ハイスクール・フリート 旭日のマーメイド   作:破壊神クルル

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32話 決着

此処で場面は天照からシュペーへと移る。

突如、電子機器が使用不能となり、更に乗員であるクラスメイト達が暴徒化したと言う報告に次いで、

 

「艦長、第一主砲が旋回しています!!」

 

シュペーの主砲が動き出したと言う報告が艦長のテアの下に入る。

 

「なに!?」

 

テアが艦橋の前面の窓から見下ろすと、確かにシュペーの第一砲塔が旋回し、何かを狙ったと思ったら、いきなり発砲した。

しかも訓練弾ではなく実弾を撃った。

 

「射撃指揮所!!何故撃った!!現状を報告しろ!!」

 

「‥‥」

 

テアは艦長である自分の許可なく発砲した砲術委員に事情を聴く為、伝声管で射撃指揮所へと声を上げるが、射撃指揮所からは何の応答も無い。

 

「くっ」

 

テアは応答の無い射撃指揮所からの対応に思わず苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「発砲目標は何だ?」

 

テアは見張り員にシュペーは何に向かって発砲したのかを尋ねる。

万が一、民間船を撃って撃沈なんてしたら、外交問題に発展しかねない。

そうなれば、いくらシュペーの艦長と言えども学生の身分である自分では責任をとりきれない。

双眼鏡で水平線の彼方を見張る見張り員からは、

 

「超弩級の戦艦です!!恐らく日本の大和クラスと思われます!!」

 

「大和?」

 

「これです」

 

見張り員は艦橋にあった戦艦の図鑑を引っ張り出し、テアに大和級戦艦の図を見せる。

 

(なんか、形状が少し異なる気がするが‥‥)

 

図鑑の絵と眼前にいる大和級らしき戦艦が本当に大和級なのかと疑問に思ったテアだった。

その間にもシュペーは大和級と思しき戦艦の追撃に入る。

この事から、射撃機能だけでは無く、操艦機能も既に働いていない事を思い知らされるテア達艦橋メンバー。

射撃指揮所同様、勝手な操艦をし始めた操舵室にも直ちに停船する様に伝えるが、返答は無く、追撃も止まらない。

すると、目の前の大和級はジグザグ航行をしながら、沢山の煙を出し、その煙幕の中に紛れ込み、シュペーを撒こうとし始めた。

すると、シュペーも逃がさないとばかりに速度を上げる。

艦内が突如、起きた暴動で射撃機能と操艦機能が奪われた中、この艦橋もじきに暴徒化したクラスメイト達に占拠されるのも時間の問題だ。

そこで、テアは先程艦橋を出た副長のミーナの無事を信じて艦内に放送を流した。

 

「副長!!無事なら聞いてくれ!!艦内は今、謎の暴動が起きて、次々と要所は占拠されている!!このままでは、艦橋が占拠されるのも時間の問題だ。副長は急ぎ艦を離れ、救援を連れて来てくれ!!」

 

テアはミーナに離艦し、救助を連れてくるよう命じた。

無線は原因不明の動作不良で使えない。

誰かが、艦を離れて直接救援を呼ぶしか手はなかったのだ。

そこで、テアは親友であるミーナにその役を任せた。

艦内で暴徒から逃げていたミーナはその放送を聞き、

 

「艦長‥‥」

 

一時とは言え、艦と親友を見捨てて艦から降りる事にためらいを覚えるが、

 

「副長、行ってください!!」

 

「此処は私達が時間を稼ぎますから!!」

 

ミーナと行動を共にしていたクラスメイト達が、ミーナが離艦する間は自分達が暴徒化しているクラスメイト達を相手にして時間を稼ぐので、救援を呼んできてくれと言う。

 

「お前達‥‥すまぬ!!」

 

ミーナは後髪を引かれる思いで、小型艇収納庫へと向かった。

そして、小型艇でシュペーを脱出したミーナは離れていくシュペーを見て、

 

(逃げるんじゃない‥‥ワシは逃げるんじゃないぞ! 必ず帰ってくるからな‥‥テア‥‥みんな‥‥)

