「私は、もう見失わない!支えてくれる人の想いと共に、あなたを倒す!!」
1人では何もできない。そして私は、1人だと思いこんでいた。でも、こんな私に想いを託して、一緒に戦ってる人がいる。
チームとして、1人では勝てない私に力をくれる仲間がいる。隣では、シオリさんとトウジが。後ろでは、小沢君が共に戦ってくれる。
そして……銀のペンダントを通じて、力を与えてくれる人がいる。
敗北と自責に心を囚われ、そのことを見失っていたさっきまでの私とは……違う!
「ライド、コール共になし!そしてアタック!グローリー・メイルストローム!!」
私の想いに反応しているのか、グローリー・メイルストロームも息を吹き返す。あなたも、私と一緒に戦ってくれていたのよね……メイルストローム。
「ダメージ5により、アルティメットブレイク!CB1、パワープラス5000!グレード1以上のカードを、手札からガードに使えない!(16000)」
「大口を叩きながら、できることはその程度か。ノーガード」
「ツインドライブ、1枚目、戦場の歌姫 ドロテア……2枚目、スーパーソニック・セイラー。ゲット!クリティカルトリガー!効果は全てグローリーへ!(21000 ☆2)」
紺に近いブレスを吐き、シュバルツシルトを焼き尽くす。クリティカル2の咆哮は、かなりの痛手となるはずだ。
「ダメージチェック。1枚目、星輝兵 ヴァイス・ソルダード。クリティカルトリガー。効果はシュバルツシルト(16000 ☆2) 2枚目、グラヴィティボール・ドラゴン」
リアガードを全てロックされている今、そのダメージトリガーは無駄よ!
「ターンエンドよ!」
リアガードのロックが全て解け、次のターンから行動できるようになる。
グローリーを取り囲むように陣形を整えるリアガードは、私に対して笑っているようにも見えた。
リサ:ダメージ5(裏1) 相手:ダメージ5(裏2)
「スタンドアンドドロー。悪いが、まだロックは終わらない。シュバルツシルトのリミットブレイクを再発動」
「もう1回!?」
ヒールトリガーのおかげで、もう1度コストが払えるようになったのか。ペルソナブラストのコストも、ドライブチェックで見えていたし……。
「CB3、ペルソナブラスト。相手のリアガードを3体ロック」
バシルとレヴォン、ブレイブ・シューターが再び黒輪に包まれる。2体のリアガードは無事だが、いわゆるV字ロック。さっきのターンと状況は変わらない。
「この効果発揮後、パワープラス10000。さらにクリティカルプラス1だ。(21000 ☆2) オーロライーグルのブースト、シュバルツシルト・ドラゴンでアタック。イーグルのスキルで、相手よりリアガードが多いならパワープラス4000!(31000 ☆2)」
「させないわよ!翠玉の盾 パスカリスで完全ガード!コストはドロテア!」
「ちっ、悪あがきを……!ツインドライブ!1枚目、飛将の星輝兵 クリプトン。2枚目、障壁の星輝兵 プロメチウム。くそ……!」
これまで冷静なプレイングをしていたのに、明らかに焦りの色が見える……。
「黒門のブースト、パルサーベアーでアタック!相手よりリアガードが多いことで、スキルでパワープラス3000!(18000)」
「スーパーソニック・セイラーでガード!」
「……ターンエンド」
リサ:ダメージ5(裏1) 相手:ダメージ5(裏5)
「私のターン!スタンドアンドドロー!そのままグローリー・メイルストロームでアタック!」
今できることは、少しでも抗うこと。テツジさんと共に……。そして、メイルストロームと共に!!
