The Last Stand   作:丸藤ケモニング

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 どこを削ってどこを残すか。それが一番の問題だと思う。
 今回はかなり荒いです。慌てましたし。
 あ、お気に入り登録していただいた方々、ありがとうございます。
 荒いなりに頑張ります。



2,異世界の始まり 嵐

 0:00:38

 始めに全員が感じたのは違和感だった。

 ログアウトしてない、いや、ゲーム自体が終わってない、そう言った方が正しいか。

 

「どう言うことだ、GMコールも使えないだと。茶釜さんはどうです」

「こっちも駄目…というかウインドゥが開けない~」 

「サービス終了が延期になったんですかね?」

「そんなことになるなら通達してこいってんだくそ運営!!」

 

「どう見るやまいこ」

 

 困惑して暴言を吐いている茶釜とモモンガを横目に、リュウマとやまいこは比較的冷静だった。回りにテンパってる人間がいると冷静になる奴がいると言うが、二人はそういうタイプらしい。

 

「気になることはあるんだ。例えば」

 

 そこまで言ってやまいこは、リュウマよりも頭ひとつ高いところからモモンガを見て首を捻る。

 リュウマもつられてそちらを見ると、肉の棒と骨(大魔術師)がケンケンガクガクと意見を交換しあっている場面があった。

 

「例えば?なんだやまいこ」

「分からない?例えば…」

 

 そう言ってやまいこは自分の顔を指差した。具体的に言うならば唇を。

 

「僕の唇、この部分だよ。モモンガさんなら顎でもいいけど」

 

  

 じぃっと、やまいこの唇を見つめる。なるほど、ほどよく厚く、プルっとした柔らかそうな唇である。唇自慢か、そうなんだな!?

 

「……なるほど」

「分かった?」

「エロ唇だな、よく分かっ……」

 

 信じられないような衝撃と共に顔面に突き刺さる❲女教師怒りの鉄拳❳。吹き飛ばし効果により、リュウマが階段下へと向かって吹き飛ばされた。

 

「う、うおぉぉぉぉぉ……顔が中央に向かって…」

「だ、大丈夫でございますか、リュウマ様」

「「「「 !!!???? 」」」」

「…はっ! 失礼をいたしましたリュウマ様! 私ごときが差し出がましい口を利きまして! この罰は如何様にで……」

「……セバス?」

「はっ! なんなりと罰をお申し付けください!!」

 

 リュウマが玉座の方を見上げる。やまいこ、開いた口が塞がってない。モモンガ、骨の顎が外れそう。ぶくぶく茶釜、延びる。四者四様、それぞれの形で驚いている。

 

「え、え、NPCが、しゃ、しゃべ……」

「お黙りなさいセバス!! 至高のお方々の会話に口を挟むことはまかりなりません!!

「「「「!!ほあぁっ!????」」」」

 

 モモンガの言葉を遮るように、静かに立っていたアルベドが、全身に憤怒のオーラを纏い、セバスを叱責する。

 

「さぁ、モモンガ様、セバスにはどのような罰をお与えになりますか?」

「……あ、アルベド?」

「なんでございましょうモモンガ様」

 

 花が綻ぶように笑い淑やかな声で笑ったアルベド。絶世の美女に向かって四人は叫んだ。

 

「なんでNPCがしゃべってんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 それは少なくとも心の叫びであったのは、言うまでもない。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 そんなこんなから小一時間、四人は円卓の間にて、一息ついていた。

 分かったことは、どうにも自分達がゲームの中に閉じ込められた、もしくは自分達がゲームのアバターのまま異世界に転移した。ついでNPCが意思を持ち『生きている』と言うのも分かった。

 しかし、分かったからと言って問題が解決したわけではない。むしろ、逆にこれからどうするかと言う問題が発生していた。

 そこで、まずはセバス及びプレイアデス中でも索敵·偵察能力の高いソリュシャンを斥候としてギルドの外へ出し、残った者を各階層へと連絡係として走らせた。

 残ったアルベドに関しても一通り質問と、肉体の確認を(やまいことぶくぶく茶釜が)行い、その後、各階層にて異常がないかどうかの確認に走らせた。

 各階層の守護者を第六階層に、二時間後集まるように申し伝え、一旦自分達はこの円卓の間に入り、現状の分析、及びこれからの行動についての作戦会議をする、つもりであった。

 リュウマは円卓に突っ伏し、ぶくぶく茶釜は椅子の上で伸びて垂れ下がり、モモンガは顔の前で手を組んで思考の海へとダイブ、唯一平然としているように見えるやまいことて、現状には困惑するばかりである。