 

必ず救援を連れて戻って来ると言う決意の元、小型艇を操船し続けた。

そんな中、艦橋に居たテアも無事に脱出するミーナの姿を見て、安堵しつつ自らが被る艦長帽を脱ぎ、ウィングに立つと、

 

「副長!!預かっておいてくれ!!」

 

ミーナに向かって艦長帽を投げる。

テアから託された艦長帽をキャッチしたミーナは一路、目の前の大和級らしき戦艦へ救援を求めに向かった。

しかし、暴徒と化したクラスメイト達はそんなミーナの乗った小型艇に副砲弾を撃ち込んできた。

 

「うっ‥‥くっ‥‥」

 

副砲弾をジグザグで躱しながら、目の前の大和級らしき戦艦へ救援依頼を伝えに向かうミーナ。

そんなミーナの姿は彼女が目指す大和級らしき戦艦、天照からも確認できた。

 

「アドミラル・シュペーから小型艇が向かってきます!」

 

ミーナはあともう少しと言う所まで来たのだが、至近距離で副砲弾が着弾し、それによって発生した大きな水柱に小型艇が転覆し、乗っていたミーナも海に投げだされたが、親友から託された艦長帽だけは決して手放すことはなかった。

 

「小型艇の乗員が海に落ちました!」

 

マチコからの報告に艦橋メンバーは戸惑う。

 

「味方を攻撃した?」

 

「なんで?」

 

すると、

 

「『わたしは艦長の指示に従えません!天照を攻撃するなんてあまりにも無謀です!!自殺行為です!!』『なんだとー艦長に逆らう気か!?』」

 

幸子の恒例(?)の妄想と言う一人芝居が始まった。

 

「『ええ~い!こんな船脱出してやる~』」

 

「全部妄想じゃん」

 

西崎が呆れながら、幸子の一人芝居を見る。

 

「私にとってはノンフィクションよりフィクションが真実です!」

 

幸子が得意気に言い放つ。

 

(それって現実逃避していないか?でも、今回は納沙さんの妄想は兎も角、それに近い事がシュペーで起きたのかもしれない‥‥ならば‥‥)

 

「艦長」

 

「なんでしょう?先任」

 

「溺者の救助を具申します」

 

「えっ?」

 

「まさか…何で敵なのに助けるの!?」

 

「うぃ」

 

「そ、それよりも早く逃げようよぉ~」

 

西崎や立石、鈴は救助よりも今は一刻も早くこの海域からの離脱を求める。

 

「シュペーがいきなり発砲してきた事、そしてそのシュペーからの脱出者、その脱出者をも撃つシュペー‥‥納沙さんの妄想ではありませんがシュペーの艦内で何かが起きたのは明白です。そしてそれを知るのはあの溺者だけです。それに‥‥」

 

「それに?」

 

「それに、海上での救助は全ての船舶における当然の義務なのではないのでしょうか?海の仲間は家族なのですから‥‥」

 

葉月はあの夜に出会った偽もえかの言葉が言った言葉をもえかに話した。

 

「‥‥」

 

(海の仲間は家族)

 

それはかつてもえかが親友の明乃に言った言葉であり、ブルーマーメイドだった母からの言葉でもあった。

また、葉月の方も前世において、大西洋で独軍相手に戦っている中、上官である大石は撃沈した独逸艦、撃ちおとした独逸機の乗員への救助は必ず行っていた。

敵でも戦う力を失った者には助けの手を差し伸べる。

それが日本海軍流の武士道でもあり、シーマンシップでもあったのだ。

 

「‥先任‥‥そうだね‥‥保健委員の美波さんに連絡!!あと本艦を囮とし、独逸艦を引き付けて救助隊の援護を行う」

 

「近づくの?怖いよ~」

 

発砲するシュペーに接近すると言う事で、怖がる鈴。

 

「こっちも戦艦なんだから、一発や二発喰らっても沈みはしないから大丈夫だ」

 

