The Last Stand   作:丸藤ケモニング

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再び遅くなり、申し訳ない。
今回も捏造全開、オリジナル展開でお送りします。
苦手な人は、回れ右。





20,策謀の時代

「薬草採取?なんだってまた」

 

 槍の扱い方や戦い方の指導の後、昼食をとりながらエンリから相談されたのは、トブの大森林のそこそこ行ったところへの薬草の採取へ向かいたいと言うものだった。この森、俺や、今日は一緒にやって来たルプスレギナや、なんかモモンガさんややまいこに命令されたらしいシズにとってはそれほど危険じゃないんだが、正直、10レベルあるかないかのエンリには少々きついと思うんだがなぁ。

 

「ええと、リュウマ様「呼び捨て」……リュウマさんにこの様な事を相談するのもあれですけど、村の貯蓄が心許ないもので」

「そんなにカツカツなのか?」

「ええと、普段なら問題はないのですけど、今年は……外から色々買い付けたりしなければいけないので、心許ないですね」

 

 ああ、考えてみればそりゃぁそうだ。あの帝国騎士に扮した法国の兵が焼いた他の村の住人も、ずいぶんこの村に流れ込んでるらしいしな。むしろ、よく生き残りが居たなぁと感心。手心を加えたのかそれとも別の理由があったのか。まず間違いなく後者だろうけど。

 

「薬草って、お金になるんすか?自分にしてみればただの葉っぱなんすけどねぇ」

 

 エンリが怪我したときのために待機していてもらったルプスレギナが、干し肉をかじりながら疑問を口にする。

 

「確か……ポーションの材料になるんだったっけ?」

「はぁ~、さすがっすねリュウマ様!アタシは全然知らなかったっすよ!」

「いや、俺も最近この村のレンジャーのおっさんに教えてもらったから知ってただけで……」

「いやっすねぇ~、社交辞令に決まってるじゃないっすか~。この程度で照れるって、どんだけウブなんすか」

 

 ようし、後で覚えてろ。ハバネロをダース単位で食わせてやるからな。まぁ、それはそれとして。

 

「じゃぁ、昼飯食ったら行きますか。この村が無くなるのは非常に困るからな」

「あ、はい!じゃぁ、ささっとご飯を食べてしまいましょう」

 

 麗らかなカルネ村の昼食は、のんびりと過ぎていくのであった。

 

 森に入って色々採取するための道具をかき集め、開墾作業中のゴブリンズからレンジャー技能持ちを引っこ抜いて、いざ森へ入ろうとしていると、なぜかシズとネムが森の入り口に仁王立ちしていた。何事か。

 

「あーっと、シズちゃん、何をしてるんすかここで?」

「ルプ姉。うん、それは隊長に聞いて?」

「たい、ちょう?」

 

 無言でネムを指差すシズ。全員の視線が集中して、さらに胸を張るネム。

 

「えぇっと……ネム、こんなところで何をしてるんだ?危ないぞ?」

「リュウマ様!ネムも役に立つよ!連れてって!」

「……」

 

 純真なキラキラした子供の目が俺を見てる。助けを求めてルプスレギナを……あ、ダメだ、こういう時、役に立たないわ。なら、ゴブリン·アーチャーのウンギョウとスイギョウを見ると、こっちを見て苦笑しながら肩を竦めた。エンリ……は見ないようにしよう。気配だけでわかる。ちょっと怒ってる。

 

「んんー、連れていきたいのは山々だがな、この森は危ないからな。ネムは村でお留守番だ」

「大丈夫だよ、危なくないもの!この子達もいるし、ほら!」

 

 言葉と同時に、ネムの周囲の空間から真っ赤な猫が染み出すように現れる。火焔猫かぁ。ぶっちゃけ、ゴブリンズ並みの強さなんだよな、こいつら。もしかしたら、物理耐性がある分、こっちが強いかもしれないが。

 

「ネム、それはお姉ちゃんから借りた強さだろ?お前自信が強いわけじゃないんだ。お姉ちゃんの役に立ちたいって気持ちはわかるが、無茶は駄目だ。家に帰って、カイジャリや元村長さんのお手伝いをしてなさいね?」

 