 

 

「もう一度、考えのおさらいといきましょうか?」

「あ、そうですね、やまいこさん」

「じゃ、モモンガさん、ギルマスらしく会議の進行をお願いしますね」

「はい。ええと、まずは」

 

 モモンガがあげた早急にやらなければならないことは三つだった。

 

 ひとつ、自分達が保有しているスキルやアイテムが、ゲーム内と同様に使用可能であるかどうか。

 

「これに関しては、これから第六階層の闘技場に行って確認すればいいと、俺は思います」

「それで僕はいいと思うけど、茶釜さんにリュウマはそれでいい?」

「俺は別に問題ない」

「あ、ええと、私も問題無い…かな?」

「?じゃぁ、それで。モモンガさん、次にやらなければならない事は?」

 

 少し上の空のぶくぶく茶釜に疑問を覚えたやまいこだったが、今はとりあえず目の前の問題について目を向けるためにモモンガに説明してくれるよう促した。

 それに対してモモンガは、骨の指を二本立て口を開いた。

 

「次に確認しなければいけないのは、NPCの忠誠心です」

「それって必要なことなのか、モモンガさん。セバスの態度やアルベドの態度を見る限り、こっちに忠誠を誓っている、そんな風に感じられたぜ?」

 

 リュウマの言葉に、モモンガが首を横に振って否定する。

 

「確かに俺もそう感じました。だけどそれは、あくまで第一印象に過ぎませんよね?今後、何かあったときにこちらを裏切って攻撃を仕掛けてくる、その可能性を完全に否定できませんよ」

 

 できればそんなことにならないことを祈りますけど。そう言ってモモンガが小さく笑う。

 

「なるほど、確かに。もしかしたら、俺らがすげぇ弱くなってる、もしくはあっちがこっちの常識の外の強さになってるって可能性もあるんだよな」

「そうですね。まぁ、あくまでも念には念を入れてるだけですし。いざとなったら❲リング·オブ·アインズ·ウール·ゴウン❳で即座に宝物庫に転移して逃げますけどね?」

「あー!!」

 

 宝物庫の単語を聞いたぶくぶく茶釜が、唐突に声をあげ、残りの三人を驚かせる。

 

「ど、どうしたんですか、茶釜さん!?」

「モモンさん!私の武器!どこにあるの!?」

 

 一度引退すると決めたぶくぶく茶釜は、すべての武器防具を持っていない。さすがに『粘液盾』と呼ばれその名を轟かせたぶくぶく茶釜とはいえ、なにも持たないで昔のような事は出来ない。

 

「ええ!?あ、いえ、その皆さんの装備はですね… 」

「それなら宝物庫にあるぜ、茶釜さん」

「じゃぁ、早く取りに行こう!そうしなきゃ、ええと、あれだよ……モ…じゃない!!み、みんなを守れないからね!」

「え!?あ、いや、そうですね…そうなんですけど、宝物庫は…」

「ああ、茶釜さん。宝物庫にはモモンガさんの黒歴史がいるから、あんまり人を入れたくないらしいぜ?」

「黒歴史?」

 

 言い淀んだモモンガの後を引き継いだリュウマの言葉に、やまいこが反応した。

 

「ああ、モモンガさんが創造した領域守護者、パンドラズ·アクターがいるんだ。ドッペルゲンガーで、俺たち42人の姿をとってその能力の80%まで行使できる万能の個だな」

「強いじゃん。それのどこが黒歴史なの?」

「それはな……」

「それ以上はやめてくださいね?リュウマさん?」

「え~、まだ本題に至ってないんだけど?」

「リュウマさん、マジで怒りますよ?」

「チッ…Wenn es meines Gottes Wille」

「やめろぉぉぉぉぉぃぃ!」

「え~、なんで?かっこいいじゃんドイツ語」

 

 モモンガの心の傷をえぐった後、リュウマは顔を引き締め言葉を続ける。

 

「いや、しかし、冗談抜きでパンドラズ·アクターはこっちに引き込んでおくべきだと思うぞ、モモンガさん」

「えーっ!?いや、だけど」

「何かあった場合、俺ややまいこじゃモモンガさんをかばえない、今の状態だと茶釜さんだってそれは無理。なら、茶釜さんの武装全てを取りに行くついでにパンドラズ·アクターを連れ出して近衛にするべきだと思うが」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 宝物殿に転移した一行の前には天空に瞬く星の輝きに勝るとも劣らない財宝の数々があったが、誰もそれに対してはなにも言わず、ずーっとブツブツ言っているモモンガを気の毒そうに見ているぶくぶく茶釜をやきもきして見ている二人と言う謎の構図が展開されていた。

