ポケモントレーナー ハチマン   作:八橋夏目

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ついに完結!!


84話

「負けたよ。さすがハルノさんを倒した元チャンピオンだ」

 

 ブーバーンをボールに戻すとハヤマが握手を求めてきた。

 

「んな昔のこと覚えてねぇよ。それに強いのは俺じゃなくてポケモンの方だ」

 

 倒したらしいけど記憶ないんで、その辺の話はしないでいただけます?

 手を振りほどきながらそう答えると、ちょっと残念そうな顔をされた。

 

「そうかな? 君は力がなければ、ポケモンたちも成長できてないと思うけど」

「知るか」

「そんな君だから………、いやそんな君だからこそ、かな」

 

 ハヤマは若干引き気味のユキノたちを見たかと思うと、そう呟いた。

 みんな、なんでそんな目で見てくるんだよ。

 

「………なんだよ、気持ち悪いな」

「ハヤ×ハチきたぁぁぁあああああああああああっ!!!」

 

 うおっ?!

 なんだ、エビナさんか。

 

「ちょ、エビナ鼻血拭けし!」

 

 鼻血で噴水とかすごい芸だな。

 

「ハヤマ、君たちはこれからどうするんだ?」

 

 事情をすでに知っているヒラツカ先生が心配そうにハヤマに声をかけた。

 元生徒なだけあって気になるんだろうな。

 

「一度カントーに帰ろうと思います。自分の原点に立ち返って、見つめ直そうかと。それに協会の方にもいかないと」

「そうか。だったら、スクールに顔を見せてやってくれ。校長が話したいことがあるそうだ」

「分かりました」

 

 …………協会からの何らかの罰を受けに行くのか。律儀な奴だな。

 と、ホロキャスターにメッセージが入った。

 差出人は、プラターヌ。なのに、文章が明らかに彼のものではない。

 

「………げっ、ミアレに来いってか。あいつら、人使いが荒すぎんだろ」

 

 おそらくこの命令口調はグリーンだろう。

 せめて最後に名前書けよ。

 

「ヒッキー、どうかしたの?」

「ちょっと、ミアレに呼ばれた」

「おー、プラターヌ博士にも久しぶりに会いたいかも」

 

 そういや事件に巻き込むと面倒だったからしばらく会わないようにしてたんだったな。そもそも会う時間もなかったけど。

 

「それじゃついて行きましょうか」

「さんせーい!」

「おい、待て。俺の意見は?」

 

 ハルノさんの一言で全員ついてくることになった。

 

「まあまあ、フレア団のことなんでしょ? だったら僕たちも行った方がいいんじゃないかな?」

「はあ………、分かったよ。お前らはどうするんだ?」

 

 トツカに宥められ、しょうがなく了承。

 天使にお願いされては拒否できない。

 

「んー、暇だし行こうかなー。することないし」

「ディアンシーが行くなら、うちも行く」

 

 三人追加と。

 つか、どんだけディアンシーと仲良くなったんだよ、サガミさん。いいけどさ。

 

「お前らは………」

「俺たちも行くよ。自分のしでかしてしまったことの顛末を知りたい」

「そうかい。なら取り敢えず、着替えさせてくれ」

 

 結局、この場にいる全員で行くことになった。

 俺は一体いつになったら休めるんだ?

 

 

 

   ✳︎   ✳︎   ✳︎

 

 

 

「来たぞー」

「やあ、ハチマンくん! みんなも! 元気そうでなによりだよ!」

「元気じゃねぇよ。後声でけぇよ」

 

 さすがに先生のエルレイドのテレポートで全員飛ばすわけにもいかず。

 素直にポケモンたちに乗ってミアレまでやってきた。ついでにポケモンたちも元のトレーナーへと返され、残す仕事はここだけ。

 プラターヌ研究所に入ると、フロントで博士が待ち構えていた。

 

「ねえ、聞いてくれないか、ハチマンくん」

「何をだよ」

 

 他の奴が待ち構えているという彼の部屋へと向かう中、博士が愚痴をこぼし始めた。

 

「今回の騒動で大活躍だったエックスたちのために祝賀パーティーとミアレシティあげてのパレードを行おうと思ったんだけどさー」

 

 なに、その傍迷惑な催し。

 