 うん、ネムがすごい不満そう。う~む、どうしたもんか。すると、シズがネムの耳元で何かを囁いた。しばらくゴニョゴニョと話していたが、何事か納得したように頷き、満面の笑顔を浮かべて俺たちを見回した。

 

「リュウマ様、お姉ちゃん、我が儘言ってごめんね?」

「お?おお。分かったんなら大丈夫だ。なぁ、エンリ」

「そうですね。ネム、あんまり我が儘言っちゃ駄目よ?」

「うん。じゃぁ、皆、怪我をせず帰ってきてね?お土産も忘れちゃ嫌だよ?」

 

 終始ニコニコしながらネムはそう言って、皆に手を降りながら村の方へ戻っていった。それを見送って、俺とエンリはシズを見たが、いつも通りの無表情でそこに立って、こちらを見ると小首を傾げて見返してきた。うん、これは何を言ったのか教えてくれないな。

 

「じゃぁ、行きましょうか?」

 

 エンリの一言で気を取り直して、シズも加えた一行で森の中に入る。個人的な話であれだが、俺はこの自然の森の中が大好きだ。

 生い茂る木々や下生え、そこから飛び出してくる小動物や虫、何より、所々の葉の間から零れている陽の光、どれを取ってもあっちでは味わえなかったものだ。空気も旨いしこりゃぁピクニックだぜ。

 等と思っているのはどうやらナザリックに所属している者のみらしい。全員が緊張した面持ちでおっかなびっくり歩いている。なんでかなぁ?と考えて、はたと思い至る。なんか、この森の中にちょっとレベルが高めのモンスターがいるらしい。

 

「確か……森の賢王だったか?」

「はい、実は、これから薬草を採りに行くところは、森の賢王の縄張りの側なんですよ。下手に刺激したらまずいなぁって」

「ふぅん。ウンギョウ、スイギョウは、そいつ見たことある?」

 

 俺の質問にウンギョウとスイギョウが首を縦に振って肯定する。そうか、あったことがあるのか。それはそうと、どっちがウンギョウでどっちがスイギョウなのかゴブリンの見分けってつかないんだけど。

 

「あっしはちらりと見ただけでヤンス」

「そうでゲス。でなくばあっしらがここで姐さんにお仕えしてるわけがねぇでゲス」

「そうでヤンス」

 

 ふぅん。つまり、こいつらよりは強いって事か。厄介じゃないけど面倒な。

 

「まぁ、とにかく薬草採取、頑張りましょうかね」

「リュウマ様、一つ聞いてもいいっすか?」

「なにかねルプー」

「リュウマ様、薬草の違い、分かるんすか?」

「そんなもん、お前、あれだよ」

 

 ルプスレギナの突っ込みに、俺はニヤリと笑って答えてやった。

 

「やってみれば分かるさ」

「ああ、残念フラグっすねぇ」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 リ·エスティーゼ王国、王都。その王城ロ·レンテの敷地内にヴァランシア宮殿があった。

 華美と言うより機能性を重視した宮殿の一室で行われている宮廷会議の様子を、見るのではなく頭の中で想定しながら、その少女は皮肉げに口許を歪め、慌ててそれを引っ込める。

 先のカルネ村での一件を戦士長から聞き出し、貴族の連中の考えそうなことを頭の中で組み立て、そこでの発言を組み上げる。それに対する派閥の貴族の頭の中身も既に解析は済み、なんの進展も無い空虚な会議を頭の中で締め括り、少女、ラナー·ティエール·シャルドロン·ライル·ヴァイセルフは軽くため息をついた。

 彼女の父親、ランポッサⅢ世は善王だろう。それは間違いの無いことだ。だが、全て後手に回りなんの対策も練らなかった時点で愚王だと吐き捨てたい気分だった。とは言え、あれでも肉親、なんとか救う術を考えてやろうじゃないか。貴族派からの防波堤は、一枚でも多い方がいいからね。

 さて、と、ラナーは思考を切り替える。戦士長の口から語られた、漆黒のローブを纏った魔法使い、名前はモモンガ。そしてその従者と紹介された戦士、リュウマとやまいこだったか。どんな人間か、それは直接会ってない故自分では判断できない。無論、戦士長の審美眼など端から信用してない。出来ることなら一度あってみたいものだが。いや、もしかしたら人間ではないかもしれない。むしろ、そちらの方が確率としては高いとラナーは睨んでいた。

