ハイスクール・フリート 旭日のマーメイド   作:破壊神クルル

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10話 初体験

「うぅ~‥‥」

その日の朝、葉月はなんだか身体が重く、腹部には何かズキズキと鈍痛が走った。

風邪をひいた訳ではないし、夕べは変なモノを食べた記憶も無い。

確かにここ最近は天照の改装工事で忙しいが、そこまで無理をして居る訳でもない。

体の不調に思い当たるフシがなく、また我慢できない訳では無い痛さであるが、変則的に襲いかかって来るこの鈍痛にいらついてくる葉月。

リビングに降りてくると、

 

「あら?葉月、おはよ‥‥なんか、機嫌悪そうね、何かあったの?」

 

「なんでもありません!!」

 

「「っ!?」」

 

不機嫌且つ何かピリピリしている様子の葉月に真霜と真白はちょっと引く。

今の葉月は何にでも噛みつく狂犬の様な雰囲気を出している。

 

(姉さん、今日の葉月さんなんか物凄く機嫌が悪そうですよ‥‥)

 

(え、ええ‥でも昨日の夜はそんな素振りは無かった筈よ‥一体何があったのかしら?)

 

イラつく葉月に対して、引くと言うよりは少し怖がっている真霜と真白。

 

そこへ‥‥

 

「おっーす!!おはよう葉月!!」

 

スパーン!

 

何も知らない真冬が葉月に挨拶しながら、葉月の背中を叩く。

 

「っ!?痛いじゃないですか!!真冬さん!!」

 

真冬に背中を叩かれ、葉月は何故か声を荒げる。

 

「ご、ゴメン‥そんなに痛かったか?」

 

「あっ‥‥い、いや、怒鳴るつもりじゃなかったんですけど。‥‥すみません‥‥」

 

申し訳なさそうな顔をした真冬を見ると、幾分冷静になったのか葉月も謝る。

 

「ホントにどうしたのよ?葉月らしくないわよ」

 

「そ、そうですよ‥今日の葉月さん、なんかちょっと怖いですよ」

 

真霜と真白が恐る恐る葉月にどうして今日は朝からそんなに機嫌が悪いのかを尋ねる。

 

「何でもありません‥‥」

 

葉月はぶっきらぼうにそう答えるが、

 

「いや、本当に大丈夫?」

 

やはり、大丈夫そうにない葉月に対し、心配そうに聞く真霜に‥‥

 

「大丈夫だって言っているだろ!!」

 

と、思わずきつい言い方をしてしまう。

 

「ゴ、ゴメンなさい‥‥」

 

普段は葉月をからかう側の真霜がいつになく葉月に怯える。

 

「あっ、すみません‥真霜さん。‥‥その‥何か今日はヘンなんです。何か妙に落ち着かないというか‥‥」

 

「ううん、いいの」

 

しおらしい態度の真霜を見て、真白は目が点となっていた。

 

(あの真霜姉さんがあんな態度をとるなんて‥‥)

 

真白が抱く真霜は常に自信満々に満ちていて怖いモノなんて存在しないイメージを抱いていた。

そんな真霜が自分の目の前で怯えている。

姉の珍しい態度と光景を見て真白が驚愕し、真霜がシュンとしている中、

イラつく葉月に対して空気を読むのが苦手な真冬が‥‥

 

「ったく、何をそんなにイラついている?気合が足りないのか?だったら私が気合を入れてやろう」

 

真冬が手をワキワキと怪しい手つきで葉月に迫る。

 

(全く、あの子は諦めが悪いんだから‥‥)

 

(真冬姉さん、そういう恥ずかしい事は身内だけに留めてくれ‥‥)

 

真冬の悪い癖がまた出た様だ。

これまで真冬は葉月の尻を狙ってきたが、葉月は真冬の魔の手から運よく逃れて来た。

しかし、真冬はこれまで失敗続きして来たにも関わらず、今回もまた葉月の尻を狙っている様子。

 

「行くぞ!!葉月!!気合注入!!」

 

真冬が葉月の尻をロックオンして一気に葉月めがけて突っ込んで行く。

普段ならば、此処で葉月がヒョイと身体を逸らして、真冬からの気合注入から躱すのだが、今日は違っていた‥‥。

 

「っ!?」

 

