グランドマスターカップ4回戦。エレメンタルメモリー対隠密SINOBIの試合は、未だどの試合も決着がついていなかった。
「私のターン、スタンドアンドドロー。ティアーナイト ラザロス(10000)にライド!ストームライダー バシル(8000)と、ストームライダー ダモン(9000)をコール!」
相手が連続アタックなら、こっちも連続アタック。第一、それはアクアフォースの得意技よ!
「まずはバシルのアタック!1回目のアタックにより、パワープラス2000!(10000)」
「忍獣 ブラッディミストでガード」
湖から奇襲をかけようとしたバシルだったが、ブラッディミストがバシルを食い止める。
「次、ラザロスでマガツゲイルをアタック!(10000)」
「ここはノーガードでござる」
「ドライブチェック……スーパーソニック・セイラー。クリティカルトリガーよ!パワーをダモンへ(14000)クリティカルはラザロスへ!(10000 ☆2)」
今度はマガツゲイルにアタックが入る。ラザロスの二連続の剣技が炸裂し、マガツゲイルを後退させる。
相手のダメージには、決闘龍 ZANBAKUと忍獣 ホワイトメインが入った。
「ラスト!ブレイブ・シューターのブースト、ダモンでマガツゲイルを!(19000)」
「忍妖 ダートスパイダーでガード」
連携ライドのパワーアップがなかったら……。
「ターンエンドよ」
リサ:ダメージ2 ミヤビ:ダメージ3
クリティカルが乗ったおかげで2ダメージは与えられた。けど、アタックがヒットしたのは1回だけ。その上、他の2体は手札1枚ずつでガードされている。
ただでさえ、マガツ軸はリアガードに割く手札が少なくて済み、手札が多いのにもかかわらず、全然減らせなかった。
しかも、向こうはトリガーがあったとは言え、4回のアタック。こちらは3回。手数でも劣っている。
「拙者のターン、スタンドアンドドロー。影に紛れて悪を討つ、宵闇に輝く竜の眼光!ライド!隠密魔竜 マガツストーム!(10000)」
マガツゲイルの頭上にサークルが出現。そこから溢れ出す黒い影が、マガツゲイルを覆い被せていく。
影が晴れた時にそこにいたのは、刃のついた手裏剣を両手に持った竜だった。
「ソウルにマガツゲイルがあれば、パワーは11000。さらにマガツゲイルのスキル。マガツストームにライドされた時、山札からマガツストームを2体スペリオルコールでござる!(10000)」
「くっ……」
当然、このマガツストームもターン終了時にデッキに戻る。また手札を減らさずに、戦線を整えて来た。
これじゃあ、手札は守るためにしかないようなものじゃない……!
「忍竜 マガツブレス(7000)を中央のマガツストームの後ろ、忍獣 ナイトパンサー(7000)を右のマガツストームの後ろにコール!」
リアガードを5体揃えた……。展開力なら、ロイヤルパラディンやゴールドパラディンと遜色ない。
「シジママルのブースト、左のマガツストームでアタック!(18000)」
「スーパーソニック・セイラーでガードよ!」
「次はマガツブレスのブースト、中央のマガツストームでアタック!(18000)」
「ここは……ノーガード!」
「では、ツインドライブ。1枚、忍獣 ナイトパンサー。2枚、忍妖 カラカサスピリット。スタンドトリガーでござる!」
さっきのターンに引いたスタンドトリガーとは違う種類のカード……。とことんスタンド重視なのね。
「左のマガツストームに、トリガー効果を全て与える!(15000)」
「ダメージチェック、蒼嵐覇竜 グローリー・メイルストローム」
「スタンドしたマガツストームで、ラザロスをアタック!これで3回目!(15000)」
「……っ!」
私の手札は、残り2枚。グレード3と、完全ガードだ。次のターンのライドを考えると、完全ガードを使うことすらできない。
実質、とれる選択は1つだけだった。
「ノーガード。ダメージ……チェック、ストームライダー ダモン」
マガツストームが2対の手裏剣を投げ、ラザロスにダメージを与える。衝撃で大きく飛ばされたラザロスは、湖に落下。沈んでいく。
「ナイトパンサーのブースト、マガツストームでアタック!これで4回!(17000)」
「……ノーガード」
追い討ちをかけるように、残ったマガツストームが手裏剣ではなく、隠し持っていた爆薬を湖に放り入れる。
数秒後に爆発が起こり、バシルやダモンは、水しぶきの上がる湖を見ているしかなかった。
「ダメージチェック、戦場の歌姫 ドロテア」
「ターンエンド。2体のマガツストームは山札の下へ」
リサ:ダメージ5 ミヤビ:ダメージ3
「私のターン……スタンドアンドドロー」
参ったわね……。まだグレード3にすらなってないのに、もうダメージ5。追い詰められてしまった。
流石はグランドマスターカップ。実力のあるファイターが多く集う大会だ。想定してなかったわけじゃないけど、その壁を改めて思い知った。
……だから?ここでこの人に屈していい理由になると?