葉月が鈴に天照の防御力を信じろと言うが、

 

「で、でもやっぱり怖いよ~」

 

「じゃあ、わかりました」

 

天照の方が、防御力が高いのだが、一方に撃ってくる相手に対し、近づくのは怖いと言ってなかなか舵を切らない鈴に幸子が彼女の目を手で押さえた。

 

「何するの?」

 

「近づいてください」

 

「見えないよ~暗いよ~」

 

目隠しされて砲弾を撃ってくるシュペーが見えなくなったことで舵を切る鈴。

それでも今度は見えない恐怖が彼女を襲うみたいで体は震えていた。

そんな中、葉月はもえかに救助隊の指揮を自らが執る事を言いだした。

葉月がもえかにそう言ったのは、本来艦長であれば、艦を離れる訳にはいかないが、今の葉月の立ち位置は先任(副長)、つまり艦を離れてもそこまで大事では無い。

それに今海上では発砲し続けるシュペーが居る。

学生をそんな戦場じみた場所へ送り込み、自分は安全な場所でのうのうとしている事が葉月には我慢ならなかった。

 

「‥わかりました。先任、頼みましたよ‥でも、必ず帰って来てくださいね」

 

「了解しました。では、艦長‥後を頼みます」

 

もえかに天照を託し、葉月は小型艇にて、溺者救助へと向かった。

シュペーは当然、葉月の乗った小型艇に向かって砲撃をしてくるが、

 

「先任を援護します。天照をもっとシュペーに近づけて!!牽制射撃開始!!」

 

天照はその巨体を囮とし、シュペーの関心を葉月から天照の方へと寄せ、副砲と高射砲をシュペーに向けて撃つ。

勿論わざと外す様に撃った。

もえかのその読みは当たり、シュペーはちっぽけな小型艇よりも大物で、自身に発砲してくる天照の方へ砲撃を加える。

天照が囮を務めている間に葉月は溺者を小型艇に乗せる。

溺者は心肺停止状態だったため、葉月は気道を確保した後、人工呼吸を行った。

外人の女子高生へ人工呼吸とは言え、胸を触ったり、キスをするのは恥ずかしいが、今はそんな事を言っている余裕も無く、葉月は無我夢中で人工呼吸を繰り返し、溺者は息を吹き返した。

 

一方、天照とシュペーとの戦いも終盤となる。

 

「通信マスト被弾!!」

 

「右舷後部被弾!!」

 

シュペーに接近をしたため、後部に被弾するももえかはそのまま水中弾が装填された主砲を討つタイミングを見計らい、

 

「第三主砲撃ち方始め!!」

 

「てーっ!」

 

シュペーが天照の軸線に乗り、もえかが発射命令を出し、第三主砲の砲身一つに装填されていた水中弾が放たれ、水中弾は海中を進みながら、シュペーの艦底を目指して突き進み、やがて、左舷のスクリューを撃ち抜いた。

まさに肉を切らせて骨を切る様だった。

片舷の推進機を失ったシュペーは急激に速度を落した。

 

「目標に命中!シュペー速力落ちています!」

 

マチコからの報告で艦橋、機関室をはじめとして彼方此方で歓喜の声が上がる。

 

「針路変更!取舵いっぱい!」

 

「取舵いっぱい!」

 

シュペーから離れる命令が出されると、鈴は嬉々として舵を切る。

そんな鈴に幸子は、

 

「逃げる時はてきぱきしていますね‥‥」

 

と、呟いた。

やはて、溺者を救助してきた葉月が天照へと戻り、溺者を上甲板で待っていた保健員の鏑木美波(かぶらぎみなみ)らに引き渡す。

 

「うぅ~重いッス‥‥」

 

「よいしょ、よいしょ‥‥」

 

救助した溺者を担架に乗せ、青木と和住が愚痴を零しながら医務室へと運んで行く。

 

「それじゃあ、鏑木さん後をお願いします」

 

「うむ」

 

美波も頷いた後、医務室へと向かった。

葉月と溺者の収容が終わると、天照は最大船速で現海域から撤退していた。

 

