容姿は、リリカルなのはstrikersの本編18話にて、ゲンヤ・ナカジマの過去回想話にて、クイント・ナカジマの手によって研究所から保護された時のギンガ(6歳)とスバル(4歳)の頃の容姿を想像して下さい。
ブルーマーメイドフェスターは入場制限がかけられてはいるが、来場者人数は多く、当然この様な大きなイベントには迷子はつきものであった。
事実、葉月達がフェスター会場を見ている間にも、
「迷子センターから迷子のお知らせを申し上げます。デニムの半ズボンにデニムのシャツをインして、デニムの帽子をかぶった女のお子さんがお母さんを探しています。お心当たりの方は、迷子センターまでお越し下さい」
「迷子センターから迷子のお知らせです。身長130センチ程度のお子様を・・・「お子様じゃないって言ってんじゃん!」」
こうした迷子放送を幾度も聞いた。
武蔵の体験航海へ参加しようと、武蔵が停泊している埠頭へ向かっている葉月達であったが、人ごみを歩いているので、歩く速度が遅くなっていた。
そんな中、葉月は、
「ん?」
いつの間にか服の裾を誰かに掴まれていた。
葉月が振り返って見れば、小学生よりもさらに小さな子供の姿があった。
見た所、幼稚園の年中か年長ぐらいだろうか。
そして、女の子の右手はしっかりと葉月の服の裾を掴み、涙ぐんだ瞳で葉月をジッと見つめていた。
辺りにこの子の家族らしき人物はいない。
そもそも居れば、見ず知らずの人の服の袖など掴む必要はない。
小さな子供がイベント会場にて一人で涙目、近くに親の姿は無い‥‥それらの要素だけで状況把握には十分すぎる状況だった。
「えっと‥‥」
葉月は困惑し、どう声をかけていいものかと思っていると、
「どうしたの?」
「お父さんかお母さんは?」
明乃ともえかの二人も葉月の服の袖を掴んでいる女の子の存在に気付いて、女の子に声をかけると、
「ふぇ‥‥」
女の子の涙腺は臨界点を突破しようとしていた‥‥いや、突破した‥‥。
「うわぁぁぁぁ!おねぇぇぇちゃぁぁぁん!おかぁぁぁぁさんっ!」
言葉にならない女の子の泣き声に行きかう人々が次々と足を止め、少女に裾を掴まれた葉月達に視線が集中する。
「あわわわわ、な、泣かないで~」
「だ、大丈夫、お姉ちゃんもお母さんもすぐに見つかるからっ。ね、ねっ」
大声で泣きわめく迷子に明乃ともえかもタジタジの様子。
「‥‥」
そんな中、葉月は、慌てる様子も無く、泣いている女の子の目の前で屈んで、
「よっ、と‥‥」
「ふぇ?」
女の子を抱き上げた。
葉月の脳裏には前世で桜舞う上野公園にて、許嫁であった巴と歩いている中、公園の中で、今のこの状況の様に迷子が居り、巴が、今葉月が迷子を抱き上げた様に、巴もその時、迷子を抱き上げた事が蘇った。
その後、二人で一緒に迷子の親を探し回った事も‥‥。
「どうしたのかな?迷子になっちゃったのかな?」
葉月は女の子を抱き上げ、その女の子に優しく問う。
「う、うん‥‥」
確認するまでもなく、女の子は迷子であったのだが、葉月は女の子に現状を尋ねると、女の子は涙を流しながら、自分が迷子である事を肯定する。