そうじゃない。そんなわけにはいかない。私は……
「…………」
約束した。皆で全国に立つ姿を、テツジさんに見せるって。だから誓った。応援してくれるテツジさんの気持ちに応えるって。
確かに私は、追い詰められた。けど、私はまだ勝負を捨てていない!
「終末を呼ぶ、蒼の一撃!ライド!終末の切り札 レヴォン!!(11000)」
湖に沈んでいたラザロスが発光し、水面を照らす。その姿を徐々に変え、大きくしぶきをあげて湖から飛翔したのは、蒼の剣を持つ竜。レヴォンだ。
「レヴォンのスキル!CB1でパワープラス2000!(13000)ブレイブ・シューターのブースト、ダモンでアタック!ブレイブ・シューターのスキルで、レストしているリアガードが、ブースト時に2体以下ならパワープラス3000!(17000)」
「ノーガードでござる」
マガツゲイルがダメージに入る。トリガーではなかった。
「次はバシルよ!(8000)」
「ノーガードでござるが、パワーはマガツストームの方が上。ダメージは受けないでござるよ」
わかってるわよ、そんなこと。これは、レヴォンに繋げるための一手!
「レヴォンでマガツストームをアタック!この時、レヴォンをリミットブレイクを発動できる!」
レヴォンはアタック時に前列のユニットが3体レストしていることを条件にリミットブレイクを発動できる。
「CB1を払い、レヴォンにパワープラス3000!さらにクリティカルプラス1よ!(16000 ☆2)」
レヴォンが剣を掲げ、マガツストームに迫る。青く研ぎ澄まされた光を纏う剣が、今まさにマガツストームを捉えようとして━━
「リーフスミラージュで完全ガード!コストはマガツストーム!」
「完全、ガード……!?持っていたの!?」
いや、まだ終わったわけでは!
「ツインドライブ!1枚目……蒼翔竜 トランスコア・ドラゴン。2枚目……輝石通信のラッコ兵。ゲット!ドロートリガー!1枚ドローし、パワーをレヴォンへ!(21000 ☆2)」
だが、いくらパワーをあげたところで、完全ガードを突破することはできない。
「……ターン、エンド」
リサ:ダメージ5(裏2) ミヤビ:ダメージ4
「では、拙者のターン。スタンドアンドドロー。ライドせず、マガツストームのリミットブレイクを発動!」
マガツ軸が強力なのは、単に連携ライドによる同名ユニットの展開だけじゃない。このリミットブレイクがあってこそ、強力と呼べるのだ。
「CB2、これによりパワープラス3000。(14000) さらに山札からマガツストームを2体スペリオルコール!(10000)」
前列のリアガードに、一切手札を使わなくて済む。これがマガツの力だ。
「シジママルのブースト、左のマガツストームでレヴォンをアタック!(18000)」
「ラッコ兵とキブロスでガード!」
「マガツブレスのブースト、中央のマガツストームでアタック!(21000)」
「翠玉の盾 バスカリスで完全ガード!コストはトランスコア・ドラゴン!」
バスカリスがエメラルドに輝く盾を突き出し、マガツストームの手裏剣を止める。
「トリガー確認……1枚目、決闘龍 ZANBAKU。2枚目、忍妖 ダートスパイダー。スタンドトリガー!」
「な……っ!」
ここで……スタンド。トリガーが出なかったら、次のターンまで回ってきたのに……!