葉月は真冬の腕を掴むとそのまま勢いを殺さず、真冬を一本背負いで投げ飛ばしたのだ。

 

「ぐぇっ!?」

 

「「‥‥」」

 

葉月の行動に真霜と真白は唖然とした。

 

リビングにはいつぞやの脱衣所の時の様に目を回して倒れている真冬と不機嫌さ全開の葉月が其処に居た。

 

「あっ、す、すみません‥‥」

 

リビングでノックアウトしている真冬に葉月は慌てて謝る。

 

「い、一体、どうしたっていうのよ?今日の葉月はホントに変よ」

 

「‥‥何か分からないけど、どうも朝から妙に落ち着かないんですよ‥‥無性にイライラするし、身体は重いし、お腹は何かズキズキと鈍痛がするし‥‥」

 

「えっ?それって‥‥」

 

真霜はようやく葉月の不機嫌な理由が分かった様子だった。

 

「ん?なんです?真霜さん」

 

真冬を沈めた葉月がギロッと真霜を見る。

 

「い、いえ‥何でも無いのよ‥‥アハハハハ‥‥」

 

真霜は引き攣った笑みを浮かべる。

 

(姉さん、葉月さんの不機嫌な理由ってもしかして‥‥)

 

(真白、しっ――!!)

 

此処で真白も葉月の不機嫌さの理由に気づいた。

真霜は真白に声に出すなと言うジェスチャーと共に小声でささやく。

 

(葉月、やっぱり貴女は本当に女の子になったみたいね‥‥)

 

真霜は哀れむ様な同情する様な視線を葉月に向けた‥‥。

不機嫌のままで葉月はこの日もドックへ行き、天照の改修作業の場に立ち会ったが、今までにない葉月の不機嫌さにドックの技術者達も今日は葉月に話しかけにくそうだった。

 

 

そして、翌日‥‥

 

「うわぁぁぁぁ――――――――っ!!」

 

早朝、宗谷家に葉月の叫び声が響いた。

 

「なに?今の声?」

 

「葉月?」

 

「何があった!?」

 

「ど、どうしたんですか?葉月さん」

 

宗谷家の四人が葉月に部屋に駆け込むと、葉月は顔を真っ青にしていて、その下半身は血で真っ赤に染まっていた。

 

「葉月さん、しっかり。気を確かに持って」

 

「ま、真雪さん‥‥血が‥‥あり得ない所から血が‥‥」

 

葉月としては怪我をしたわけでもないのに血が出てきた。

しかも、普段怪我をしないような場所から‥‥。

そんな現象をみれば、驚いて声を出すのも無理は無かった。

 

「あぁ~あ‥‥葉月、やっぱり‥‥」

 

真霜は自分の予想が当たっていた事に思わず声が漏れた。

 

(葉月ったら、女子であることの不都合をまだ理解できていなかったのね‥‥)

 

葉月の様子を見て、真冬もここでようやく昨日から葉月が不機嫌だったのが分かった。

 

「なんだ、葉月の奴、生理だったのかよ」

 

真冬はハハハハと笑いながら言う。

 

「葉月さん、少し保健の勉強をしましょう」

 

真雪が葉月に保健の勉強をしようと言う。

 

「勉強?‥ですか?」

 

「ええ、貴女ぐらいの年齢の女子なら習っているはずの女の子の身体的特徴の事を貴女は全く知らないでしょう?」

 

「は、はい‥‥」

 

前の世界では男だった葉月は学生時代に女子の保健なんて習っている筈がなく、そう言った知識がなくても仕方がなかった。

 

「なら、そう言った知識の習得は必要よ」

 

真雪の話から以前、真霜が使っていた保健の教科書を使い、真雪と真霜の二人は葉月に女性の身体について教える事にした。

ただ、保健の授業の際、葉月はやや頬を赤らめており、その様子を見ながら葉月に教えていた真雪と真霜は、

 

((初心ね‥‥))

 

と、葉月に初々しさを感じた。

それと同時に生理中の葉月をあまり怒らせない様にと言う暗黙のルールが誕生した。

 

女性の身体についての知識を得て、生理痛も収まったある日の朝、

 

生理痛も収まったので、葉月の機嫌は直っていた。

そんな中、

 

「ねぇ、葉月」

 

「はい?」

 

「また、コーヒーを淹れくれない?」

 

真霜が葉月にコーヒーを淹れてくれと頼んできた。

 

「いいですよ」

 

葉月は部屋からコーヒーサイフォンを持ってきてコーヒーを淹れ始める。

 

「おっ?なんだそれは?」

 

(理科の実験道具?)