 

「それで、そのパンドラズ·アクターと言うのはどこにいるの?」

 

 一向にあっちに行ったっきり帰ってこないモモンガとぶくぶく茶釜に嘆息しながら、やまいこがリュウマに声をかける。

 

「一番奥の霊廟だな。その奥にはワールドアイテムが眠ってる。それから、こいつをつけといて?」

 

 そういいながら放り投げられたのは指輪であった。それを覗き混んで、やまいこはすぐさま思い至った。

 

「ブラッド·オブ·ヨルムンガンドがここにあるんだっけ?」

「そうだ。確か、やまいこは巨人族で猛毒耐性はなかったよな?」

「武装のほぼ全てを置いてあるからね」

 

 そういえば、茶釜さんはどうだったかと思って声をかけたら、種族的に耐性を持っていると言うことだったので問題なく、ようやく決心がついたモモンガが〈全体飛行〉を唱え、宝物庫の奥に向かって出発したのだった。

 

 ギルドメンバーが細部にこだわってこだわって作り上げたギミックをああでもないこうでもないと言いながら解除し、武器庫を抜けた先には、今までと違った空間が広がっていた。

 今までと広さや高さは変わらないが、荘厳で静かな、神聖な雰囲気の場所だった。

 

「モモンさん?ここは? 」

「ここは、まぁ霊廟と呼んでいるけど、思い出を納めているところですよ、茶釜さん」

 

 ぶくぶく茶釜の質問に、モモンガは照れたように答えまっすぐ歩きだし、ぶくぶく茶釜もその背中を追って歩き?だす。その後ろをやまいことリュウマが気楽な調子でついていく。

 その一行の前にフラりと姿を見せたものがいた。

 

「よぉうこそおいでくださいました、私の創造主であるぅっモモンガ様ぁ!!」

「「うわっ……」」

「ハハハッ」

 

 オーバーなアクションで右手を帽子に添え敬礼をする卵男、もといパンドラズ·アクター。それを見た女性二人がドン引きの声を出し、リュウマが愉快そうに笑い、モモンガが凹んだ。

 

「…久しいな、パンドラズ·アクター。今日は頼みがあってきたのだが」

 

 頼みたくなくなってきたと言う思いを飲み込み、モモンガは奥を杖で指し示し、パンドラズ·アクターに命令する。

 

「ぶくぶく茶釜さんとやまいこさんの装備全てを持ってきてくれ」

 

 無いはずの横っ腹が痛むのを感じながら命令すると、パンドラズ·アクターは再びオーバーなアクションで敬礼しながら奥へ消えていった。

 数分後、すべての武装を抱えて戻ってきたパンドラズ·アクターから、ぶくぶく茶釜とやまいこをは武装を受け取り、完全装備になった後、しげしげとパンドラズ·アクターを観察した。

 

『んー、さっきは驚いてドン引きしたけど、なかなかこれはカッコいいかもしれない。何せモモンさんが作ったんだしね』

『これは、人前に出したら軽く死ねるレベルだわ。少なくとも僕にはこれを人前に出すのは無理だ。モモンガさんが悶えてた理由もわかる』

 

 女性二人がそれぞれの感想を抱いている間に、モモンガとリュウマは簡潔にパンドラズ·アクターに現在の状況を説明する。

 

「……つまり、私もここを出てナザリック地下大墳墓の防衛に出る、そう言うことで宜しいのですか?我が主」

「う、ウム、そう言うことだ」

「ついでに言うとどんな危険があるか分からないから俺たちの護衛も兼ねてると思ってくれ」

「ぅわかりましたぅ我が主よ!このパァンドラズゥ·アァクター!命に変えてもぉぉぉ…皆様をお守りします」

「うぉぉぉぉぉ……ふぅ…」

「まぁ、とりあえず第六階層に向かいますか?」

「ええ、そうですね…」

 

 ため息ひとつをつき、皆に顔を向けたモモンガは、指輪の力を解放しようとして、思い出したようにパンドラズ·アクターに向き直った。リング·オブ·アインズ·ウール·ゴウンをパンドラズ·アクターに渡すべきかどうか迷ったが、結局渡さないことにし、〈転移門〉を起動し第六階層に向かうのだった。




 私のところに茶釜さんはだいぶあれな仕様で、やまいこさんはクールな僕っ子です。
 書いてて思ったんだけど、オリ主があんまり要らない子のような?

 次はいよいよ第六階層でのお話です。

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