ハイスクール・フリート 旭日のマーメイド   作:破壊神クルル

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8話 宗谷家

入院生活をしていた葉月であったが、体力等も入院当初よりは随分と回復しており、退院も間もなくと言う所まで迫っていた。

そんなある日‥‥

 

「えっ?私服‥ですか‥‥?」

 

「そうよ」

 

葉月は真霜に私服の話を持ち掛けられた。

 

「でも、服なら、幾つかありますよ」

 

「あの、服は貴女が男の時に着ていた服で、サイズが合わないでしょう」

 

「あっ‥‥」

 

確かに真霜の指摘通り、葉月の焦げ茶色のトランクに入っていた服は葉月が男の時の服で、今の葉月にはサイズが合わない。

 

「でしたら、第一種軍装があるので、それで‥‥」

 

「あの一着だけで、この先過ごすつもり?」

 

「うっ‥‥」

 

確かに服が一着‥‥それも軍服だけとはこの先の生活には不便だ。

 

「で、でも、自分持ち合わせが‥‥」

 

今の葉月は無一文に近い状態なので、とても服を買う余裕は無い。

 

「あっ、それなら大丈夫よ、服の代金ぐらい私が立て替えてあげるわよ」

 

なんと、葉月の私服代は真霜が代わりに払ってくれると言う。

 

「それに、看護師さんにも聞いたわよ」

 

真霜は服の件で看護師に何かを聞いたみたいで、葉月に迫って来る。

 

「な、何を‥ですか‥‥?」

 

「‥‥貴女、看護師さんに下着を注文した時、無理を言って男物を頼んだみたいね」

 

「っ!?」

 

「それに、ブラも着けていないんだって?」

 

「‥‥」

 

真霜の指摘が図星だったみたいで、葉月は真霜から視線を逸らす。

 

「全く、看護師さんに貴女の服のサイズを聞いてみたら、案の定みたいね‥‥」

 

「‥‥」

 

「いい?葉月、今の貴女は女なのよ!?」

 

「は、はい」

 

「女性がそんな隙のある格好をしていてはいけません」

 

「えっ、でも心は男なんだけど‥‥」

 

「つべこべ言わない!!」

 

「は、はい」

 

真霜の謎の威圧に葉月はただ従うしかできない。

これが、一等監察官、宗谷真霜の実力なのだろうか?

 

「兎に角、退院したら、貴女は家(宗谷家)で過ごすことになるのよ。それまでには女性の服にも慣れておかなければ、いけません」

 

「は、はい‥‥」

 

「と言う訳で‥‥」

 

そう言うと、真霜は一度葉月から離れ、何故か病室のドアのカギをかける。

 

「ま、真霜さん?どうして部屋の鍵を‥‥?」

 

「えっ?だって、こうしないと誰かが入って来ちゃうかもしれないでしょう?」

 

病室のドアにカギをかけると、じりじりと葉月に滲み寄る真霜。

軍人としての本能か、生物としての本能か、葉月は無意識に真霜から距離を取ろうと、後ずさりする。

しかし、此処は、病室‥逃げるにしても限りがあり、忽ち葉月は壁の隅へと追いやられる。

 

「フフフフ‥‥」

 

真霜は怪しげな笑みを浮かべ、懐からメジャーを取り出す。

 

「そ、そのメジャーは?」

 

「貴女をしば‥‥貴女の身体の大きさを図るためよ」

 

「ちょっ!?今、『縛る』って言いかけませんでした!?」

 

「貴女の聞き違いよ」

 

真霜は一瞬、何か別な事を口走ったにも関わらず、何事も無かったように振る舞い葉月に迫る。

 

「フフフフ‥さぁ、観念なさい!!はぁっ!!」

 

真霜は一瞬で、葉月のパジャマのズボンを剥ぎ取る。

 

「っ!?//////」

 

パジャマのズボンを剥ぎ取られ、赤面する葉月。

そんな葉月に真霜は更に追撃をかける。

今度はパジャマの上も剥ぎ取られてしまったのだ。

葉月はブラを着けていないので、男物の下着一枚となった。

 

「全く、そんな色気のない下着なんて穿いて‥‥」

 

