ハイスクール・フリート 旭日のマーメイド   作:破壊神クルル

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20話 ブルーマーメイドフェスター パート7

ブルーマーメイドフェスターにて、迷子の姉妹を見つけた後、その姉妹の母親と無事に再会させる事に成功した葉月達。

お礼にその迷子達の母親、中島クイントから昼食をご馳走して貰った葉月達。

そこへ、ブルーマーメイドでは、有名で現横須賀女子海洋高校の校長を務める宗谷真雪が現れた。

迷子の女の子達の母親、中島クイントの話では彼女は元でブルーマーメイドだった事は知っているが、彼女はどうもただの元ブルーマーメイドではなく、真雪の後輩であり、真雪とはかなり親しい仲であった。

 

 

「クイントちゃんもすっかり、お母さんが板についたわね。ブルーマーメイド時代、『暴食の戦乙女』と呼ばれていた頃が嘘みたいに」

 

「ちょっ!!雪ちゃん先輩!!私、暴食何てしていませんから!!」

 

(((((えええーっ!!)))))

 

先程まで大量の屋台の商品を食べていた人物の発言とは思えず、葉月達は心の中でクイントにツッコム。

 

「そう言う、雪ちゃん先輩だって、聞いた話ですけど、校長職に就いてから、『雪夜叉』と呼ばれて恐れられていた頃が嘘みたいですよ」

 

クイントが皮肉交じりに言い返す。

 

「校長?」

 

「真雪さんって、学校の先生なんですか?」

 

明乃ともえかが真雪の職業が教職員なのかと尋ねる。

 

「ええ、横須賀女子海洋高校の校長をやっているの」

 

「「「「えええーっ!!」」」」

 

真雪の仕事を聞いて、目の前の人物が、まさか自分達が目指している学校の校長と言う事に驚く明乃達。

 

 

「それじゃあ、貴女達は今度の受験で横須賀女子を受験するのね?」

 

「は、はい」

 

「将来はブルーマーメイドになりたくて‥‥」

 

明乃達は真雪を目の前にしてガチガチに緊張している。

まるで、面接をしているかのように‥‥

 

「あ、あの‥‥」

 

黒木は恐る恐る真雪に声をかける。

 

「ん?何かしら?」

 

「あの‥‥宗谷さんはもしかして宗谷真白さんの‥‥」

 

「真白は私の娘よ」

 

(やっぱり!!)

 

「あ、あの‥さっき宗谷さん‥い、いえ、真白さんを見たんですけど、真白さんとてもすごかったです。ブルーマーメイドの人や高校生の人に怖気づくことなく、気丈に接したり、イベントの助っ人をしたり‥‥私、感動しました!!」

 

「ありがとう。真白が聞いたらきっと喜んでくれていたわ。それと今度の受験には真白も横須賀女子を受けるみたいだから、高校生になったら、お友達になってあげてね」

 

「は、はい!!勿論です!!」

 

真雪からそう言われ、黒木は笑顔で答える。

 

(むぅ~なんかクロちゃんが取られちまいそうな気がする‥‥)

 

一方、真雪と黒木のやり取りを麻侖は面白くないという表情で見ていた。

 

「そう言えば、さっきクイントさんが言っていた『雪夜叉』ってなんですか?」

 

明乃達が真雪との間に緊張した空気を出している中、葉月がクイントに真雪の二つ名の由来を尋ねる。

 

「ああ、あれね。雪ちゃん先輩、ああ見えて、現役時代は物凄く厳しくて怖い人だったのよ。それで、海を荒らす犯罪者や同僚や部下のブルーマーメイドからも畏怖されていて『雪夜叉』って呼ばれていたのよ。あっ、でも鉄拳制裁とかはやっていないわよ。部下や同僚には口で注意していたわ」

 

「へ、へぇー」

 

クイントの話を聞く限り、今の真雪からは想像もつかない。

 

「まっ、中には『そんなものただの噂だ』って言って雪ちゃん先輩が指揮する大和に挑んだお馬鹿さん達もいたけどね」

 

「そ、それで、そのお馬鹿さん達はどうなったんですか?」

 

雪夜叉(真雪)に挑んだ愚か者の末路をクイントに尋ねる葉月。

 

「武装船で徒党を組んできたけど、殲滅されたわ。その戦果、雪ちゃん先輩は海上安全整備局から『来島の巴御前』って呼ばれるようになったけど、私達の代はやっぱり雪ちゃん先輩か雪夜叉がしっくりくるわね」