 

コーヒーサイフォンを見た事のない真冬と真白はコーヒーサイフォンを見て、葉月が何をしているのか分からず、真白は平賀と同じ印象を抱いた。

 

「コーヒーを淹れているんですよ」

 

「ええぇー!!この理科の実験道具でコーヒーを淹れられるのか?」

 

「実験道具って‥‥」

 

真白と平賀がコーヒーサイフォンの印象を口にする真冬。

それを聞いて、葉月が顔を少し引き攣らせる。

一度、葉月の淹れたコーヒーを飲んだ事の有る真雪と真霜は淹れている中、楽しみにしている様子で待っており、真冬と真白はこんな理科の実験道具みたいな機器で淹れたコーヒーは飲めるのか?

それ以前にコーヒーなんて淹れられるのか?

と、疑問視していた。

その後、淹れたてのコーヒーを宗谷家の皆に振る舞う葉月。

真雪と真霜は美味しそうにコーヒーを飲み、真冬も当初は、「これ大丈夫なのか?」とカップに入ったコーヒーをジッと見るが、一口飲んでその思いはあっさりと消え去った。

 

「おおー!!美味いな!!このコーヒー!!」

 

真冬も葉月の淹れたコーヒーを気に入った様子。

しかし、真白は‥‥

 

「‥ニガッ」

 

中学生の真白にブラックコーヒーはまだ早かった様で、飲みにくそうだった。

 

「‥真白ちゃん、飲みにくい?」

 

「い、いえ‥そんな事は‥‥」

 

体裁かそれとも淹れてくれた葉月に対しての心遣いなのか、真白は更にブラックコーヒーが入ったカップを口につける。

 

「‥‥真白ちゃん、ちょっと貸して」

 

と、真白のカップを持って一度台所へ行き、戻って来るとカップの中にはブラックコーヒーではなく、カフェオレが入っていた。

 

「はい」

 

「えっ?」

 

「ミルクと砂糖でカフェオレにしてみたんだ。これなら、飲みやすいと思うよ」

 

「あ、ありがとうございます//////」

 

カップを受け取った真白は頬を赤くしながら、カフェオレを一口飲む。

 

「‥‥美味しい」

 

カフェオレを飲んだ真白は一言そう呟いた。

真白からの感想を聞いて、葉月は微笑みながら葉月も自分が淹れたコーヒーを一口飲むがやはり、葉月が満足のいく結果にはいかなかった。

それでも宗谷家の皆には十分満足の行く味だっため、真霜達は特に不満はなかった。

そして、それ以降、葉月は宗谷家の朝食の際、コーヒーを淹れる係りとなった。

 

 

それから少し経ったある夜の事‥‥

宗谷家の夜の台所で真霜が何かを作っていた。

 

「‥‥後はこれを入れて‥‥っと‥‥フフ、待っていなさい、葉月」

 

真霜はニヤリと口元を緩めた。

 

何かの陰謀が始まろうとしていた‥‥。

 

そんな陰謀が自分の身に降りかかろうとは思ってもみなかった葉月は、就寝前にベッドの上で小説を読んでいると、

 

コンコン

 

と、部屋のドアをノックする者が居た。

 

「どうぞ」

 

「こんばんは、葉月」

 

入室を許可すると、二つのマグカップを持った真霜が入って来た。

 

「真霜さん。どうしたんですか?」

 

「ちょっと、葉月とお話をしたくて‥‥」

 

「はぁ‥まぁいいですよ」

 

「そう?あっ、ハイコレ」

 

そう言って真霜は葉月に二つのマグカップの内、一つを葉月に手渡す。

マグカップの中身はココアだった。

 

「葉月の淹れたコーヒーもいいけど、こういうのもたまにはいいじゃない?」

 

確かに普段淹れて、飲みなれているコーヒーとも違うココアを飲むのもたまには悪くない。

真霜が淹れたココアを飲みながら、彼女と談笑し、ココアを飲み切った後も談笑は続いた。

そんな中、葉月の身体に異変が生じた。

どうも、体中が火照って来て熱いし、頭もボォ~っとしてきた。

流石に夜更かしをし過ぎて眠くなってきたのだろうか?