「みんなして辞退しちゃったんだよ! 主役が居なくちゃできないっていうのに!」

「や、んなもん迷惑なだけだろ。そもそも一般人が認識してないことを祝ったところで意味もなければ、ただの辱めだ。それよりも浮かれてお祭り騒ぎをする前にやることたくさんあるだろ。大人なんだからしっかりしろよ」

 

 アホだ、この人。

 んなもんやったところで誰が喜ぶんだよ。

 そんなのあんたらの自己満足だろうが。

 自分の意思に反して巻き込まれて、仕方なく働いて。

 自分たちが生き残るがために戦って言うだけなのに、何がパレードだよ。

 あいつらも変な大人に絡まれて同情するわ。

 

「………………」

「なんだよ、ぽかんとした顔して」

「いや、エックスと同じことを言ってると思って」

 

 あー、言いそうだよな。

 

「はあ………、俺はあいつのことをよく知らないけど、親近感は湧くぞ」

「そうね、あのぬぼーっとした感じはハチマンに似ているわ」

 

 そういやユキノも見てるんだっけな。

 確かにぬぼーっとした感じはあるが…………。親近感湧くのってまさかそこなのか?

 

「…………」

「今度はどうしたんだよ。アホ面丸出しだぞ」

 

 二度も変な顔見せるなよ。

 なんか無性に殴りたくなるんだけど。

 

「な、名前………」

 

 名前?

 ああ、なんかみんなして名前の方で呼ぶようになってるな。まあ、言い出したのがーーー。

 

「ふふん、なんて言ったって私は正妻だもの」

 

 ーーーこいつだからな。

 ユキノシタユキノはずっと、それこそスクールでオーダイルの暴走を止めた時からずっと、俺のことを追いかけているような奴だ。本人がそう言ってたんだからそうなのだろう。大概な物好きがいたものだな。

 ま、俺もそれを受け入れちまったんだから、大概な奴だと思うがな。

 

「いや、そもそも結婚してないからね。正妻だなんだ言うが、事故でお互いファーストキス失くしたってだけだろうが」

「「「えっ? 初めてだったの?!」」」

 

 そこで食いつくなよ。話がさらに脱線するだろうが。

 

「知らねぇよ。記憶ないんだから。けど、最初がそれならそういうことになるんじゃねぇの」

「くっ………、ぬかったわ。実の妹に正妻の座を奪われるなんて」

 

 ユキノシタハルノはずっと、それこそ俺と初めてバトルした時にはすでに仮面をつけていたような人だ。そんな人が例え実の妹を煽ろうと俺にファーストキスまで差し出すなんてアホな真似をするくらいには寂しがり屋だったんだから、まあ、な。ここで妹だけ受け入れるというのも、後で何されるか分かったもんじゃないしな。仕方ない仕方ない。

 つーか、マジでいきなりキスしてくんなよ。思い出すだけで心臓バックバクなんですけど!

 

「や、だから正妻じゃないから。あ、だからと言って全員側室とかそんな制度もないから」

「そ、そんな、責任取ってくれるって、先輩が………」

 

 イッシキイロハは………正直よく分からない。なんだかんだ俺に甘えてくるし、弱い部分も普通に見せてくるんだし、少なからず好意的なものを向けられているんだろうが、経緯がよく分からない。いつフラグを建てたんだ?

 ただ彼女はあざとい反面一生懸命だからな。応援したくなったのは事実だ。

 

「私たちとは遊びだったっていうの?!」

「あ、あたしはそばにいられたらそれでいいかなー、なんて………」

 

 で、一番分からないのがこの少女、ユイガハマユイだ。

 本当にいつフラグ建てたんだ?

 聞くところによると影の薄かった俺をすでに認知し、ずっと声をかけたいとか思ってたんだとか。

 んー、さっぱり分からん。分からんが放っておくと危なっかしい奴だし、優しさは人一倍だからな。コマチ以外でなんか安心するのは確かだ。

 

「「はっ!? ここに裏切り者が!!」」

 

 ユイの呟きにハルノさんとイロハが両脇からユイの肩を掴みかかった。

 

「お兄ちゃん、コマチは? コマチは?」

「俺の最高の妹だ」

「うへへへっ」

 

 頭を撫でながら即答すると、今度はこっちを睨んできた。

 君たち、もう目がやばいことになってるぞ?

