ハイスクール・フリート 旭日のマーメイド   作:破壊神クルル

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29話 異変

 

唐突だが、此処で場面は天照から武蔵へと移る。

天照や他の学生艦同様、武蔵も横須賀女子の港を出航した後、一時他の学生艦と艦隊を組み、艦隊行動をとったが、やがて、他の学生艦と別れ学校側が指定した針路をとり、合流地点の西之島新島沖を目指す。

西之島新島沖を目指す中、武蔵も天照同様、訓練は行った。

当初、武蔵の艦長が無事に務まるかと不安だった明乃だったが、本人の不安とは裏腹に明乃は十分な指揮ぶりを発揮した。

訓練中は指揮官らしく指揮をする明乃だが、訓練が終われば、本来の人懐っこさでクラスメイトと触れ合う。

そんな明乃にクラスメイト達は次第に心を許し始めた。

ただ、副長の真白だけは未だ納得がいかない様子だった。

確かに明乃の指揮ぶりには驚いたが、そこは本来自分のポジションだったと言う思いがあったのだ。

 

夜になり、天照にて怪談話が流行っていたその頃、武蔵の艦橋では、

 

「明日から他のクラスと合流ですね」

 

海図を見ながら当直中のクラスメイト、吉田親子(よしだちかこ)が明乃に声をかける。

本来、明乃は当直勤務では無かったのだが、明日からの演習を控えて最終確認の為、艦橋へと上がっていた。

 

「そうだね。皆怪我の無いようにしないとね」

 

「はい」

 

海図から吉田に笑みを浮かべながら言う明乃。

 

「左60度、距離10000に貨物船発見」

 

「動向に注意しろ。操舵室へ連絡」

 

「了解」

 

見張りを行っていたクラスメイトの小林亜衣子(こばやしあいこ)が近くに貨物船が航行しているのを見つけ、報告すると、本来の当直責任者である真白がその貨物船の動向に注意しろと指示を出す。

 

吉田が艦内電話にて、操舵室へ電話を入れるが、

 

「もしもし‥‥あれ?」

 

受話器を耳にあてながら、吉田は眉を顰める。

 

「ん?どうかした?」

 

吉田の様子を見て、明乃は彼女に尋ねる。

 

「‥‥艦長、副長。操舵室、応答ありません」

 

「えっ?」

 

「まったく、居眠りでもしているのか?」

 

真白は応答しない事に操舵員が居眠りでもしているのかと思った。

その直後、武蔵の第一砲塔が旋回し、突如貨物船を砲撃し始めた。

幸い砲弾は貨物船を外し、貨物船は急ぎ退避行動に入った。

後に救助を要請したブルーマーメイドに合流した貨物船の乗員は聴取に対し、いきなり発砲された。

暗がりだったので、相手の姿はよく見えなかったと証言し、武蔵が貨物船に対していきなり発砲した事実は当分の間知られない事となり、更にこの時点で武蔵が既に学校側の指揮を外れた事に気づかれる事もなかった。

 

「なっ!?」

 

『っ!?』

 

突然の貨物船への砲撃に艦橋に居た皆は唖然とした。

 

「砲術委員の連中は一体なにをやっているんだ!?勝手に戦争でも始める気か!?」

 

真白は突然貨物船を砲撃した砲術委員に憤慨する。

 

「射撃指揮所!応答して!」

 

明乃は何故突然貨物船に砲撃したのか、その理由を聞く為、伝声管で射撃指揮所を呼び出すが、此方も操舵室同様応答がない。

そこで、明乃は様子を見に艦橋を降りた。

 

「シロちゃん、暫く此処をお願い」

 

「ですから、宗谷さん、若しくは副長と‥‥」

 

「私も行きます」

 

「‥‥」

 

明乃と吉田に無視された真白は唖然としてその場に残った。

 

「アハハ‥‥」

 

真白と共に艦橋に残った小林は乾いた笑みを浮かべた。

 

明乃は吉田と共に艦橋を降りて射撃指揮所へと向かう。

その最中に武蔵は予定針路からズレ始めたが、この時点でそれに気づいた艦橋員は居なかった。

射撃指揮所へと向かっていると、通路の向こうからまるで何かから逃げているかのように走って来るクラスメイト、角田夏美(かくたなつみ)が居た。

 