「そっか‥それじゃあ、自分と一緒にお母さんとお姉ちゃんを探しに行こうか?」
「「「えっ?」」」
葉月の言葉に明乃、もけか、そして迷子の女の子もきょとんとした目で葉月を見つめている。
「おかあさんとおねえちゃん、探してくれるの?」
首を傾げて訪ねる少女に葉月は、
「ああ、見つかるまで一緒に探してあげる」
「うん、ありがとうっ!」
葉月が力強く頷くと、少女も先程まで涙を流していたのだが、はちきれんばかりの笑顔を見せる。
「あ、あの葉月さん‥‥」
「ん?」
恐る恐るもえかが葉月に声をかける。
「大丈夫ですか?」
「何が?」
「いえ、もし、時間がかかるようでしたら、武蔵の体験航海に間に合わないのでは?」
「うん‥‥だったら、この子の面倒は自分が見るから、もえかちゃんと明乃ちゃんは武蔵に乗っておいで」
もし、武蔵の体験航海の入場終了時間までにこの子の母親と姉が見つからない様ならば、明乃ともえかの二人で武蔵に乗っておいでと葉月は言う。
「わ、私も一緒に探します!!」
と、明乃は最後まで葉月に付き合うと言う。
「明乃ちゃん‥‥いいの?武蔵に乗るのを楽しみにしていたんじゃないの?」
「構いません、本当なら、このブルーマーメイドフェスターには来れなかったんですから‥‥それに会いたいのに会えないのは寂しい事ですから‥‥」
「ミケちゃん‥‥そうだね、私も一緒に探します」
明乃ともえかは両親と死別した事を思い出し、母親と別れる事がどれほど寂しい事か二人とも知っていたので、今のこの子がどれだけ不安を抱いているのかを理解しているつもりだった。
「そう言えば、お名前は何って言うの?」
「‥‥す、すばる。中島スバル」
「スバルちゃんね、自分は広瀬葉月」
「私は岬明乃」
「私は知名もえかだよ」
互いに自己紹介を済ませ、葉月達は迷子の女の子、中島スバルの母親を探す事となった。
葉月達が迷子となった少女、中島スバルと出会っていたその頃、
麻侖と合流した黒木もブルーマーメイドフェスターの会場を歩いていた。
そんな中‥‥
「あ、あの‥‥」
突如、麻侖と黒木は後ろから声をかけられた。
「「ん?」」
二人が振り返ると、其処には小学生低学年くらいの女の子がいた。
長い髪を藍色のリボンで結んでいる女の子で、困ったような表情をしている。
「何かしら?」
黒木がその子に要件を尋ねる。
「あ、あの‥この辺で髪の短い、青い服装の女の子を見ませんでしたか?」
「どうしたの?はぐれたの?」
「は、はい‥妹なんです」
「そう、残念だけど見ていないわ」
「アタシも見てねぇな」
麻侖と黒木はすれ違った通行人の中で、尋ねて来た女の子に該当する人物は見覚えがない事を告げる。
「そう‥ですか‥‥」
女の子はこの近くに妹が居ない事に対し落胆した様子。
「お母さん、スバル居ないって‥‥」
女の子が後ろを振り返ると、その子は固まる。
「え?あ、あれ?あれあれ?あれれ?お、おかーさーん?おかーさーん?」
母親らしき人物の姿が見当たらない事に女の子は、露骨に顔色を変え、焦りに満ちた顔でキョロキョロと辺りを見回している。
その子につられて黒木と麻侖も辺りを見回すが、女の子の母親らしき人物はまったく見当たらない。