「スタンドするのは左のマガツストーム。パワーは右のマガツストームへ。(15000) 左のマガツストームで、バシルをアタックでござる(10000)」
「……ノーガード」
丁寧にインターセプトを潰してから……!
「これで終わりだ!ナイトパンサーのブースト、マガツストームでレヴォンをアタック!(22000)」
手札は残り1枚。シールド値は5000。インターセプトと合わせても、シールド値が足りない。
私は静かに、ダメージトリガーに全てを委ねた……。
***
「ジョークなしで、本当に強いっスよ……ミツル」
「そう言ってもらえると、嬉しいでござるよ!トウジ殿!」
タマモとスペルハウンドのスキルによるコンボで、消費したトリガーを再利用していくミツルのデッキ。
むらくもの特徴でもある1ターン限定の同名コールも相まって、リアガードの展開にも優れている。
「でも、負けるわけには行かないっス!俺たちには、全国に行くっていう目標がある!個人的には、また違った目標もあるんスよ!」
「それは拙者とて同じ!日本の伝統である忍の心を広めるため、全国を目指しているのでござる!」
そうだったんスか。ミツルは本当に、忍のことが好きなんスね。それと同じくらいヴァンガードも。
そうでなかったら、ヴァンガードで全国を目指そうなんて思わないはずっスから。
「互いに引けないものがある……。だったら、白黒ハッキリしないといけないっスね!スタンドアンドドロー!」
まだダメージは3。ブレイクライドは使えない。となると……。
「ライドもコールも何もしない!そのまま黒門を開く者のブースト、ニオブでタマモにアタック!(16000)」
黒門を開く者がニオブの爪牙に力を集める。地を蹴って飛び出したニオブは、一直線にタマモを狙う。
「ユキヒメでガードでござるよ!」
だが、ユキヒメの猛烈な吹雪に阻まれて前に進めない。
「ダストテイルのブースト、インフィニットゼロでタマモをアタックっス!インフィニットのスキルで、パワープラス2000っスよ!(18000)」
「ノーガードでござる」
「ツインドライブ!1枚目、星輝兵 メテオライガー。ゲット!クリティカルっス!パワーはまだアタックしてないニオブへ(14000)クリティカルはインフィニットゼロへ!(18000 ☆2)2枚目、魔爪の星輝兵 ランタン」
「ダメージトリガー確認。1枚目、忍獣キャットローグ。ドロートリガー!1枚ドローし、パワーをタマモへ!(15000)2枚目、白面金毛の妖孤 タマモ」
トリガーをデッキに戻しているおかげで、トリガーを引きやすくなっていると言ったところっスか。
「ランタンのブースト、ニオブでタマモをアタック!(21000)」
「狐使い イズナでガード!」
「ターンエンドっスね」
トウジ:ダメージ3 ミツル:ダメージ3
「拙者のターン、スタンドアンドドロー!では、再び行くでござるよ!」
また来るっスか、あのダメージコントロールが……。
「忍獣 イビルフェレット(5000)をコール!イビルフェレットのスキルで、自身を山札の下に置くことで、手札より忍獣 スペルハウンド(8000)をスペリオルコール!」
イビルフェレットが現れたかと思うと、すぐに煙に包まれ、スペルハウンドへと姿を変える。
「スペルハウンドのスキル!CB1で、このターン中ダメージを1枚増やす!これでリミットブレイクが 発動可能に!」
ダメージには、忍獣 フレイムフォックスが入った。
「さらにタマモのスキル!CB1で、山札よりスペルハウンド(8000)をスペリオルコール!こちらのスペルハウンドも、CB1でダメージを増やすでござる。……むっ、忍獣 キャットデビル。トリガーはあまり出て欲しくなかったでござるが……」
よし、これはラッキーっス!デッキに戻されるとは言っても、本来は発動するはずだったトリガーが不発に終わったのはよかったっス!