「角田さんどうしたの?」

 

「艦長!!」

 

角田は明乃に飛びついて涙を流す。

 

「みんなが‥‥みんなが‥‥!」

 

「お、落ち着いて。一体何が‥‥」

 

「ん?艦長、アレ!!」

 

吉田が、角田が逃げて来た通路の先を指さすとそこには大勢のクラスメイトの姿があった。

ただ、其処に居るクラスメイト達の様子は何か変で皆無口無表情で立っている。

中には本来勤務シフトが有る筈のクラスメイトも居る。

 

「ひぃっ」

 

角田はそんなクラスメイト達の姿を見て怯える。

 

「み、みんな、どうしたの?何があったの?」

 

明乃は恐る恐るクラスメイト達に声をかけるが、やはり彼女達は無口無表情のまま。

昼間の訓練の時と比べて余りにもクラスメイト達の様子が違いすぎる。

すると、彼女達は無口無表情のままゆっくりと明乃達に近づいてくる。

それはまるでゾンビの行進の様にも見えた。

 

「っ!?逃げて!!」

 

本能的に危機感を感じた明乃は角田の手を掴んで、急いで艦橋へと引き返した。

そして、角田を艦橋へ向かわせ、真白と小林に事態の説明とバリケードを構築する為に応援に来てもらうように伝令役にした後、明乃と吉田は三人が戻って来るまでに階段(ラッタル)のハッチを閉め、モップの柄とロープを使い、階段(ラッタル)のハッチを開かないようにした。

次いで、消火斧(ファイヤーアックス)にて、エレベーターのワイヤを切り、エレベーターを落して使用不能にした。

 

「どうしたんです?」

 

「一体何があった?」

 

「詳しい説明は後でするから急いで他のラッタルのハッチを全部閉鎖して!!その他の艦橋に入れそうな箇所も全部!!」

 

三人が艦橋から降りてくると、バリケードの強化とその他の侵入の可能性がある様な箇所も急いでバリケードを構築し、艦橋へと戻った。

艦橋へと戻った皆の顔色は悪く、何でこんな事になったのか?

皆どうしてしまったのか?

これからどなるのか?

不安が次々とこみ上げてくる。

 

「はぁ~ついていない」

 

真白がおもわずいつもの口癖を呟く。

 

「それにしても、みんな‥どうして‥‥」

 

「まさか‥叛乱‥‥とか‥‥?」

 

小林はクラスメイト達が叛乱を起こしたのかと思った。

 

「そう言えば、副長。武蔵に乗ってからずっと艦長に対して不満や愚痴を零していましたよね?」

 

「まさか、副長が皆をそそのかして‥‥」

 

角田、小林、吉田の三人の睨む様な視線が真白に突き刺さる。

 

「なっ!?ち、違う!!わ、私はそんな事‥‥」

 

いきなり叛乱の首謀者と疑われ、うろたえる真白。

 

「多分それは無いと思う」

 

しかし、真白が叛乱の首謀者説を艦長の明乃は否定した。

真白としては明乃が自分の弁護をした事に意外性を感じたが、自分の無実を晴らしてくれるのであれば、それで良かった。

 

「通路で会った時のみんなの目‥あれは正気を失っている目だった‥‥それに一言もしゃべらなかったし‥‥もし、叛乱なら何かしらの声明は出すんじゃないのかな?」

 

「た、確かに‥‥」

 

確かに明乃の言う通り、クラスメイト達が叛乱を起こしたと言うのであれば、何らかの声明を艦内に発しても良い筈だ。

現に艦橋への電話も伝声管も通じるのだから‥‥

しかし、そう言った声明は未だに出されておらず、また艦橋に立てこもった自分達に降伏や投降の勧告が無いのも不自然だった。

明乃の一言で真白にかけられた叛乱の首謀者説は何とか鎮静化する事が出来た。

しかし、クラスメイト達に何らかの異常事態が起きたのは間違いなく、そんな状況の中で仲間割れを起こすのはかえって事態を悪化させる。

 

「か、艦長!!」

 