「再びアルティメットブレイク!CB1、パワープラス5000!グレード1以上でガードできない!(16000)」
「星輝兵 ステラガレージでガード!パルサーベアーでインターセプト!」
グローリーの咆哮が、螺旋を描いて放たれる。2体のユニットが守りに徹している中、私はツインドライブを始める。
「ツインドライブ!1枚目、輝石通信のラッコ兵。ゲット!ドロートリガー!1枚ドローして、パワーはグローリーへ!(21000) 2枚目、蒼嵐覇竜 グローリー・メイルストローム」
今の私には、これしかできない。でも、少しずつ追い詰めている。あなたが、力をくれるから。
「ターンエンド!」
この瞬間、リアガードのロックが再び解ける。5体のリアガードが、戦場に集う。
リサ:ダメージ5(裏2) 相手:ダメージ5(裏5)
「俺のターン、スタンドアンドドロー!黒門を開く者の前に、飛将の星輝兵 クリプトン(10000)をコール。オーロライーグルのブースト、シュバルツシルトでアタック!(17000)」
「ガード!ラッコ兵、ペンギン兵!さらにバシルでインターセプト!」
バシルの両隣にラッコ兵とペンギン兵が並び立ち、シュバルツシルトの攻撃を受け止める。
「ツインドライブ!1枚目、シュバルツシルト・ドラゴン。2枚目、星輝兵 メテオライガー。クリティカルトリガー!効果は全てクリプトンへ!(15000 ☆2)」
「ここでトリガー……!」
「そのクリプトンでアタック!黒門を開く者、ブースト!(22000 ☆2」
「させるわけない!ティアーナイト テオ、ジェットスキー・ライダーでガード!!」
「く……!ターンエンド!」
リサ:ダメージ5(裏2) 相手:ダメージ5(裏5)
「私のターン、スタンドアンドドロー!」
向こうのドライブチェックで、またシュバルツシルト・ドラゴンが見えていた。でも、コストを使いきっている今、もうリミットブレイクでロックされる心配はない!
「グローリー・メイルストローム(11000)をテオの前にコール!ペンギン兵のブースト、レヴォンでアタック!(16000)」
「……メテオライガーでガード!」
「そのユニットでガードを……。なら、これで終わりね!ブレイブ・シューターのブースト、グローリー・メイルストロームでアタック!そして、アルティメットブレイク!CB1で、パワープラス5000!グレード1以上でガードできない!(21000)」
「ステラガレージでガード!クリプトンでインターセプトする!」
必要なトリガーは1枚だけ……。それなら、私でもいけるか?いや……
「引くわ、トリガーを!ツインドライブ!1枚目、戦場の歌姫 ドロテア。2枚目、虹色秘薬の医療士官。ゲット!ヒールトリガー!」
「ば、馬鹿な……!?」
「ダメージを1枚回復して、パワーはグローリー・メイルストロームへ!!(26000)」
背中の突起物を射出し、シュバルツシルトの退路を断つ。そこにグローリーが接近し、巨大な爪でシュバルツシルトの体を引き裂いた。
「っ……!ダメージ、チェック。グラヴィティボール・ドラゴン……」
トリガーはない。そしてこれで、6枚目のダメージ。つまり、
「勝った……」
リンのリベンジ。チームへの貢献。そして何より、自分自身の成長につなげることができた。
「……まさか、勝つとは思わなかった」
ファイトが終わり、相手から出た第一声。それが、私の勝利に対する称賛の言葉とは……意外だった。
「孤独に打ち勝ち、お前自身の力を見事に証明したファイトだ。前言は撤回しよう……」
「いきなりそんな改まった態度になられても……正直混乱してるんだけど」
「だろうな」
何だろう。彼は……あの人たちとは違うのかもしれない。
「だが、次は負けない。今度こそ、孤独の辛さを刻みつけてやる」
「望むところよ。その時は、また仲間と一緒に勝ってみせるわ」
「期待しておこう……。武本コウセイだ。お前は?」
「森宮リサよ」
「そうか。では、俺は行く。この様子だと、リーダーは負けたみたいだからな」
「え?」
隣のMFSは、既に止まっていた。私よりも先にファイトが終わっていたみたいだ。リーダーって言ってたから……シオリさんのファイトか。
「おーい、森宮!」
後ろから小沢君が私を呼ぶ。その隣には、シオリさんもいる。
「勝ったね、森宮さん」
