふふふ、私もです。このような食事の仕方もあるのですね。とても楽しいひと時を過ごせました」

 

「それは良かった。さて、次は何処に行こうか?」

 

「私は先任のお供をさせてもらいます」

 

「うーん‥‥」

 

葉月はショッピングモールのパンフレットを見ながらこの後、何処へ行こうか行先を決めかねていると、

 

「よぉ、其処に居るのは先任と万里小路さんじゃねぇか」

 

「ん?」

 

「あら?」

 

葉月と楓が振り返ると、其処には機関長の麻侖の他に伊勢と広田の機関科のメンバーが居た。

機関科も葉月ともえか同様、機関長と機関長助手に分かれていた。

 

「先任、万里小路さん、此処であったのも何かの縁だし、マロン達と一緒に回らねぇか?」

 

と、麻侖が誘いをかけてきた。

 

「ん?一緒に?」

 

「おう?ん?もしかして、もう何処か行く当てがあるのか?」

 

「いや、これから万里小路さんとどこに行こうか話していた所」

 

「なら、ちょうどいい。ちぃっとばっかしマロン達に付き合いな!!」

 

今日はこんなパターンばかりなのだろうか?

葉月と楓は、今度は麻侖達に付き合う事になった。

 

今度はどんな店につき合わされるのかと思いきや、麻侖達が来たのは広大な入浴施設だった。

 

「‥‥」

 

「まっ、裸になって腹割ってはなそうじゃねぇか、交流も含めて」

 

と、麻侖は皆で風呂に入ろうと言う。

しかし、葉月は、

 

「そ、それじゃあ、万里小路さんは機関長達と一緒に入っておいで、自分は此処で待っているから」

 

と、皆と風呂に入る事を拒否する。

葉月は、身体は女でも心は男なので、年頃の女子の裸を見るのはどうしもて恥ずかしいのだ。

故に葉月は天照でも、時間をずらしたりしてクラスメイト達と鉢合わせしない様に入浴している。

その行為が一部のクラスメイト達に本当は女ではなく男なのではないかと言う疑惑を抱かせた。

麻侖は別にそんな事を気にしてはいないが、伊勢と広田はやはり気になる様子で、麻侖の提案に心の中で、

 

(機関長、グッジョブ)

 

と賛辞を送っていた。

 

「何言ってんだ、先任。先任も一緒に入んだよ!!」

 

麻侖は葉月の手を引いて銭湯に入ろうとする。

 

「い、いやいや、自分は大丈夫。クラスメイトと親睦を深めるなら、自分は邪魔だし‥‥」

 

「えぇ~先任も一緒に入りましょうよ」

 

広田も葉月の性別が気になるので、何としてでも葉月を風呂に入れたいと思い、麻侖同様、葉月の手を引く。

葉月はアイコンタクトで楓にフォローを頼むが、それは楓には通じなく葉月は麻侖と広田の手によって銭湯の中に引きずり込まれて行った。

 

「うぅ~‥‥何でこんな事に‥‥」

 

葉月は辺りをチラッと見まわしていると、近くに居る伊勢が服を脱いでおり、そのボリュームのある胸に思わず赤面する。

 

「//////」

 

「先任、サクラちゃんのおっぱいすごいよね~なんと特盛のEカップ!!機関科の誇るエースだよね」

 

「なんのエースよ、それ」

 

広田の軽口に伊勢も笑って応える。

 

「むぅ~」

 

小さな唸り声が聞こえて来たと思ったら、麻侖が自分の胸を抑えながら伊勢を睨んでいた。

葉月が視線を逸らすと、其処には楓が視界に入る。

楓はまだ着替えておらず、何だか困惑している様子。

 

「万里小路さん。どうかした?」

 

「女性同士とは言え、見知らぬ人達の前で肌を晒す事など考えておりませんでした。‥‥でも、大丈夫でございます。私も天照の乗員の一人として皆様と湯船を共にして参りました。ここでもそれと同じようにするだけでございます」

 

楓は少し硬い表情ながらも服を脱ぎ始めた。

 