「どうしたの?」

 

ジャイロコンパスを見ていた吉田が声を上げる。

 

「武蔵が‥予定針路を離れています」

 

「なっ!?」

 

「何だって!!」

 

予定針路を離れ、迷走し始めた武蔵。

操艦機能は奪われており、針路がずれたとなると、これでは西之島新島で待っている他の学生艦とも合流が出来ない。

他の学生艦と合流出来れば、何とか今の事態を改善できたかもしれないのだが、それさえも出来なくなった。

 

「私達どうなっちゃうんだろう‥‥」

 

角田が涙声で呟く。

 

今の自分達は孤立無援状態となり不安になるなと言うのが無理である。

 

(此処は私が何とかしないと‥‥)

 

皆が不安がっている中、明乃は何とか皆の不安を和らげ、今の自分達が出来る事はないかと打てる手は打たないと思い皆に声をかける。

 

「みんな、まずは落ち着いて」

 

「落ち着けだと?こんな状況で落ち着ける訳ないだろう!!」

 

真白がムキになった様子で明乃に食って掛かる。

 

「こんな状況だからこそだよ!!」

 

明乃は真白よりも更に大きな声で言い放つ。

 

「今自棄になって飛び出しても、勝てない‥今は落ち着いて、現状を確認して、必要な物、成すべきことをしないと」

 

「‥‥」

 

「艦長」

 

「そうですよね」

 

「艦長の言う通り」

 

真白は明乃の言葉を聞いて少し顔を歪める。

確かに明乃が言っている事は間違っていないからだ。

悔しいがカリスマ性では自分よりも明乃の方が勝っている様でそれが悔しかった。

自分はブルーマーメイドの名門家である宗谷家の出身なのに‥‥

しかし、そう思う反面、明乃を見て自分が艦長の立場だったとして明乃の様に振舞えるだろうか?と言う疑問も浮かび上がる。

不安がっている皆をあっという間に纏め上げたカリスマ性‥‥自分に出来ただろうか?

真白がそう思っている中、明乃は皆に次々と指示を飛ばしていく。

幸い艦橋には簡易なトイレと入浴の設備があり、排泄や身体を洗うことは可能だ。

問題はトイレットペーパーやボディソープ、シャンプー等の生活物資に水と食糧、そして外部へこの事を伝える無線機の確保。

そして、バリケードの強化となる資材の調達等が急務となった。

何かしらの使用制限は避けられそうにないが、五人で集められる備蓄では長期間の籠城には耐えられないだろう。

備蓄が尽きる前にこの事態を何とか解決しなければならなかった。

こうして明乃達の約一ヶ月にもわたる艦橋ぐらしが始まったのだった。

 

 

武蔵に異常事態が起こり、針路を外れ、迷走し艦橋に立てこもった明乃達が孤立無援となってから約11時間後の西之島新島の沖では、横須賀女子の教官艦の猿島以下、多数の学生艦が集結していた。

ただ、西之島新島の島影には一隻の潜水艦が放棄されていたが、島影に隠れていた為、レーダーには探知されず、その存在に気づく者は居なかった。

 

「全艦集合した?」

 

猿島の艦橋で古庄は副官に学生艦が全て揃ったかを尋ねた。

 

「いえ、武蔵と天照がまだです。天照は通信によると‥‥遅刻です‥‥」

 

副官は気まずそうに報告した。

 

その遅刻となった天照の艦橋では‥‥

 

「これは一体どういう事かな?」

 

もえかが引き攣った笑みで幸子と鈴に尋ねている。

しかも蟀谷には青筋を立てて‥‥。

葉月が自分に妙な事を聞いて来て、厨房へと向かい、昨夜起きた食材消失の件を聞いた後、もえかは艦橋へと上がり、天照の現在位置を確認すると、予定地点よりも大幅にズレていた。

そこで、当直者に事情を尋ねると、幸子と鈴にその原因があった。

昨日の夜の当直にて、幸子と鈴は怪談話で夢中になって変針点を過ぎても変針することなく、そのままの針路を進んでしまったため、航路を大きくズレてしまい、幸子と鈴がそれに気づいたのは当直が間もなく終わろうと言う時だった。