 

「あら?クイントちゃんだって、人の事は言えないんじゃない?」

 

クイントと葉月の会話を聞いた真雪も二人の会話の中に入ってきた。

 

「ん?それはどういう事ですか?」

 

「あっ、さっき真雪さんクイントさんの事を『暴食の戦乙女』って呼んでいましたよね?」

 

「ええ、私が『来島の巴御前』って呼ばれるようになったあの時の戦闘でクイントちゃん、一人でスキッパーに乗って、敵の武装船に乗り込んで行っちゃったのよ」

 

『えっ?』

 

真雪の発言でクイント以外の皆が固まる。

彼女が言うには、クイントはなんとテロリストがわんさか乗っている船に一人で切り込みをかけたのだという。

 

「そ、それでどうなったんですか?」

 

話の続きが気になるのか、明乃達は固唾を飲んで真雪の話に耳を傾けている。

まぁ、目の前に本人が居るのだから、無事なのは確かなのだが‥‥

 

「甲板にいたテロリストを千切っては海に叩き落としていたわ」

 

『うわぁ~』

 

(筋肉モリモリマッチョマンのコ○ンド―みたいね)

 

若干引く感じで皆はクイントを見る。

そして、黒木は以前に見たアクションモノの主人公を思い浮かべた。

 

「ちょっ!!あれは昔の事よ!!い、今はやっていないからね!!本当よ!!」

 

慌てて体裁を整えようとしているクイント。

 

「ほ、他にはないんですか?」

 

葉月としては真雪とクイントの現役時代の事が気になり、この他にも印象に残ったエピソードがないかを尋ねる。

 

「わ、私も気になります」

 

「私も‥‥」

 

明乃ともえかも葉月同様気になり、黒木と麻侖も口には出さないが、気になっている様でソワソワしている。

 

「私もききたい!!」

 

「わたしも!!おかあさんのむかしばなしききたい!!」

 

ギンガとスバルも自分達の知らない頃の母親の事が知りたい様子で、真雪とクイントに昔話をせがんできた。

 

「しょうがないわね」

 

「それじゃあ、どこから話そうかしら?」

 

「やっぱ学生時代からはどうでしょう?」

 

「そうね」

 

こうして、真雪とクイントの学生時代、現役時代でのエピソードを聞けた明乃達はとても有意義な時間を過ごせた。

クイントの娘のギンガとスバルも母の昔話を聞いて、

 

「私もお母さんみたいな強いブルーマーメイドになる!!」

 

「わたしも!!」

 

と、母の様な大人になると宣言した。

その様子を見て、真雪は学生時代の真霜と真冬、小学生時代の真白を思い出し、明乃ともえかも小学生時代、一緒に岬で大和を見たときのことを思い出した。

 

「そう、お母さんの後を継ぐのね‥‥二人とも頑張りなさい」

 

「「うん!!」」

 

クイントは娘たちの頭を優しく撫で、皆はその光景をほほえましく見ていた。

 

「それじゃあ、私は外回りの挨拶の続きがあるから、これで」

 

真雪はこの後も色々予定がある様子で席を立った。

 

「あっ、はい。ありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

 

「色々と話が聞けてよかったです」

 

「とっても面白かったです」

 

「また、機会があれば、色々聞かせてください」

 

明乃達は真雪にお礼を述べる。

 

「ええ、皆も受験頑張ってね。春、入学式で皆に会えるのを待っているから」

 

『はい!!』

 

真雪の言葉に元気よく返事をする明乃達。

 

「あっ、そうそう、聞き忘れていたけど、クイントちゃん。午後のあのイベントに参加するの?」

 

立ち去る前に真雪は立ち止まり、クイントに午後にあるイベントに参加するのかを問う。

 

「ええ、勿論です」

 

クイントは真雪の言うイベントに参加するつもりのようだ。

 

「そう。頑張ってね」

 

「ええ。そういえば今のチャンピオンは誰なんです?」

 

「私の娘の一人、宗谷真冬よ」

 

「へぇ~でも、雪ちゃん先輩の娘さんとは言え、手加減はしませんからね。別に倒してしまっても構わないんですよね?」

 

「フフ、お手柔らかにね」

 

そう言って真雪は今度こそ去って行った。

 

「クイントさん、午後に参加するイベントってなんですか?」

 

葉月がクイントにイベントの内容を尋ねる。

 