葉月がそう思っていると、目の前の真霜は突然、とんでもない事を口走った。

 

「フフフフ‥効いてきたみたいね」

 

「き、効いてきた‥‥真霜さん‥何を‥‥?」

 

葉月としては真霜が何を言っているのか理解できなかった。

 

「フフ、さっき貴女が飲んだ、ココア‥その中に媚薬を入れていたのよ」

 

「び、媚薬!?な、なんでそんなモノを‥‥」

 

「決まっているじゃない‥葉月‥貴女を抱く為よ」

 

「だ、抱く!?//////」

 

真霜の発言に思わず、驚愕する葉月。

 

「な、なんで‥そもそも自分達は同性の筈‥‥」

 

「ええ、貴女の言う通り、私達は女‥でも、私にとってはそんな事(性別)は関係ないわ‥‥私は好きな者なら例え同性でも良いの‥‥」

 

「な、なんで‥自分を‥‥?」

 

「病院で入院中の貴女を見た時‥‥それにこの前、貴女が生理痛できつく言われた時‥‥私の身体の中に電気が走ったわ‥‥その時の快感を‥いえ、それ以上を味わいたいのよ

 

そう言って葉月ににじり寄る真霜。

一方、葉月は火照った体のせいで上手く動かない。

忽ちベッドに押し倒される葉月。

眼前には今の自分同様、顔を赤くし火照った様子も真霜。

 

「大丈夫、葉月を気持ちよくしてあげるから‥‥」

 

葉月の耳元でそう囁き、今度は葉月の唇を奪う真霜。

 

「んっ‥‥ちゅっ‥‥んむっ‥‥ちゅっ‥‥んんっ‥‥」

 

「ちゅっ‥‥んんっ‥‥ちゅっ‥‥んっ‥‥んむっ‥‥」

 

部屋にピチャピチャと淫猥な音が響く。

 

お互いの舌を絡めあわせた深く熱い口付けをした頃には、媚薬とこの空気のせいで葉月の頭の中は真っ白になる。

 

「いいわね‥‥葉月‥‥?」

 

「あっ‥‥は‥‥はい‥‥」

 

上手く、思考が働かない中、葉月は無意識に返事をしてしまう。

真霜は自らが着ていた寝間着を脱ぎ、続いて葉月の寝間着を剥ぎ取る。

 

「フフ、綺麗な肌‥‥それにいい形の胸ね‥‥」

 

真霜は赤子が母親の乳房を吸うかのように葉月の乳頭に口をつけた。

次々と感じる未知なる感覚に葉月は理性を捨てて本能だけとなった。

それは相手の真霜も同じ様だ。

 

 

 

~しばらくお待ちください~

 

 

 

数時間後、二人は生まれたままの姿でベッドの上で抱き合っていた。

月の光が二人を照らし、実に神秘的な光景だった。

 

「葉月、なかなか不器用なのね‥彼女、居たんでしょう?」

 

「‥‥じ、自分は‥その‥‥契りを交わすのは、祝言後と決めていたので‥‥」

 

「随分堅い考えね」

 

「今はどうか知りませんが、あの時代ではそんなに珍しい事ではありません」

 

「なら、私の初めてを貰ったんですもの‥責任はちゃんと取ってくれる?」

 

「えっ?」

 

「フフ、冗談よ‥でも、時々で良いからまた、相手をしてくれると良いんだけどな‥‥//////」

 

「‥‥と、時々ですからね‥‥その‥毎日とか‥‥毎週じゃ‥‥身が持ちませんから‥‥」

 

「ええ‥‥葉月‥‥んっ」

 

「んっ‥‥」

 

「んっ‥‥ちゅっ‥‥んむっ‥‥ちゅっ‥‥んんっ‥‥」

 

「ちゅっ‥‥んんっ‥‥ちゅっ‥‥んっ‥‥んむっ‥‥」

 

葉月と真霜は互いの舌を絡ませ合いながらの長いキスは数十分にも数時間にも感じた。

 

その後、二人は互いの温もりを感じ合うかのように眠りについた。

 

 

 


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