 ふと、部屋の中に風が起きた。その風が運んでくるのは、彼女が慣れ親しんだ緑の香り。つまるところ、自分の先生がこの部屋に現れた確たる証拠だった。

 幸い、今はあの忠犬を思わせる少年がこの場にいない。ならば自由に話しかけていいはずだ。

 

「先生、どうでした会議の方は。私の予想では、いつも通り中身の無い、建前だけの会議とおべんちゃらの言い合い、そして本当にどうでもいい権力闘争の話しかしていなかったのではないでしょうか?」

「鋭いねぇラナー。うん、心底どうでもいい話しかしてなかったよ。あぁ、いやいや、得る情報もあったから完全に無駄と言うわけではなかった、と言っておこうか?」

「と、言いますと?」

「ほほぉ……あえて考察するではなく、言葉を少なくして僕から情報を聞き出そうとするのか。結構結構。僕のように知識をひけらかしたい相手には有効な手だよ。ふむ、ああ、そこの椅子に座っても良いかな?」

 

 返事を聞くまでもなく、その相手は近くにあった椅子を引いてそこに座る。それに合わせて何時ものように木の葉が擦れ合うような音が続いた。

 

「うん、中々興味深い話でね。そこの村の女の子二人が、強大な魔獣を使役していた、と言うんだ。貴族派の連中がどんなことを言ったのかは、君があっさり予想を立てるので面白くないから飛ばそうか。まぁ、とにかく、その村は危険だと言う話になり、戦士長の更迭とそこに騎士団を送り込むように、貴族派からの要請が入り、王は返事を延期して終わり。そう言う話だが、面白いと思わないかね?」

「ええ、ええ。非常に面白い話ですわ。いつもと変わらないと言う意味で。ですが、その少女は何者なのでしょうか?先生と同じ存在ですか?例えば、先生が以前話してくださったダークエルフの双子とか?」

 

 ラナーの言葉に、その人物は頭を振った。

 

「さすが、昔寝物語に聞かせた話を覚えているとは驚愕するね。やはり君は天才だ。ただ、少々外の知識が足りなさすぎる節があるから、僕はそこだけが心配だよ。おおっと、関係ない話だったね。結論から言うのなら、その少女は人間だね。地味な槍を持っていた、との事だが、リュウマ君が来ているなら、恐らくあちら側のアイテムを渡したのだろう。それによって使役される魔獣と見て、間違いはないだろうね」

「危険ではないですか?」

「どのような感情を抱いているかなど、僕程度では推し量ることしか出来ない。とは言え、王国に牙を剥くような事は、今のところはないよ。そう、今のところは、ね」

 

 つまり、この先何らかの事情で王国に牙を剥く可能性があると言うことかと、ラナーは先生の言葉にある含みをそう理解する。しかし、どういう理由ならば牙を剥くのか。考えた瞬間、自分の兄、第一王子を連想し、ややゲンナリする。そして、あの馬鹿ならすぐさま軍をあげてその村へ進軍する可能性があると思われたが、第二王子とレエブン侯が確実に止めに入るだろう。そうすれば、普段通りに考えを渋々変えて大人しくすると簡単に想像ができた。そして、そうやって抑え付けられた反動が、いつか爆発することも容易に想像がついた。

 かと言って、抑えないわけにもいかず、今、何らかの手段を講じて殺すわけにもいかず。凡愚は凡愚で、この先使い道はあるのだ。

 

「ふぅ、ままなりませんね」

「人生とはそれの連続だよ。時計の針は戻っても、時の針は戻らない、ただ流されるまま沈まぬように身を任せ、だねぇ」

「誰の言葉ですか?」

「僕の言葉だよ。結局人生は流される以外方法はない、ってこと。まぁ、君は認めないんだろうけどね」

「ええ、その通りでしてよ」

「頑固だなぁ、僕の愛しいお弟子さんは」

「そう教育したのは誰でしたっけ?」

 