「えっ、えっと、あ、あれー?あれー?お、おかーさーん?」
「もしかして‥‥」
「迷子?」
妹を探していた姉がこの人ごみの中で母親と離れ離れになった様だ。木乃伊取りが木乃伊に‥‥迷子が二人に増えただけで何も解決していなかった。
「うぅ~」
自分が迷子になってしまったと言う現実を知り、女の子の瞳に涙が浮き始める。
「泣くねぇ、嬢ちゃん。この柳原麻侖様がお前さんのお袋さんと妹さんを見つけてみせらぁ!!」
麻侖が迷子になった女の子の肩にポンと手を置いて、逸れた母親と妹を探してやると言い放つ。
「ちょっ!!マロン!?」
勝手に迷子の親を探す事を決めた麻侖に黒木は慌てて声をかける。
「迷子なら、迷子センターに連れて行けばいいじゃない」
「てやんでぇい、困った子供を見捨てちゃあ、江戸っ子の名が廃るってもんでぇい!!」
「いやいや、私達、江戸っ子(東京)じゃなくて千葉県民だから」
「細けぇ事はいいんだよ。さっ、行くぞ!!嬢ちゃん!!クロちゃん!!」
「う、うん‥‥」
麻侖のテンションにさっきまで泣く寸前だった女の子はついていけず、キョトンとしていた。
(宗谷さんなら、こんな時どうしていただろう‥‥)
黒木はもし、迷子を前にした時の真白の事を想像した。
(宗谷さんなら、きっと目の前で困っている子を見捨てはしないわね)
「はぁ~しょうがないわね」
黒木も麻侖に付き合い、女の子の母親と妹を探す事になった。
「そう言えば、嬢ちゃん、何て名前なんでぃ?」
「ぎ、ギンガ‥中島ギンガです」
「ギンガか‥何かキラキラしていそうな名前だな」
(所謂キラキラネームってやつね‥‥)
麻侖はハハハハ‥‥と笑いつつ、ギンガの頭をくしゃくしゃと撫でる。そして、黒木はギンガの名前が、一般常識から著しく外れているとされる珍しい名前‥所謂キラキラネームだと判断した。
「アタシは柳原麻侖様だ!!で、あっちが‥‥」
麻侖は先程、自分の名前を名乗ったのだが、改めて自分の名前をギンガに伝え、次に視線と手で黒木を指す。
「私は、黒木洋美」
此処で、自分の名前を名乗らない訳にはいかず、黒木もギンガに自分の名前を名乗る。
「それじゃあ、ギンガのお袋さんと妹さんを探しに行くか!!」
「う、うん‥‥」
麻侖と黒木も迷子となったギンガの母親と妹を探しにフェスター会場を歩き始めた。
同じく迷子であるスバルの親と姉を探している葉月達は、
「ねぇ、スバルちゃん」
「はい?」
「スバルちゃんのお母さんってどんな人なの?」
明乃が葉月に抱っこされているスバルに母親がどんな人なのかを尋ねる。
「う~んと‥‥おかあさんはきれいな人!!いつもおとうさんと朝、チューしているの」
スバルの漠然とした説明では、彼女の母親がどんな顔なのか分からない。
「えっと‥‥それじゃあ、今日お母さんはどんな服を着ていたの?」
次にもえかがスバルの母親の服装を尋ねる。
「はづきおねえちゃんとおなじズボンをはいていた」
スバルが言うにはスバルの母親はジーンズを穿いていると言う。しかし、この会場でジーンズを穿いている女性が一体何人いるだろうか?