 

「「真打登場!?」」

「実の妹に手を出さないだけ安心だわ」

「当たり前だ。妹だぞ」

 

 さすがに妹に手を出そうものならお縄に捕まるっての。

 

「ハッチーっ!」

「おい、こらユイ。抱きつくな」

 

 背中に急に柔らかい感触が押し当てられるのが分かった。

 なんて柔らかいんだ。

 こんな感触を味わえるのも彼女の特権だな。

 ………俺ってただのゲスでしかないぞ、この発言。

 

「えへへへ、ヒッキー」

「つか、せめて呼び方統一しろよ。もうお前に関しちゃ呼び方云々に文句言わんから」

「えー、ヒッキーはハッチーだし、ハッチーはヒッキーだもん」

 

 ヒッキーもハッチーももうどっちでもいいからさ。

 あ、でも「ハチマン」なんて言われた日にはちょっと鼻血出るかも。

 

「あ、あの、シズカくん。これは…………」

「ええ、私も驚きですよ。少し離れている間にこんな状況になっていまして。まあ、ヒキガヤがいい方向に成長してくれたと受け取ってしまえばいいのでしょうが…………。ヒキガヤのくせに羨まけしからん!」

 

 本音、本音出てますよ。

 

「ハヤト、大丈夫? 顔色悪いけど」

「いや、ちょっと、自分がバカバカしくなってきて…………」

「あーあ、もっとハヤ×ハチ見たかったなー」

「っべー、ヒキタニくん、マジっべーわ」

 

 なんかハヤマが酔ったっぽい。

 

「ヒキガヤがハーレム作ってる……くくくっ、ヤバい、超ウケる!」

「あんたも大概だと思うよ。彼のこと、好きすぎでしょ」

「大人だなー、ハチマンは」

「ぬぅ、羨まけしからん!」

 

 あ、アラサーと同じことを言ってる見た目中年がいる。中身は中二だけど。

 …………あれ? サガミは? ディアンシーもいないし。

 部屋にたどり着いたので扉を開けると、そこにはカツラさんとグリーンの姿があった。あ、あと博士のお付きの二人もいるわ。

 

「やっときた………か………」

「無事そうで何より………だ………」

 

 うん、分かる。分かるぞ、その気持ち。俺も見る側だったらそんな気分だから。

 右腕にユキノ、左腕にハルノさん、背中にはユイが抱きつき、前にはコマチとイロハがいるこの状況。

 爆ぜろリア充とはよく言ったものだ。

 

「何も聞くな、聞かないで、聞かないでください」

 

 入ってきた俺たちを見て呆気にとられている二人。

 俺より自分の心配をしてほしい姿だな。

 包帯ぐるぐる巻きじゃねぇか。

 

「で、なに? 詳しいことは未来でな、って言ったから呼ばれたのか?」

「あ、ああ、それもあるが、まずはお前にも確かめたいことがあってな」

 

 あるんだ………。

 ただの去り際の挨拶だったのに。

 

「確かめたいこと?」

「というか、先輩と声が区別できない………」

「お兄ちゃんが二人いるみたい………」

 

 うん、だよな。俺もそう思うわ。

 なんで一緒な声色なんだよ。

 

「緑色の影を見てな。奴が何なのかを確かめたい」

「緑色の影……ですか!?」

 

 シックなテーブルを真ん中に二人がけソファーがあり、どちらも占拠されている。

 付き人二人は立ってるし、俺たちも立って聞けということなのか?

 

「エックスたちがポケモンの村を去り、俺とカルネでフラダリとフレア団科学者らの身柄を確保していたとき……、瓦礫の向こうからこっちを見ていた。オレたちに気づくとにげるように消えた」

「離散したプニプニ、……わたしは仮に『ジガルデ細胞』と呼んでいますが、その残りでは?」

 

 プニプニ……、あれをプニプニと表現するのか?

 

「はっきり同じともちがうとも言い切れない」

 

 グリーンたちはジガルデのフォルムチェンジした後の姿しか知らないというわけだ。

 だから俺も呼ばれたわけか。

 

「これはやはり調査に行かなければ……」

「ポケモンの村へ? しかし、今はもう……」

「いえ、実は……、ほかの地方でも緑色の影の目撃情報がありましてね。ジーナ、デクシオ、きみたちに頼みたい」

 

 カツラさんの指摘に博士は予想外の返答をしてきた。

 ジガルデが他の地方にいるっていうのか?