「ぐぬぬ……なら、スペルハウンドの後ろに、静寂の忍鬼 シジママル(8000)をコール!オボロカートのブースト、スペルハウンドでニオブにアタック!(14000)」
「メテオライガーでガードっスよ!」
ニオブの前にメテオライガーが立ちはだかり、スペルハウンドを寄せ付けない。
「なら、フレイムフォックスのブースト、タマモでアタック!ダメージは4枚以上……故に、リミットブレイク発動!パワープラス5000!さらにフレイムフォックスのスキルで、SB1してパワープラス5000!(26000)」
タマモをブーストした時限定で使えるスキル……これで一気に高パワーになったっスね。
「ノーガード!」
「ツインドライブ!1枚目……忍獣 ホワイトメイン。2枚目……忍獣 キャットデビル。クリティカルトリガーでござる!パワーはまだアタックしていないスペルハウンドへ(13000) クリティカルはタマモへ!(26000 ☆2)」
再び放たれた青白い炎が、インフィニットゼロを不気味に染め上げる。
「くあ……っ、ダメージチェック、1枚目、星輝兵 インフィニットゼロ・ドラゴン。2枚目、無双の星輝兵 ラドン」
「これでとどめでござるよ!シジママルのブーストした、スペルハウンドでインフィニットゼロをアタックでござる!!(21000)」
「なんの……!障壁の星輝兵 プロメチウムで完全ガード!コストは魔弾の星輝兵 ネオン!」
プロメチウムがインフィニットゼロの前に立ち、その手から六角形のバリアを生み出す。
スペルハウンドの攻撃はバリアに阻まれ、インフィニットゼロに傷がつくことはなかった。
「ふむ、防がれたか……。ここはターンエンドでござる。然れど!拙者にとってはむしろ好機!スペルハウンドのスキルで増やしたダメージ2枚……キャットローグとフレイムフォックスを山札へ!」
不発したキャットデビルを敢えて戻さなかったのは、次のターンのコストを確保するため。まだコストとして使われていないキャットデビルを戻すよりは、次に繋げられる。
「タマモのスキルでコールされたスペルハウンドは山札の下、イビルフェレットのスキルでコールされたスペルハウンドは手札へ戻す。これで今度こそ、ターン終了でござる!」
トウジ:ダメージ5 ミツル:ダメージ3(裏1)
追い詰められた。ダメージは5で、もう後はない。ミツルはまだダメージ3。このターンでどうにかしないと、またスペルハウンドのコンボが発動してしまう。
「俺のターン!スタンドアンドドロー!」
そのためには……こいつを使うしかない!
「光を砕く闇の輝き……希望をかき消す龍の勝鬨!ブレイクライド!」
黒輪がインフィニットゼロを包み込む。やがてインフィニットゼロの姿が見えなくなり、宙に漂う黒輪がひび割れていく。
「星輝兵 ネビュラロード・ドラゴン!!(11000)」
そこから現れたのは、インフィニットゼロとは異なる、黒き龍。全身に黒輪を纏った、ネビュラロード・ドラゴンだった。
「ブレイクライドスキル!ネビュラロードにパワープラス10000!(21000) さらに相手の前後列のリアガードを1体ずつ……ロック」
ミツルの前列にはリアガードがいないため、後列のみのロックとなる。俺はフレイムフォックスを選択し、動きを封じた。
むらくもは、リアガードを場に残さない点でリンクジョーカー戦では有利になる。
けど、そんなの許容範囲内!ロックは、ただリアガードの機能を失わせるだけじゃない。
ロックすることにこそ、意味を持つ時だってあるんスよ!