真霜は葉月の男物の下着を見て、呆れた様に言う。

 

「ちょっ、いきなり何するんです!?」

 

葉月は真霜に抗議するかのように言いながら、一先ずパジャマのズボンを穿こうとする。

 

「あっ、ダメよ!!まだ、ヒップのサイズを測っていないでしょう」

 

「べ、べつにズボンの上からでも出来るでしょう!!」

 

「ダメよ、より正確に測るにはなるべく肌に近くないと‥‥ハァハァハァハァ‥‥」

 

真霜の目つきは怪しく、息遣いが荒い‥‥。

 

(真霜さん、もしかして自分の身体を‥同性の身体を見て興奮しているのか?)

 

真霜の様子を見て、ドン引きする葉月。

 

「さ、さぁ、葉月ちゃ~ん。測定のお時間ですよぉ~」

 

「うわぁぁぁぁー!!」

 

その後、葉月は真霜の手によってバスト、ウエスト、ヒップのサイズを測られた。

最後の砦である下着だけは何とか死守したが、葉月にとっては、この世界で初めて辱めを受けた。

 

「うん、なかなかのモノね、葉月ちゃん」

 

葉月のスリーサイズを測った真霜は満足そうに測ったばかりの葉月のスリーサイズの結果を見ながら言う。

 

(真白ちゃん辺りが、嫉妬するかも‥‥)

 

「それじゃあ、このサイズの服を買って来るわね」

 

「あっ‥その‥‥」

 

「ん?どうしたの?」

 

「その‥‥服はなるべくズボンにしていただけたら‥‥」

 

「まだ、そんな事を言っているの?」

 

「やっぱり、恥ずかしいですよ!!スカートなんて‥‥」

 

「もう少し、自信を持ちなさい。今の貴女はどこからどう見ても女の子なんだから」

 

「うぅ~//////」

 

顔を赤くし、俯く葉月。

そんな葉月の仕草を見て、真霜は、

 

(はぅ~やっぱり、かぁいいよぉ葉月ちゃん、このままお持ち帰りぃ~ したいわぁ~)

 

まだ退院手続きが済んでいないが、このまま葉月を家に持ち帰りたい衝動にかられる真霜。

 

(っ!?今、真霜さんから無邪気の様な何か如何わしい気配を感じた‥‥)

 

ビクッと身体を震わせ、葉月は真霜を見た。

すると、彼女は何故か身体をきねらせて悶えていた。

 

(やっぱり変だ‥‥)

 

葉月は出会った時は、女性ながらも軍人気質な感じの女性だと思っていた真霜にこんな側面があるとは思っても見なかった。

 

「それじゃあ、葉月、楽しみに待っていてね」

 

そして、ようやく真霜は帰って行った。

 

たった一時間ちょっとしか居なかったのだが、葉月にとってその一時間が物凄く長く感じた。

 

 

それから、数日後‥‥

いよいよ葉月の退院する日がやって来た。

退院前に真霜が葉月の病室を訪れ、葉月に着替えを渡す。

 

「‥‥」

 

葉月は渡されたモノをジッと凝視する。

 

「ほら、いいかげん諦めなさいって」

 

真霜は呆れた感じで葉月に言う。

今、葉月がジッと凝視しているのは、女物の下着‥‥ブラジャーだった。

 

(諦めろって、そう簡単な問題じゃないんだけどな‥‥第一コレ、どうやって着けるんだ?)

 

今までの人生の中でブラジャーなんてモノを着ける機会なんて無かった葉月にとって、全くの未知なるモノだった。

 

「もしかして着け方分からないの?」

 

真霜は直ぐに葉月の意を組んで、

 

「ホラ、貸しなさい、着けてあげるから」

 

「は、はい‥‥//////」

 

結局、葉月は諦めて、真霜にブラジャーを着けてもらった。

さよなら、男の自分、こんにちは、女の自分。

そんなナレーションがどこからか聞こえて来た葉月だった。

 