 簡単なじゃれあいのような言葉の掛け合いにどちらからともなく漏れる笑い。

 

「君のことだから、様々な手を打ってるんだろうけどね」

「そうですね、と言いたいところですが、手が足りなさすぎて打てる手がほとんどありませんわ。貴族派には先生からお借りした下僕を複数潜り込ませていますが、今すぐ動かすわけには参りませんし」

「ああ、そうだった。六腕だけどね、数匹、僕の方で始末して、数匹こちら側に引き入れておいたよ?君の命令に従うようにしておいたから、好きなようにしてくれて構わないとも」

 

 その言葉に、ラナーは目を丸くした。別段、新しい手駒が手に入ったことを喜んだわけでもなければ、あの悪名高い六腕を相手取ったことを驚いたわけでもない。

 

「珍しいですね、先生が相手を自らの手で処理されるなんて」

「ううむ、大人気ないとは思うんだけど、どうにも許せない二つ名を名乗った愚か者がいたからね。ついつい自らの手で処理してしまったよ。まぁ、もう一人は生意気にも向かって来たから、今ごろは樹の養分にでもなってるんじゃないかねぇ?」

「あらあら。先生の養分ですか?」

「失礼だなぁ、我が愛しい教え子は。天然ものの樹木の下に埋まってるに決まってるじゃないか」

 

 その時、控えめに扉がノックされる。メイドにしてはやや力強い叩き方だ。となると。

 

「君の子犬君、かねぇ?」

「ええ、その様ですね」

 

 顔に不快げな物を浮かべて、ラナーはそう答えた。

 

「ラナー、君は、彼の事をどう思っているのかね?」

「看板ですわ、先生。私が市民を重用していると言う噂を撒いて、私が王座についたとき、市民から支持を得やすくするための、ね」

「忠告と言うわけではないがね、ラナー、僕の愛しい教え子。もう少しだけ、回りの人間に愛を注ぎたまえ。そのように接すればその様に返ってくるものなのだからね」

「ええ、もちろんですわ、ぷにっと萌えさん。ちゃんとラキュースや蒼の薔薇の面々には信愛の情を抱いております」

 

 彼はため息をついた。十年前から知っているこの少女。最初の歪みから考えれば恐ろしく真っ直ぐになったとは思うが、一定の身内以外にはかつての歪みを見せるこの少女は、昔の彼を連想させる危うさがある。導くなど柄ではないと思いつつもこの子を見捨てられないのは、かつて自分が裏切った彼を連想させるからだろうか。とは言え、自分が教えたことがこの子をより複雑に歪ませただけではないかと考えてしまう。

 タイミングよく、先程よりも強めにノックされた。

 

「では、僕は退散させてもらうよ。いいかい、ラナー。くれぐれも先程の言葉を忘れないように。ああ、いや、これは蛇足だね」

「ええ、先生、ぷにっと萌えさん、肝に命じておきますわ」

 

 簡潔に言葉を掛け合い、ぷにっと萌えは暗闇に姿を消す。それを見送って、ラナーは鏡に向かい笑顔の選別に入った。少なくとも、あの子犬のような男の子に怪しまれないような、好意を抱かせる笑顔は、簡単に作り上げることが出来るはずだった。でも、すぐに出てこない。四苦八苦しながら、なんとかそれっぽい顔を作り出し、ラナーは自らを慕う子犬をようやく迎え入れるのだった。

 

 ヴァランシア宮殿から少し離れた林の中のもっとも大きな樹の下に、黒色のドロドロとした塊がいた。コールタールのような表面は常にブルブルと蠢き、一秒として同じ姿を保っていない。

 古き漆黒の粘体と呼ばれる、この世界に同じ存在がいるかどうかも疑わしい超級の怪物だった。

 彼の佇む巨木の表面がさざめき、そのさざめきから無数の蔦が這い出してくる。それは寄り集まり捻りあい、辛うじて人間のような姿を形成する。

 

「乙ですー、ぷにっと萌えさん」

「まぁまぁ疲れましたけど、そこまでじゃありませんよヘロヘロさん」

 

 粘体の表面をぐぐっと伸ばしてそう言うヘロヘロに、ぷにっと萌えは苦笑しながらそう返した。

 