急いで天照を予定のコースに戻したが、大幅なロスは免れなかった。

その結果、天照は海洋実習の集合時間に遅刻確定となった。

 

「うぅ~」

 

「そ、それは‥‥その‥‥」

 

もえかのダークスマイルに当てられて鈴は既に涙目となり、幸子はどう取り繕うかと狼狽する。

その後、二人はもえかから口頭で厳重注意を言い渡された。しかし、もえかの方もアフターフォローを忘れず、

 

「まぁ、怪談話で夢中になっている時に止めなかった私も悪いからこの件はこれでおしまい。遅刻の件に関しては、艦長である私が全部責任を取ります」

 

と、言って遅刻に関しては自らの監督不行とした。

そんなもえかの姿勢に幸子と鈴は罪悪感でいたたまれない気持ちとなった。

 

「‥で、見事に遅刻‥と‥‥」

 

もえかから事情を聞いた葉月は、天照が集合時間に遅刻が確定した事を知った。

 

「ご、ごめんなさい。私が変針点に気づかなかったばっかりに‥‥」

 

「い、いえ‥もとはと言えば、私が無駄話をしたのが悪いんです」

 

艦橋メンバーに謝る鈴と幸子。

 

「まぁ~事故を起こしたわけじゃないんだし、古庄教官とかにネチネチ怒られるぐらいで済むんじゃないの?」

 

西崎がまるで人事の様に言う。

 

「うぅ……」

 

「古庄教官ってそんなに怖いんですか……?」

 

教官から怒られるかもしれないと言う事で鈴と幸子は萎縮する。

 

「う~ん、自分も一度しか会っていないから、分からないけど、教育熱心な人って言う印象は受けたかな?」

 

葉月が鈴と幸子に古庄の印象を話す。

 

「それで、現在地は?」

 

「28°10′50″N(ふたじゅうはちど じゅってんごふんノース)、139°33′30″E(ひゃくさんじゅうきゅうど さんじゅうさんてんさんふんイースト)です」

 

葉月が天照の現在位置を鈴に尋ねると、やや震えた声で天照の現在位置を報告する鈴。

もえかと葉月は海図に天照の現在位置を記し、合流地点までの到着距離と時間を算出する。

 

「約三時間程の遅刻になりますね」

 

「ええ、遅れる旨の連絡はもうしてあるの?」

 

「はい、通信員の八木さんが既に打電済です」

 

「古庄教官はなんて言っていた?」

 

「承認されたそうです」

 

「なら問題ないでしょう。でも、口頭注意ぐらいは覚悟しといたほうがいいかもね」

 

「やっぱり怒られるんだ‥‥」

 

どうあがいても教官からのお叱りがあると分かり、ちょっと憂鬱な感じになる鈴と幸子であった。

 

「では、順次交代で朝食を食べておいで」

 

葉月は艦橋メンバーに朝食を取って来るように言って、艦橋メンバーは順番に朝食を摂りに行った。

艦橋には葉月、鈴、幸子が残り、もえか、立石、西崎が朝食を摂りに行く。

すると、艦橋の出入り口であのドラ猫がまるでもえか達を待っていたかのように座っていた。

 

「五十六もお腹が減ったのかな?」

 

もえかがドラ猫(五十六)を抱き上げる。

 

「いそろく?」

 

「学校で先輩達がそう呼んでいるのを思い出して‥‥」

 

「へぇーコイツ、五十六って言うんだ」

 

もえか達艦橋メンバー第一陣が朝食を食べに降りて、朝食を食べ、続いて葉月達艦橋メンバー第二陣が朝食を食べて再び艦橋へと戻った頃、天照は、集合地点である西之島新島に近づく。

すると、西之島新島沖で一発の砲声が鳴り響いた。

その砲声を聞き、展望指揮所の更に上の方位盤の見張り台に居た野間マチコは眼鏡をはずし、目を細める。

彼女の耳にはヒュ~と空気を切り裂く音が水平線の彼方から聴こえて来たと思ったら、突然の水柱が天照の右舷側に上がる。

 

「着弾!右30度!」

 

伝声管からマチコの大声が響く。

 