ブラジャーはつける羽目になったが、下着は女物を穿く勇気がまだなく、それに用意して貰ったのは女物のジーンズだったので、下着はそのまま男物の下着を着用した葉月。

真霜もその点は妥協してくれた様だ‥‥今回だけは‥‥。

上は白いTシャツに黒いカーディガンを羽織り、浅靴を穿いて着替えは終了した。

 

「どうも、お世話になりました」

 

病院の関係者にお礼を言って、葉月と真霜はタクシーに乗り、宗谷家へと向かった。

 

「さっ、着いたわよ」

 

(大きい‥‥)

 

宗谷家の門前で葉月は唖然としながら、宗谷家を見た。

華族の屋敷並みに宗谷家はデカかった。

家のデカさに葉月が唖然としているのを尻目に真霜は自分の家なので、平然とした様子でモンを潜る。

 

「何しているの?ホラ、入ってらっしゃい」

 

門前で唖然としている葉月に気がついて声をかける真霜。

 

「あっ、はい‥‥」

 

真霜の声に反応して慌てた様子で真霜の後を追う葉月。

そして、いよいよ葉月は宗谷家へと足を踏み入れた‥‥。

 

宗谷真白は自分の部屋で勉強をしていると、突如、姉である真霜からリビングへ来いと言われた。

何事かと思ってリビングへと行くと、其処には自分と同じぐらい‥いや、一つか二つ年上の少女が居た。

一瞬、誰だ?と思いつつ、姉の真霜が紹介するだろうと思い、ソレをまった。

しかし、次女の真冬が、自分が思った事を口にした。

 

「なぁ、姉さん。ソイツ誰だ?」

 

「この娘は、母さんの古い友達の娘さんで、広瀬葉月さんよ」

 

「ど、どうも‥‥」

 

真霜から紹介を受けた葉月が真冬と真白に一礼する。

葉月の立場は一応、真雪の古い友人の娘と言う事になっている。

まさか、異世界から来ました。 と、言った所でそう簡単に信じてもらえる筈がない。それならば、少しでも混乱を少なくするため、嘘も方便だ。

 

「へぇ~私は、宗谷真冬、よろしくな、葉月」

 

「は、はい」

 

「‥‥宗谷‥真白‥です‥‥」

 

真冬はニッと笑みを浮かべて葉月に名を名乗る。

反対に真白は戸惑いながらも名を名乗った。

 

「それで、葉月なんだけど、家庭の事情で暫くは家で面倒を見る事になったわ。これは母さんも知っているし、了承しているわ」

 

「ほう‥‥」

 

「なっ!?」

 

真霜の発言に真冬は興味深そうに葉月を見て、真白は寝耳に水といった感じで驚いた。

 

 

「それじゃあ、この部屋を使ってね」

 

「は、はい‥何から何までありがとうございます」

 

宗谷家の一室を真霜は葉月の為に用意しており、その部屋へと葉月を案内した。

部屋にはベッドや机、タンス等の最低限の家具は用意されていた。

 

「あの‥‥」

 

「ん?なに?」

 

「天照はどうなりましたか?」

 

「まだ、横須賀の大型船ドックにいるわ。今後はブルーマーメイドの本格的な調査が入ると思うけど、その際、貴女にも立ち会ってもらうわよ」

 

「わかりました」

 

葉月は再び天照と会える日を楽しみに待った。

 

 

その日の夕食は葉月の歓迎会が開かれた。

ただ、宗谷家の中で真雪の旦那‥真霜達の父親の姿が見えない事から、宗谷家は母子家庭なのだと推察できた。

夕食後、葉月は真霜達につき合わされて、トランプをやる事になった。

ババ抜きにおいて、真霜は常に笑みを絶やさないポーカーフェイスで、葉月は無表情‥しかも、手札を一切見ない。

反対に真冬と真白は顔に出るタイプで、これまで成績は真霜と葉月がそれぞれ一位と二位を繰り返し、真白はその幸運度の低さから四位続きとなっていた。

 

「‥次こそ‥‥次こそ真冬姉さんに勝つ!!」

 

真白は意気込んで最後の勝負に挑む。

 

真冬の手札は残り一枚、反対に真白の手札は二枚‥一枚はジョーカーだ。

 

「うぅ~ん‥と‥‥」

 

真冬の手がジョーカーでないカードに触れようとした時、

 