(そうか、万里小路さんもこうして一つ一つハードルを乗り越えているんだ‥‥)

 

楓の姿勢を見て、葉月もいい加減自分も変わらなければならないと感じだ。

 

「あ、あの‥‥先任。その‥‥女性同士とはいえ、そこまで熱心に服を脱ぐところを見られては恥ずかしいです」

 

「し、失礼そんなつもりは‥‥」

 

「なんでぃ、先任はそっちの気がでもあるのかい?」

 

「いや、違うから」

 

麻侖に同性愛者と間違われそうになり、速攻で否定する。

最も真霜はそうなりつつあるような気がするが‥‥

兎も角、楓も腹を括って銭湯に入る気になったので、葉月も腹を括って銭湯に入る事にした。

ただ、葉月は、ブラはつけていても下着は未だに女物ではなく、男物を愛用しているので、他の皆に気づかれない様に重ね脱ぎをして素早くロッカーの中に服を入れた。

そして、バスタオルで身体を覆う。

皆は入浴準備が完了し、浴室へと入る。

浴室は普通の浴槽もあれば、ジャグジーや打たせ湯、足湯、寝湯、電気風呂、薬湯、サウナもあった。

どれも心身の疲れを癒すには効果が高そうなものばかりだ。

葉月が浴室内を見渡していると、広田と伊勢が居り、彼女達からは耳を疑う様な会話が入って来た。

 

「先任はやっぱり女の人だったね」

 

「噂なんてアテにならないね~でも、意外だったのが、お相手が万里小路さんとはね」

 

「ねぇ~私はてっきり艦長が相手だと思っていた」

 

「私も~だって先任、艦長と一緒に居る事が多かったしね~」

 

「は?」

 

葉月は思わず口をポカンとあけて呆然とする。

自分はもしかして天照の中では同性愛者と思われているのだろうか?

いや、確かにこれまで同性の真霜とは関係をもったが‥‥

呆然とする葉月に広田はニヤリと笑みを浮かべてビシッと指を差し向けて来た。

 

「先任は何時の間に万里小路さんとそう言う仲になっていたの?」

 

「ちょっと待て、万里小路さんとは、別にそんな特別な関係ではない!!大体艦長とだってそんな関係ではない!!」

 

「でも、一緒に居る時間が結構多いですよね?」

 

「それはあくまでも職務上でだ!!そういう君達だって機関長や、他の機関科の人と一緒に居る時間が多いじゃないか」

 

「そりゃあ‥‥」

 

「私達、同じ科の仲間でもあり、小、中からの友人ですから」

 

「自分もそれと同じ様なモノだ」

 

「えぇ~でも、さっき、二人で見つめ合っていたし」

 

「見つめ合っていない!!」

 

「じゃあ、やっぱり艦長が本命?」

 

「だから、なんでそうなる!?」

 

「ハッキリしないのはイイ女とは言えないわよ」

 

「ハッキリも何も自分は誰とも付き合っていないから」

 

これ以上は水掛け論になるので、そう言って葉月は逃げるように浴槽へと入って行った。

でも、広田や伊勢はそんな葉月をニヤニヤしながら見ていた。

 

「はぁ~いいお湯だった‥‥」

 

「本当に色んなお風呂があって大変楽しゅうございました」

 

銭湯から出た葉月達はゲームセンターのゾーンへと辿り着いた。

そこで、葉月と楓は其処でも見知った一団と出会った。

 

「おお、おぬしたち、休暇を楽しんでおるか?」

 

「おお、ミーナちゃんじゃねぇか、そっちも楽しんでいるかい?」

 

麻侖がミーナの問いに応じる。

ミーナと一緒に居るのは幸子と小笠原、武田の計四人。

 

「おうともよ、機関長。おお、先任もおっかた、つれないのぉ」

 

「えっ?どういう事?」

 

葉月はミーナの言葉の意味が分からなく、首を傾げる。

 

「どうもこうも、わしとココとおぬしの三人で一緒に回ろうと思っていたんじゃが、声をかける前に居なくなっておってな、それでしばらく探していたんじゃが‥‥なぁ、ココ」

 