「ニオブ2体とランタンのスキル!相手リアガードがロックされる度、パワープラス2000!(ニオ11000)(ラン9000)」
生み出される黒輪に呼応して、ニオブとランタンに黒いオーラが集まる。が、それだけじゃない。
「さらにネビュラロード・ドラゴンのリミットブレイク!俺の前列のユニット全てを、ロックカード1枚につきパワープラス3000するっスよ!(ニオ14000)(ネビュ24000)」
ロックは盤面を崩すだけではなく、こういう使い方もできる。呪縛を力に変えた、攻撃的な戦法だ。
「黒門を開く者がいる場所に、魔爪の星輝兵 ランタン(7000)を上書きコール!続けてネビュラロードのスキル!CB2で、シジママルを……ロック」
シジママルが黒輪に縛られ、一切の抵抗をさせない。
「ニオブとランタンのスキル!パワープラス2000!(ニオ16000)(左ラン11000)(右ラン9000)さらにネビュラロードのスキルで、前列にさらにパワープラス3000!(ニオ19000)(ネビュ27000)」
一気にパワーが上がっていく。これにはミツルも苦しい表情を見せる。
「もう一度ネビュラロードのスキル!CB2で、オボロカートを……ロック」
これにより、再びニオブとランタン、さらにネビュラロードのスキルが発動する。
最終的に、左右のニオブはパワー24000。左のランタンは13000。右のランタンは11000。そして、ネビュラロードに至っては30000になっていた。
「さぁ、行くっス!右列のニオブ、ランタンのブーストでタマモにアタック!(35000)」
「ノーガード!ダメージトリガー確認……ぐっ、忍獣 スペルハウンド」
「トリガーはない……なら!ダストテイルのブーストした、ネビュラロードでアタック!(35000)」
両手から二重の黒輪を形成し、そこに力を溜め込んでいく。やがて、はち切れるほどの衝撃が、一気に放たれた。
「……まだでござる!忍獣 リーフスミラージュで完全ガード!コストとして、ホワイトメインを捨てるでござる!」
完全ガードを持ってたんスか……。けど、ミツルの残り手札は3枚。内2枚は、スペルハウンドとキャットデビル。未判明の1枚が10000シールドだとしても、次のニオブのアタックは止められない!
「ツインドライブ!1枚目……無双の星輝兵 ラドン。2枚目……星輝兵 ヴァイス・ソルダード。ゲット!クリティカルトリガー!効果は全て、左のニオブへ!(29000 ☆2)」
が、残る1枚の手札が完全ガードだったら、このアタックは止められてしまう。そうなれば、ミツルにターンを渡してしまう。
けど……。
「ここまで来て……止まれない!俺たちの目指す場所は、こんなところじゃない!ランタンのブーストした、左のニオブでタマモをアタック!(42000 ☆2)」
凶爪を煌めかせ、ニオブがタマモに接近する。禍々しいオーラを纏い、今にもタマモを引き裂こうとしている。
「……拙者は」
ガードするんスか……?それとも、ノーガードっスか……?
固唾を飲んでトウジが宣言を待つ中、ミツルの選択は……。
「ノーガードでござるよ。無念でござるがな」
ミツルはどこか満足げにダメージチェックを行う。忍獣 リーフスミラージュと、忍妖 オボロカート。どちらもトリガーではなかった。
***
「完敗でござるな!トウジ殿の強さ、しかと見せてもらった!」
「ミツルも強かったっスよ!最後のアタックをガードされていたら、負けてたかもしれないっスから!」
戦いを終え、2人は互いの強さを称えていた。
「さて……これでチームとしては1勝っスか。後はリサさんかワタル君のどっちかが勝てばいいんスけど……」
まだどちらのMFSも起動している。ファイトは終わっていないみたいだった。
「む……拙者たちのチームは、もう後がないのでござるな。何とか勝利して欲しいでござ……」
と、不意にミツルの声が途絶えた。1台のMFSの方を見つめ、ニヤリと微笑んでいたからだ。
「どうやら、まだ勝敗はわからなくなってきたようでござるな」
「……!」
ミツルの視線の先にいたのは、ストームライダー バシルのカードを右手に持ったリサさんだった。表情は強張り、目は大きく見開かれている。
同時に、MFSにも変化が訪れた。リサさんのヴァンガードだと思われるレヴォンが、次第に薄れてゆく。
それらが意味することは、1つしかなかった。
「そ、そんな……リサさんが……!」
エレメンタルメモリーが、初の黒星を喫した瞬間だった。