「ええ。……私、深く考えすぎてたわ」
MFSの方を振り返ると、そこにはもう彼はいなかった。彼とのファイトで、私は教えられた。仲間を。自分1人の強さを。
「頼れない仲間なんて、仲間じゃないわよね。私、弱いから……誰かに頼らないと勝てないの。今だって、このペンダントをつけていたから……」
「それは……確か、横山さんの」
「もう私は大丈夫。これからは、遠慮なく頼らせてもらうから。重荷となるかもしれないけど、そうしないと私は勝てない」
「……そんなの、今さらだよ」
すると、シオリさんは私の手をとって話し出す。
「私だって、森宮さんのことを頼りにしている。お互い様だよ。だって、仲間だから」
「仲間……」
「って言うか、今になって何言ってんだよって話だけどな。俺に言った言葉はどうするんだよ」
「う……うるさいわね!あれは、つい放っておけなくて言っただけよ。口から出任せみたいなものよ」
「そんな軽はずみな言葉だったのか!?」
今になって思えば、あれは小沢君に対してではなく、自分に向けたメッセージだったのかもしれない。
「そう言えば、シオリさんは勝ったの?」
「勝ったよ。だから……」
「俺たちの……勝ちってことか!」
「ってことは……あれ?確か、Aブロックって……」
「次で決勝戦。だから、残る試合は……後2つよ」
***
そんな会話をしていた傍らで、トウジは自分のファイトを続けていた。
「……おっと?どうやらあの感じ、もう俺たちの勝ちってことみたいっスね」
「何っ!?……マジかよ。何やってんだよ、あいつら!」
ま、シオリさんなら当然っスね。リサさんも吹っ切れたみたいでよかったっス。それに、ありだけ闘志燃やしていたら、負ける可能性なんて考えてもなかったっス。
手札事故して状況最悪だから、この勝利はありがたいっスね。……けど。
「くっそ!」
相手は今にもデッキを片付けようと手を伸ばしている。勝ちが決まったら無駄試合はせず、負けが決まっても無駄試合をしないっスか。
「逃げるんスか?」
「んなの、もう勝ちなんか望めねーじゃん?やるだし意味ねーし」
「はっ……笑っちゃうっスよ。……本当、無様だな」
「何!?」
「やられるだけやられて、自分も逃げようなんて……格好悪い。笑い者もいいところっスよ?せめて一矢報おうとは思わないんスかね?」
黙りこんでしまった。多分、かなり頭にきてるっスね。でも、ムカついてるのはこっちも同じ。自分たちのしてきた行為を教えてやらないと……終わりは見えない。
「ほら、どうすんスか?今は俺のターンっスから、続けるのかどうか、さっさと決めてほしいんスよ」
「こいつ、調子に乗ってんじゃねえぞ!」
「……なんなら、あんたがこのファイトに勝ったら、そちらのチームの勝ちってことでもいいっスけど?」
「なっ……!て、てめぇ!!」
俺、とんでもないこと口走ってしまったっスね……。これで負けたら、たまったもんじゃないっスよ。でも、こうでもしないと、あいつはここに残らない。
「勝てないファイトはしないって言うなら、勝てるファイトはするんスよね?これなら逃げることはない。恥をさらすこともない」
「んなの適当な口約束でしかねぇだろうが!」
「いいっスよ?俺が負けたら、チームの勝利をなかったことにすればいい。辞退してやるっス」
「は……!?正気か、こいつ!?」
悪いっスけど、俺は今日という日をずっと待ち望んでいたっスから、テンション上がりまくってるっスよ。
「くそ……!こいつ、どこまで俺を馬鹿にすれば気が済むんだよ……!!」
「これがあんたたちのやってきたことなんスよ!平気で相手の気持ちを折ることが、どれだけ惨めにさせるのかがわからないっスか!?」
柄じゃないっスね……。俺にしては珍しく、大声出してるなんて。
「……なら、続けてやるよ!その代わり、後悔すんな。二度と立ち上がれないように、ぶっ潰してやる!!」
「上等!スタンドアンドドロー!」
グレード2、メビウスブレス・ドラゴンにライドした俺は、無双の星輝兵 ラドン(9000)をコール。ヴァンガードのアタックはイエロージェムでガード。トリガーは出ず、ラドンで1ダメージを与える。
一方、相手はライドとコールはなく、そのままアタック。スパークレインのアタックはノーガードし、ドロートリガーをゲット。1枚ドローしてパワーが上がったため、(14000) 残りのアタックは、手札2枚で防ぐことができた。
