やはり最近の比企谷八幡の女の子事情はまちがっている。   作:八橋夏目

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千佳のターン

 えー、どうも仲町千佳です。

 突然ですが、最近の折本かおりは比企谷君に夢中である。しかし、学校が違うためバレンタインイベントを最後に会えていないらしい。かおりは日に日に比企谷成分が減少していって、今では毎日のように比企谷君と葉山君とデーゴホンゴホン、、放課後に遊んだ時のことやクリスマスイベントの話を毎日のようにしてくる。かれこれ半年前くらいは経ってるという話を永遠としてくるのだ。正直言って面倒くさい。何が面倒って同じ話を二桁…………三桁いくかもしれないペースで聞かされているのだ。強制的に。面と向かって。

 私はあれから二人とは会ってないけど、比企谷君についてはかおりから毎日聞かされているため、最初の印象とは大分変わった。あんな暗い人の何がいいのか甚だ疑問ではあったけど、なぜか葉山君は彼を評価してるみたいだし、かおりはかおりで日に日に「比企谷」という言葉を使う機会が増えた。

 そもそも比企谷君って何者なんだろうね。

 私が実際に目にした比企谷君は根暗でデーウオッホンゴホン、お出かけのセンスのかけらも感じられないような総武高校の男子生徒である。それに彼はかおりと同じ中学で一度かおりに告白もしたことがあるんだとか。当時のかおりのことは知らないけど、あんなのに告白されたら、そりゃ断るよね。

 なのに、クリスマスイベントで再会してからはかおりの中での彼の印象は大きく変わったらしい。その前にもあの二人とのお出かけで登場した女の子二人を見て、何かを理解したような感じであったが、それでもようやく比企谷君という者の理解に至ったらしい。なんでも彼はクリスマスイベントに総武高校の生徒会長から助っ人を頼まれてきたんだって。その時点で生徒会長に頼られるくらいの意外とすごい人なのかもって思ったけど、これはまだ序の口。もっとヤバいのはうちの生徒会長玉縄の轆轤回しについていってたということだ。なんであの生徒会長ないし生徒会メンバーは同じ意味の言葉を並べるんだろうね。聞いてるだけで頭が痛くなってくる。

 で、まあ話を戻すと比企谷君もあっち系の人なのかもという疑問が出てくるわけだ。前にあった時にはそんな感じを全く匂わせなかったのに……………。でもどうやらそれは誤解のようで、比企谷君自身、自分が何言ってるのか分からなかったんだって。逆に通じた方に驚きだったんだとか。ヤバくない? 超ヤバいよね。かおりじゃないけどウケる。

 要するに比企谷君はあんな見た目でも優秀であるということだ。そりゃ、総武高校に通ってる時点で頭いいのは確かだけど、なんというかああいう感じの人っていわゆる引きこもりとかじゃん? だから、彼もそうだとばかり思ってたんだよね。そういや前に葉山君が「人を上辺だけで判断しないでくれ」的なことを言ってたなー。多分そういうことなんだろうね。私はあの一回しか比企谷君に会ってない。だから彼の人となりを判断するには早すぎたのだ。それはかおりも同じ。いくら中学が同じだったからって、彼と親しかったわけでもないのに、同級生というだけで分かったようになっていた。だから、葉山君に怒られたんだ。

 世の中、葉山君のように完璧な人ばかりではない。比企谷君のように見た目だけで判断してはいけないような人もいるということだ。いや、あの葉山君の印象ですらもこちらの思い込みなのかもしれない。彼の、彼らの何を知ってるのかと言われれば何も知らないと答えるしかないくらい、何も知らない。

 葉山君、比企谷君、あの時は本当にごめんなさい。私が、私たちが間違っていました。見た目だけで判断するのはもうやめます。これからはちゃんとその人と接してから判断するようにします。だから、葉山君のことももっと教えてください。

 なんて今なら言えるかもしれない。うん、やっぱ無理。恥ずかしすぎる。

 

 

 

 なんて考えていた日の放課後。

 私とかおりは街をぶらぶらしていた。特に目的があるわけでもなく、かといって早く帰っても……………という受験生らしからぬ思いからである。なによ、少しは現実逃避くらいしたっていいじゃない!

 まあ、でも今はそんなことがどうでもよくなるようなものを目にしている。

 あれはなんなんでしょうかね。

 

 

 

 私たちの反対側を歩いていく六人の男女。

 男一人、女五人。

 両手に華どころか、四方を埋め尽くされて歩く目が腐っている総武高校の制服を着た男子生徒。

 背中には一人だけ中学の制服をまとった女の子がおぶられて寝ている。

 左腕には胸の大きなお団子頭の女の子が抱きつきたそうに体をうずうずさせている。

 右側には綺麗な黒長髪の女の子が澄ました顔で男子生徒の袖を掴んでいる。

 そして前には亜麻色の髪の女の子と肩くらいまでの髪のアホ毛が立った女の子、後ろ向きで歩きながら話しかけている。

 

 

 

 ………………………え、っと……………………………。

 あれはマジでなんなの?

 ハーレムってこの世に存在したの!?

 というかあれ比企谷君だよね!?

 両側の女の子は見たことあるし。

 えっ? なに、これ。どゆこと!?

 

 そんな思いでかおりの方を見ると、すでにいなかった。

 もう一度視線を彼らに戻すとかおりが六人のところに向かって走っていき、比企谷君に抱きついていた。

 

 

 葉山君、ごめんなさい。人を見かけで判断するなと言われたけど。私もそうしないと誓ったけど。

 さすがにこれは無理…………………。

 

 

 

 比企谷君は……………………………………鬼畜だ。


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