「ん?それはね‥‥」

 

クイントは、ニマッと嬉しそうな顔でイベントの内容を葉月達に話した。

 

そして、イベント開催時間となり‥‥‥‥

 

「さあ!!やってまいりました!!ブルーマーメイドフェスター恒例のわんこそば対決!!」

 

司会役を務めるブルーマーメイドの隊員がイベントの開催を宣言すると、会場は歓声で盛り上がる。

 

「この競技はブルーマーメイド、高校生、一般来場のお客さん達の中で大食いに自信のある方なら、誰でも出場可能な大食い対決!!今年も数多くの猛者達が集まってくれました!!では、勇敢なる猛者達を紹介します!!皆さん!!拍手で出迎えてあげてください!!では、どうぞ!!」

 

会場にあふれんばかりの拍手が鳴り、ステージに挑戦者達が登場する。

その中にはクイントの姿もあり、

 

「お母さん頑張って!!」

 

「がんばって!!」

 

会場の応援席からギンガとスバルがクイントを応援する。

 

「では、挑戦者の方々が集まりましたので、いよいよチャンピオンの登場です!!どうぞ!!」

 

司会役がチャンピオンの登場を促すと、プシューという白いガスが出てそれが収まると、

 

「とお!!」

 

黒いマントに黒いブルーマーメイドの制服を着た真冬がステージに立った。

 

「チャンピオンの宗谷真冬さんの登場です!!」

 

司会役がチャンピオンである真冬の紹介をすると、会場は再び歓声に包まれた。

 

「では、チャンピオンが登場したので、ルールを説明させていただきます!!ルールは至ってシンプル!!一番多くのそばを食べた人が勝ち!!以上です!!では、皆さん位置についてください!!」

 

チャンピオンの真冬以下、チャレンジャー達はそれぞれ席へと着く。

 

「では‥‥スタート!!」

 

司会役が合図をすると、皆は一斉にそばを食べ始めた。

そして、ゲームが進んで行く内に、挑戦者の者達は次第に顔を苦痛で歪め、次々とギブアップしていく者が出る中、真冬とクイントは平然とした様子でそばを食べている。

 

(クイントさん、昼にあれだけ食べてよく平気だな‥‥)

 

クイントと昼食を共にしたギンガとスバル以外の者達はそんな印象を抱いた。

やがて、ゲームも終盤となり、残っているのは真冬とクイントの二人だけとなった。

 

「お母さん!!頑張って!!」

 

「ガンバレ!!」

 

「真冬先輩!!頑張って下さい!!」

 

「真冬先輩!!」

 

会場からは真冬とクイント、双方を応援する声援が飛ぶ。

 

「すさまじいデットヒートです!!チャンピオンである宗谷真冬さんに平然とついていくこの女性チャレンジャーは何者なのでしょうか!?」

 

司会役もクイントが誰なのかは分からない様子。

そこへ、運営スタッフから一枚のメモが司会役に渡される。

 

「えー‥‥只今入った情報ですですと、な、な、な、なんと!!チャレンジャーの女性はあの宗谷真雪さんが現役時代、大和の艦長を務めていた時には大和の副長を務め、真雪さんが現役を退いた後は、大和の艦長となったあの伝説のブルーマーメイドの一人!!『暴食の戦乙女』の異名を持つ、中島クイント(旧姓クイント・スカリエッティ)さんでした!!」

 

司会役がクイントの紹介をすると、ブルーマーメイドの隊員達はザワつく。

 

「あの人が‥‥」

 

「真雪さんと同じ伝説の‥‥」

 

真雪同様、やはりクイントも現ブルーマーメイドの隊員には伝説的存在の様だ。

 

「尚、情報提供者は匿名希望の宗谷真雪さんからです」

 

(匿名希望なのに提供者の名前を出しちゃダメじゃん!!)