で、さっきのスタンドアンドドロー。つまり、これで俺はグレード3。
「手札事故で遅れた分を取り返すっスよ!誘え!滅び渦巻く世界へ!星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン(11000)にライドっス!!」
メビウスブレスの足元にサークルが出現。回転しながら輝き、インフィニットゼロへと姿を変える。
「さっさと進めろ!」
「気が荒いっス。星輝兵 ネビュラロード・ドラゴン(11000)、魔爪の星輝兵 ランタン(7000)をコール!」
散々言ってやったおかげで、俺はスッキリして冷静にファイトを進めることができる。
けど、相手は怒りで冷静さを欠いている。こんなつもりじゃなかったっスけど、いつの間にか流れを自分のものに出来たみたいでよかったっス。
「ラドンでボーイングソードをアタック!スキルで星輝━━(12000)」
「ノーガードだ!ダメージは、神槍の抹消者 ボルックス。クリティカル!効果はボーイングソード!(16000 ☆2)」
スキルの説明を言い終わる前に、ラドンがボーイングソードの右肩を撃ち抜く。
あいつ、さっきのワタル君みたいっスね……。あの時は、リサさんが何とかしてくれたっスけど、あんたにそんなことしてくれる仲間は……もういない。
このチームは……理由はどうあれ、最後まで戦うと決めた奴の応援すらしないんスか。本当、悲しいっス。
ちなみにラドンは、星輝兵のヴァンガードがいれば、パワープラス3000。ボーイングソードにアタックは普通に通る。
「ダストテイルのブースト、インフィニットゼロで━━」
「スキルと合わせて18000だろ!?なら、セイオウボでガードだ!」
「ツインドライブ。1枚目、魔弾の星輝兵 ネオン。2枚目、星輝兵 ステラガレージ。よし、ヒールトリガーっス!ダメージを1枚回復して、パワーをネビュラロードへ!(16000)」
黒の咆哮を放つインフィニットゼロだったが、セイオウボが手を突き出し、威力を殺す。
「ランタンのブースト、ネビュラロードでロチシンにアタック(23000)」
「ロチシン!?く……ボルックス、デモリッション・ドラゴン、ロチシンでガード!」
何だ。ガードしたんスか。ってことは、次のターンに来るのは……。
「ターンエンドっス」
トウジ:ダメージ4 相手:ダメージ4
「くそっ!ふざけやがって……!このターンで潰す!スタンドアンドドロー!!」
ボーイングソードの足元に、赤いサークルが出現。だが、そこからは時折黒いオーラが迸る。
「唸れ、呪いの稲妻!黒き虚空に輝く絶望の光!クロスブレイクライド!!抹消者 ボーイングセイバー・ドラゴン“Я”!!(11000)」
ボーイングソードを二色のオーラが包み込み、巨大な黒輪を背負った赤黒い竜、ボーイングセイバー・ドラゴンに変貌した。
「ブレイクライドスキル!ボーイングセイバーにパワープラス10000!(21000) さらにラドンを退却!」
ラドンが雷を浴びて、光となって消えていった。
「クロスライドにより、ボーイングセイバーは常にパワー13000!さらにロチシンのスキルで、リアガードが退却する度にパワープラス5000だ!(13000)」
これだからロチシンを退却させたかったんスよね……。1体の退却だけで、トリガー1回分のパワーを得られるわけっスから。
「ブレイドハングのスキル!相手リアガードの退却時にソウルイン!これでボーイングセイバーにパワープラス3000!クリティカルプラス1!(26000 ☆2)」
ブレイクライドでパワーが上がっているのに、そこからまたパワーとクリティカルまで上げてくる……。が、これで終わればまだいい方だ。
「抹消者 ドラゴンメイジ(5000)をライジング・フェニックスに上書きコール!そして、ボーイングセイバーのリミットブレイク!」
ボーイングセイバーの頭上に、回転するサークルが出現する。途端に、ボーイングセイバーの持つ二本の剣が黒く染まる。
「CB2、抹消者のリアガードを2体ロックし、相手は自分のリアガードを2体選んで退却してもらう!」
「ネビュラロード・ドラゴンと、ダストテイルを選ぶっス」