シュペーから脱出したミーナがこの時、意識を失ったため、シュペーへの救援はこの後先になってしまった事を天照の乗員はこの時は、知る由も無かった。

しかし、ミーナが乗った小型艇が撃沈され、その後、彼女は救助された所を目撃したテアは最後まで希望は捨てず、いつかミーナが自分達を助けに戻って来ると信じ、今は自分と行動を共にしてくれるクラスメイト達と共にシュペーの艦橋にて、救助が来るのを待つことにした。

 

 

天照がシュペーと海上でドンパチやっているその頃、

シュペーより先に艦橋ぐらしを強いられる事になった明乃達はと言うと‥‥。

クラスメイト達の異変が起きてから初めての日の出を迎えた頃、行動を起こしていた。

消火斧(ファイアーアックス)の刃の部分にはガムテープと布を巻いて殺傷力を無くして、いざという時為の武器とし、次に物資の確保へと向かった。

艦橋に立てこもったメンバーの内、明乃が一番小さかった事と艦長と言う責務から、明乃は積極的に動いて通風孔から艦内へ潜入を試みた。

ただ、その際明乃は残った艦橋メンバーにもし、自分に万が一の事があり、捕まる様ならば、指揮権は副長である真白に移乗し、自分の救助には決して来るなと言い残した。

また、艦橋メンバーは明乃の支援として、明乃が向かう箇所とは反対側の区画へ電話をいれたりして陽動を図った。

明乃は無線機を確保するため、まずは通信室へと向かった。

しかし、通信室の通信機器は全て破壊されており、使用するには、ドック入りしなければならなかった。

こうなると、部屋に置いてある携帯電話も恐らく壊されているだろう。

記録係りの子もあの異変が起きた夜、操舵室に居た為、あの異変に巻き込まれたと思われるし、当然彼女が持っていたタブレットも破壊されていると見て間違いないだろう。

それでも何かないかと探していると、比較的、損傷が軽い無線機を見つけ、それを艦橋へ持ち帰った。

 

「艦長!!」

 

「御無事で!!」

 

「通信室はどうでした?」

 

「残念だけど、通信機器は全部壊されていたよ‥‥」

 

「そうですか‥‥」

 

通信機が壊されていた。

それはつまり、救助を呼べないと言う事である。

 

「でも、壊れているけど、修理すれば、使えそうな無線機は持ってきたよ」

 

「本当ですか!?」

 

「うん」

 

明乃は皆に壊れた無線機を見せる。

 

「これ、直せる?」

 

「完全‥とは言い切れませんが、何とかやってみます」

 

角田が早速無線機の修理に取り掛かった。

 

「じゃあ、次は食糧と水の確保だね」

 

「では、私も行きます」

 

次いで明乃は食糧確保へと向かうと言うと小林も其れについて行くと言う。

 

「私は元々主計科ですから、食糧倉庫や生活物資の保管庫の位置には詳しいですよ」

 

「わかった。一緒に行こう。でも、無茶だけはしないようにね」

 

「了解です。艦長」

 

「それじゃあ、角田さん、無線機の修理お願いね」

 

「はい。艦長と小林さんも気をつけてね」

 

「それじゃあ、行ってきます」

 

明乃と小林は食糧と生活物資の確保へと向かった。

その際、他のクラスメイトが艦内をまるで巡回しているかのように彷徨っている場面に遭遇したが、そんな時は部屋の中に隠れたりしてやり過ごした。

武器が有るとはいえ、極力クラスメイト達には危害を加えたくないし、仲間を呼ばれては数の差でとても太刀打ちできない。

明乃は小林と共に何とか無事に食糧倉庫へと向かった。

 

「どうやら、中の物資は移動されていなかったみたいですね」

 

「うん、一度に全部は持って行けそうにないから何回かに分けて取りにこよう‥‥なるべく、悟られないように」

 

「そうですね」

 