 

(午前中にも何か似たような展開を見た様な気がするわ‥‥)

 

匿名希望と言っているのに情報提供者の名前を暴露する司会役に葉月はツッコミ、黒木はこの光景にデジャヴを感じた。

 

「更に追加の情報では、クイントさんは過去このブルーマーメイドフェスターにおけるわんこそばのチャンピオンでもあり、その最高記録は未だに破られていないとの事です!!これは現チャンピオンの真冬さん、かなりピンチかもしれません!!」

 

しかし、いくら伝説のブルーマーメイドの人が相手でも真冬はそう簡単に諦める性格ではないので、例え相手が伝説のブルーマーメイドの人物だったとしても食らいつける所まで食らいついてやると言うハングリー精神でクイントに食いついた。

だが、勝敗は見えており、やがて‥‥

 

「ぎ、ギブアップ‥‥」

 

真冬は力尽きた。

 

「勝負あり!!勝者!!中島クイント!!」

 

司会役が新たなチャンピオンの名を高々と宣言すると、三度会場は歓声に包まれた。

 

「よく頑張ったわ。流石、雪ちゃん先輩の娘さん。ナイスファイト」

 

「あ、ありがとうございます//////」

 

そして、クイントは自分に食らいついて来た真冬の健闘を称え、真冬も伝説と呼ばれたクイントに褒められて嬉しそうだった。

 

 

葉月達がブルーマーメイドフェスターを楽しんでいるその頃、某所に有る海上安全整備局 海洋研究機関の研究所では‥‥

 

「ん?なんだ?このマウスは‥‥」

 

この研究所で働く研究員が実験用マウス(ハツカネズミ)の飼育篭の中で生まれた個体の中で、通常のマウスとは違った個体が混じっているのを見つけた。

他のマウスは通常のマウスと同じく白一色なのだが、そのマウスはハムスターに似た形状と色をしていた。

 

「突然変異種か?」

 

研究員はそのマウスを隔離した後、その他の飼育篭も調査すると、同様のマウスが多数見つかった。

突然変異と思われるマウスを集めた後、早速そのマウスの検査が行われた。

すると、そのマウスは通常のマウスと姿形は勿論のこと、遺伝子構造の異なる生物であることが判明した。

何の原因があってこの様な突然変異種のマウスが生まれたのかは不明だが、偶然発見されたこの新種のマウスを研究員達は突然変異種と言う理由だけで処分するのは勿体無いと判断し、このマウスを繁殖させる事に決め、繁殖した後、この新種のマウスの調査・研究する事にした。

この時、研究員達はまさかこの判断が後に起こるあの事件の引き金になるとは思いもよらなかった。

 

 

楽しい時間と言うモノは早く終わる感覚があり、様々な出会いとアクシデントがあった今年のブルーマーメイドフェスターにも終わりの時間が迫っていた。

 

「今日は娘達が色々お世話になったみたいで本当にありがとう」

 

クイントは改めて葉月達にお礼を言った。

 

「いえ、こちらこそ色々お話が聞けて楽しかったです」

 

「ギンガちゃんもスバルちゃんもまたね」

 

「うん。バイバイ」

 

「またね」

 

中島親子は手を繋いで、家路へと戻って行った。

 

「それじゃあ、自分達も帰ろうか?」

 

「「はい」」

 

葉月が明乃ともえかに帰宅を促す。

 

「受験、お互いに頑張ろうね」

 

「絶対に横須賀女子に皆で入ろう」

 

明乃ともえかは麻侖と黒木にエールを送る。

 

「おう、そっちもガンバレよな!!」

 

「私は宗谷さんが入るから受ける訳であって、別に貴女達となれ合う気は‥‥」

 

「ハイハイ、クロちゃんはツンデレだから素直になれねぇんだよな」

 

「マロン!!」

 

「ま、まぁ、貴女達も精々頑張りなさい//////」

 

黒木のそんな様子に麻侖はニヤニヤと笑みを浮かべ、明乃ともえかは苦笑する。

葉月はそんな学生達を微笑ましく見ていた。

 

「それじゃあなぁ!!また会おうぜ!!」

 

麻侖は帰りの船から大きく手を振りながら帰って行き、黒木も小さく手を振っていた。

 

「春‥皆で入れると良いね‥‥横須賀女子海洋高校に‥‥」

 

去って行く麻侖と黒木を見て、葉月は明乃ともえかに呟く。

 

「はい」

 

「絶対に受かってみせます」

 

今日のブルーマーメイドフェスターでの出会いが明乃ともえかに更なる意欲を与えた様だ。

 

「葉月さん」

 

「ん?」

 

「今日は、ブルーマーメイドフェスターに連れて来てもらって本当にありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

 

二人にお礼を言われ、葉月は照れ隠しをしながら、

 

「さ、さあ帰ろうか//////」

 

「「はい」」

 

葉月達も家路に着いた。

尚その際、明乃ともえかは葉月の片腕にそれぞれ抱き付いた。

今日の事が余程うれしかったのだろう。

二人の顔は終始笑顔だった。


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