ボーイングセイバーが剣を振り払うと、スパークレインとドラゴンメイジが黒輪に包まれる。その黒輪から放たれる雷が、ネビュラロードとダストテイルを貫いた。
「退却後に、ボーイングセイバーにパワープラス10000!(36000 ☆2) ロチシンのスキルは、2体の退却でこっちにもパワープラス10000だ!(23000)」
Яユニットの特徴である、味方を封じることで強力なスキルを発揮する力を存分に活かしている。ロチシンがいることで、ロックを気にすることがないほどのパワーラインを作り上げることだってできる。
「送り火の抹消者 カストル(7000)をコール!相手のリアガードが2体以下だから、スキルで手札を1枚捨ててドロー!抹消者 ボーイングソード・ドラゴン(11000)もコールし、再びリミットブレイク!」
「無理やりコストを確保してきたっスか……」
「CB2、カストルとボーイングソードをロック!リアガード2体を消してやる!」
「……ま、退却するって言ってもランタンしかいないっスけど」
「だが、これでリアガードはがら空き!ボーイングセイバーにパワープラス10000!(46000 ☆2) ロチシンもパワープラス5000!(28000)」
かなりのパワーになったっスね……。46000パワーにクリティカルまで増えている……。
「大口叩いたことを、後悔させてやるよ!ボーイングセイバー!インフィニットゼロ・ドラゴンにアタック!!(46000 ☆2)」
「よく言うっスね!後悔なんて、するわけない!障壁の星輝兵 プロメチウムで完全ガード!!コストはネオン!!」
「なっ……!?完全ガードだと!?」
ボーイングセイバーがXの字を刻むようにインフィニットゼロに斬りつける。だが、渾身の一撃は、プロメチウムにより完全に無効化された。
「グレード1でライドして、ダメージにも1枚落ちてんだぞ!?なのに、手札に持っていた!?」
「数が少なくなってたからって、持ってないって決めつけるのは早いっスよ」
危なかったっス……。この完全ガードがなかったら、俺は負けるところだった。マジで大口叩いたことを後悔するとこだったっス……。
「くそ……!くそ!ツインドライブ!1枚目、抹消者 スパークレイン・ドラゴン。2枚目、抹消者 イエロージェム・カーバンクル。クリティカルトリガーだ!効果は全てロチシンへ!(33000 ☆2)」
「げっ!?」
これじゃあノーガードできない!
「ロチシンでアタック!(33000 ☆2)」
「く……!まだまだ!ステラガレージ、メテオライガー、黒門を開く者でガード!」
3体のユニットがロチシンを取り囲み、インフィニットゼロにロチシンを寄せ付けない。
「なっ……くそ!ターンエンドだ!」
トウジ:ダメージ4 相手:ダメージ4(裏4)
「ふ〜。マジで終わったかと思ったっスよ。さ、俺のターン……」
「……何でお前はまだ諦めない?」
「ん?」
「諦めてる様子が、ファイト中に全然感じねーんだよ……あんたからは!リアガードも全て消えた。手札も2枚しかない。ライド事故までしてたってのに、何でだ!?」
何でと言われても……正直困る。確かに、ライド事故して一方的にやられて、それでも抗い抜いた結果、リアガードは全滅。手札も5枚失って、満身創痍もいいところっス。……けど、
「諦められるわけないっスよ!俺たちは勝つんス!勝って全国に行くんスから!!これくらい何とも……いや、むしろこれくらいじゃないと!!」
「つくづくうぜえ!そう言ってた奴を、俺は何人も見てきた!だが、そいつらはすぐに絶望した!俺の力を前に、屈服した!そんな姿を見るために、俺はこの予選に参加したのに……何でお前は!」
「……そんなの、決まってるじゃないっスか」
こいつは……相手の心を折ることが悦楽なんスか……?それを聞いても聞かなくても、俺の答えは変わらない。
「あんたみたいな奴に負けるほど、辱しめを受けることはないからっスよ!」
「辱しめ……だと!?」
「何度も言わせないでほしいっスね!あんたに負けるなんて、恥以外の何物でもない!」
「ぐ……!どこまで俺を馬鹿にしたら……!!」
「あんたは黙ってこのファイトの結末を受け入れないといけない……!あんたのしてきた屈辱を、身をもって知るために!スタンドアンドドロー!」
この状況を打開するための力は、既に手元に揃っている。残りの手札は3枚……。それだけあれば、十分っス!