「着弾?」

 

艦橋メンバーを始めとして、天照の乗員は何が起きたのか理解できなかった。

そんな中、再び砲声が鳴り響き、今度は天照の左舷側に水柱が上がった。

 

「また、着弾!!」

 

「現状報告!!各部被害状況を知らせ!!」

 

各部から被害なしの報告が続く中、

 

「厨房で茶碗が割れちゃったよ~!」

 

厨房で茶碗が割れたぐらいで被害は無い様だ。

 

「艦長!!猿島からの砲撃です!!」

 

「古庄教官?」

 

「ちょっ、いくら遅刻したからってこれはマジ洒落にならないって」

 

もえかが古庄が何故砲撃を行って来るのか理解できず、西崎はたかが遅刻程度で砲撃して来るなんて何の冗談だ?と言う。

しかし、尚も猿島からの砲撃が続き、そのうち一発は天照の前方の海面すれすれで炸裂した。

 

「前方に着弾!!」

 

「爆発した‥‥?これ‥実弾?」

 

その一発の砲弾から、先程から猿島から放たれている砲弾が模擬弾ではなく、実弾だと認識する艦橋メンバー。

猿島が模擬弾ではなく実弾射撃してくるにもえか達は目を見開いたまま硬直している。

そんな中、真っ先に動いたのは葉月だった。

 

「総員戦闘配置!!これには訓練に有らず!!繰り返す!!これには訓練に有らず!!」

 

天照の艦内に警報が鳴り響く。

 

「っ!?知床さん!!回避運動!!」

 

「りょ、了解」

 

葉月の動きにもえかも我を取り戻し、鈴に回避運動を促す。

 

「お、面舵いっぱい!」

 

「機関、全速!!」

 

「納沙さん、遅刻に対しての謝罪文を急ぎ猿島に送って!!」

 

「は、はい。八木さん、遅刻に関しての謝罪文を至急猿島に送って下さい。内容は‥‥」

 

幸子は通信室に居る鶫に謝罪文を猿島へ送る様に指示を出す。

その間にも猿島はまだ射撃してくる。

 

「ま、まだ撃って来るよぉ~」

 

鈴が涙目と涙声で言う。

 

「決める気ならとっくに決めているわよ。猿島なら」

 

西崎はやや余裕がある様子で鈴に言う。

たしかに西崎の言う通り、インディペンデンス級沿海域戦闘艦ならば、精密な電探射撃が可能であり、猿島が本気で天照へ攻撃しているのであれば、とっくに命中弾があってもおかしくはない。

 

「艦長、打電返答無しだそうです」

 

「そんなに怒っていたの?」

 

「右舷に着弾!」

 

またもや天照の右舷側に水柱が立つ。

 

「さっきより位置が正確になっている!こうなったら反撃しようよ!」

 

猿島も徐々に精密な射撃へとなり、着弾距離も徐々に迫りつつある。

そんな中、西崎は反撃に打って出ようと言う。

しかし、もえかは最後まで交渉による解決を模索する。

 

「野間さん!!発光信号!!」

 

「了解!!」

 

マチコは発光信号にて猿島に謝罪文を送るが、それさえも無視して猿島はさらに砲撃を続ける。

 

「古庄教官‥一体なにを考えている‥‥電探射撃にしても照準が甘いし、射撃に関しても射撃速度が遅い。まるで真綿で首を締めてくるかのようだ‥‥」

 

葉月は猿島の古庄が何を考えて天照へ攻撃して来るのか理解できなかったが、これはもう演習と呼べる代物では無かった。

 

「着弾~!猿島、主砲を旋回中! こちらに照準を向けています!!」

 

流石、超弩級戦艦なだけにインディペンデンス級沿海域戦闘艦の主砲、57mm単装速射砲ではビクともしないが、艦橋に当たれば、艦の頭脳を失い、戦闘力、航行能力は大幅に失う。

 

「艦長」

 

「先任?」

 

「魚雷攻撃を具申します」

 

葉月は天照に新装備された短魚雷発射管による魚雷攻撃を具申した。

 

「えっ?」

 

もえかは葉月の言葉を聞いて、目を見開いて固まった。


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