 

「わかりました」

「ほかの地方というと?」

「温暖な島じまからなる、アローラ地方!」

「アローラねぇ」

 

 これまた偶然か。

 校長がバカンスに行って白いロコンをゲットしてきた地方じゃねぇか。

 

「なんだ? なにか心あたりでもあるのか?」

「いや、ジガルデってカロスの伝説に出てくる奴じゃねぇのかって思って。まあ、ルギアたちもカロスに来てたんだし、ほかの地方にジガルデが行ってたとしてもおかしくはないが………」

 

 おかしくはない。

 別に伝説が語り継がれているだけであって、その地方だけに居座るとは限らないのだから。

 ただ一つ、今回のことにはいささか常識が覆りそうな内容が含まれている。

 

「ジガルデだと?!」

「緑色の影でジガルデ細胞のような奴だろ? どう考えたってジガルデの本体でしかないだろ。あいつは、恐らくそのジガルデ細胞ってのを吸収することで姿を変えるみたいでな。俺が知ってるだけでもヘルガーみたいな四足歩行とあんたらの知ってる姿がある」

「それじゃあ、離散したことで元の姿に戻った、ということか?」

 

 俺の説明にカツラさんは気がついたらしい。

 そうだ、そういうことだ。ただし、その話はどうでもいい。

 

「そんな感じなんじゃねぇの? それよりも気になるのはアローラ地方にいたのが別個体かどうかってことだ。別個体だとしたら、伝説のポケモンに対しての俺たちの認識を覆すことになる」

 

 別個体。

 カロスで暴れていたジガルデの他にアローラで目撃されたっていうことは他にもジガルデの本体がいる可能性がある。つまりは、ジガルデが複数いる可能性があるのだ。

 

「………ジガルデが、二体………いる?」

「その可能性を否定できないだろ」

 

 伝説のポケモンというのは確認されている姿は一体のみ。

 それゆえに貴重なポケモンとされ、他の伝説に名を残すポケモンも同じく一体しかいないものだと認識されている。

 だが、ジガルデが複数体いるとすれば、他の伝説のポケモンだって複数体いてもおかしくはない。

 

「ジーナ、デクシオ。その辺についても詳しく調査してくれないか」

「わかりました」

「では、みなさん。わたくしたちの留守の間、博士のことをよろしくおねがいしますね?」

「はっ?」

 

 ジーナさん?!

 

「わっかりました!」

「はあっ?」

 

 おい、こら、コマチ!?

 

「それでハチマン。お前は一体セレビィで何をした」

「何をしたって………、俺たちにもやることがあったんだよ。ダーク化したルギアを元に戻すためにセレビィ呼んだり。しかもそれまでに過去に飛ばないと辻褄が合わないことが出てきててな。それでセレビィと時間旅行をしてたわけだ。ポケモンの村にいたのも偶然。妹が持ってるタマゴの保護が目的だったらしい」

 

 結局、何もしてないと言った方が正しいんだよな。

 基本的に実際に戦ってる俺たちをサポートしてたくらいだし。

 

「ダーク化?」

「それについては帰ってから自分で調べてくれ。シャドーあたりで探せば自ずと分かるはずだ。記録は全部俺のだからな」

 

 シャドーについては俺の分野だったらしい。

 まあ、しばらく在籍してたしな。他に誰も手をつけてないのは問題だと思うが。

 

「分かった。いいだろう」

「おお、そうだ、ハチマン。実はフレア団のボスのギャラドスがメガストーンを持っていてな。主人がああなってしまっては無用のものと思って持ってきたのだが」

「それ、あーしの!」

 

 カツラさんがポケットから一つのメガストーンを取り出して見せてきた。

 するとミウラががっついた。

 

「む? なんと? もしや奪われたり………」

「ああ、元々はミウラのギャラドスのものだったんすよ。最初に襲撃された時に奪われたらしい」

「それはちょうど良かった。元の持ち主が見つかってなによりだ」

 

 ミウラはカツラさんからギャラドスナイトを受け取ると「あ、ありがと……ごさいます」と柄にもなく敬語でお礼を言っていた。

 段々丸くなってきたよね。

 

「フラダリとパキラのポケモンたちは?」

「ここに………」

「そうか………。どうするんすか? 野生に還します?」

「それも考えたが………」

「暴れられても困るからな」

 

 確かに。

 トレーナーがトレーナーだったからな。

 やらないとは限らないもんな。

 

「そうだ、ハチマン。君が育ててみてはどうかね?」

「はあ? マジで言ってんですか? 生憎、手持ちいっぱいなんすけど?」

「リザードン一体でリーグ戦を優勝したお前が?」

 

 なんだ? 嫌味か、それ?