「っ!?」

 

真白の顔がマズイといった感じの顔になり、反対にジョーカーのカードに触れようとした時、それを引け‥‥といった感じのニヤリと笑みを浮かべる。

それをみた真冬はニヤリとし、

 

「こっちだ!!」

 

と、ジョーカーでないカードを引く。

 

「っ!?」

 

ジョーカーが手元に残り、真白の敗北が決定し、彼女は俯く。

そして、

 

「‥どうして‥‥どうして、負けるんだ‥‥」

 

と、まるで呪詛でも唱えるかのように呟いた。

そんな真白にどう声をかけてよいのか分からず、真霜と葉月は困惑している中、真冬が、

 

「そりゃあ、お前は私同様、顔に出るからな」

 

と、真白の連敗理由を暴露した。

 

「っ!?」

 

真冬からの暴露を聞き、真白は、

 

「ならば、次はこの顔でやり続けます」

 

と、無理に顔をつくり、ばれない様にして再びババ抜きに挑んだ。

しかし、持ち前の幸運度の低さでまた負けた‥‥。

 

真白が連敗に次ぐ連敗をし、テンションがダダ下がりの真白にもはやかけてあげる言葉が無く、真霜も真冬も時間が経てば治るだろうと判断した。

 

「葉月、お風呂、入ってらっしゃい」

 

真白を放置して真霜は葉月に風呂を薦めた。

 

「は、はい‥‥」

 

項垂れる真白が居るリビングを後に葉月は着替えを持って風呂場へと向かう。

脱衣所にて着ている服を脱ぎ、後は下着だけと言うその時、

 

「おーっす!!葉月!!一緒に入ろうぜ!!」

 

と、真冬が脱衣所に乱入。

 

「‥‥」

 

突然の真冬の登場に下着姿のままで固まる葉月。

 

「ん?なんだ、その下着は?男物の下着じゃぇか‥お前まさか、本当は男なのか!?」

 

真冬が驚愕しつついきなり葉月の下着をずり下ろす。

葉月が男なのかを確かめたのかもしれない。

 

「っ!?★■※@▼∀っ!?」

 

葉月は真冬の突然の脱衣所の乱入で固まってしまい、動けずに居た為、真冬の行動に後れを取ってしまったのだ。

 

「ん?なんだ、ちゃんと女じゃん。なら、どうして男物の下着なんて着けているんだ?」

 

真冬は葉月が正真正銘、女だと言う事を確認し、葉月に女なのにどうして男物の下着なんて着けているのかを聞くが、葉月にその質問に答える理性は残っておらず、

 

「いやぁぁぁぁぁー!!」

 

宗谷家に絹を割く様な悲鳴が響き、

 

「ぼげらっ!!」

 

そのすぐ後にカエルが潰れた様な鈍い声が宗谷家の脱衣所にした。

 

「どうしたの!?」

 

「何があったの!?」

 

「もしや、ゴキブリでも出たのか?」

 

葉月の悲鳴を聞いて真雪、真霜、真白の三人が脱衣所に来ると、其処にはバスタオルで身体を隠し、顔を真っ赤にした葉月の姿と、ノックアウトされた真冬の姿があった。

 

「な、ナイスパンチ‥だ‥‥ぜ‥‥」

 

そう一言言って真冬はガクッと気を失った。

この光景を見て、真霜達は脱衣所で内があったのかを察した。

真冬の尻好きは家族みんなが知っていたので、大方、真冬が葉月の尻をねらったのだろうと推測したのだ。

 

「ご、ごめんなさい、広瀬さん。家の娘が‥‥」

 

真雪が葉月に謝罪する。

しかし、葉月は‥‥」

 

「ハ、ハハハハハハ‥‥」

 

口からエクトプラズマを出していた。

 

病院では真霜に下着一丁にされ、次女の真冬にはとうとう下着までもを剥ぎ取られた葉月。

真白は心の中で葉月に、

 

(ご愁傷様‥‥広瀬さん‥‥)

 

と、合掌した。

 

真白の不幸体質がうつったわけではないかもしれないが、葉月の今後に幸あれ‥‥。

 

 


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