「まぁ、いいじゃないですか。先任もいろいろと楽しんできたみたいですし」

 

「い、いや‥その‥‥」

 

自分と一緒に回りたかったと言うミーナの気持ちを汲んでやれなくて、ミーナにすまないと言う気持ちだった。

 

「良くない!!わしはまだ、先任と楽しんでいないんじゃ!!」

 

ビシッと葉月に人差し指を突きつけるミーナ。

葉月がリアクションに戸惑っていると、葉月の右腕にするっと絡んで来る腕があった。

 

「というわけで、先任も一緒に遊びましょう」

 

「えっ?ちょっ、小笠原さん!?」

 

「万里小路さんも行くよね?」

 

楓の方には武田がとりついていた。

 

「先任がいらっしゃるのでしたら、お供させていただきます」

 

「せっかくですから機関科組も行きませんか?ここ、結構ゲームの種類は結構そろっているみたいなんですよ」

 

幸子が機関科の皆も一緒に来ないかと誘う。

 

「おう、そういうことなら大勢で楽しんだ方が良いに決まってらぁ!!サクラちゃん、ソラちゃん!!それでいいかい?」

 

「ええ、いいわよ」

 

「おっけ」

 

伊勢と広田もあっさり頷き、皆でゲームセンターゾーンへと行く事になった。

幸子の言う通り、ここのゲームセンターゾーンには様々な種類のゲームがあり、中にはスカッシュテニスのコートさえ完備されていた。

 

「‥‥」

 

MissionComplete

 

ゲーム画面にはステージクリアを明記する文字が表示された。

葉月はシューティングゲームをやり、一度のプレイで全クリをした。

 

「おおお、やるのぉ、先任、どれ次はわしの番じゃ!!」

 

ミーナとタッチして機器から少し離れ、ミーナのプレイを見学する。

 

「さすが、先任。なかなかやりますね」

 

「ありがとう、納沙さん。あれ?他の皆は?」

 

「小笠原さんと武田さんはクレーンゲームの方へ行きました。立石さんと西崎さんにお土産を持って帰りたいそうです」

 

「万里小路さんは?」

 

「私なら、此処に居ります」

 

いつの間にか葉月の背後には楓が微笑んで佇んでいた。

 

「実は先程まで榊原さんと太鼓のゲームで勝負しておりました」

 

「へぇ~その勝負は是非見て見たかったです。それでどちらが勝ったんですか?」

 

幸子が興味深そうに楓に尋ねる。

 

「多分、万里小路さんが勝ったんじゃないかな?」

 

「まぁ、御明察でございます。でも、どうしてお分かりに?」

 

「なんとなくだけど、万里小路さんの笑みに誇らしげなものを感じたからかな?」

 

「それはそれはお恥ずかしいところをお目にかけました」

 

楓は恥ずかしそうに目を伏せる。

楽しい時間と言うものはあっという間に過ぎるモノで、艦へ帰る時間となった。

帰りの内火艇の中で、

 

「ありがとう」

 

葉月は楓に礼を言った。

 

「どうかなさいましたか?」

 

「いや、万里小路さんのおかげで良い休日を過ごせたよ」

 

「いえ、それはこちらの言葉でございます。先任のおかげで私も大変楽しい休暇を過ごす事が出来ました」

 

楓は今日一番の微笑みを見せた。

 

 

その日の夜‥‥

 

「ええぇー!!お姉ちゃ‥‥じゃなくって、先任と一緒にお風呂に入った!?」

 

天照の食堂で麻侖が今日の休暇の事をもえかに話すともえかは思わず声を上げる。

 

「おう」

 

「なんで、なんで、私はその場に居なかったの!?」

 

「いや、艦長は明日休暇で行けるからいいじゃねぇか」

 

「先任がいないんじゃ意味がないよ!!」

 

「おいおい、艦長正気に戻れよ。って言うか、なんでそんなに怒っているんだよ?」

 

「私だってまだ先任と一緒にお風呂入ったことないのに!!」

 

「んーダメだなこりゃ」

 

麻侖は今日の休暇の事をもえかに話したことを深く後悔した。


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