 

「こっちにきてなんか気に入られたのとホウエン地方から送られてきたのと、危機に際して駆けつけてきたのが二体に、洞窟の案内ついでに力を借りてるやつに、他にも野生だけど保護してるのもいるし………」

「どれも自分でバトルして捕まえてないのが肝よね」

「えっ? なんで知ってんの?」

 

 エンテイとかボズゴドラについては説明してないはずなんだけど。

 ディアンシーかサガミにでも聞いたのか?

 

「だって、あなたあまり自分から捕まえる性格じゃないもの。ついて来る分には拒まないけれど」

 

 なんだ、状況判断かよ。

 それで読まれる俺も大概だな。

 

「カロスにもボックス管理をしている奴がいる。彼に頼めば……」

「いや、いいっすよ。一ついい方法を思いついたんで。今の俺は見ての通り一人じゃないんでね………ははっ………。その分世話しないといけないポケモンの数も一気に増えたんすよ………、いやマジで」

 

 仕方ない。仕方がないのだ。

 だから手帳に書き残してあったことでもやってみるのもいいのかもしれない。

 記憶のなくなる前の俺が何を思って書き残したのかは知らないが、一つだけ今の俺にやってほしいことがあるって書いてあった。

 

「む、それは………」

「どこかで野生に近い状態で生活できるようにしようかと」

 

 ポケモン研究所のような施設。

 それをどこかに作れとのこと。

 実際、そこの女性陣に責任取れとか言われたし、家族でなくとも共同生活するともなれば、デカイ土地が必要になってくる。記憶がなくなる前の俺はこの状況を予感してたのだろうか。今になっては分からないが、それが俺の願望なのかもしれないし、作るしかないだろ。

 

「は、初めて聞いよ、そんな話!」

「今思いついたんだから言えるわけないでしょうに」

 

 ハルノさんがちょっと意外そうな顔で見てくる。

 なんだよ、俺だって今更離れる気なんてないし。いいでしょうが、あんたらの言い分もしっかりこなそうってんだから。

 

「どうも俺はこの女性陣を養わないといけないみたいなんでな。そうなるとやっぱ広いところが欲しいじゃん?」

「………ふっ、今度はハーレム王か。小賢しい奴め」

「………女っけのない奴よりマシだと思うが? 今いくつだっけ?」

「言うようになったじゃないか」

「なんだ、やるのか? すでに一戦やってきたがどいつもピンピンしてるぞ?」

「これこれ、二人とも。さすがに二人が暴れては、この街が崩れるぞ」

 

 カツラさんがグリーンを抑えたことで、バトルにはならずにすんだ。

 チッ、ちょっとガチでやりたくなってたのに。

 

「…………それとポケモン協会についてだが………」

「あ、ちょっとタンマ。電話だ」

 

 なんでこのタイミングでポケナビの方が鳴るんだよ。

 うわー、嫌な予感しかしない。

 ユキノシタ姉妹が力を緩めてくれたので、ポケナビを取り出してコールに出た。

 

「はい、なんすか?」

『今回も大活躍したそうじゃないか』

「誰から聞いた。それと大活躍なんてしてないから」

『君の部下だ』

「よし、分かった。あとでしばいておくわ」

『で、だ。ここから本題なのだが………、ハチマン。独立しないか?』

 

 …………………。

 

「はっ…?」

 

 一難去ってまた一難。

 どうやら俺には落ち着く時間を与えてくれないらしい。

 休まる時間が訪れるのはいつになるのやら…………。

 

 

 独立ってどういうことだってばよ?




はい、というわけでこれにて完結とさせていただきます。
長い間お付き合いいただきありがとうございました。
惜しまれる声もありますが、まずは一区切りということで完結とします。


しばらくはこの作品の手直しなどをしながら充電期間にさせていただこうかと思います。
その間に次回作の方も練ろうかと。
余韻が残っているのはそのためです。


では、また。次回作で。

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