明乃と小林は持てる分だけの食糧と生活物資を持って艦橋へと戻った。

それを一日に時間をおいて、ゆっくりだが、慎重に行った。

その結果、

 

「うん、糧食と水の確保はまずまずですね」

 

艦橋に集められた物資を見て小林が明乃に尋ねる。

 

「そうだね。角田さん、無線機の修理はどう?」

 

「やはり、完全に直すのは無理ですね‥応急で何とかなるかもしれませんが、何時使用不能になってもおかしくはありません」

 

無線機は部品の都合上、やはり完全に直すことは出来なかった。

 

「そう‥でも、無いよりはましだよね」

 

「ええ」

 

「それで、艦長、艦内はどんな様子でした?」

 

「射撃管制・機関・操舵機能は全て占拠されていたよ‥‥」

 

「そう‥ですか‥‥」

 

「まともに会話できないなんて‥‥まるで、みんな何かに操られているような感じだった」

 

「艦の奪還は可能でしょうか?」

 

「人数が人数だからね‥‥まともにやっても勝てないし、みんな単独行動は控えて、二、三人の組で動いていた‥‥多分、夜もシフトを決めて動いていると思う」

 

相手の人数は、二十五人、一方此方は僅か五人‥‥向こうの戦力は此方の五倍‥‥。

まともにやりあえば、あっという間に此方が鎮圧される。

 

「みんなの動きはまるで鍛錬された軍隊みたい‥だった‥‥」

 

いくら、横須賀女子がブルーマーメイドの教育機関とは言え、自分達は入学したての高校生‥‥それが、いきなり厳しい訓練を施したような兵士の様な動きをとることから、他のクラスメイト達は自分達の意志で行動しているのではないと推察する明乃達だった。

 

 

此処で場面は武蔵から天照へと移る。

 

シュペーからの追撃を振り切った天照の乗員は漸く一息つける事が出来た。

そんな中、葉月ともえかは救助者の様子を見に医務室へと向かった。

 

「美波さん」

 

「ん?おお、艦長に先任」

 

「様子はどう?」

 

「外傷はない。脳波も正常。後は意識が戻るのを待つしかない」

 

救助者はベッドの上で静かに寝息を立てている。

 

「そっか、ありがとう。私が見ているから美波さん食事してきて」

 

「感謝極まりない」

 

もえかが美波の代わりに医務室に残ると言って、美波は食事を摂る為に食堂へと向かった。

 

「では、艦長。自分も当直があるので、艦橋に戻ります」

 

「うん、わかった」

 

葉月も艦橋へと戻って行った。

 

食堂では、シュペーの追撃で昼食が抜きとなり、しかも今日のメニューがカレーだったと言う事で、食堂に集まったクラスメイト達は我慢していたカレーの登場をわくわくしながら待った。

しかし、全員がカレーを食べられると言う訳では無く、シュペーとの戦いで被弾した箇所‥特に通信マストは急ぎ修理しなければならず、通信委員は、カレーはお預けでマストの応急修理となった。

 

「はぁ~カレー食べたかった‥‥」

 

「ついてない‥‥」

 

通信委員たちは愚痴を零しながら修理し、そのかいあって通信は受信のみならば、使用可能となった。

その頃、食堂では、

 

「さぁ!食べてよ!」

 

炊飯員が食堂に集まったクラスメイト達にカレーを振る舞っていた。

 

「美味しい!!」

 

「甘口だけどコクがあります!」

 

「ブルーベリージャムを隠し味に入れているから」

 

「マッチにも持ってってあげよ~っと」

 

美海は見張り台のマチコにカレーを持って行く。

 

「何がマッチよ‥‥」

 

「美化委員長はクロちゃん派ッスか?それとも先任派?」

 

「はぁ!?」

 

食堂でクラスメイト達が和気藹々とカレーを食べ、談笑している頃、葉月は一人、艦橋で当直をしていたが、突如、非常通信を知らせる着信音が鳴り、受話器をとって耳に当てる。

 

「っ!?」

 

その通信内容を聞いた葉月は思わず目を大きく見開いた。

 


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