入場制限されているとは言え、かなりの人数が居る筈である。
服装でもスバルの母親を探すのも無理があった。
「それじゃあ、名前は何って言うのかな?」
明乃がスバルの母親の名前を尋ねる。
「クイント、なかじまクイント」
「クイントさんだね」
「お姉ちゃんは?」
「ギンガ、なかじまギンガ」
スバルの母親と姉の名前を知り、明乃ともえかは、
「クイントさぁーん!!中島クイントさん!!いらっしゃいますか!?」
「クイントさーん!!ギンガさーん!!」
近くにスバルの母親である中島クイントか姉の中島ギンガが居ないか声を上げる。
しかし、近くには居ない様で明乃ともえかの呼びかけに応じる気配がない。
「ねぇ、スバルちゃん」
「なあに?」
「スバルちゃん、このお祭りに行く前にどこか行きたい場所とかをお母さんかお姉ちゃんに言ってない?」
事前にフェスターのイベントかブースを回る計画を立てていれば、其処にスバルの母親か姉がいるかもしれないと思った葉月。
「う~んとね、みんなで大きなお船に乗ろうってやくそくしたの!!」
「大きなお船?」
「それって‥‥」
スバルの言う大きなお船、それに心当たりのある葉月達は急ぎ、その場所へと向かった。
その頃、スケジュール調整とイベントの助っ人を終えた真白は開催本部へと戻った。
武蔵に乗るのに、この体操服姿では流石に恥ずかしいので、着替えに来たのだ。
しかし、それが不味かった。
開催本部に戻った真白は真冬を始めとするブルーマーメイドの隊員らに捕まって、お礼を言われつつ絡まれた。
「あ、あの‥私は武蔵に‥‥」
「大丈夫、大丈夫!!体験航海まで時間があるって!!ハハハハハハ‥‥」
真冬は真白の背中をバンバンと叩いて大丈夫だと言う。
しかし、真白にはどうも不安がぬぐえないのだが、真冬は真白を逃がす気配はなかった。
真白が開催本部にて、真冬に捕まっている中、スバルを連れた葉月達は武蔵の体験航海が行われる埠頭へと辿り着いた。
もしかして、スバルの母親か姉がこの埠頭に着ているかもしれないと思い、辺りを見回す。
すると、
「あー!!やっと見つけたわよ!!スバル!!」
葉月達の下へ一人の少女が駆け寄ってくる。
どうやら、近づいてくる少女はスバルの家族の様だ。
そう判断した葉月はスバルを下ろす。
「おねーちゃんっ!」
駈け寄って来る少女の姿を見たスバルは姉の元へ駆け出す。
「全く心配したんだからね!!一人で勝手に歩いちゃ駄目って言ったでしょ?めっ!!」
妹を嗜める姉と反省する妹という微笑ましい光景に、足を止めていた人々は口元に微かな笑みを浮かべながらその場を後にしていく。
ただ、ギンガよ‥‥今の君がその台詞を言っても説得力はないぞ。
「良かったね、スバルちゃん。お姉ちゃん見つかって」
明乃が姉と再会出来たスバルに声をかける。
「うん!!」
「あの、どちら様ですか?」
スバルを抱きしめながら、スバルの姉は葉月達が誰なのかを尋ねる。
「はづきおねえちゃんとあけのおねえちゃん、もえかおねえちゃんだよ。一緒におかあさとおねえちゃんを探していてくれたの」
スバルが姉に葉月達が何者なのかを教える。
「そうだったんだ‥‥」
スバルが事情を聴いたスバルの姉は、抱き付いていたスバルを引きはがし、姿勢を正して、
「妹がお世話になりました。私はスバルの姉の中島ギンガと言います」
頭をペコッと下げて、ギンガは葉月達にお礼と自己紹介をした。
その時、
「どうしたんでぃ?ギンちゃん、突然駆けだしたりして」
人ごみの中からギンガの後を追うように赤みがかった茶髪で小柄の少女(麻侖)と茶髪で長身、切れ長の目(黒木)の二人の少女がやって来た。
(あっ、あの子、さっき真白ちゃんを追いかけていた子だ‥‥)
二人の内一人は、葉月は見覚えのある少女だった。
「あっ、マロンさん、洋美さん。妹が見つかりました」
ギンガが二人に自分の妹が見つかった事を知らせる。
「ん?そちらさんは?誰でぇい?」
赤みがかった茶髪で小柄の少女(麻侖)は葉月達の存在に気づき、尋ねてくる。
「あっ、妹がお世話になった方々です。えっと‥‥」
ギンガが、赤みがかった茶髪で小柄の少女(麻侖)に紹介しようとしたが、ギンガは葉月の名前を知らない事に気づいた。
「あっ、自己紹介がまだだったね、私は岬明乃」
「知名もえかです」
「自分は広瀬葉月です」
「アタシは柳原麻侖でぇい!!」
「‥‥黒木洋美です」
迷子となった中島姉妹との出会いは葉月達、そして麻侖と黒木にまた別の出会いを呼び寄せたのであった。