「光を砕く闇の輝き、希望をかき消す竜の勝鬨!ブレイクライド!星輝兵 ネビュラロード・ドラゴン!!(11000)」
インフィニットゼロが暗雲の漂う空に舞い上がる。やがて見えなくなると、雲の割れ間からネビュラロード・ドラゴンがゆっくりと降りてくる。
「ブレイクライドスキル!ネビュラロードにパワープラス10000!(21000) ロチシンとカストルを……ロック」
ネビュラロードの現れた雲の隙間から、2つの黒輪が吐き出される。そのままカストルとロチシンを包み込み、動きを縛る。
「ロックされたリアガードがいることで、ネビュラロードのリミットブレイク!俺の前列のユニット全てを、ロックされたリアガード1枚につき、パワープラス3000!(27000)」
「まだこれくらい……!耐えきって、次のターンに勝負を決めてやる!その時こそ……お前が絶望して勝負を諦める瞬間だ!!」
「誰がこれで終わりなんて言ったんスか?ネビュラロードのスキル!CB2で、後列のドラゴンメイジを……ロック。ロックされたリアガードが増えたことで、リミットブレイクのパワー上昇値も上がる!(30000)」
俺が勝負を諦めることはない……。
「同じスキルをもう1度!ボーイングソードを……ロック。再びパワーアップ!(33000)」
俺が諦める時は、永遠に来ない……。
「星輝兵 メビウスブレス・ドラゴン(9000)、星輝兵 ネビュラキャプター(5000)を左右の前列にコール!」
全国に行くために……ノスタルジアとファイトして、勝つために。そのための力を得るためには、こんな奴に苦戦しているようじゃ意味がない……。
「前列のユニットは、ネビュラロードの恩恵を受ける!リミットブレイクの効果を、メビウスブレスとネビュラキャプターへ!(メビ 21000)(キャプ 17000)」
あの人との約束を、果たすためには……!
「行くっス!ネビュラキャプターでアタック!(17000)」
「イエロージェムでガード!」
「ネビュラロードでアタック!(33000)」
ネビュラキャプターが電撃を打ち込むが、イエロージェムの雷で相殺する。その後ろでは、ネビュラロードとメビウスブレスが咆哮を放つためのエネルギーを溜め込んでいた。
「……ノーガード!」
相手は手札2枚。1枚は5000シールドとわかっているから、残りが10000でもガードは無理。完全ガードなら、このタイミングで出すのが妥当だから問題ないっスね。
「ツインドライブ。1枚目……無双の星輝兵 ラドン。2枚目……星輝兵 ステラガレージ。ゲット!ヒールトリガーっス!ダメージを回復して、パワーをメビウスブレスへ!(26000)」
「ダメージチェック……抹消者 ワイバーンガード ガルド……くそっ!」
「とどめ!メビウスブレスで、アタック!(26000)」
「……足りない。シールド値が後5000分……5000?」
すると、何かに気づいた様子で、さっきガードに使ったイエロージェムを確認する。
「……しまった!!」
あいつのあの反応……残りの手札のシールド値は恐らく10000。だとしたら、惜しいことをしたっスね。相手は、最後の最後まで冷静になれずにある見落としをしてしまった。
クロスライドしているボーイングセイバーは、パワーが13000。パワー17000のネビュラキャプターには、本来5000シールドで済んだはずだった。
けど、あいつは……イエロージェム・カーバンクル、10000シールドを使ってしまった。余分にシールドを使い、首を締めることになった。
ヴァンガードのパワーを11000だと考えて計算したのだろう。13000パワーになるヴァンガードなんてほとんどいない。苛立ちでつい、クロスライドのパワーを忘れて、ガードしてしまったんスね。
それさえなかったら、まだあいつにも可能性はあったかもしれないのに。
「ぐ……!」
「どうすんスか?ガードはするんスか?それとも━━」
「くそっ!くそ!くそぉ!!」
乱暴に、それでいてすがるようにデッキトップのカードをめくった相手の表情からは、希望の色は見えなかった。
「くぅ……!」
やりきれない怒りをぶつけるためか、そのカードをダメージゾーンに叩きつける。置かれたのは、抹消者 ボーイングセイバー・ドラゴン“Я”。
「……俺の勝ちっスよ」
消えゆくユニットが見下ろす先で、あいつはデッキを片付けていた。悔しそうに。
結果から見れば、俺の勝利はあいつのプレイングミスがあってのこと。一手違っただけで、結果は変わっていたかもしれない。
けど、俺は同情なんかしない。この結果は、あいつにはふさわしい。屈辱を知れ。自分の傲慢さを知れ。
「……おい、あんた!名前を教えろ!」
「何のつもりかは知らないっスけど……佐原トウジ。一応、名乗っておいてやるっス」
「覚えておく……!次こそは、お前の闘志を砕いてやる!」
こうして、俺たちは3-0でストレート勝ち。相手チームは、既にホール内から姿を消していた。
「……恨みを買うのは嫌なんスけどね。また、あんな奴と関わるかもしれないんスか……」
俺は落胆しながらも、みんなの下に戻っていった。