「あれぇー?そうなんですか?なんだか疲れきって見えたんですけどね」

「まぁ、教育とかその辺りを考えて、やっぱり僕は教師に向いていないと思いましてね」

「……ラナー王女ですか?初めてあったときに比べれば、ずいぶんと真っ直ぐになったなぁって思いますけど」

「歪んだものを真っ直ぐにしようとして、さらに歪めた結果、まっすぐ見えてるだけかもしれないですよ」

 

 ため息をつきながらそう言って、ぷにっと萌えは気分を切り替える。これは自分の問題であり、ヘロヘロには関係の無い話だ。伝えるべき事は、他にある。

 

「そうそう、ヘロヘロさん」

「はい?どうしました?」

「どうも、モモンガさんがこちらへ来ているようですよ?」

「えっ!?本当ですか?!ああいや、ぷにっとさんが言うなら本当でしょう。しかし、現れるまでずいぶん間が空きましたね。九年ですか」

「ええ。だけど、これでこの異世界転移、どうやらタイムラグのようなものがあることが判明しましたね」

「そうですね。まぁ、六大神や八欲王なんかはどうなのかとか、分からないことの方が多いんですけどね」

 

 その言葉に、ぷにっと萌えは頭を捻る。なにか法則があるのかもしれないが、今のところは判然としない。

 

「さて、どうしますヘロヘロさん」

「どうって、何がです?」

「今から探せば、彼らは簡単に見つかると思いますけど?」

「ぷにっとさんはどうするんです?」

 

 間髪入れずに放られた言葉に、ぷにっと萌えは少し言葉につまる。

 

「……僕は、ここに残って、モモンガさんたちを迎え入れる準備がありますからね。ここに残りますよ」

「なるほどぉ。では、自分もここに残りますよぉ。ぷにっとさんを一人残すわけにはいきませんからね」

 

 粘体の表面を盛り上がらせて、ヘロヘロがおどけたようにそういった。肩を竦めているのかと疑問に思ったが、この友人の好意、有り難く受け取ろうと思う。

 

「では、ヘロヘロさん。これから色々忙しくなると思いますよ。ガンガン働いてもらいますからね」

 

 おどけてそう言うと、ヘロヘロが伸び上がって地面に突っ伏した。

 

「重労働は勘弁ですよぉ……!」

 

 林の中に、ヘロヘロの悲しげな声と、ぷにっと萌えの楽しそうな笑い声が溶けて消えていった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 ナザリックのモモンガの私室にて、モモンガはデミウルゴス、エントマからの報告に、大きく頷いて答えていた。

 

「素晴らしい手際だ、デミウルゴスにエントマ」

「お褒めに与り光栄にございます。しかし、今回の最大の功労者は、やはりエントマです。ですので、お褒めになるのなら、エントマをお願い致します」

「ふふ。謙遜するなデミウルゴス。お前の作戦立案があったからこそだろう?」

 

 ひざまずく二人の肩を叩き、モモンガは愉快そうにそう言った。恐縮の至りといった感じの二人を立たせ、モモンガは顎を擦って言葉を続ける。

 

「エントマのスキルによって呼び出された〈 支配蟲 〉によってビーストマンを操り、人間の国を襲わせ、たっちさんが戦っているのを助ける。ついでに周囲の人間を助けることで、我々の名を広げる、か。面白い作戦だ」

「もう一つ申し上げるなら、これでビーストマンの死体が数千は集まりますので、ナザリックの強化や様々な実験も行えるかと」

「ふふ、そうだな」

 

 そう答え、モモンガは指を鳴らす。

 

「この三日で、たっちさんも竜王国に入り込んだようだ。二日後だ、デミウルゴス。二日後、早速始めるぞ」

「「御意」」

 

 深々と頭を下げる二人を見て、モモンガは高笑いをあげた、のだが。

 

「モモンガさ~ん、面白いエロ本見つけたから、一緒に見ようぜぇ!」

 

 扉を蹴破るように飛び込んできたバードマンのせいですべてが台無しになったのだった。

 

 

 




頭のいいキャラの会話ってくっそムズい。
俺も頭が良くなりたいです。

ではでは次回。


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